
みなさんゴキゲンよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
千里の道も、一歩から。初心者でもクルマを目一杯楽しんで、最後の最後は「ニュルブルクリンクへ走りに行こう!」というこのコラム。
今回は、マクラーレンのオーナー向けドライビングレッスン
「ピュア・マクラーレン」に参加してきたお話です。
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山田弘樹(以下 山田):はぁ……。
ハシモト タカシ(以下 タカシ):山田さん、どうしたんですか、ため息なんてついちゃって?
山田:いやー、すごい体験しちゃったなって……。
タカシ:いっつもすごい体験しているのに珍しいですね(笑)。何か特別なクルマにでも乗ったんですか?
山田:マクラーレン「アルトゥーラ」に乗ったんだけどね。
タカシ:おぉ! V6ツインターボ搭載のプラグインハイブリッドですよね?
でも山田さんなら乗ったことあるでしょ?
山田:うん。アルトゥーラには乗ったことあるんだけど、富士スピードウェイで運転する機会があってね。
<アルトゥーラ>
パワートレイン:3.0L V6エンジン+モーター
バッテリー:リチウムイオン7.4kWh
トランスミッション:8速+E-リバースシームレスシフトギアボックス(SSG)
最高出力:700PS
最大トルク:720Nm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
0-200km/h加速:8.3秒
タカシ:うわー、いいなー!
でも試乗会だと大抵先導車付きの走行だから、山田さんにはシゲキが足りないんじゃないですか?
そんな
ぽかーんとするほどすごかったんですか?
山田:うん。
「ピュア・マクラーレン」っていうオーナー向けのドライビングレッスンがあって、それに参加することができたんだ。
タカシ:オーナー気分、漫喫じゃないですか! それは確かにすごい。
アルトゥーラって、やっぱり速いんですか?
ストレートで何キロ出したんですかっ!?
山田:クルマ好きのオッサンになっとるぞ。ちなみに排気量は3リッターだぞ。
タカシ:あっ…(恥。
山田:マクラーレンには
「アルティメイト」と
「スーパースポーツ」、そして
「GTS」という3つのシリーズがあって、アルトゥーラはスーパースポーツシリーズに属しているのね。
スーパースポーツの中で、速さだけでいうと一番速いのは
「750S/750Sスパイダー」なんだけど、アルトゥーラは次世代のスーパースポーツなんだ。
タカシ:私も一度750Sに乗せてもらいましたが、とにかく軽くて速くてシャープでした。
でもアルトゥーラはプラグイン・ハイブリッドですもんね。
※タカシが乗った「750S」(写真:編集部)
フェラーリで言えば「296GTS」がライバルですか?
山田:そうだね。同じV6ツインターボにダウンサイジングして、モーターでパワーをマシマシにしている感じ。
タカシ:でも純粋な速さで言ったら、V8ツインターボの750Sに敵わないんですよね?
<750S>
パワートレイン:4.0L V8エンジン
バッテリー:—
トランスミッション:7速ショートファイナルドライブ+リバースシームレスシフトギアボックス(SSG)
最高出力:750PS
最大トルク:800Nm
最高速度:332km/h
0-100km/h加速:2.8秒
0-200km/h加速:7.2秒
山田:とはいえ、アルトゥーラだって最高出力700馬力だよ。
タカシ:ひょえー!
山田:モーターとバッテリ-を搭載しているのに、車重なんてDIN規格で1498kgしかない(※)。乾燥重量だと1395kgだよ。カーボンモノコックって、やっぱり軽いよね。
※ドイツ工業規格で定めた車両重量。燃料や油脂類など走行に必要なものが全て充填されて、すぐに走り出せる状態での車輌重量。
タカシ:ぱっ、パワー・ウェイト・レシオ2.14って……。でもプリプレグを使ったカーボンモノコックじゃないんですよね?
山田:さすがF1オタク。でも、だからこそあの値段で量産できるんだよ。あまりにすごすぎて、剛性足りないなんて思わなかった。
山田:ストレートエンドの車速は、ジャスト300km/hでした。
それは前日のイベントで試乗したときの速度で、ピュア・マクラーレンだと、連続走行するから速度規制されていたんだけどね。
タカシ:さっ、さんびゃっきろ……。とっ、止まれるんですか!?
山田:それがきちんと減速できて、ばっちりターンインできちゃうんだよ。
タカシ:そこはさすが、マクラーレンですね! ワクワクするなぁ。
ドライビングレッスンは、どんなことをやったんですか?
山田:まず朝に、参加者をバスに乗せてレーシングコースを先生がレクチャーしてくれるんだ。レーシングバスツアーだよね。アプローチが難しい最終コーナーなんて、バスから降りて路面をチェックしたりして。
タカシ:なんだか楽しそう!
山田:そしてまずは1回目の走行。途中で講師が運転する横に同乗して、走り方を体で覚える。そのあとデータでお互いの走りを見比べて、2回目の走行をするんだ。
タカシ:いーなー! すごく本格的じゃないですか。
山田:それが終わると昼食になって、午後はスキッドパッド。低い速度でマクラーレンの挙動を覚えるんだ。
本当はスキッドパッドをやってからレーシングコースを走った方がいいと思うんだけど、今回は日本でこれからピュア・マクラーレンをやって行くテストイベントだったから、様子を見たのかも知れない。
スキッドパッドしたあとにレーシングコースを走ったら、ノリノリになっちゃうかもしれないしね(笑)。ヨーロッパで行われているメニューは、もう少し内容が本格的みたい。
タカシ:十分本格的だと思いますけど(汗。
ところでレッスンはどうだったんですか?(ニヤニヤ
山田:先月からツッコむよねー(苦笑。
セクター2までは、とっても褒められました。Aコーナーは先生よりも速かったんだぞ!
タカシ:おぉー。でも、セクター3が相変わらずダメだったわけですね?(ニヤニヤ。
>>セクター3が相変わらずダメだった元ネタはこちら
山田:相変わらずいうな! だってクルマはマクラーレンのアルトゥーラだよ? そんな無茶できるわけない。
タカシ:私なら、速度レンジが高いセクター2を大人しく走りますね(笑。
山田:……確かに。セクター3はね、速度も乗っててトップスピードは速いんだけど、そのあとクルマを曲げられてないと言われたよ。
タカシ:ツッコんでるのは自分じゃないですか(笑。
山田:鋭いね(汗。というより、ターンインでハンドル切るのが怖かったのね。オーバーステアが出そうで。
タカシ:ミッドシップだし、高いクルマだし、オーナーじゃないし、そりゃ緊張感高いですよね。私だったら先生に勝つなんて到底無理です……。
山田:先生いわく、
「もう少し進入スピード落としていいから、手前からハンドルを切って曲げて行ってください。そこでオーバーステアが出ても3セクターの速度は低いし、トラックモードだったら制御が助けてくれますから」って。
タカシ:なんだかちょっと想像できない……。
山田:だよね。そこはマンツーマンでアドバイスするレベルでの話だから。でも、2回目からは走りが少し変わったよ。
タカシ:オーナーだからこそ味わえる世界なんですね。
山田:ほんと。こういう風にオーナーが、愛車と共に成長できる環境がスーパースポーツには必要だと心底思ったよ。ポルシェなんかは昔からやっているけど、マクラーレンのようなクルマこそ必要だよね。
タカシ:走ることが楽しいクルマですもんね。山田さんはマクラーレンのどんなところが魅力的ですか?
山田:誤解を恐れず言えば、
「すんごいロータス」みたいなクルマ。いや、これこそがブリティッシュ・スポーツなんだろうね。足周りがすごくしなやかで、8割くらいで走るとメチャクチャ素晴らしい。
タカシ:でもレーシングスピードで走らせると難しいわけですね?
山田:可能な限り安全を高めながらも、過保護になりすぎていないところがヨーロッパのスポーツカーだと思ったよ。あまりにパワーがあるから、タイヤはサーキット専用に、もう少しグリップレベルを上げてもいいと思うけど(笑)。
タカシ:いいなー。いいなー! 気分はノリスにピアストリじゃないですか。
山田:オーナーだけしか味わえない特権を体験させてくれたマクラーレンには、感謝だね!
写真:マクラーレン・オートモーティブ
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山田弘樹(やまだ こうき)モータージャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。