簡単なようで難しいテスラの真似 その⑨

週5000台生産しているモデル3を徐々に増産し、当面は週8000台、年度末までには週1万台までひきあげるそうだ。大量のバックオーダーを抱えているからこその計画だが、普通の自動車メーカーならそう簡単には増産できない。倍増するためには組み立てラインを増設しなければならないし、夜勤を増やすことでコストアップもあるから、いくら好調な販売でも大幅増産に簡単には踏み切らない。もし急に販売が下落したら大損害となるので倍増なんて無謀な計画は立てないのは過去の歴史の教訓である。

また、部品調達のため下請け会社との調整が必要で、場合によっては設備投資費用を肩代わりすることになるかも知れないし、人員が確保できず増産に対応できない下請けだってあるだろう。

ところがテスラは驚くことにほとんどの部品を自社生産しているので増産が比較的容易だ。高圧ケーブルやヒューズ、ディスプレイ、シートなど普通の自動車メーカーなら、安く製造してくれる外部から調達するような部品を自社工場内で製造している。それで安くクルマを作れるのか心配になるが、自社製造ゆえに急な増産にも対応できるし、製造ノウハウも社内に蓄積される。

テスラの場合は部品レベルで細かい改良が逐次行われていて、作れば作るほど良質かつコストの安いクルマとなるような仕組みがある。他の自動車メーカーなら一度決めた仕様や製造方法を部品メーカーが勝手に変更するのは許されないため、テスラのような進化は起こり得ない。

工場内で革新が起こり続けるテスラのクルマ作りは、トヨタの改善を積み重ねる仕組みの現代版なのかもしれない。