あまい囁き

しかし、私の資産状況では、とてもフェラーリの12気筒まで手が届かない。あるとすれば400iか412だが、これは3速AT。いくら何でもFの12気筒を味わえるとは思えなかった。形的にも好みではない。

2台目の8.32を購入した行きつけのショップで、店長のNさんと話をしていた。
「夢はFの12気筒なんだけど、どう考えてもこのままでは一生手が届かないんで、これ(8.32)で良しとしないとね。」
「いや、何とかなりますよ」
「え！」
「456っていう手があるじゃないですか」
「そうか！確かに。昔一度外装紺、内装タン革の個体が実家の近くに止まっていて、その斜め後ろからのCピラーの美しさに『流石ピニンファリーナ！』と思ったのを思い出した」
「あれなら、MTでも追い銭500万ちょいで何とかなりますよ。ただ、当たり外れが大きくって、まともなのは少ないです。時間をかければ何とか探せるかも知れません」
当家ではクルマにローンを使ってはいけない。すべての資産を投入して何とかとどきそうだ。夢が現実となるか。