
思いがけずC63の話があり、内容について調べてみると見れば見るほど違うクルマ・・・ですね。正にメーカーにしか出来ないチューンド。まずエンジンはM177 V8ツインターボ。Vバンク内にターボを収める・・・というよりVバンク内に排気するホットVレイアウト。このV8をフロントノーズを約50mm延長して載せています。AMG GTではドライサンプ化されM178という形式ですが、C63のエンジンはウェットサンプ。ボアxストロークはかなりのロングストロークで 83.0 x 92.0。このボアxスト含めシリンダーやヘッド周りの基本設計はA45シリーズが積むM133と共用しています。パワーは素のC63で 476ps/5500-6250rpm, 650Nm/1750-4500rpmというスペックです。これがC63Sとなると発生回転数は同じまま510ps, 700Nmとなります。AMGモデルの例の漏れず、クーリングにも気を使われており、ラジエターはメインのものに加えてサブラジエターがホイールハウス前に追加されています。
そして気になるトランスミッションは、AMG SPEED SHIFT MCT 7。MCTはマルチクラッチテクノロジーの略で、トルコンの7G-TRONICからトルコンを外して多板クラッチを組み込んだトランスミッションです。
DCTと良く誤解されますが、DCTのようにクラッチが2組あるのではなく1組のみ。ただし乾式単板クラッチではなく湿式多板というバイクと同じような形式のクラッチです。1組か2組かという意味ではシングルクラッチAMTといって良いでしょう。(ベースのミッションがATなのでAMT=Automated Manual Transmissionというのも正しくはないのですが・・・)従って基本的には走行中はドライブトレインがMTやDCTのように直結されるのでダイレクト感があります。なおディファレンシャルはC63では機械式LSD、C63Sでは電子制御LSDになっています。
シャシーは、まずホワイトボディが強化されているらしいです。そしてフロントアクスルはC43と同じ・・・と思いきや、なんか違います。流石に4WDとFRなので違うのですね。C43は流用だと思ってましたが多少の部品共有があるものの専用設計ということです。C63と共用しているのはアッパーアーム、アップライト、ダンパー・・・といったところでしょうか。ロワアームはより直線的な形状とされ、アンチロールバーの取り回しも違います。
ということで、C63は実際のところC43とも異なるクルマ。もちろんベース仕様とは別モノと言って良いでしょう。一方、我が家のC43はあくまで街乗りベースのクルマなので、これをC63にするとなると気になるポイントがあります。まずは乗り心地。C43では仲間を、時には上司を乗せてゴルフに行ったり、スキーやトレッキング・・・という使い方もしているので、あんまりガタピシ系ではやはり厳しい。そしてトランスミッションのマナー。シングルクラッチAMTということで発進時のジャダーや低速時のマナー、特に距離が延びた場合にどうなるのか?? などが気になるポイントです。速さ方面は不必要なくらい速いに決まっているので、どちらかというと街乗り適性を確認したい。そして最後はV8の味。あえて代替えするほど楽しいかどうか。しかしC63の試乗車は遠くの店舗に行かないと無いということで、店頭中古在庫のC63Sに試乗することに。乗ったのはエディション1という限定仕様ですね。3万キロを刻んでいるこの個体、むしろミッションや足回りの劣化具合を確認するにもちょうど良い個体でした。
エンジンスタート・・・「ガローン!・・・ドロドロドロドロ・・・」 典型的なAMG V8の派手な音。本当にノーマルか疑ってしまうようなワイルドな音。ビデオでは何度も見たことあるけど凄すぎ・・・。ポジションを合わせて発進・・・。なるほど、トルコンじゃありませんね。まずクリープというよりMTっぽいタッチを感じる半クラです。セッティングは営業さんがエンジン周りはSport +、シャシーはComfortという設定に。第一印象はステアリングと駆動系のダイレクト感の高さです。それからボディ剛性の高さ。ステアリングもC43に似ているかと思ったら随分違うところで、重さも良いし、かなり路面のフィードバックがあり好印象。これは別モノレベル。Comfortだともう少し軽くなりますが、それでもフィードバックがなくなることもありません。そして駆動系はE90 M3でも感じた、ミッションからハブに至るまでギアや可動部のギャップを詰めに詰めたタイトな感じ。この感触にはおそらくリアアクスルのブッシュ容量の小ささも重要でしょう。乗り心地は明確に硬いです。私自身は許容範囲ですが、人を乗せる時は気になるレベルですね。端的に言ってComfortでもスポーツシャシーのボクスターよりも多少硬めです。おそらくバネレートが結構高いのですね。ただ荷重をかければそれなりに動く印象です。バネレートの低いボクスターとは逆の方向ですね。ということで乗り心地はオールマイティさを考えれば微妙なレベル。ハイスピードクルーザーとして考えた時にどうかはもう少し乗らないと分かりません。まぁ普段私と妻と・・・というシチュエーションなら問題ないかな。トランスミッションはこれはもう全然OKでした。シングルクラッチAMTということを考えなくてもComfortならスムーズですし、Sport+でのダイレクトなシフトショックもむしろ気持ち良く、発進・渋滞時のマナーも洗練されていました。3万kmの個体でこれなら何も問題なさそうです。
試しに踏んでみると・・・全開でもないのに3速からでもホイールスピン!(笑) 思わず笑って声を上げてしまいました。こりゃ楽しい。200ps級のリッタースーパースポーツとまでは行きませんが、踏むだけで顔が綻ぶ面白さ。う〜ん、これは典型的なホットロッドってヤツだな。ずいぶん前にF10 M5に乗った印象はもっと洗練されていてロケットのように飛び出して行ったので、そういうフィーリングかと思ったらまるで違って加速感までワイルドでした。リアのデフはロッキングファクターはまだ調べてませんが、乗った感じかなり効きますね。こういった辺りも本当にダイレクト感が高く、本当にターボかと疑うほど。スロットルにダイレクトに挙動が作られる感じで、単にエンジンがレスポンス良く吹けるというレベルではなく、駆動系のタイトさも合わせてスロットルが挙動に正確に反映されるようなフィーリング。なのでホイールスピンをしている状況でもスロットルでのコントロールが出来、怖くありませんでした。それくらいエンジンのレスポンスが良いんですね。ちょい乗り試乗なので高速域のパワーやハンドリングなどはもちろん不明ながら、とにかくステアリングからドライブトレインまでダイレクト感の高さが印象的でした。
というわけで、実力を垣間見た程度でしかありませんが、C63はやはりさらに走りに振った硬派と言えるモデル。よくBMWのMと比較されますが、少なくともM3とC63では味わいは全く異なります。Mは過激さの中にもスウィートな、繊細なフィーリングが潜んでいるのですが、AMGはひたすらワイルド。とは言え(他のモデルがどうか分かりませんが)C63は想像していた直線番長とは少し違って、もっとハンドリング方向も考えられたクルマのように思いました。
しかし、C63は趣味のクルマとしては合格ですが、オールラウンダーとしては予想通りC43の方がベターでした。つまり私の中でのW205のベスト・バイはやはりC43です。
何回も書いている通りとても気に入っているC43、しかし何シテル?に書いたようにC63の良いオファーをもらい、C43の走行ペース、値落ちペースを考えると24,000kmを超えたここいらで一度考えるべき・・・という判断ポイントが思いがけず早く来てしまいました。それどころか財政的なことだけを考えればC63の方がベター。C63はさらなる刺激と面白さがあることはあるんですが、しかしまぁ冷静に考えてもまだC43は1年半ちょっとしか乗っておらず、今の使い方を考えればC43に乗り続ける方がベターという結論です。
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Mercedes | 日記
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2018/03/18 16:12:05