
2009年の秋にR1200GSを購入してから11年以上が経ちました。購入した当時はレースからリタイアしてそれほど経っていない頃で、漠然とツーリングがしたかったのです。それまで10年以上、少なくとも月に1回、多ければ月に数回以上サーキットへ通っていたので、サーキットで走らない日までバイクでツーリングをしたいとは全く思わなかったのですが、レースを辞めてバイクで旅がしたくなったのですね。最初のきっかけはアメリカでバイクをレンタルして友人夫妻とツーリングをした時でした。
ツーリングは暑いラスベガスからスタートしたもののグランドキャニオンでは2℃まで下がり(寒暖差25℃以上w)すごく寒かったり猛烈な強風だったり、と色々大変だったのですが、でも旅自体は凄く楽しかったのです。ただ一方でハーレーは自分には合わないな、とも思いました。そして今度はヨーロッパでBMWのR1200RTを借りて1週間ほどアルプスを中心に走りました。
この時にR1200RTを、というかBMWを気に入り、ツーリングバイクならBMWだ、BMWを買おう、と決めて数カ月後にオーダーしたのです。他メーカーはほとんど考えませんでした。アドベンチャーバイクというカテゴリーが今ほどは確立されていなかったのでライバルが少なかったというのもありますが、R1200RTでBMWのツーリング性能に惚れた、といったところです。では何故GSだったのか。一つはGSの方がRTより軽量でスポーティだったこと、もう一つはロングストロークのサスペンションが日本のワインディングに合っていると思ったからです。この時唯一悩んだのが当時UPDATEされたBMWの4気筒、K1300GTでした。
これはヨーロッパで友人が借りたK1200GTの印象がR1200RTより良かったためなのですが、しかしR1200GSを試乗するとロングストロークのシャシーの良さと思いがけないスポーティさで一気にGSになりました。
特徴をあらためて書いてみると、まずパッケージングとしてフラットツインを低く縦置きにして、チェーンではなくシャフトドライブとしていること。クランクシャフトが縦置きなのでロール方向にジャイロが発生するのですが、ドライブシャフトをクランクシャフトと逆回転で回しているので実は走っているとジャイロを感じません。停止時に空吹かしするとバイクが左右に揺れるので誤解されやすいですが、これはトルクリアクションで走行中のジャイロはまた別です。次にシャシーで特徴的なのはフラットツインで採用されている有名なテレレバーとパラレバーですね。
テレレバーは姿勢変化を抑え、サスに余計なモーメントを入れずに仕事をさせる。パラレバーはシャフトドライブのトルクリアクションによるリアの強過ぎるアンチスクワット(というか車体リフト)を抑える機構です。私は昔ヤマハのVmaxでレースをやったことがあるのですがw、Vmaxのシャフトドライブはそれはもうトルクリアクションが凄く、加速時にかなりリアがリフトした記憶がありますが、R1200GSではこういった動きは全くありません。
まとめると、
・重心が低く
・ジャイロの影響が小さく
・ピッチング変化が少なく
・シャフトドライブのトルクリアクションも少ない
・これらによってサスがとても良く動く
という特徴のバイクとなり、これらが独特のBMWフラットツインの乗り味、ツーリング性能を作っていると言えるでしょう。これらはテレレバー/パラレバーが採用された2004年以降、水冷となった現在に至るまでBMWフラットツインモデルに共通する乗り味なのです。
一方、2013年以降の水冷モデルは随分変わりました。R1200RTとR1200GSは空冷、水冷とも乗ったことになりますが、水冷に共通するのは一つはシャシー剛性の大幅な向上です。比較にならないほどしっかりしました。もう一度上の空冷のシャシーのイラストを見て頂きたいのですが、実はフレームが前と後ろで繋がってません。エンジンを中心に前後にフレームを分けています。DUCATIのパニガーレなんかもこんな感じですが、BMWの場合はとにかくフレーム自体が華奢で、剛性よりしなりを重視していたのか?という感じだったんですが・・・
水冷ではこんな感じ。
前後フレームが繋がり、しかもヘッドパイプとスイングアームピボットを直線的に繋げているんですね。もっと普通の構成になった、と言えるかもしれません。バーティカルフローとなったエンジン、クランクケースとトランスミッションケースを通常のバイクと同じように一体化、潤滑する設計。こういった点も含めて宗旨変えくらい変わっていますが、しかし大きな特徴は変わらず受け継いでいます。
水冷GSは少し前に友人のバイク(足の長いスポーツサス仕様)に乗せてもらったのですが、シャシー剛性の向上とパワーにびっくりしました。
ワインディングで乗ったのですが、めっちゃくちゃ速い。それにシャシー剛性が高いから安定していて安心して開けれます。ただ、のんびりとツーリングするバイクという雰囲気はだいぶ薄れた感がありました。バイクに急かされている感が否めません。
R1200GSを購入してから11年が経ち、その間ボクスターやCクラスを買ったためバイクの方は走行距離が伸びなくなってしまいましたが、とは言え31,000km。今まで所有してきたバイクやクルマで、これほど長い期間所有したバイクもクルマもありません。大きな理由は、結局の所これほどの万能性を持ったバイクが未だに多くないことです。しかし、GSに乗っていて特に最近感じるのが・・・
「重い」
走れば軽いハンドリングも、物理的にはやはり軽くはないわけで、特に私は背が166cmと低いこともあって(なのにソロではハイシートを使用)停まったり渋滞での取り回しが億劫なんですね。ノロノロ動く渋滞でタンデム+フルパニアとなると、もうとんでもなく疲れます。なので軽いツーリングバイクが欲しい・・・。加齢と共に重さ、大きさがハードルになってきて、ダウンサイジングしたくなってきたのですね。とは言え、軽さが重要ではあるけれどタンデム性も重要なので、排気量は750-900くらいは欲しいところ。KTMはDUKEとエンジンが同じなので除外w。
トライアンフTiger900GT
ヤマハ Tracer900GT
カワサキ Ninja1000SX
BMW F900XR
BMW S1000XR
などなど。
なかでもTracer900GTとTiger900GTは一時期結構真剣に悩みました。しかし、考えれば考えるほど今のGSが良いんですよ・・・。シャフトドライブは4000kmのツーリングでも調整要らず。テレレバーでタンデムでのブレーキングも安定、そしてサスの動きが良くストロークが長いので乗り心地も良い。パワーこそ大したことないけど、低速トルクはミドルクラスでは望めない太さで今の水冷GSと比べても劣っていない。
なので、今のGSにもう少し手を入れてこれからも乗ることにしました。改善点は、まずは死ぬほど尻が痛くなるシートw。BMWの標準のシートは、これほど良いツーリングバイクなのにどうしてってくらいシートがダメ。なのでソロ用には純正オプションのハイシートにしているわけですが、タンデムではその高さでは全く支えられないのでこれも純正オプションのローシートを使っています。ハイシートは足付きが悪い以外はハンドリングも軽快だし痛みもそれほどではないのですが、ローシートが最悪。座面を丸くエグっているので圧力分散が出来ない上、ポジションも前後にずらせない。少なくともタンデム用のシートは良いシートを買わなければ。それからブレーキ。タンデム時の制動力がもう少し欲しいので、パッドを変えようと思います。パッドだけでは多分不充分なので、タイヤも割り切ってロードのタイヤに。実際90%以上はオンロードでしか走らせていないので。これだけでブレーキングもコーナリングも良くなる気がします。
そんなわけで、巷ではすっかり見なくなってきた空冷R1200GSにこれからも乗り続けます・・・

Posted at 2020/11/16 19:26:11 | |
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BMW | 日記