夏の始まり　～梅雨明けを待ち侘びて～

　気温の上下が激しく、湿気の高低差に身体が追いつかずに絶賛疲弊中の白兎です。

　何してる？でも投稿致しましたが、今宵は非常に過ごし易い気候の長野です。
　夕飯を食しながら、不図、開け放たれた窓から夕暮れの空が広がっていました。
　沈む夕日を受け、鮮やかに輝く雲。宵の闇に侵食されていくかのように、刻一刻と変化する空。その中で色鮮やかに染まる、西の地平線。

　唐突に、写真に収めたいという感覚に支配され、急ぎ自室のカメラを取りに駆け上がりました。

　食事を摂ることすら忘れ、夢中でシャッターを切ります。



　影を作る雑草が、どこか淋しげでした。





　茜色に染まる夕焼け空。折り重なるように、少しずつ広がる夜の気配。気配は暗闇ではなく、暮れ時の陽を受けて蒼色となり、夜へ移り変わるのを待っているかのようでした。



　カメラに刻まれる一枚一枚は、言葉で言い表すには烏滸がましい程、神秘的な風景を切り取っていました。

　そして、



　世界は、より色濃く染まりながら、軈て夜の帳が下りていきました。

　気に留めなければ、当たり前のように過ぎ去ってしまう時間。
　移り行く情景。
　日々の喧騒、忙しさに流される毎日。
　この夕焼け空を目の当たりにし、その瞬間は感動すら覚えていたとしても、いづれは詰まらない日常に塗り潰され、忘却してしまう。

　そんな、喩え一枚一枚であったとしても、消えることのない「記憶」として残してくれるカメラ。
　私もすっかり、その魅力の虜となりました。

　梅雨が終わりを告げ、私が産まれた月の、本格的な夏を目前にした今。



　決して、寂れた昔の記憶とならぬように。
　現代という、どうしようもない世の中を生きる今を、詰まらないものにしない為に。

　少しでも前に進む為に、我を忘れてシャッターを切り続けました。
　束の間の時間でしたが、この記憶も、いづれは「思い出」となることを願いながら。
　また来る、希望もない明日に向けて、今日を終わりにしたいと思います。