みなさんゴキゲンよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
千里の道も、一歩から。初心者でもクルマを目一杯楽しんで、最後の最後は「ニュルブルクリンクへ走りに行こう!」というこのコラム。
今回は、
先月の話の続きで
「ヘルメットの選び方」についてお話します。
>>【コラム】そうだ、ニュルへ行こうよ!Vol.11 ~スポーツタイヤの選び方~
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みんカラスタッフ TAKASHI(以下:TAKASHI):というわけで今月は
「ヘルメット」について教えて頂きたいのですが、山田さん、一番最初にサーキットを走ったときはどうしていましたか?
山田:ヘルメット? もう30年くらい前の話ですねぇ(笑)。
ぶっちゃけ最初は、
「バイクのヘルメット」でしたよ。
「4輪専用」なんて、あることすら知らなかった。
一番最初にサーキットを走ったのは知り合いの走行会だったし、編集の仕事をするようになってからも、走るのは走行会やノンライセンスのレースだけだったから、普通にバイク用を使っていたなぁ。
TAKASHI:私もです(笑)。最初はなんでわざわざ
視野が狭くなるヘルメット被ってるんだろう? って思ってました(苦笑)
山田:4輪用ヘルメットの
開口部が狭かったり、
中身が専用構造になっているのは、もちろん
安全のためだよね。
一般的には
「4輪用のヘルメットは公式レースに出るために必要なもの」と認識されているけど、じゃあなぜ出られないのか? って考えないとね。
TAKASHI:万が一、クルマが
クラッシュして火災になったときのためですよね……?
山田:その通り! 火災のときは、なるべく肌が露出していない方がいいわけです。
だから4輪用のヘルメットは、内装が
難燃素材で作られている。火や煙が入りにくいように、間口も狭い。さらにフェイスマスク(バラクラバス)をして、念には念を入れるわけです。
※TAKASHI私物
だから運転しているときも、
バイザーを閉めている方が安全。オープンカーやフォーミュラじゃないと、結構暑いんだけどね……。
TAKASHI:2輪は転倒したら体がバイクと離れてしまうけれど、4輪は車内に閉じ込められてしまいますもんね……。
バイクのヘルメットより価格がちょっと高めになるのは、構造のせいなんですか?
山田:それもそうだし、あとは絶対的な販売数も少ないからそれは仕方の無いことなんだ。公式レースで使うレーシングスーツやグローブ、そしてシューズの価格が高いのも同じ理由だよ。
※TAKASHI私物
TAKASHI:装備を揃えるのもサーキットデビューのハードルの1つですよね……でもやっぱり普段のサーキット走行でも、自分の身を守りたいなら公式レースに出られるクオリティのものを選んだ方が良いですか?
山田:できればその方が、私は良いと思う。ただサーキット側やイベント主催社側が義務化していなければ、あとは自己判断だよね。
レースは、他のクルマと競い合うことが前提でしょ? 必然的にクラッシュの可能性も増えるから、安全装備が義務化される。
走行会とかスポーツ走行で他車と競り合っちゃいけないとされているのは、そのリスクを減らすためなんだ。
純粋に走りを愉しみたかったりタイムを出したいなら、競り合う必要もないしね。
TAKASHI:なるほど~。ついついタイムが近いクルマ追いかけちゃったり、抜かれて悔しいから抜き返したり熱くなりがちですけど、それダメなわけですね(苦笑)
山田:それがしたくなったら、レースに出よう(笑)
TAKASHI:ところで自分もプロドライバーみたいに
ヘルメットのカラーリングをしてみたいんですけど、やっぱり塗ると気持ちが変わりますか?
山田:カラーリング? やっぱり変わるよね! 初めて塗ったときは、すごく嬉しかった。気合いも入った。
TAKASHI:キッカケはなんだったんですか?
山田:2000年に、突如フォルクスワーゲンの「GTIカップ」に出ることになったから。それで思い切ってカラーリングしてもらったんだ。初めて
“むきタマゴ”じゃなくなったときは、感動したなぁ。
TAKASHI:むきタマゴ……?
山田:
真っ白なヘルメットのことね(笑)
レースってさ、基本ライバルと競い合うものじゃない? だから
カッコ付けることも、ひとつのハッタリだった(笑)。フレッシュマンレースなのにさ、
「なんかあいつ、ヘルメットカラーリングしてるぞ!」みたいなのはあった(笑)
TAKASHI:へー!
山田:でも……。
TAKASHI:でも?
山田:最近は年を取ったのか、
「むきタマゴいーじゃん!」って思うようになってきた。むしろその方が、カッコよくない? だからデザイン自体も、年々シンプルになってる。
TAKASHI:なるほどー。でも私はまだむきタマゴなので、角田選手のようにカッコイイ柄にしたいです(笑)。
写真:Red Bull Content Pool
山田:ヘルメット塗らなくてもね、バイザーのカラーを変えたりバイザーステッカーを貼るだけで、かなり雰囲気変わるよね!
あとはワンポイントで何かデザインひとつ入れるくらいの方が、今の時代には合っているような気もするんだよね。きっとペイント代も安くなるし。
TAKASHI:最近はカッティングシートでデザインする方法もあるみたいですしね。
※TAKASHIのむきタマゴ
山田:話を戻すとさ、あと4輪用のヘルメットを手に入れるメリットがあるとしたら、
「HANS」を付けられることだよね。
TAKASHI:
「ヘッド・アンド・ネック・サポート」ですね!(ドヤッ)
でも、それこそプロドライバーでもないのにHANSなんて準備する必要あるんですかね?
※HANS:
クラッシュ時の衝撃で首が伸びるのを防ぎ、脊椎損傷のリスクから体を守るデバイス。本体をハーネスの肩ベルトで固定し、テザーとヘルメットを連結することで、一定以上首が伸びないようにする仕組みとなっている。
首につけている黒いデバイスがHANS。ヘルメット側のボルトとテザーで連結する。
写真:Red Bull Content Pool
山田:TAKASHI君持ってるじゃん…。
TAKASHI:てへへ。これ、
ビギナーのためのコラムですから(笑)
山田:というかむしろ逆だよ。プロは義務化されているけど、
アマチュアにこそHANSは付けて欲しいアイテム。
TAKASHI:ほぉ! では次号は、HANSについて教えてください!
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山田弘樹(やまだ こうき)モータージャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。
こうした経験を活かし、現在はモータージャーナリストとして執筆活動中。愛車は86年式のAE86(通称ハチロク)と、95年式の911カレラ(Type993)。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。