
【事実は小説よりも奇なり】
花丸 「これは」
花丸 「世の中の実際の出来事は」
花丸 「虚構である小説よりも不思議である」
花丸 「といった言葉ずら」
花丸 「そこで!」
花丸 「マルと♪」
善子 「ヨハネの!」
花丸・善子 「ミッドナイトミステリー☆」
(オープニングテーマ曲 ※PC閲覧推奨)
花丸 「このコーナーは」
花丸 「眠れず夜更かししているあなたに」
花丸 「ちょっと不思議な体験話をお届けするずら」
善子 「それは闇に潜む異形の物の仕業か」
善子 「それとも夢物語か」
花丸 「それはお聞きになられた皆さまが判断してほしいずら」
花丸 「それでは早速」
花丸 「善子ちゃん♪」
善子 「ヨ・ハ・ネっ!」
善子 「大体こういう時こそヨハネじゃなかったらどこでヨハネになるのよ!」
花丸 「お便りが来てるずら」
花丸 「ミステリーネーム」
花丸 「ほのチカ大好きさんより」
善子 「それ絶対mac-eさんでしょ!?」
善子 「大体お便り来てるっていつ募集してたのよ!」
善子 「ゴホン!」
善子 「それでは気を取り直して」
善子 「リトルデーモンの皆さん」
善子 「ここにあるひとつの夜話をご紹介します」
【餃子1人前80円のミステリー】
これは・・・
僕がまだ高校3年のある春の事でした。
同じ高校出身でひとつ上の仲の良い先輩がいてその先輩が卒業した後もよく遊んでいたんです。
その頃、僕はまだクルマの免許を取得していなかったのでバイクに乗っていたのですが、
先輩は一足先にクルマの免許を取得していたのでよくクルマで迎えに来てくれては
夜の街を一緒にドライブをしたものです。
お互いおしゃべりが大好きで朝方まで話し込んでいたことは珍しくないくらいです。
まるでガチンコ勝負のように話し込み、どちらかの喉が枯れそうになったら
「もう帰ろうか?」
というカンジで解散するというものが続いていました。
ある日、いつものように、ドライブをしながら内容の薄い、それでいて他人の入り込む余地のない深い話に花を咲かせていました。
それは春の夜風が気持ち良い深夜のことでした。
夜も深まり僕達の乗るクルマは延々と走り続ける中、先輩が話の途中で急に
「なんだか腹減ってきたよな?」
「何か食べに行かないか?」
と切り出してきたのです。
そういえば、ずーっと話をしていて喉も渇いたし、お腹も空いてきたなっと思ってたので、
僕は「じゃあ、どこかへ食べに行きましょう」
と提案すると先輩はあてもなくクルマを走らせる。
しかし、というかやはりというか深夜も結構いい時間になっていたので、営業しているお店もなくまた街中から少し離れた郊外だったこともありそれらしいお店はなかなか見当たらなかった。
外を見ると真っ暗で人気も少ない、窓越しに車内のメーターやインパネからこぼれる光が僕の顔を映し出している。
クルマはひたすら走りやがて県境の峠、中腹辺りくらいに来たところでしょうか
対抗側からこちらへクルマが一台向かってくる。
あまりにも周りが暗すぎるのでそのライトがヤケに眩しく思えた。
やがて対向車が過ぎ去ると遠くで闇にポツンと浮かぶ灯りがみえた。
それが何かわかるまでに時間はかからなかった。
お店だ!
と思ったと同時に先輩が
「おっ?」
「店らしきものがあるぞ!!」
「行ってみようぜ」
と心を躍らせながらその灯りの正体に近付くとどうやらそれはラーメン屋さんのようだった。
砂利の敷かれたガレージとも言わないスペースにクルマを停めると早速お店に入ろうとする。
お店の前には看板が出ており、そこには「餃子一人前80円」と書いてあった・・・
「餃子一人前とは随分と安いですねぇ」
と言うと先輩は
「コレは期待できそうだな」
とお腹も空いていたこともあり僕たちはウキウキしながら店に入った。
お店自体はそんなに大きくはなく、ちょっと昔のラーメン屋さんといったカンジで蛍光灯の白い灯りの下、赤いテーブルカウンターがあり、窓際にはこれまた赤い4座のテーブルが並んでいた。
その席にはさっきまでお客さんがいたのだろうか?
空のラーメンの器が置いてあるままだった。
さっきすれ違ったクルマがここに座っていたお客さんだったのだろうか?
そんなことを思いながら店を見渡しながら
さっきから気にあることがあった。
それは店内に入ってから不思議に思っていたことで、今さっきまで人がいた雰囲気はあるものの誰もいない無人と思わせる光景が広がっていたことだ。
時間が時間だけにお客さんがいないのは納得できるが
店主まで見当たらないとはどいういうことだろうか?
とりあえず先輩と僕は白い蛍光灯に照らされひと際白く見える湯気の浮かぶ前のカウンターに座る。
すると、深い湯気の中からしわがれた声で
「いらっしゃい」
という渋い声が聞こえる。
声の主はまるで湯気の中からでも出てきたかのようだった。
どうやら店主一人で切り盛りしている様子らしい。
店主がいることに安心すると僕達は早速メニューを拝見する。
メニューは一般的なラーメン屋さんと変わらないが唯一気になったのが
やはり餃子1人前80円だった。
この空腹を早くも満たしたいと思う僕たちはラーメン1人前とそして迷わず餃子1人前を注文した。
注文後も先輩と僕のくだらない世間話は止まらない。
ノンストップで話し続ける僕達の会話を打ち切ったのは注文した餃子だった!
「ハイ、お待ち!」
としわがれた、それでいて威勢のいい声で店主のオヤジが目の前に置いた餃子は小皿に
2貫、否、2個!!
僕達はそれを見るなり絶句した。
先輩の顔を横目でチラッと見ると餃子に釘付けになっている目が真剣なのに対し
口尻が上がっていたことを見逃さなかった。
僕も、驚きながらひょっとしたら先輩のように半笑いだったかもしれない。
確かに1人前という言葉に偽りはなく、1人前の定義があるわけでもないので文句は言えなかった。
1こ辺り40円くらいとなると他店と比べてそれほど安くもないが小皿を洗う手間を考えたら
かえって面倒なのでは?
不思議な気持ちで食べるそれは特別おいしいものではなくごく一般的な味で
「一人前80円」
の看板の驚愕さ以外は特筆すべきものではなかった。
「それにしても、おもしろい店もあるものだな」
と先輩と笑いながらお店を後にするといつものように朝方までドライブを楽しみ家に送ってもらった。
餃子の数が少なかった意外は特別な思い入れもなかったので、しばらく気にもしてなかった。
それから数年経ち僕もクルマの免許を取得しドライブ三昧だったある日
ラーメン好きの人と仲良くなった。
ひょんなことから思い出した
「一人前80円の餃子」
の話をしたらこれが結構ウケた。
これはネタになるかもしれないと思った僕はあの日の記憶をたどり一人クルマを走らせた。
しかし、当時自分がハンドルを握っていたわけでもなく、また話に夢中になっていたこともあったせいか似たような場所はあるもののお店の場所がいっこうに判らない。
更地になっている土地をみると、ここだったような気もするし、また新築らしき家が建っているのを見ると、ここだったような気もするといった具合に場所が定まらない。
似たような場所はあってもそれはあそこではない!
「不思議だ・・・」
あれから数年も経っているからな~
そう思いながらひたすら走り続け探したのだが結局お店は見つからず。
「ひょっとしたら、2chとかで話題になっているかも?」
という期待に胸を膨らませその日は家に帰ることにした。
当時はネットも今のように盛んではなかったので
今頃になって僕のような人が食レポでも書いて話題になっているかも?
と思ったのですが、ネットで検索してもまったく引っかからない・・・
小皿に餃子が2貫、否、2個だぜ?
おかしいな・・・
あの日、あの時、春の夜風が気持ちいい深夜のあの場所で
もしかすると、先輩と僕は時空の狭間、ミステリーゾーンに誘い込まれたのかもしれません。
そんな不思議な体験をしたことがあります・・・
フッ!