その1・
その2の記事をご覧になっていない方はご覧になってからの方が内容が解り易いと思います
さあ、泣いても笑っても残り10分を切りました。
10分後にはワールドチャンピオンも決まります。
レース開始から4時間半経過時に最後の途中結果が発表されましたが正確な順位は今やわかりません。前後のポジションのマシンに抜かれた気もするし、抜いた気もします。
一方、マクラーレンチームは相変わらずの勢いで走り続けています。
しかしマクラーレンチームがたとえ何位でフィニッシュしようと、自分たちにできるのは少しでも多くの周回を重ね、1台でも上のポジションでチェッカーを受けるだけです。
長男の最後のアタック、レッドブル(黄色の4輪車)との攻防です!
長男の最後のアタックの後、ステアリングは自分の手に託されました。
シューマッハを想う父親に対し、子供たちの粋な計らい(後で聞くと3人で相談までしたそうです)で、最後、チェッカーを自分に受けさせてくれるとのこと、子供たちの心意気を無駄にしないためにも、恥じない結果を目指します!
長男が残り時間に合わせてピットに滑り込んできます。
「頑張ってよ!」
いつになく重く聞こえます!
「任せろ!」
父親として精一杯、見栄を切ります。
おそらく時間的に体力の落ち込みを考えると3周がギリギリ、しかし泣いても笑っても数分間、持てる限りで走ります。
ピットアウトから
KERSを使いまくって、プッシュします。どのマシンを抜けばいいのかも分からず、ひたすら前を目指します。主催者側からの残り時間が放送される中、タイミングボード上のラップタイムを確認し残りの周回を計算します。
「このままいけば、1週多く回れる、行けるぞ」
「そう思える力を与えてくれたのはララアかもしれんのだ、ありがたく思うのだな」
いや、今日はこのネタにはいきません!
ひたすら漕ぎ続け、ピットからは子供達の自分を応援する声が…
「き、聞こえるよララァ、聞こえるよみんなが」
いや、このネタにも行きません!
子供たちの声援を受けながら、ホームストレートをKERS全開で通過します。
ラストアタック3周の予定が既に4周目に突入!足だけでなく、KERSも使い切って、ふくらはぎも完全にツッています!
第3コーナー通過辺りで残り1分前のアナウンス、ミスなく渾身のアタックをすればもう一度コントロールラインを通過できるかも!?
タイヤと膝が悲鳴を上げながら最終コーナー、残り10秒!コントロールライン越えられるか!?まだチェッカーは振られません!
自分
「うおぉぉぉぉぉ!!!!!」
子供達
「いけー!!!!」
子供達
「がんばれー!!!」
自分
「んがぁぁぁぁ!!!!!」
コントロールライン残り数秒で通過!もう一周カウントされます!!
まもなく終了の合図が…
ファイナルラップです。
残りのすべての力を搾り出し、最終コーナーを周り…
「ゴォォォォォォォォォル!!!!」
勝利者かはわかりませんが、ウェービングでチェッカーを受けました!
何戦も今まで出場してきましたが、今までは子供たちに感動を味わいさせたく、自分でチェッカーを受けたことはありませんでした。
今回、子供たちの計らいで、初めて自分で受けたチェッカー、それもシューマッハの引退とたったの1週間ずれで、ほぼ同時期に受けることができ、感無量です。
公式のモータースポーツに参戦経験のない自分にとっては、人生初のチェッカーでもあります。
フィニッシュラインを通過し、子供たちの待つピットウォール付近へ…皆、最高の笑顔で迎えてくれ、心の中は感動の涙で溢れておりました。
そして、空からは雪が…自分には祝福のフラワーにも見えました!
そしてマシンをピットに戻します。
今シーズンを戦ったマシン、自身で設計から制作・セッティングもし、当初次男も乗れるように(理解力不足で参戦不可でしたが)と今では無用の工夫・調整機構まで装備して使わずじまいでしたが、大きな故障もなく、よく頑張ってくれました。
そして、まもなく表彰式…
どのような結果が出ようとも受け入れなければなりません。
総合順位で、ミハエルの最終戦記録7位を上回れているか、そして年間ワールドチャンピオンは誰の手に…
F-PONクラスの表彰式で、今回の総合順位の記録がもらえます。
緊張しながら確認すると…
総合7位、F-PONクラス2位です!
ミハエルの引退時と同じリザルトです!
逆に6位よりうれしいかもしれません!いや、嬉しいです。
ミハエルと同じ星回りを歩めたような気がして、この上ない結果です!
おそらく、チームの誰かが少しでも手を抜いていたら、この結果は得られなかったと思います。皆で勝ち取った、一番望むべきリザルト、最高です!
そして、もうひとつの結果、チャンピオンシップです。
表彰式の最後、主催者側から、公式に発表がありました。
「2012 3輪WGP F-PONクラスのワールドチャンピオンは、何と1ポイント差です!」
「ゴクリ…」
緊張が高まります!
総合優勝は・・・
「メリエ倶楽部(マクラーレンチーム)!」
逃しました…
1週間前、2012F1ブラジルGP最終戦で、握りかけたワールドチャンピオンがその手から滑り落ちたアロンソのあの時の表情…
もしかしたら、程度は違えど自分も同じような顔をしていたかもしれません。
その差1ポイント…
何か一つ歯車が変わっていれば、手元に転がり込んでいたのかもしれません。
しかし、そのタラレバを味方につけられなかったのは、やはりチャンピオンの資質に欠けていたということです。
でも、とても満足です。
もちろん、F-PONクラス創設から7度にわたり唯一全戦出場しているチームとして、そしてミハエルのメルセデスでの復帰から同じカラーリングのマシンでともに歩んだチームとして、このチャンスを逃したくない、結果を残したいと強く願いましたが、出せるアイデアをすべて出してマシンを作り、子供達と強い絆で辛さを克服し、掴み取った結果です。
どのような結果であろうと満足しない訳はありません。
昔、弱小だったミナルディF1のチーム監督が言っていました。
「俺たちはレースを楽しんでいるんだ」
と…
その言葉の意味が、わかった気がします。
また、ミハエルが復帰後、結果を残せず藻掻いていて、それでも得ようとしたもの、それは記録ではなく、自身だけが解る何かをつかみたかったのかもしれません。
今回、自分は、子供たちの計らいや成長、苦しみ頑張る姿を見てそれを掴むことができた気がします。
以前ブログでご紹介した
”7777”の奇跡。
これは、今回参加した4人が皆で得た7位のことだったのかも知れませんね。
帰宅後翌日、最後にマシンにトロフィーとヘルメットとKERS用手袋で”パチリ”…
今回このブログを通じて応援くださった皆様方、本当にありがとうございました!
また、大会関係者の方々、レース参加された皆様方、いろいろとお世話になりました。
こうしてご報告することで、少しでも何かのお役に立てればと思い、今回のご報告を締めさせていただきたく思います。
最後に一言…ミハエル引退時のヘルメットに入っていた言葉です。
”Life is about passions. Thank you for sharing mine. ”
”人生とは情熱そのものだ。僕の情熱を共有してくれてありがとう”
