
このレポートには実名を記さない事を許してほしい。
そこでは、ある大企業を装った謎のプロジェクトが進められている。
手付かずの深く美しい渓谷をコンクリートで固め、巨大な貯水場を多数造って秘密の実験が行われている。
険しい山中にはトラックも通れるトンネルが縦横にめぐらされ、付帯する換気装置は樹林に隠され、排水路は滝を装って岩盤部に排出されているとか。
政界には莫大な金が流れ、地元には土木仕事という形で甘い味噌汁が配られる。
もともと住民のいない場所だから、一部の森を生業とする人や地権者さえ押さえてしまえば、あとは煩い環境団体や物好きな深山愛好家を締め出せば、長期に渡って機密を保持する事が可能なのだ。
しかし警戒が厳重過ぎるとライバル企業の注意を引く可能性もあるので、一時的な目くらましに観光遊歩道を近くに開設する事にした。
それに伴って道路の拡張をしてしまえば、研究の為の大型資材を運ぶ事も容易になる。
開発しても観光客を受け入れる必要は無く、大雨や大雪で崩れて危険と発表すれば、長期のカモフラージュが可能である。
以下は、地球の平和を願うNPO法人KYより託された某調査員による。
休日の早朝は警戒が緩い。
閉ざされたゲートをよじ登り、普通の舗装林道に見せかけた通路を進む。
途中の針葉樹と広葉樹を混ぜた険しい渓谷は美しく、調査の目的を忘れそうになる。
紅葉も少し始まっていて、半月ほどで見頃になるのだろうか。
後ろから排気音。山作業に見せかけた監視の軽トラにびっくりするが、姿勢を低くしてやり過ごす。
途中、新しい施設なのか山腹への林道も開設中だ。
また議会対策で予算正当化の為か、何も知らされていない民間業者が落石防止の工事をさせられているようだ。
やがてV字谷の岩場に、ひょっこり上から石を載せた石門が現れる。
昔の調査員達は深い淵を泳いでここをくぐったそうだが、今回は奴らが観光用とうたって作った500mの真っ暗なトンネルを使う。
入り口の監視所に人影が無い事を確認し、懐中電灯を2本点けてダッシュ。
け、けっしてこわいんじゃないからなっ。
トンネルから先、企業からの怪しい資金提供と地方自治体の出血で作られた遊歩道は中々しっかりしている。
しかし維持する気はさらさらないのか、日当たりのよい湿った所はくっつき草やトゲのある小木が調査のやる気をそぐ。
もしかして、このトゲは侵入者への嫌がらせなのだろうか?
ここは時折ナタを持った警備員が通るそうだが、道に被さるような邪魔な小枝が払われないないのは意図があるのかもしれない・・・しかし、ここは綺麗だ。源流はまだ先なのだろうが、清流の雰囲気につい目的を忘れ、鶏五目でお昼にしてしまいそうだ。
ほとんど使われる事も無く、危険な場所のシンボルとしてそれっぽく壊されたと思われる吊り橋を過ぎれば、情報にあった漢らしい滝に到着。
滝前は聞いてた通りもの凄い飛沫で、これも撮影防止の策なのかもしれない。
滝の後には、おそらく大型の射出装置が隠されていて・・・
レポートは、何らかの理由でここで中断されています
以上はフィクションであり、実在の人や企業と宿主は何ら実益の関係はありませんので実名の詮索は禁止です
Posted at 2011/10/03 18:48:09 | |
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涼しげな話 | 日記