
義父は幼少時期に小児麻痺の怪我をしてしまい、片足が成長しない重度の障害になってしまいました。障害者等級では一番重い1級です。
現在68才になりますが、若い頃は松葉杖で階段の上り降りも平気で出来ました。
でも高齢になった今ではちょっとした段差があるだけで両手の力が衰えているので、松葉杖が段差の高さを乗り越えられず躓いて転んでしまうこともしばしば起こるようになり、出掛ける際はほとんど車椅子を使って移動しています。
そんな義父の“足代わり”になっているのがクルマです。
写真のカローラフィールダーは、8年前に私がディーラー巡りをして試乗をして足が不自由で手の握力が弱いのでいろんな操作機能ができるか確認して選んだクルマです。
義父は昭和46年に障害者用の運転補助装置が付いたクルマで当時あった軽自動車免許を取りました。
なぜ、軽自動車の免許かというと、当時は障害者用の運転補助装置でA/Tのクルマといえばホンダのライフしか発売していませんでした。
A/Tも珍しい時代でしかも運転補助装置付はホンダしかなかったと言っていました。
運転補助装置とはどういう装置なのかというと・・・
これは現行FITの例ですが、まず両足が使えないのでアクセル&ブレーキはステアリング左側にあるレバーを手前に引くとアクセル、押すとブレーキ操作ができます。
また、レバーの握り口にはウインカースイッチ、クラクションボタンが備わり、ハンドル操作はステアリングに付いている丸い奴で左右に回して操作します。
よくトラックのハンドルにも付いていますね・・・
私も義父のクルマを運転する時は、この片手でクルクルと回すだけでハンドル操作できるのは街中走行では便利です。
A/Tセレクトレバーとサイドブレーキは通常の操作で行います。
前置きが長くなりましたが、8年前にそれまで乗っていた平成4年式のサニーを12年乗って、エアコンが壊れてしまいました。
日産のディーラーに私が持ち込み、修理費用にどのくらい掛かるか見積りを出してもらいに行きましたが・・・
『もうこの型のサニーのエアコンはユニットがないので交換できないんです』と悲しい返答が。
車検まで1年残っていましたが、夏にエアコンがないと乗れないし中古車に買い替えようということになり、車椅子を載せられるワゴン車がいいということで、私の行きつけのディーラーの中古車販売のオートテラスに出向き、探して見つけたのは7年落ちのオルティアでした。
試乗して特に走る機能に支障はなく、後日義父を連れて商談に行きました。
外観は経年の落ちない汚れやキズがありましたが、中古車であるので仕方ないので義父も契約書にサインしました。
ところが運転補助装置がサニーを買った時は市から支援金が20万円支給されていたのが半額の10万円に減額されていて、運転補助装置の価格20万円の半分しか補助されないことがわかり、『だったら新車を買ったほうがいいなぁ・・・』と展開が変わりました。
既にオルティアの契約が済んでおり、車検なしだったので車検整備の作業にも入ってしまったときでした。本来ならばキャンセル料金8万円を支払わなければならないのですが、長年の付き合いの営業マンは『なんとかします』と有り難いお言葉をいただきました。
そして、当時のFIT(GD)のAタイプで商談をすすめていました。
ワゴン車が希望でしたが、普段は乗車するのは運転する義父と義母の2人だけ。
FITのULTRAシートアレンジを営業マンから説明されて、『小さいクルマなのに凄い積めるね~』と驚いて、FITにターゲットを絞って商談が開始しました。
しかし、義父にはもうひとつクルマを選ぶ際の条件があったのです。
A/Tのセレクトレバーです。
左手が肩より上がらない義父にはインパネシフトは位置が高いので絶対に駄目。
なのでフロアシフト形式であること。
もうひとつは左右に動かすシフトゲージ式も慣れていないのでストレートでシフトできるタイプであることと、セレクトレバーが昔ながらのT字状でないと握力が弱いので握ることができません・・・
FITはT字状のセレクトレバー以外はすべて義父の条件を満たしています。
あのガングリップ形状のセレクトレバーを他車のT字状に交換できることが確認できて、よし!これで契約できるぞ!!とディーラーを後にしました。
ところが帰宅してから営業マンから電話が・・・
『申し訳ありません。FIT(GD)には運転補助装置が付けられないことがわかりました。その代わりにモビリオ・スパイクがマイナーチェンジ前でメーカーから対策金が出るので、こちらならば運転補助装置も付けられるのでいかがでしょうか』という内容でした。
翌日、ディーラーに行って義父にモビリオ・スパイクに座ってもらい問題のA/Tのセレクトレバーを握って操作してもらいました。
結果はT字状のセレクトレバーでしたが、インパネシフトだったために握力が入らず駄目でした。
もうこれでホンダ車の購入は断念せざるを得ませんでした。
となると、当時1500ccクラスの予算でステーションワゴンといえば、N社のウ〇〇〇ロー〇、トヨタのカローラフィールダーの2車しかありませんでした。
まずはN社のディーラーに直ぐに買う意思を伝え、ウ〇〇〇ロー〇を私が試乗。
走りは悪くない印象でしたが、ドアミラーが三角状で小さく後方確認しづらいなあと思いました。
また、A/Tのセレクトレバーがガングリップタイプで『これをT字状のグリップに変えられませんか?』と尋ねると『サービスに相談してみて、あとでお電話します』と聞き、見積りを出してもらうとN社は2.9%の低金利ローンでかなり月々の支払いが安く済みそうでした。
これで、ガングリップのセレクトレバーがT字状に交換できれば決まりかなぁと思いながら、カローラフィールダーのトヨタカローラ店に向かいました。
展示してあったカローラフィールダーは特別仕様車のX-Limitedが発売されていて、室内も広くA/Tは昔ながらのT字状でフロアシフトのストレートゲージで義父の条件を満たしていました。
私的にはカローラフィールダーのほうがクルマの出来が上だと思いました。
早速、見積りを出してもらうとN社の2.9%金利ローンより高い5%ローン・・・
値引き金額も特別仕様車なので渋い。
総支払い金額と金利を含めた月々の支払いは約5000円の差がありました。
金額ではウ〇〇〇ロー〇、クルマの出来ではカローラフィールダー。
どちらを選ぶかは義父です。
そしてN社からA/TセレクトレバーをT字状にできるかの連絡がなかなか来ないので、こちらから電話を入れたら・・・
『あの~本気で買うつもりなのですか?』と信じられない言葉が・・・
電話をした私はカチンと来て『当たり前でしょ!買う前提で見積りを出してと言ったでしょ!!』と話しているのを助手席で聞いていた義父も頭にきたようで義母に『N社は買わない(怒』と逆にこちらから怒りながら商談を破談にしました。
モヤモヤしながら義父の家に帰宅するとカローラ店の営業マンが来訪していました。
どうか決めてほしいと訪れたようです。
最終的に値引き・金利ローンは低くなりませんでしたが、サービスで納車時のガソリン満タンとドアモールを無料で付けてもらい契約しました。
中古のワゴンを買おうと言い出されてから契約まで僅か1週間の短期戦でとても疲れました。
上記したように義父は昔ながらのT字状のグリップのフロアシフトのストレートゲージのA/T車でないと買い替えはできません。
カローラフィールダーに乗り換えてから8年。
今ではカローラフィールダーにもこの形状のA/Tはありません。
シフトゲージにどんどん変わってしまっていますが、昔ながらのA/Tじゃないと運転できない人がいるので、なんとかなりませんかねぇ・・・
まあ、義父はもうクルマは歳も歳だしもう買わないと言っていますが、こういった運転するのにハンディを背負った人が少なからず居るはずです。
現行FITはフロアシフトのストレートタイプですが、来年のFMCでは多分N-ONEのようにインパネシフトに変わってしまうかもしれませんネ。
長々と書きましたが、体に障害を持っている人はクルマがホントに“足代わり”になっています。
自動車メーカーもこういった人たちのことも考慮してオプション扱いでも構いませんから、体のハンディに見合った設定が選べるようにしてほしいです。