
先ず最初に、ホンダバッシングのブログではありません(苦笑)。
ボクは20代の後半にVTECエンジンに出会い、以来ずっとVTECを積んだクルマに乗り続けています。H22A、B18C 96specR、C30A。DOHC-VTEC、スポーツVTEC、色々と云われますが、これらの3基はいわば第一世代。もっとも初期のVTECエンジンであり、自然吸気エンジンでリッター100psを初めて可能にしたB16Aの流れを汲むユニットです。
当時7000rpm回ればスポーツユニットと称された時代に8000rpmオーバーを可能とし、クラス最強どころか1クラス上のエンジンと互角に渡り合ったこれらのパフォーマンス面については今更、説明の必要はありませんが、ボクがここで敢えて紹介したいのは以下の点です。
B18C 96specR 16.98km/l
C30A 15.05km/l
どちらもボクが記録した燃費です。一般道、高速道路を300km前後走行し満タン法で得た数字ですので、例えば峠の下りなどの燃費に良好な限定条件で達成した数字ではありません。更に付け加えると、C30Aを積むボクのNSXは
後期型の6速ミッションに換装してありますが、
OS技研の4.4ファイナルを組んであります。ノーマルより10%、最終減速比を落としているので、当然燃費には悪化要因です。タイヤはインテRがNEOVA AD07、NSXがAD08。省燃費タイヤとは対極にあるハイグリップラジアルです。
確かに燃費には気をつけて運転したのは事実ですが、旅行の道中、地方道を当然周囲の流れに合わせてトコトコ走った結果です。これらのVTECエンジンは、回せば8000rpmでリッター当り100psのパフォーマンスを発揮する一方で、回転数を極力抑えて大人しい運転を心掛ければ、現代の最新のエコカーと遜色無い燃費性能を叩き出してしまえる、大変高効率なパワーユニットなんです。
アクセラSKYACTIVは最新の高効率ガソリンエンジンですが、インテRのこの最高燃費を上回ったのは42回の給油を行って
たった1回だけ。生涯平均燃費では1.7km/l程上回ってはいるものの、全く満足できない理由がここにあります。17年前のスポーツエンジンが17km/lを叩きだせるんだから、20km/lくらいはいってもらわないと、、、というワケです。
ホンダのVTECユニットよりハイパワーなエンジンはありました。燃費の良いエンジンもありました。しかしパワーと燃費をこれだけハイレベルで両立したエンジンをボクは知りません。
ブログタイトルにある「VTECエンジンの功罪」というのが真にこのパフォーマンスのことです。
こんなパワーユニットを知ってしまったら、生半可なエンジンのクルマには全く興味が湧きません(苦笑)。
パワーがあるけど燃費が悪い。燃費が良いけどパワーが無い。どっちに振れてもダメになってしまいました。大体、他社のスポーツエンジンでVTECに対抗出来たのはほとんどが過給機付き。それらのトルクは強力でしたが、どれも燃費はダメダメでした。リッター5~6km/lくらいしか走らないと聞いただけで”ムリ!”です。燃費も同様で、カタログ燃費はともかく、実用燃費でリッター1~2km/lのアドバンテージのために、わざわざお金を払ってアンダーパワーなクルマに買い替えるのか?というのも”無理!”。
流石に紹介した最高燃費記録は両車とも1回きりですが、ペースを抑えて燃費走行をすればNSXは13km/l以上、インテRは15km/l以上はいつでも出せました。その効果はズバリ航続距離。NSXが800km弱、インテRが750km以上、両車共に足が長くて旅行好きの我が夫婦には大変頼もしいクルマでした。
「次はハイブリッドか?」とホンダのインサイトを検討したのも、所有しているガソリンエンジンを上回る魅力を持ったクルマ、ではなく、そもそもそんなエンジンが存在しなかった、これが原因でした。
さて、VTECエンジンがボクに為した罪はこういうことですが、実はボク以外にも被害を被った方々が居るという話。これは雑誌で読んだものですが。
1989年にインテグラに初塔載されて以降、ホンダエンジンの基幹技術となって現在に至るVTECですが、性能的にも技術的にもこれを脅かすエンジンはなかなか他社から出てきませんでした。レシプロエンジンのバルブトレーンとしてVTECを上回る画期的な機構としては、2001年にBMWが発表したValvetronicが挙げられますが、第1世代は燃費性能に傾倒しておりパフォーマンス面ではVTECを脅かす存在ではありませんでした。理屈の上ではバルブタイミングとリフト量を2段階しか変えられないVTECに対し、無段階に可変可能なValvetronicの方がポテンシャルが高いと考えたいところですが、現実は必ずしも理論通りにはならない。ホンダもVTECにバルブ位相可変機構を追加したi-VTECに進化させており、ValvetronicやトヨタのVALVEMATIC、日産のVVELなどの優位性はさほど大きくないようにも見えました。以上のように、他社はなかなかVTECを一気に時代遅れにするような画期的なエンジンを生み出せずにいたと考えられるのです。
ところが、、、
実はここに落とし穴があったというのです。他社がなかなかVTECを超えられなかった、とボクは書きましたが、実はもう一社、VTECを超えるエンジンを生み出せずに苦闘していたメーカーがあった。
当のホンダ自身です。
以下はMotor Fan illustrated vol.62「バルブトレーン マニアックス」P72に記載されたDr.Hatamura氏のコメントです。そのまま引用します。
「現在のVTECの原型は、1983年に二輪用エンジンを、2弁⇔4弁に切り替える機構として実用化されたREVと呼ぶ機構だ。信頼性要件が厳しい4輪には無理だろうと多くの動弁機構専門家の予想を裏切り、1989年に高出力の吸排気VTECとして実用化された後、片弁停止によるスワール生成VTEC、3ステージVTEC、気筒休止(可変排気量、ハイブリッド)VTEC、ミラーサイクルi-VTECなどに発展している。現在はホンダの4輪車のほとんどがVTECを装着しており、世界的にも大ヒット技術のひとつである。
ひとつの技術が大成功をおさめると、その後の技術進歩を阻害することが多いが、連続可変リフト機構の導入遅れ(i-VTECの採用)、過給ダウンサイジングの導入遅れ(可変排気量の採用)、クラッチなしハイブリッドの採用(気筒休止の採用)などを考えると、VTECもその例に陥っているように見えるのが残念だ。」
コメントしているハタムラ氏はどうも元マツダのエンジン屋らしいのだが、そのコメント内容が個人的にはあまり(いや、とっても)好きくないのですが、このコメントには思わず「う~む」と唸ってしまいました。
以前、ブログで紹介しているのですが、確かにホンダはBMWに遅れること5年、
連続可変バルブリフト機構を持った進化型VTECを発表しながら、実際に市販することなくお蔵入りさせています。更に遡ってスポーツVTEC以外の様々なVTECエンジンを生み出しましたが、燃費性能は確かに優秀ではあっても、他社のエンジンが霞んで見えるほど圧倒的な差があったか?と言えば、残念ながら否でした。せいぜい頭半分リード、程度。更に、ホンダが開発したVTEC以外のエンジンとして、初代フィットと同時にデビューしたi-DSI(intelligent-Dual & Sequential Ignition)というのがありますが、2バルブ、2プラグで低速トルクと燃費に優れる素晴らしいエンジンではありますが、過給ダウンサイジングが台頭してきた現在に於いては「燃費以外に良いところが無い」とホンダ自身が認めざるを得ない代物となってしまっています。
これは一体、どういうことなのか?
i-DSIが象徴的だと思うのですが、初代VTECは1.6Lで160psを発生したハイパワーユニットで、実はこれは現在で言う「ダウンサイジングエンジンのルーツ」なのです。160psといえば当事の2L自然吸気エンジンの高性能版に匹敵しました。これを1.6Lで可能とする一方、常用回転域では当然、1.6L相当の燃料しか消費しません。つまりパワーと燃費をハイレベルで両立する手段としてのVTECであったのです。現代のダウンサイジング過給エンジンも基本的な考え方は全く同じ。過給機で十分なパワーとトルクを得つつ、小型化したエンジンが低負荷時には燃料消費を抑えます。パワーと燃費をハイレベルで両立する手段です。方法論こそ違え、VTECでホンダが実現したこととなんら違いはありません。
ところが当のホンダは、自らが生み出したVTECを超えようと開発したi-DSIエンジンで、省燃費に特化してハイパワーを捨ててしまったです。
もちろんこれは、今になって、今だから言える結果論でしかありません。
だからこそ、ハタムラ氏の指摘にボクは思わず「う~む」と唸ってしまったのです。
そう言われて振り返れば、2000年以降のホンダのエンジン開発は迷走とも停滞とも言えなくは無い。そして、気が付いたらダウンサイジング過給エンジンを急速に熟成させた欧州メーカー勢に、あっという間に置いていかれたような印象です。ボクが上記に書いたように「他社がVTECを上回るエンジンを生み出せずに、、、」と思っていたら、追い付かれたのも気付かぬ間に追い越されていたような、まるで狐に摘まれたような感じです。
VTECは素晴らしいエンジンだ。それ故に罪深い。というお話でした(^_^;)。
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Posted at
2012/12/14 02:14:34