このブログの副題は
「新型NSXのまさか」 。
昨年ようやく正式発表がなされ、日本市場ではそろそろ納車が始まる新型NSXですが、ところで世間では大筋どういった評価が大勢なのでしょうね?(^_^;)
因みにボクは前回話題のシビックTYPE Rと同様に、NSXが開発段階からその仕上がりは
全く心配していませんでした (苦笑)。
こう書くと、前回のシビックTYPE Rと同じように「心配してなかった仕上がりレベルが期待通りではなかった」という内容になると予想する人も居るかもしれませんが…
ちょっと待ってくださいねd(^_^;)
世間には今現在、
あまりアテにならないw 自動車評論屋のレビュー記事くらいしか情報が無いワケで、それを鵜呑みにしてまだ納車も始まっていない市販車に「ダメ!」って書くのってどうかと思いません?いやボクは思いますよ(^_^;)。
しかもこれらの動画を見ると判る通り、パフォーマンス面では褒める要素はあまたあれど、ケチを付けるのはなかなか難しいのではないでしょうか?
VIDEO
NSX対アベンタドール加速競争
VIDEO
ACURA NSX対NISSAN GT-R
VIDEO
NSX対GT-R NISMO筑波決戦
新型NSXのパフォーマンスは筑波サーキットのLAP TIMEベースでGT-R NISMOのたった1秒落ちです。標準車でこのパフォーマンスなら、もしGT-RがNISMOじゃなければ勝ってたかもしれないし、二代目NSXが初代に倣て将来TYPE Rを追加してくれば、標準車に対して筑波のタイムが1秒速いだけ、なんてのは有り得ない話ですから、今後に大いに期待できる、というワケですd(^_^;)。
GT-R NISMOとの筑波バトルで負けたら新型NSXはダメ!とか言っているヤツが居たら、ハッキリいって相当にア○マがワ○い人だと思いますけどね(爆)。
じゃぁボクがこのブログで語ろうとしている「新型NSXのまさか」って何なのか?
それは初代NSXの開発にも深く関与した神様、黒澤元治氏に酷評されたことに端を発しますd(・・;)。
しかしただ単に神様が「ダメ」と言ったからダメだなんて、そんな底の浅い話をする気はありません。
ボクが書くんだから(笑)。 既に述べた通りで速さではGT-R NISMOに迫るワケだし、熟成不足を短絡的にダメというのもどうなんでしょう?と思っています。
要は神様が
「ダメ」 と云った、その
中身 を注意深く見なければならず、そこにボクが言いたい「まさか」があったワケです。
神様の
厳しいご指摘 は以下、こんな感じなのですが、、、
「なんでこんな敏感なのこれ、これモーターなの?」
「もっとこうダイレクト感があってほしいな」
「この種のスーパースポーツにしてはステリアリングがデカすぎるよこれ」
「タイヤの横剛性をもっと上げなきゃダメだこれ」
「車が重いな」
「慣性モーメントが大きい!」
「サスペンションの作り方が間違ってる」
ここに挙げたコメントのほとんどは(「重い」を除いて)熟成が進めば解決しそうな問題ばかりで、新しいNSXというクルマを根本から否定するモノではありません。
ボクが注目した点は、こちらのブログに書かれた意見です。
【速攻試乗】
ガンさんこと黒沢元治が新型ホンダNSXを斬る! (2/3ページ)
「減速からステアリングを切り込みコーナーを脱出。限界域でのコーナリングではアンダーステアが強い。これは新型NSXの目玉である「SPORT HYBRID SH-AWD 」の影響だ。
このシステムはフロント左右輪を独立したモーターで駆動し、プラスマイナス含めたトルクを与えることができ、それによってヨーを発生させて狙ったとおりのコーナリングを実現するという触れ込みだ。」
「だが、ボクから言わせれば意味はない 。当たり前のことだがタイヤには摩擦力により発生するグリップの限界があり、それを超えてコーナリングフォースを発生することはできない。つまり100%の摩擦力を使って曲がっているときにいくらモーターでトルクを与えても、その力は路面に伝わらないのだ。」
「実際、ボクが試乗している限り、有効に働いていると感じたシーンはなかった 。ではグリップ限界まで使えない人には効果のあるシステム、といえるのかもしれないが、グリップが余っているステアリング操作でクルマが反応するのだから、より曲がりたければ切り増せばいい ということになる。」
そして極め付け
【速攻試乗】
ガンさんこと黒沢元治が新型ホンダNSXを斬る! (3/3ページ)
「ボクは世界のスーパースポーツファンたちに、新しい時代のホンダが作るスーパースポーツはこれだと衝撃を与えるような、世界唯一の存在として誇れるものがNSXのなかにあってほしかった。少なくともそれはSH-AWDではない と思う。まだ生まれたばかりの新型NSXの今後の進化に期待したい。」
そう、ボクがこのブログで書こうとしている「NSXの
まさか 」とは、初代の開発ドライバーを務め、新型にも新しい時代のスーパースポーツを期待していた
黒澤元治氏にSH-AWDを否定されてしまった ことを指しています。
なぜそこを問題視しているのか?
目をホンダに転じて、彼らが新型NSXにSH-AWDを採用した理由を紐解くと明らかになります。
新型NSXの開発の背景
新型NSXがめざしたもの
初代NSXが現役だった頃に遡ると、ホンダはまるでNSXのフルチェンジを拒否するかのように1990年の登場から2005年末まで15年間、大きく手を入れずに延命させてきました。実際には細かく手は入っていたのですが、大きく改良されたのは1997年に3.2Lが載ったときと、2002年に固定式ライトになったときの2回。
巷ではまるで放置しているかのように批判的な事を云う人は居ましたし、次期型(幻のV10搭載のフロントミドシップ+SH-AWDのアレ)の開発になかなか着手出来ない事情は色々とあったのでしょうが、明らかなことはホンダが所謂現行モデルの
正常進化という形のモデルチェンジを避けてきた ということ。
なぜ正常進化じゃダメだったのか?その真意はこういうことです。
初代のNSXは従来のスポーツカーの価値観が根底から覆えるような新たな価値を創造し、結果的に老舗のスポーツカーメーカーであるフェラーリやポルシェですら、NSXが実現した方向性に倣って自社製品を改良するに至りました。文字通りスポーツカーの歴史を転換させるほどの新たな価値の創造です。つまり
NSXの車名に込めた「New Sports car X」は伊達ではなかった というワケです。
したがいホンダがNSXを次の世代(2代目)に進化させるためには、初代が成し遂げたような
新たな価値が創造出来なければ意味が無い とずっと考えていました。これが初代NSXがなかなかフルチェンジしなかった真相です。
なにしろNSXの1バリエーションでしかなかったTYPE Rですら、1997年にベース車両のエンジンが3.2Lに進化したものの、
「新しいエンジンになった車両を
92R* と同じ手法 でチューニングしただけでは
意味が無い 」
と、TYPE S Zeroというスパルタンモデルは用意しても、TYPE Rの称号は与えませんでした。結局「空力操安」という新しいコンセプトでアジリティをメカニカルに、スタビリティをエアロに頼ることで、腕が無ければ上手く曲げられない92Rを超える運動性能を獲得出来て初めて、TYPE Rは復活を許されたくらいです(苦笑)。
*初代NSX TYPE Rの俗称。1992年登場なので92R。2002年のモデルは02R。
かくのごとくホンダは大切なスポーツモデルに対しては
とことん頑な で、安易な妥協は許さないし認めないところがあるのです。
そんなホンダが初代から二代目に進化させるに足る
価値を見出したのがSH-AWDというドライブトレイン であり、幻の二代目となったV10搭載車にも機械式SH-AWDが採用されていましたし、今回の二代目ではHybridの3モーターSH-AWDで、回生のマイナストルクを活用することで更なる進化をしています。
新型の二代目NSXの詳細が明らかになった昨年の前半、その車重が1,700kgを超えていたことを指してハイブリッドである事への批判とか、ハイブリッドでなければもっと軽く作れた筈、などという意見がネット上でも散見されましたが、以上の事情というか背景を知らない子供の戯言と言わざるを得ませんねw。
SH-AWDは2代目NSXが
市販される前提の技術要素(ドライブトレイン) であり、これ抜きの純ガソリンエンジンのミッドシップスポーツでは、NSXを名乗る資格はなく、したがって作る意味も価値もない、というのがホンダの考えなのです。
因みに批判のやり玉に上がることの多い車重についてですが
ホンダNSX:1780kg(日本仕様)
アキュラNSX:1725kg(北米仕様)
ポルシェ911ターボS:1600kg(DIN)
BMW M4 GTS:1600kg
フェラーリ・カリフォルニアT:1625kg(乾燥重量)
Audi R8:1630kg
メルセデスAMG GT S:1670kg
日産GT-R:1740kg(トラックエディション engineered by nismo)
LEXUS RC-F:1790kg
ジャガーFタイプ R AWD クーペ:1860kg
※全てWeb CGの試乗記から抜粋
重たいスポーツカーは意外に少なくありませんね(笑)。NSXがバッテリーとモーターを3基も積んでいることを考ると、この車重に収まっているのは驚異的とさえ言えます。
逆に日本仕様はなんで50kg以上も重いの?とかw
NISSANのGT-Rだってデビュー当時はその重い車重に懸念を覚えた人は多かったと思いますが、そんなもんは優れたパフォーマンスを示せれば雑音は静かになりますし、重たくなった事情ですら技術で克服したことが賞賛に変わることだってあります。
確かに運動性能が重視されるスーパースポーツカーで重たいことはネガディブ(批判材料)ですが、それを上回る価値をNISSANがGT-Rでやったようにキチッと示せれば、批判の声は自然と静かになるものです。
しかもホンダ自身が既に述べた通り、このSports Hybrid SH-AWDで新たな価値を創造すると云うワケですから、彼らの思惑通りのクルマに仕上がってさえいれば、文句を言うのは実車に乗ったこともないスペックヲタクだけになる筈でした(苦笑)。
ところが初代の開発にも深く関わり、新型NSXにも大いなる期待を寄せていた神様・黒澤氏に
・「意味は無い」「SH-AWDは違うと思う」
とバッサリ否定されてしまいました。
つまりホンダが新しい時代に相応しい新しい価値を生み出すドライブトレインと睨んで採用したSH-AWD搭載の新型NSXに、
黒澤氏が深く感銘を受けるような新しい価値は存在しなかった と言われてしまった ワケです。
これが一体どのくらい
由々しき事態 か?と心配しているホンダファンは、ボク以外に一体何人くらい居るのか判りませんが、、、A^_^;)。
こうなってしまった原因は、実はSH-AWDというシステムに対する積年のホンダの冷淡な姿勢に真因があるとボクは分析しています。
SH-AWDは今では一般に「トルク・ベクタリング技術」として括られますが、これらの技術の基礎となる理論(ダイレクト・ヨー・コントロールという考え方やベータメソッドと名付けられた解析手法)を確立したのが実はホンダの芝端氏で、海外の有名自動車メーカーの多くの技術者にも高く評価されたと聞きました。それをホンダ自身が初めて市販したのがATTSというFF用のシステムですが、4代目プレリュードのTYPE Sに搭載されるのみで、他のモデルに展開されることもなくラインナップ(市場)から消えました。次に登場したのが2004年のレジェンドに搭載されたSH-AWDですが、
基礎理論の確立から既に10年以上も経過した後 です。
もともと芝端氏がダイレクト・ヨー・コントロールという考え方を見出したのは新世代の全輪駆動システムの研究からで、SH-AWDが本来の市販すべき姿でした。しかしなぜそれがFF用のATTSという寄り道ともいえるような中途半端な形になったのか?というと、どうやら企画が通らなかったらしいのです。当時のインテグラのマイナーチェンジでターボモデルを追加してSH-AWDを搭載するという企画案が、初代FF TYPE Rの企画案に負けて廃案となり、しかし芝端氏の研究成果をなんとか市販させたいという研究所の人たちは「芝端氏を男にする!」という気概でATTSというFF向けシステムを開発したなんて美談というかATTS開発秘話なんていう経緯だとか。
FF専業ともいうべき事業基盤のホンダにとって、FFベースの四輪駆動システムは大衆車ブランドから脱皮するために必要な技術です。そこに他社に対して圧倒的優位性があるシステムの研究開発に成功したにも関わらず、それの市販化には時間を浪費してしまいました。これはホンダのSH-AWDというシステムに対する評価の低さを示すものですが、上手く使えばアウディがクワトロシステムで成し遂げたようなプレミアムブランドへの脱皮(少なくともアキュラのブランドイメージ向上)も不可能では無かった筈なのですが、全く上手くいきませんでした。
理由は極めて単純明快で、この新しいドライブトレインの
有効性を世間に示さなかった怠慢 に付きます。
アウディのクワトロシステムも、三菱自動車のAYCというトルクベクタリングも、モータースポーツの世界で実績を積んで初めて市場にその有効性を認められました。ホンダのSH-AWDは日本市場ではフラッグシップのレジェンドのみ、米国ではアキュラの複数のモデルに広く展開されましたが、モータースポーツシーンで活躍するような車種への搭載は皆無です。これでは他社にも多く存在する様々な四駆システムとの比較でも「One of Them」の域を一歩も出なくて然りです。
三菱自動車のAYCとて、ランエボⅣで初搭載された当初(1996年8月~)の評価はさほど高くなく、ランエボⅤに進化した後(1998年1月~)からようやく高評価が固まっていきました。
確か純スポーツカーであるNA2 NSXと同等以上のパフォーマンスを示す4ドアセダンのランエボに対して、黒澤氏がベストモータリングの中で「このクルマ(の速さ)はインチキだ」と発言されたのはこの頃だったと記憶しています。もうちょっと後だったかな?(^_^;)
四輪駆動システムが提供する価値は様々ありますが、少なくともそれをスポーツカーに採用する限りは「速さ」に於いて価値が示せなければ高い評価は得られません。古いシステムは高いトラクションと安定性がある一方で曲がりにくいために運動性には劣りました。
その解決策のひとつがトルクスプリット(前後不均衡トルク配分)で、プジョーが205ターボ16というグループBカーでWRCラリーを席巻して有効性を示しました。
これの進化版が日産のR32GT-Rに搭載されたATTESA ET-Sで、実は芝端氏が日産在籍中に開発されたシステムです。
(芝端氏はマルチリンクやHICASの開発には携わったらしいが、ATTESA ET-Sへの関与は不明)
この前後トルク配分から左右のトルク配分というのは次世代への進化と十分に評する価値があった筈ですが、なぜかホンダは研究所の物置にずっと仕舞って10年以上も市販化を見送ってきました。
そんな風に冷遇してきたシステムを、フラッグシップスポーツの最新型にポンと載っけて「新しい価値の創造だ!」とブチ上げたワケですが、少なくとも専門家の諸先生たちの反応は「はぁ?」というのが大半だった、というワケですA^_^;)。
まだ日本市場では市販車が納車される前ですし、納車を心待ちしている200名前後のオーナーさんたちには大変恐縮な話ですが、新型NSXが今のままで良い筈は絶対にありません。
内装がチャチだとかハンドルが大き過ぎるとか、エンジンマウントが緩いやら限界域でアンダーが強いなんて話は追々熟成していってくれればイイだけの話なので、大した問題ではありません。
少なくともボクはまだハンコを付いた人間ではないし(^^;
しかしSH-AWDが新世代スポーツカーに相応しい新たな価値を本当に生み出せるのか?従来技術の正常進化の範疇を超えられるのか?
非限界域で他社製品とはちょっと違う乗り味の演出は出来ても、限界域では単なるデッドウェイトでしかない、などという最終結論に至るようなら、そんなクルマはNSXとは呼べません!(苦笑)
ボクが云うんじゃないですよ(^_^;)。ホンダ自身がそう云ったんですからd(^_^)。
SH-AWDを採用することで、従来の技術のスポーツカーには無い新たな価値の創造をめざす!と。
そう、彼ら自身が
自分で言った んだから、フェラーリにもランボルギーニにもアウディにもマクラーレンにも実現出来ない、従来技術による正常進化の範囲を超えた新たな価値ってヤツを我々に示してくれないと。
そして神様・黒澤氏に「このクルマ、SH-AWDってヤツはインチキだ!」と言わしめるくらいに仕上げて頂かなければ困ります。
だってそれが、
ホンダがめざしたところ ってボクじゃなくホンダ自身が言ってんですからd(^_^)。