
変なライターの「国産車のブレーキはずっとダメだった」という根拠に乏しい主張の記事を読んで二本(
その1、
その2)ばかりブログを書いたんですが、ぃゃまぁ沢山のPVとイイね!を頂きましてありがとうございますm(_"_)m
個人的には日本の自動車ユーザーがそんなにブレーキに対して関心があるとは思っていなかったwので、これは嬉しい驚き、というか誤算でした(^_^;)。
かく言うワタシは実はブレーキ・ヲタでして、それ故に妙ちきりんなライターの主張は看過できなかったワケですが、今日はその辺の事情についてちょっと書いておこうと思います。
因みにお友達の
FLAT6さんが実にタイムリーにとっても良い(勉強になる)ブログを書いて下さったので、このブログを読む前でも読んだ後でも、ご一読されることを是非お勧めしておきます。
2018年08月25日
「ブレーキ性能」とは何ぞや? FLAT6
さてボクがブレーキ・ヲタになった経緯ですが、1996年に
インテグラ TYPE Rを購入したところまで遡ります。このクルマはホンダがラインナップにあった3ドアクーペ・4ドアハッチバックの乗用車wを、サーキット走行用にチューンナップしちゃったようなとんてもないクルマで、発売後も自ら「TYPE Rコンセプトミーティング」というサーキット走行体験会のようなイベントを開くなど、このクルマを買ってクローズドコースのスポーツ走行にデビューした人は多いと思います。えぇボクもそのひとりです。
辛口の自動車評論家や、レーサー上がりのモータージャーナリストからも絶賛されたこのクルマでしたが、実は1995年に発売された
初期型(通称96spec)には大きな弱点がありました。
その
弱点がブレーキだったのですが、、、A^_^;)
原因はベースとなったインテグラ(DC2/DB8型)からキャリーオーバーしてブレーキの強化が行なわれなかったから、なのですが、こう書くと「強化された動力性能にブレーキ性能が追い付かなかった」と短絡的に考える人も居るでしょう。実際、未だにそう思い込んでいる人も居そうです(苦笑)。
そう思わせる要因としてホンダ自身がTYPE Rを
1998年にマイナーチェンジ(通称98spec)した際、ブレーキサイズを1サイズ大きく(フロント:14インチ→15インチ、リア:13インチ→14インチ)していますから。

左:96specの14インチ、右:98specの15インチ
しかしブレーキ性能が低かったとか、
事はそう単純な話ではなかったんですねぇ。。。(^_^;)
それが証拠に、ブレーキの強化に留まらず、4-1エキマニの採用やギヤ比の変更、更にはリアサスペンションの安定性向上といった対策を施したにも関わらず、98specは96specと速さはほとんど変わりませんでした。つまり
ブレーキの強化は速さに直結しなかった=96specのブレーキも制動能力に不足は無かった
というワケです。このことはインテRを絶賛していたプロの人たちも、少なくとも制動能力への不満をほとんど口にしなかったことからも裏付けられます。
じゃぁインテR 96specのブレーキの弱点とは一体なんだったのか?
サーキット走行などの高速連続走行(周回)に於ける
耐フェード性です。
ブレーキの利き、つまり
制動性能に関しては
全く不満がなかったのですが、サーキットを3周、5周と走り回っていると、だんだんとブレーキが利かなくなってくる、つまり不満は無かったハズの制動能力が段々と低下してきてしまうこと、
これが痛かった(^_^;)。
何しろ貴重な時間と金wをはたいてコースに走りに行っても、走行中に段々とブレーキが甘くなってくれば走行枠一杯いっぱいを楽しめません(苦笑)。耐フェード性の高いスポーツパッドに交換したのは言うまでもありませんが、下手クソ(=遅いw)の頃はなんとか保っても、段々上手くなってくるとやはり途中でクールダウンラップを入れないと保ちません。下手をしてブレーキラインにエアを噛ませてしまうとその日一日を棒に振る危険性もあります。
もうちょっと何とかならんのか?
というのはずっと考えていたんですが、結局98specでホンダ自身がローター径をアップさせたことを受けて、やはりブレーキ自体の
熱容量を増やさないと始まらない、否、
熱容量を増やすことがもっとも手っ取り早い対策と悟って、最初はフロントのみ、最終的には
前も後ろも1インチ上げる対策をしました。
まぁそれでも以前は3周までなら大丈夫で4周目以降、段々怪しくなってくるのが、5周は大丈夫で6周目以降は、、、くらいな感じでしたけどね(^_^;)。ただ経験者はご存知の通り、ボクらシロートはサーキットで全開走行したら5周連続で集中力なんか続かない(爆)し、ブレーキに留まらずタイヤだってタレるので、まぁタイムを出すつもりなら連続2周、多くても3周くらいに留めてクールダウンするのが現実的なんですけどね(^_^;)。
以上のような経験を経て、アレコレ対策を悩む過程で「ホンダはなんでブレーキの強化をしなかったのか?」という疑問を持った時期もあったんですが、色々な事が判ってくると様々な疑問もなんとなーく解けていったりもしました。
先ず96specがブレーキを強化しなかった件。
恐らく世の中には得意の「ホンダが
コストをケチった」と思い込んでいる人が絶対に居るハズですが、きっとそうではないですね。関係者に直接聞いたワケでないですが。
上原氏がNSXに対して編み出したTYPE Rというコンセプト(チューニングメニュー)を大衆車に初めて適用したのがインテグラ TYPE Rですが、大元のNSX TYPE Rもブレーキパッドを専用品にする程度で、特段のブレーキ強化を行っていません。恐らくインテRのときもその辺はあまり深く考えず(苦笑)に開発が進んだのでしょう。
その開発では標準車の筑波サーキットのラップタイムに対して「軽量化で0.X秒、足回りで0.X秒、タイヤでX.X秒、エンジンで0.X秒」みたいな割り振りをしていたそうです。
結果、ノーマル比で数秒レベルのパフォーマンスアップを実現出来ました。つまりブレーキの強化は必要なかったワケです、
ここまでは(^_^;)。
しかし実際にクルマを市場に出して、多くのオーナーが自らサーキット走行を楽しみ始めると、ボクが体験した通りに「確かに
速いが、ブレーキが根を上げてしまって速さが
持続しない」という事態に陥ります。
もしかしたら96spec発売前にホンダ側も気付いていたかもしれませんが、
この問題はサーキットで全開走行を数周に渡って続けなければ顕在化しません。つまりサーキットに行かなければそうはならないし、サーキットでも1~2周のアタックラップに留めれば問題はありません。
ということはインテRの96specのブレーキが耐フェード性に課題があったという事実は、もしかしたら
ホンダの想定を超えて多くのオーナーがサーキットデビューしちゃったから発覚したようなものです。
その後に発売となったシビックTYPE Rからブレーキ強化が行なわれていた点と、98specで同様の強化を行ったことから、恐らく96specを出した時点でホンダはブレーキの耐フェード性に課題認識があったのだろうと推察が出来ますが、その強化は当然、イイ事ばかりではありません。
実際にジムカーナをやっていた連中は、96specでもジムカーナコースの速度域、及び一回の走行時間内でブレーキが根を上げることは無かったため、98specのデカいブレーキには全く興味を示さないどころか「バネ下が重くなるから嫌だ」と毛嫌いしていたくらいです(^_^;)。
以上のような経緯があるので、ボクはクルマのブレーキに関しては非常に高い関心を持っているのですが、単純にデカいから偉いとか、ブレンボだから偉いな~んて考えてはいません。勿論ブレーキ性能になんらか弱点があったとしても「メーカーがコストをケチった」なんて小学生のような短絡的な言いがかりもしませんょ(笑)。
実際に日産のR32~R34のGT-Rなんて、コストをケチるどころか対抗4ポッド以上のブレーキをフロントに奢っていましたし、ブレンボを付けたモデルもありましたが、ブレーキの耐フェード性に関してはずっと悩まされていました。結局これってブレーキという部品にいくら金を掛けたか?なんて単純な話ではなく、スカイラインという乗用車をベースにしていたために大きく重たい、というクルマ造りの根幹に限界があったのかもしれんのですよ。それが証拠にR35-GTRは歴代スカイラインGT-Rよりも遥かに重たいですが、ブレーキの耐フェード性でR34以前のモデルのような評判は聞きません。
またホンダに目を戻すと、
二代目のDC5、インテグラ TYPE Rはついに
フロントにブレンボのブレーキを初めて標準装備するのですが、やはり
ブレーキには弱点がありました(苦笑)。これは本当に笑い話か?という話なのですが、DC2/DB8の初代TYPE Rの教訓をちゃんと次期モデルに活かそうとホンダは考えたのだと思います。ブレンボを採用するに留まらず、ブレーキを冷やす空気の通路をちゃんと設けるなど、耐フェード性にはしっかり対策をしているように見えました。

ここまでやってるならもうブレーキには弱点は無いだろう、と思うでしょ?(苦笑)
ところが実際にサーキットで連続周回をすると、
ベーパーロック現象が起きやすかったらしいです(^_^;)
なぜか?これは三菱ランエボのブレンボキャリパーですが、黄色の〇のところに注目して下さい。

左右の対抗ピストンを連結するフルードのラインが外出しになっていますよね?しかしDC5のブレンボキャリパーはこのラインがキャリパーに内蔵されています。
そしてキャリパーの熱がフルードを加熱して沸騰し、気泡が発生してベーパーロックが起こり易かったそうで、ランエボのキャリパーはラインが外に出ているから上手く熱が逃げてそうはならないらしい(^_^;)。
みたいな話で、キャリパーがブレンボになれば全て解決!という話でもないワケですが、そもそも
サーキットのような極限状態で連続走行をする、なんて前提に立たなければ、国産車のブレーキだって決定的に性能が不足している、なんて事情はもう何十年も前から無くなっています。
問題はもはや、オーナーがどうクルマを使うのか?その使用環境が特異なシビアコンディションである場合に、それに耐えうる余裕があるか否か?という話で、平たく言えば
どこまでオーバースペックか?という世界の話です。
ボクはこういった事情も理解した上で、クルマのスペックや試乗記などの評価を見るし、そこに何が書かれていようが、想定される大多数のオーナーの利用環境であったり、ボクがもし購入したらどういう使い方をするか?を鑑みて〇とか×とか判断しています(^-^)。
ブレーキってクルマにとってはとっても重要な部品ですが、使用環境によって性能の過不足は違ってきますから、メーカーの設計段階での想定環境によってもスペックが大きく変わります。日本車が、独車が、なんて大括りな話ではありませんし、
メーカーの想定する条件が気に入らない、というのであれば、それが
気に入るメーカーの商品を買えばイイ話です。
単純にそれだけの話だと思っていますけどね(^_^;)。