2014年10月19日(日)
秋晴れの清々しい1日。兵庫県養父市(やぶし)の明延鉱山へ行って来ました。今から1200年以上前、記録に残るのは大同年間(806~810年)に採掘が始まり、それよりもっと前の奈良の大仏の鋳造はここで採れた銅が使われたという話もある歴史の古い銅山です。明治29年(1896年)に国から三菱合資会社へ採掘権が払い下げられて以来、三菱系の鉱山として銅、錫、亜鉛など多種多様な金属を産出するヤマとして発展したのですが、昭和62年(1987年)に円高と金属の価格暴落のために採算が合わないと言う理由で閉山となったのだそうです。けれども、鉱脈が枯れたわけではないので、経済環境がととのえば、また採掘を再開する可能性もあるとのこと。そのため「旧明延鉱山」と言うような言い方をせずに「明延鉱山」と呼ぶのだとか。
ここには、昭和20年(1945年)から昭和60年(1985年)まで、鉱山従業員の通勤用として明延鉱山から神子畑(みこばた)選鉱所までの6Kmの路線を明神(めいしん)電車として運行されていたのですが、運賃が1円のため「一円電車」の愛称で親しまれていたそうです。一日の乗降客数を数えやすくするために1円ということらしいですが、採算は度外視していたということでしょうか。
路線の廃止後、20数年経って(2010年10月)、地元のボランティアの手で約70mの線路が復活し、毎月第1日曜日に体験乗車会が開かれているので、よーのすけも実は10月5日の体験乗車会に参加しようと思っていたのですが、台風の襲来もあって諦めていたのでした。ところが、毎年秋には「
あけのべ一円電車まつり」なるイベント(今年は第8回)が開催されているというので、それに参加させてもらったというわけです。

朝7時半に大阪のアパートを出発したときは、今日はいい天気だなと思っただけったのですが、中国道~播但連絡道と進むうちにだんだん肌寒くなってきて、もう少し羽織るものを持って来ればよかったと思うほどでした。
9時過ぎに播但連絡道の朝来ICを下りて、ナビの言うとおりに進んでいくと、突然、神子畑鋳鉄橋という案内看板がみえて、あわててクルマを停めました。

これが神子畑鋳鉄橋。明治18年(1885年)に架けられた橋で日本最古の鋳鉄橋、国指定重要文化財です。当時は鉱石運搬の馬車がここを通ったようです。

鋳鉄橋からさらに西へ進むと、神子畑選鉱場跡がでーんと広がっていました。丸いシックナーと呼ばれる装置は巨大な漏斗状で、粉末状になった鉱石の中から有用な金属と不純物を分離する装置だそうです。

一円電車は明延鉱山からここまでを結んでいたわけですが、もともとは鉱石を運搬する貨物列車に従業員も運搬するために客車も連結するようになったのでしょう。当時の電気機関車、客車、貨車のセットが静態保存されています。後の山の急斜面は、選鉱作業を行うところで、鉱石を徐々に砕きながらふるいにかけていくイメージでしょうか。脇にケーブルカー(インクライン)が設置されていたのが見えます。

ケーブルカーをクローズアップ。レールがへろへろになっています。
事前に、
近代化産業遺産「鉱石の道」というHPをみて、養父市ととなりの朝来市に明延鉱山関連の産業遺構が散在しているのを知っていましたが、メインの一円電車と坑道見学を優先し、時間があればほかも見に行こうかと考えていたので、目的地に着く途中でこれらの遺構を見ることができたのはラッキーでした。

神子畑から明延までは、峠をひとつ越えるかんじで快適なワインディング。景色の良い場所で写真を撮りながら進んで、10時半に明延に到着。

一円電車まつりのメイン会場には、ステージがあり地元のバンドがリハーサル中でした。
駐車場の隅に一円電車の車庫と70mの線路がありました。

客車にはくろがね号という愛称がついていました。
手前のテントで運賃1円を払うと、いつでも運転してくれるみたいです。

よーのすけは1円玉の持ち合わせがなかったので100円玉を供出しました。
関西テレビのクルーが一緒に乗り込んできました。
軌間762mmのナローなので車体は小さく、10人も乗れば満員になってしまいます。
70mの線路を往復するのに5分もかかりません。乗車体験はあっという間に終了です。

こちらは1.5トンのバッテリー機関車。生態保存されているふるい機関車はパンタグラフがついていたので「電車」と呼んで差し支えないと思いますが、復元されたこれは「電車」と呼ぶにはちょっと抵抗がありますね。

ほかのお客さんを乗せて、動いているところの写真を撮りました。

こうしてみるとけっこう絵になっています。

さてお次は、明延鉱山の坑道見学会に参加です。メイン会場で予約が必要ですが、11時の会に参加することが出来ました。マイクロバスで坑道の入り口まで移動して、ガイドさんに坑道の中を案内して貰います。

ガイドさんは閉山まで明延鉱山で働いていたヤマ男なので、現役時代の苦労など実体験を交えた面白い話をしてくださいました。削岩機とかボーリングの機械とか鉱山特有の工具もいろいろ説明があったのですが写真がうまく撮れませんでした。
坑道の内部は縦横にトロッコの軌道が走り、所々に引込み線やポイントの跡がありました。
少し広くなったここは醤油メーカーが醤油を貯蔵しているところ。坑内は気温が安定しているので都合がいいのだそう。

こちらは酒造メーカーが酒を貯蔵しているところ。

約1時間の坑道見学を終えて外に出てきました。

あけのべ一円電車まつり。とても楽しかったです。
この日の走行距離:大阪~明延往復 約309Km
Posted at 2014/10/21 22:36:16 | |
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知られざる鉄道 | 日記