2013年04月15日
「雪道」 (23) Copyright (C) 2013 AuO2
速度が遅く、ガタガタの道路を走る長時間運転はこんなに感覚を狂わせるのかと思い知らされた。
それでも、走り続けているのだから、いずれはどこかに辿り着く。それは間違いない。
峠の頂上がようやく近くなった。トンネルだ。
長いトンネルだったが、結構幅は狭かった。対向車に大型トラックも多く、すれ違いもあまり余裕がないくらいだった。
トンネルの入口の雰囲気も、なんとなく怪しげな感じだった。テレビで出てきそうな幽霊の出るトンネルみたいなものとでもいったところか。
とにかく不気味なトンネルを抜けた。
あとで調べたら、トンネルは四十曲トンネルと言って、峠は四十曲峠という名称だった。峠の坂も長かったが、カーブも多かった。おまけに長いトンネルである。地図で周辺を調べてみると1000メートル級の山がいくつもあった。どうりで雪の降り方もきついわけだ。
トンネルを抜けたのはいいが、抜けてすぐに急な下り坂になっていた。雪の道路で急な下り坂は危ないものだ。
とにもかくにも、自分が今どの辺りを走っているのかが知りたかった。幸い、少し下った所にバスの停留所のように少し道路の広がっている場所があり、停まっている車も何もなかったので、私はそこに車を寄せて停めた。
坂の下の方からはハザードランプを点滅させたトレーラーがゆっくりと登ってきつつあった。
車を停めたので、私は地図を取り出し、調べ始めた。今まで走ってきたところを思い出しながら、地図の道路を辿っていった。
ハザードランプを点滅させたトレーラーは相変わらずゆっくりと登ってきていた。かなり近くまで来ていた。
地図を調べてわかった。さっきの長いトンネルは四十曲トンネルと言うのか。なるほど。このトンネルを越えてちょうど岡山県に入った事になるのだ。
随分と走ったような気がしていたが、実際には走らなければならない距離の半分も走っていないのだった。この事実はショックだった。
ハザードランプを点滅させたトレーラーがすぐ近くまで登ってきた、タイヤをスリップさせながらゆっくりと登ってきた。どうやらタイヤチェーンは装着していなかったようだ。かなりタイヤがスリップしている。くるくるとタイヤが空回りするのがよく見えた。もう少しで登り切れるが、大丈夫なのだろうか。他人事ながら心配になった。さらに、登った後は下りである。急カーブの雪の坂道が長く続くのだが、無事に峠を越えられるのだろうか。心配だ。
さすがに私も運転でかなり疲れていた。体力的にも精神的にも。あまりにも道路状況が悪すぎたのだ。しかし、一旦停車した事でいくらか気分が落ち着いた。
ハザードランプを点滅させたトレーラーは私の車を通り過ぎて登って行った。
地図を見ていると、ちょうどもう少し先に進んだところに道の駅があるようだ。ちょうどいい。そこで一息つこう。
ちょっとした安堵感はここまでだった。何か気配を感じた私は即座に右斜め後ろを見たのだ。
すると、さっき通り過ぎたはずの、トレーラーのハザードランプの点滅が私の車の後部ドアのすぐそばに近付いてきていたのだ。
Posted at 2013/04/15 20:31:51 | |
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随筆 | 日記
2013年04月14日
「雪道」 (22) Copyright (C) 2013 AuO2
国道180号線との分岐に来たわけだが、そのまま181号線を走り続けた。
最初の峠の入口まで来た。電光掲示板もあり、タイヤチェーンが必要である旨の表示がされていた。道路の脇に停まってタイヤチェーンを付けているトラック運転手の姿もあった。すでに装着済みの車もあり、ガリガリと音を鳴らしながら走っていた。
道路は真っ白である。見事に雪の積もった道路である。こんな調子で峠道になるのかと考えるだけでもぞっとする。しかし、この車用のタイヤチェーンを持っていない私はそのまま峠に突入した。
ヘッドライトに照らされる道路は真っ白である。山も白くなっている。時々道路の傍にある竹は雪の重みで車に接触するくらいの高さまで曲がっていた。
峠の道路は当たり前の事ながら、曲がりくねっていた。右にカーブ、左にカーブとひたすら変化する。運転していても落ち着く事が出来なかった。
まだ、峠の上りである。高い場所に近付くほど雪の降り方もきつくなっているように思えた。雪がものすごい吹き降りだったのだ。また、峠の道は平地の道の時より、ガタガタが少なく、比較的走りやすい部分もあった。それだけはほんの少しの救いだった。
実は、実際に走っていた当時、見て読む事の出来た標識と簡単に地図を見ただけの判断で道路を走っていた。普通の時なら、標識もハッキリと見えただろうし、地図を確認する事も比較的容易だっただろう。あいにくカーナビゲーションを持っていないので、地図に頼るしかなかったのだ。
標識は見たくても、雪が表面に張り付いていて、何を書いてあるかわからないものも多かったのだ。
雪のない状況であれば、少し広めにある道路の脇にでも車を停めて、地図を確認する事もしただろう。しかし、道路の端は雪が積もっていて、寄る事自体が出来なかった。明らかに停められるだけの余裕がありそうなところはすでにトラックが停まっていて、運転手が休んでいたり、タイヤチェーンを装着する作業をしていたりということが多かった。そのために私がすんなり車を停める事がやりにくかったのだ。
また、下手な場所に車を寄せて、溝にでも落ちるとやっかいな事になるので、迂闊に出来なかったというのも理由の一つである。
そんな状況下でゆっくり走っていたため、どのくらいの距離を進んだのかという感覚がいつもと違い、判断出来なくなっていた。
もし道を間違っていると、元に戻るのもかなり苦労するだろう。通行量が多い上に雪で道路が狭く、脇に寄る場所もほとんどない。道路の分岐・交差点も少なかった。かなりのところまで行かないと、分岐がないような場所だった。
雪がなければ、時々建っている民家の脇の道路などに入る事も出来たかもしれない。しかし、見かけた範囲ではおよそ車が走った形跡はなく、雪は積もり放題で、道路かどうかすら判りにくいような状態だったのだ。
そんな道路に入って行けようか。
結局、停まる事が出来ず、私は車で走り続けたのだ。
Posted at 2013/04/14 21:26:24 | |
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随筆 | 日記
2013年04月13日
「雪道」 (21) Copyright (C) 2013 AuO2
普通なら家に帰り着くまでの量は十分に残っていた。だから、わざわざ帰る前に給油はしなかったのである。ところが、このノロノロ運転にガタガタ道路で、積雪路面でアクセルの小刻みな調節と、燃料消費の多い要素はいくらでもあった。さらに、時間はすでに21時をまわっていて、時々道路沿いにあるガソリンスタンドは閉店していた。
まあ、この雪である。早々に閉店したのかもしれない。
それにしても、反対車線も車が多かったのは印象的だった。しかし、よくよく考えてみれば、米子自動車道の岡山県側も通行止めがあるのだから、そちらの方から走って来たとしても不思議ではない。雪の通行止めに方向は関係ないのだから。
ガタガタ、クネクネの雪道を走り続けた。
やがて国道180号線との分岐点に来た。
今にして思えば、国道180号線に入って中国自動車道の新見インターチェンジを目指した方が近かったかもしれない。しかし、私が目指していたのは中国自動車道の落合インターチェンジだったのだ。
米子自動車道と中国自動車道の分岐が落合ジャンクションである。ここから少し西へ走ると落合インターチェンジがあり、さらに、岡山自動車道への分岐の北房ジャンクション、北房インターチェンジ、新見インターチェンジと並んでいる。
東の方角へ帰りたいわけだから、西の方へのインターチェンジにはあまり行きたくなかったのだ。
しかし、中国自動車道に早く辿り着くという点から考えた場合、新見インターチェンジに行く事も考慮する価値があったのだと思う。実際、落合ジャンクションから東側も通行止めになっていたのだから、直接東の方向へ走っていく事が出来なかったのである。
いずれにしても、その時考えていた帰路は、次のようなものだった。
肝心な米子自動車道が使えないわけであるから、中国自動車道の落合インターチェンジに行って、東行きの通行止めが解除になっていれば、素直に中国自動車道を東に向かって(つまり、大阪方向である)走る。
まだ通行止めだった場合は、落合インターチェンジから西に向かい、北房ジャンクションから岡山自動車道に入り、山陽自動車道から東に向かって走る、というものだったのである。
米子からのことを考慮すると、日本海側から瀬戸内海側まで出て、その瀬戸内海側の道路を東へ走るコースとなるのだ。地図で見るとものすごい距離である。
しかも、中国自動車道は日本海側と瀬戸内海側のほぼ中間を東西に走っていて、言わば日本海側から中間まで雪の一般道をノロノロ走るという、うんざりする距離と時間のかかる走行だったのである。
もう一度走れと言われても、即座に断りたいと思う。正直言って、あんな状況は二度と御免である。
Posted at 2013/04/13 20:53:35 | |
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随筆 | 日記
2013年04月12日
「雪道」 (20) Copyright (C) 2013 AuO2
ものすごい振動がひたすら続いた。
プリンタも壊れたりしないか心配だった。
それと、もう一つ。
通行量が想像以上に多かったのである。
米子自動車道は通行止めになっているから、そこからの車は全てこの道路に入ってくる。その上、もともとこの道路を走っている車もあるだろう。渋滞に近い状態で車がたくさん道路を走っていた。勿論、私の車もその中の一台だった。
こんな調子で走り続けなければならないのかとも思ったが、地図を見る限り、基幹道路はこの道路しかなかった。他に行くところがないのだ。
ただし、もう一本、蒜山インターチェンジ付近から米子自動車道を沿うように走る、国道482号線もあるにはあった。雪のせいで米子自動車道が通行止めになったのだから、その近くを走る道路では同じように雪が積もっているのは容易に想像出来る事である。
となれば、走る事など考えられない。
前の方でも書いたが、まかり間違っても裏道などに行く事など危険極まりない。車が雪で動けなくなる可能性が非常に高いのである。
国道ですら、雪が道路の両端に積もっているために、実質的な道路の幅が狭くなっていた。
通行量の多い雪の積もった国道。まるで渋滞であるかのような、ノロノロ速度。走りにくいガタガタの路面。悪条件の山だった。
少しでもガタガタを避けようと、少し雪の柔らかそうなところへタイヤを持っていくと、ずるっと積もっている雪が崩れて、進路がずれる。
あまり滑りすぎると反対車線に出そうになったり、路肩の方により過ぎて盛り上がっている斜面に乗り上げそうになったりと、危険だらけだった。
大型のトラックなどはまだしも、こちらは普通車である。あまり正直に走っていても、車体の底をかなり擦ってしまう。道路の中央に積もっている雪はまだ柔らかいから、車体の底を擦っても雪を削るようになるのでいいようなものの、もし固いものがあったら、車が乗り上げて走れなくなるかもしれない。
とにかく、普通に走れないのである。
江府インターチェンジから国道181号線を南下する方向に走っているのだが、右側に日野川、左側にJR伯備線があり、道路も鉄道も川に沿って走っている。
しかも、嬉しくない事に、ちょうどクネクネしたところを走っていた。お蔭で右にカーブしてみたり、左にカーブしてみたりと、運転も全然落ち着かなかった。地図には日野街道と記載されている。
道路はガタガタである。ずーっと、ガタガタが続いていた。さすがにこんな状況での運転は本当に疲れる。あまりにも振動がひどいので、助手席に置いているプリンタを手で抑えておかないと、どんどん変な位置にずれていくので、それも疲れる運転の原因の一つであった。いつまでこんな走行が続くのだろう。
途方にくれた。
だが、この運転を途中でやめるわけにもいかない。帰れなくなってしまう。自分の体力もどこまでもつのかも心配だ。
さらに問題なのは、車の燃料だった。
Posted at 2013/04/12 20:39:54 | |
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随筆 | 日記
2013年04月11日
「雪道」 (19) Copyright (C) 2013 AuO2
江府インターチェンジが見えてきた。出口への分岐からほんの少し先の本線上には、通行止めの電光掲示板を付けた日本道路公団の黄色い車が止まっている。
インターチェンジなので、道路にも照明があり、明るく照らされていた。その光の中に見えていたのは、雪に埋もれて路面の見えない高速道路だった。
ついに、この時は来たのだ。ここから覚悟の本番が始まるのだ。
出口への分岐には車が列を作っていた。雪の積もり方もかなりのものである。タイヤのあまり通らない道路の真ん中辺りはしっかりと雪が積もっていて、高いところだと、私の車の底をすりそうなくらいだった。
列の中には観光バスもあった。乗っているお客さんも大変だろう。この状況では予定も何もあったものじゃないのだろう。
本線から分岐に入り、料金所までの車の順番待ちでのろのろ走ったわけであるが、その程度でも道路のガタガタはひどかった。かなり積もっている上に車が通って踏み固められる。踏み固められるのが均一になってくれればいいのだろうが、そんな都合よくいくわけがない。おかげで道路はガタガタなのである。
そのため、バスの運転は相当慎重にしているように見えた。それでも相当揺れる。乗り心地はさぞかし悪いであろう。こっちも振動で大変だったのだから。
振動で大変だったのは人間だけではない。助手席に搭載していたプリンタも大変だったと思う。ひたすら、振動にさらされたにもかかわらず、よくおかしくなったり、壊れたりせずに耐えてくれたと感心する。
料金所で自分の順番がきたので、ETCカードで料金を払った。
かなりの車が一般道へと導かれていく。
この江府インターチェンジですべての車が降ろされるのだから、当然ではあるのだが、普段あまり見る事のない光景なので、なんとなく違和感があるのだ。
夜の中途半端な時間なのに、ちょっとした渋滞である。
一つのインターチェンジの出口に車が集中している上、雪で走行速度が遅いのだから、渋滞になっても何ら不思議はない。
この江府インターチェンジの出入り口は一般道まで少し距離があり、すぐに一般道には出られなかった。あわてても仕方がないので素直に順番を待つ。
時間がかかった理由は簡単な事だった。一般道への接続部分に信号があったからだった。交通集中に雪と信号が加われば、なかなか前に進まないのも納得出来る。もっとも、納得は出来ても嬉しくはないのだが。
やっと、信号の所まで辿り着き、次の青信号くらいで自分が行けそうだ。
それにしても、雪が多い。かなり積もっている。
ここからは国道181号線、一般道である。高速道路ほど除雪がされているわけでもない。というより、ほとんどされていないのではないかと思う。
タイヤの通らない道路の真ん中の部分の積もった雪の高さは、この先ずっと、車体の底を擦るくらいの状態なのだろう。視界の中に見える範囲は全部そのように思えた。
信号が青に変わったので、私は車を発進させた。行き先は右の方なので、右折である。
右折して走り始めたが、タイヤで踏み固められた部分はかなりガタガタで、出雲の方へ行く時に走った道路と比べても圧倒的に今走っている道路の方がひどかった。
Posted at 2013/04/11 21:15:03 | |
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随筆 | 日記