2013年04月30日
「天然ぼけ」 (1) Copyright (C) 2013 AuO2
「いらっしゃいませー」
元気な、明るい声でレジの仕事をしている松田昭子[まつだあきこ]の今日の調子ははっきり言ってあまりよくなかった。
彼女は本屋でパートタイマーとして働いている。彼女がレジの前に立ち、横で別のパートの人が本のバーコードをスキャナで入力していく。入力し終えると合計金額が即座に出る。
「2650円でございますぅ」
いつもの調子で昭子は客に向かって金額を告げる。
金額を言われた客は財布からそそくさとお金を出している。
「1650円、お預かり、じゃ、なかった、失礼しました。10650円お預かりいたしますぅ」
今日はどういうわけか、こんな調子なのだった。いつもなら間違えそうにない簡単なことを間違えてしまうのだ。昭子は店長にまで、
「今日は天然ぼけ大サービスの日やな」
などと言われる始末。
「8000円のお返しです。ありがとうございますぅ」
そう言いながら、お釣りを渡し、自分ではっきりと顔が赤面していくのを感じていた。(今日はどうしたんやろ)
自分でも、つい、そう考えてしまうほどだった。
「今日はよく間違えますね」
横に立っている同僚のパートタイマーである、又倉[またくら]さんが話しかけてきた。いつもなら楽しくおしゃべり、といった感じで話ができるのだが、今日に限ってはいつもの調子で話ができないでいた。もちろん、理由は店長が言うところの天然ぼけのせいである。
「ええ。なんででしょうかねえ。自分でもよくわからないんですよ」
「まあ、たまには、そういう日もあるでしょう」
又倉さんはそんなふうに言ってはいるが、もうちょっと違うことが聞きたいのだという雰囲気が漂っている。
「家で何かあったんですか」
結局、又倉さんは我慢ができなかったのか、ひそひそ声で聞いてきた。昭子はさして気にもせずにさらりと答えた。
「別に何にもないですよ」
又倉さんはそれ以上何も聞いてこなくなった。昭子がすんなりと何もないのだと答えてしまっては聞きようがない。
今日は客が比較的少ない。小雨がぱらついているせいもあるだろうが、それにしても客が少ない。いつもならもっとたくさんいるはずなのに、どういうわけか、少ない。
客がレジにこなくなってしばらくして、店長が近付いてきた。
「えーっと、悪いんやけど、これチェックしといてくれるかなあ」
そう言って、新刊の入荷リストを昭子に手渡した。入荷伝票と新刊リストを照らし合わせて、何冊新刊が入ってくるかをチェックするだけである。
内容的には簡単なものだが、チェックする数が多いのと、双方のリストの順番がばらばらなので、少々面倒な仕事だ。
「はーい」
昭子はそう言って、入荷リストを受け取った。どうせ、今は客も少なくて暇なんだし、暇つぶしにいいか。そう思った。今でなくても、どうせしなければならないのだし、又倉さんがいるうちにしておけば、自分への負担も少なくて済む。
Posted at 2013/04/30 20:56:41 | |
トラックバック(0) |
小説 | その他
2013年04月30日
半分実験的にやってみた連載物ですが、読んでくれていた方がちらほらといてくれたようで。(^^;
終わった翌日のPVを見ると、一気に100位下がってて、これまたびっくり。(^^)
今はアコードハイブリッド特需のせいで数字が上がってますけどね。
これまた恐ろしい事に、連載のリクエストが。(^^;
まあ、過去のネタを引っ張り出すだけなんですが。なかなか新作を書き下ろすネタも元気もあまりないし。
というわけで、一応、連載を再開します。前よりは短いです。
車とは何の関係も無いものですが。
また、今回は一日おきに連載とネタブログを掲載します。
一日二本アップはちょっと面倒なので。(^^;
Posted at 2013/04/30 20:48:24 | |
トラックバック(0) |
小説 | その他