Tamonのブログ一覧

◆免許取得篇◆

平成5年の春。

何故か私は教習所の前に立っていた。

それまで免許を取るつもりなんて微塵も無かった。


当時車に全く興味が無く、知っている車といえば丸目テールのスカイラインやクラウンといった有名どころぐらい。かろうじて親のサニーだけは知っていた。

今思えば馬鹿な話しだが、車を運転する人をどこか異次元のスーパーテクニックを持った人種だと思っていた。あんな鉄の塊を自在に操るなんて、天才の所業としか思えなかった。

小心者の典型な私は、畏れ多くて「鉄の塊」を自由に操ることができるパスポートに近づこうとすらしなかった。


学生時代、何に対しても無気力な若者だった。
口癖は「面倒くさい」。

ある日、高校時代の友人に「免許を取りに行こう」と誘われた。
内心面倒くさいと思った。

しかし唯一の友人からの誘いだったので、渋々近所の教習所へ行くことにした。

既にAT限定を選べる時代だったが、友人がMTで取るというので私もそれに倣った。
他人の後に付いていく典型的な人間だった。


今では考えられないが、教官たちはビシバシ系だった。
大声で怒鳴るおっかないおばちゃん教官や、教習コースで自分のS13シルビア（後で調べて知った）を猛スピードで振り回す、ナルシストでイッてる教官など、良く言えば個性的な面々だった。

坂道発進、縦列駐車、車庫入れと苦手項目は沢山あったが、路上教習を規定の2時間オーバーして何とか教習を修了した。
免許センターで自分の番号が呼ばれたときは、安堵したのを覚えている。

ちなみにその友人はユーノスプレッソの新車のATを購入、その後家族ができ、ついぞMT車に乗ることはなかったようだ。


車に縁のなかった若者が自由の「パスポート」を手に入れた。
これがあればどこでも好きな所に行ける。
そう思ったら、無性に車に興味がでてきた。

それからは車雑誌を買い漁って、どんどん知識を吸収していった。

ある日ふと手に取った雑誌に、DC2の丸目インテグラが載っていた。
私の目は釘付けになった。何だ、この格好いいクルマは！
毎日雑誌を眺めてはインテグラを手に入れた妄想をするようになっていた。


月日は流れ就職が決まり、ようやく自分で車を買うことができた。
中古車でローンだったが、前日の夜はワクワクして眠れなかったのを覚えている。

あこがれのインテグラはまだ高価で高嶺の花だったので、イージードライブを楽しむつもりでAE101（トイチ）トレノのATを選んだ。

しかし予想に反して、あまり楽しいと感じることはできなかった。
ＡＴだと自分の思うように車が動いてくれない…

免許取得後1年以上もペーパードライバーだったくせに、どうしてもMT車に乗りたくなり、9ヶ月で兄弟車のレビンに乗り換えた。

店頭での納車だったので、自宅までエンストしまくりながら帰宅したのは今となっては恥ずかしい思い出だ。きっと後続の車は怖かったに違いない。

レビン、というか、MT車は予想通り楽しかった！

それこそ自分で思い通りに操っていることを実感できた。

自分が求めていたのは「これだ！」と確信が持てた。

トイチは名機4AGを積んでいたが、ノーマルのままだと面白みに欠けていた。
車好きの若者の常で、いじりたい病にかかってしまう。

マフラーやエアクリ交換に始まり、フルバケ、ホイール、スーパーストラット用オリジナル車高調（28万！）、リアウィング、LSD、フルブッシュ、サイドシル発泡ウレタン補強に至るまで、行き着くところまで行った。

街乗りオンリーでここまでやる必要は全く無いことに気づくのに、そうは時間はかからなかった。

結局5年ほどでレビンを降りたが、一度もサーキットには行くことはなかった。
まさに、雑誌踊らされ症候群だった。
（このころはインターネットは普及していなかった。）

次に買う車は、ノーマルでも楽しそうなホンダのスポーツ車にしようと心に決めた。