今や軽自動車にも普及した〝前車追従式ACC〟をはじめとする先進の安全装備ですが、市販車に初めて採用したのは、私の記憶ではメルセデスが一番最初ではなかったかと思います(違っていたらご容赦ください)。以前、身分不相応ながらメルセデスの先代A-Classに数年乗っていたことがあり、当時としては画期的な〝ディストロニックプラス〟が装備されていました。以来約5年、今では国産各社も安全機能を採用するようになり、ダイハツ車にも〝スマートアシスト〟が標準装備されるようになりました。
そこで気になるのは、メルセデスの〝ディストロ〟とダイハツの〝スマアシ〟中でも〝前車追従型ACC(アダプティブクルーズコントロール)〟の使い勝手と性能の違いです。私がメルセデス(A180)を購入したのが2015年の年末で、既に5年以上前のこと。現在はモデル自体新しくなっていますので、機能・性能についても現行モデルではさらに進化していますが、当時の先代A180と比べてどうなのか、率直に評価したいと思います。
5年前ということを考えると、メルセデスのディストロは本当に優秀でした。現在の国産車の場合、ACCは装備されていても、いまだにパーキングブレーキが電動になっていないことで停止保持ができず、一般道や渋滞時はその性能をフルに発揮できないものが多いようですが、メルセデスは当時からいち早く電動Pを採用して、ACCも渋滞時を含む全車速で実用レベルの性能を持っていました。
メルセデスで生まれて初めて追従式のACCというのを体験して、高速道路なんかステアリング操作だけでほぼ自動運転じゃん!と当時は大変驚きました。でも、信号もなく基本的には停止することのない高速道路はともかく、一般道での使用は、最初はやっぱり少し怖かった!信号で前の車が停車するたびに〝ホントに止まるの?大丈夫?〟って感じで、おっかなびっくりでしたが、慣れるまでそう時間はかかりませんでした。
タフトの方が5年以上も後発ですが、A180の場合は当時約300万円、タフトの場合は約150万円と、ほぼ倍の価格差があることも最初にご理解いただいた上でご判断いただきたいのですが、現在タフトのACCを使い始めて、どんなところにメルセデスとの違いを感じるかというと、まず、高速道路での使い勝手に関して、前車を追従しながら設定速度で走行するという状況下では、ほとんどどちらも遜色ないかと思います。
ただ、メルセデスの場合、死角となるナナメ後方にクルマがいると、ドアミラーに三角の表示が点灯して注意を促す〝ブラインドスポットアシスト〟という機能があります。さらにその状況で車線変更をしようとウインカーを作動させると、音と振動で警告してきます。高速なのに車線を頻繁に移動しなければならない首都高などでは、この機能にとても助けられましたが、タフトにこの機能はありません。
しかし、タフトも負けてはいません。メルセデスにも車線を逸脱すると音と振動で警報を発する機能はありましたが、タフトの場合は自動でアシストもしてくれます。ステアリングには常に手を添えていないと警告が来ますが、走行中にステアリングが自動で動くさまは自動運転に近い感覚です。ただ、これも完璧ではなくて、ほぼ直線の道路の場合、例えば左に逸脱しそうになると右にハンドルを切ってくれますが、そのまま右の車線まで行ってしまい、右の車線を逸脱しそうになると左にハンドルを切る・・・というのを繰り返す感じで、要は車線内をジグザグに走る感じがします。他のクルマから見ると挙動不審に見えるかも。やはり完全に操作を任すレベルではないので、メーカーが念を押している通り、ステアリング操作はあくまで自分で、というのは至極当然かと思います。しかしながら緩やかなカーブならほぼカーブの通りにハンドルを切ってくれて、わりとすんなり曲がってくれる感じがします。制御作動時には直線でもカーブでも常に車線の真ん中をしっかりトレースしてくれるようになってくれれば100点ですね。ここは要改善点です。
それから、メルセデスが優秀な点として、ACCで追従中に前の車が左折や車線変更などで急にいなくなった場合、自然に設定スピードまで加速していくのに対し、タフトは急に前のクルマがいなくなるとすぐにスピードを上げずにモタモタします。なぜか逆にスピード落としたりすることもあるので、後続車に〝なにやってんねん!〟と思われそうでアクセルで加速する場面が多々あります。前車の挙動にかかわらず、加速・減速のスムーズさと言いますか、ナチュラルさは5年前のモデルでもメルセデスの方が安心感があった気がします。
一般道や渋滞の場合も、基本的にはどちらも遜色ないと思います。しかし、ここでは後発の強みとも言えるかもしれませんが〝先行車発進お知らせ機能〟を搭載したタフトが便利です。ACC作動時、止まった状態から前の車が走り出しても自動で発進しません。アクセルを軽く踏むか、スイッチ類で再発進しなければならないので、この機能は非常にありがたい。加えて〝標識認識〟も旧メルセデスにはなかった機能。最近の軽自動車の進化はやっぱりスゴいと思います。
さらにもう1点、操作感の問題としてスイッチの位置と形状があります。先代メルセデスのACCの操作は、ステアリング奥の左側に設けられた〝コラム〟のようなバー形状の操作スイッチでした。通常、高速道路での巡航や渋滞時、だいたい右手はステアリングに添え、左腕はアームレスト等に乗せて、リラックスした体制で運転していることが多いと思います。この体制だと、メルセデスは左奥に設置されたコラム式のスイッチにいちいち左手を伸ばさなければならないのが結構面倒でした。
しかも、ACCとウインカーのコラムが近い位置に設置されていて、操作方法も似ているので、ウインカーを操作しようとしてACCを、ACCを操作しようとしてウインカーを作動させてしまうという間違いはけっこう頻繁にありました。そもそも輸入車はウインカーとワイパーが国産車と逆なので、そっちの操作ミスも結構ありました。しかし、タフトの場合はステアリング上の右側、添えた右手の親指で届く場所にボタン式のスイッチがあるので、体制を変えずに親指だけで操作できるのがとても使い勝手がいい!左ハンドルを日本仕様にするため、言わば無理やり右仕様にしている輸入車の弱点でもあると思いますが、この辺りの操作感覚はタフトの方が優れていると思います。
総合的に評価すると、やはりどちらも甲乙つけがたい。どちらにも一長一短はあるし、冒頭でも言及した通りメルセデスは5年以上も前の車だけど、タフトとはお金のかけ方が違います。ただ率直に言って、タフトのACCの性能は高速はもちろん、一般道や渋滞時でもしっかり実用レベルになっており、正直ここまでとは思っていませんでした。もちろん、今回の比較対象は「旧型」のメルセデスであり、現行モデルはさらにコストをかけてタフトなど遥かに凌駕したACCを搭載していますが・・・。
それを差し引いても、倍の価格差がある軽自動車のタフトはかなり頑張っているんじゃないかな、というのが今回の比較の結論です。誰もが認める高級車のメルセデスが鳴り物入りで採用した最新技術、それとほぼ同等の機能がわずか5年で軽自動車に標準装備となっているというのは、なかなか劇的なことだと思います。
Posted at 2021/03/09 20:46:04 | |
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