研究協力のため国立スポーツ科学センターに行ってきました。
研究協力といっても被検体としての参加です。協力期間は延べ8日間、そのうちセンターにいるのは3日で宿泊は1回。毎日24時間のうち睡眠時と入浴時以外はすべて協力時間となります。
ここは日本のトップアスリートたちを科学的に支援して世界でメダルを獲らせるために、国費で運営されているスポーツ科学・医学・情報研究推進の中枢機関です。とくに室内競技が近年飛躍的に強くなったのはこの施設によるものだというのは広く知られていることです。
研究内容と目的はボクのような身体事情の人間の体組成やエネルギー代謝能力などを極めて精密に測って、そこから得られたデータを基にして同様の身体事情の人々の今後の医療とスポーツに役立てるというもの。そんな基礎中の基礎とも思えるデータなのに、それが日本には存在しないとのことでした。
ボクを選ぶとはお目が高い(謎)。しかしボクがガチな元アスリートということで指名されたのかと期待したけど全然そうではなかったです(てへ)。この15年間、スポーツのスの字もない、スポーツとはまったく無縁の暮らしをしているボクなので当然ですが、あくまでも一般枠での参加です。研究スタッフからも何度か一般枠と念を押されたのは地味に悔しかったですが。
検査内容のさわりを少し聞いただけで、こんなハードな内容では被験者を確保できるわけないでしょと思いました。あと、全容を説明するには時間がかかりすぎるし、なにより被検体候補者が怖じ気づいて敬遠してしまうのを恐れているようでした。その心情が汲み取れたので実際は説明以上にたいへんで、また説明以外にも検査項目が多数あるのだろうなと裏読みできました。実際に参加者がなかなか見つからずに困っている様子もわかりました。検査がはじまってから心身の苦痛が限界に達した場合はいつでも途中リタイヤ可能とのことだったけれど、そうなったらそれまでの努力が水泡に帰すので参加するのであれば最後までやり遂げねば。
身体能力面でもかなり困難だし拘束時間も長いし、測定方法や機器によっては肉体へのかなりな危険も伴うものだったので、説明を聞いて0.3秒で即答で断ろうと思ったのだけれど・・・
何故か使命感を感じたし、ボランティア精神あふれるナイスガイなボクちゃんですし←?、
なんといっても国立スポーツ科学センターに奥深く入れるということへの好奇心のほうが勝ってしまいました。
とにかく参加のための都合調整と体調管理は非常に大変でした。参加表明後から当日までの間に何度か電話で意志確認があり、怖じ気づいてドタキャンしないようにとの圧力として受け取りました(笑)
そんなわけで万難を排して行ってきました。
<<ドーピング禁止>>
まず初日。センターに到着して、長くて難しい説明を聞いて、同意書を書いて検査開始です。
今回の研究の被検者の人数を訊いたらほかにも数人のべ10人くらい集まるとのことで、その人々との交流も図れると期待したのも大きな参加動機のひとつでした。なのですが・・・参加してみたら他には誰もいなかったです。被検者を集められず、他の日程にもう1名いるだけだそうな・・・。
まず最初にしたことは、「二重標識水」を飲むこと。
この二重標識水というものは重水素と重酸素が入っている特殊な水で、摂取後のその血中濃度と尿中濃度の変動を精密に測ることで代謝能力を見極めるそうです。
その価格はなんとコップ一杯で10~15万円
↑ ふぁっ!?!?(笑)(笑)(笑)
現在もっとも確実な計測手法らしいのですが、水も検査機器も非常に高額ゆえ多数の被検者に用いることができないとのこと。ちなみに薄い食塩水のような味でした(笑)
センター内で他にやる検査や測定の項目は、
採血、採尿、血圧、呼吸、心拍、心電図、肺活量、体重、身長、体型、両腕リーチ(ウィングスパン)、筋肉と脂肪の厚み、身体の体積、体温、MRI、レントゲン、細胞内外液量、筋グリコーゲン濃度、生体電気インピーダンス、呼吸代謝、他にもいろいろと。身体の体積は水着に着替えてから専用のカプセルに入って計測するというもの。
すべて分刻みでかつかつにスケジューリングされていて、自分一人になれた時間はトイレ室内と睡眠時のみでした(笑) 当日になってから追加で頼まれた内容もいくつかあり、口では嫌なら断ってもいいんですよと言いつつも、その目には頼むから断らないでくれという強い圧力がこもってました。断りたくても・・・断れない。
センター以外での時間は、
心拍数や運動量を測るため心拍数計と加速度センサーをカラダに装着したまま8日間を過ごす。取り外してよいのは入浴時と睡眠時のみ。バッテリー切れに注意しろとのことなので、こまめに動作確認をしないとならず、また充電器を持ち歩く羽目になるという(笑)
さらに面倒なのが8日間すべての行動を詳細に記録すること。何時何分~何時何分まで着替え、とか運転とか、食事とか、デスクワークとか、談笑とか。食事は全メニューと量も記す。
などなど。
最後の二日間は用を足すごとに採尿。
さらに最終日は1~2時間おきくらいに採血と体重測定を繰り返す。
ボクの場合、安静時(横たわってほぼ睡眠状態)でも無意識下で微細な筋収縮がほぼ全身にわたり約5分に一回起きているとのことがわかったのだけれど、血圧変動がまったく伴わないとのことでとても不思議がられました。つまり普通は伴うってことなんでしょうね。5分おきに筋収縮活動があることをボク自身も知らなかったです。
他にもいろいろと発見があったのだけど、ややこしい内容なので割愛。またボクが知らされてない内容も多くあるようでした。ここから得られたデータは数か月後にはさっそく医療や研究に反映されるとのことでした。
明確な実績を出さなければ施設や研究員たちの存在意義を認めてもらえないし、東京オリンピック・パラリンピックも迫っていて緊張感がみなぎっているのが伝わってきました。科研費も給与も税金からだもんね(笑) ここですれ違った何かしらの競技の強化指定選手と思われる人たちも独特の雰囲気を漂わせていました。
設備やスタッフのレベルの高さ、そして館内における情報と衛生面のセキュリティ管理のレベルの高さに感心しました。その日ごとにカードキーを渡されるがその日の測定に必要なセクション以外へは入れない(各フロア・各セクションごとのドアが開かない)という徹底ぶり。
あ、そうそう。初日に元フィギュアスケート選手の村主章枝氏とすれ違いました。たしか引退後はスポーツ栄養学を学ぶという記事を読んだ気がします。記念撮影をお願いしたかったけれど、場の雰囲気と分刻みの検査スケジュールがそれを許してくれなかったです。
宿泊日に駐車場で、警備員にそこには明日要人が来るから停めないでと言われました。要人とはJSC(日本スポーツ振興センター)理事長の大東和美氏とスポーツ庁長官の鈴木大地氏のことでした。
<<宿泊施設>>
ガラス扉の先が宿泊室エリアで酸素濃度が管理されています。濃度を上げて身体の疲労回復を早めたり、濃度を下げて睡眠中も高地トレーニングができたりするとのこと。
<<寝室>>
睡眠時の姿勢や動き(寝返りなど)をモニタリングする装置もついてました。ボクに付き添いの研究スタッフたちはボクの隣室で泊っていました。
<<抜き打ち検査>>
ボランティア精神と好奇心による参加なので無償でまったく構わなかったのだけど、全行程が済んだ後に謝金という形でちょっとした手当てが出たので、ありがたくいただきました。測定器間の移動時に派手に転倒して右脇を痛めてしまったのは内緒です。ドンくさいですね(笑)
ボロクタになったのでもう二度とやりたくないですが、貴重なデータがたくさん採れたということでとても喜んでる研究スタッフたちを見たら、参加してよかったなと心から思いました。
俺氏、頑張りました。
ではまた。
Posted at 2019/02/18 21:00:05 | |
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