
アウディのシンボルである、フォーリングスの由来のだいたいのことは、多くの方がご存知と思いますので、4社合同前の原初の頃のハナシをします。
長文ですが、最後まで読んでいただく価値はあると信じています。
どーか、お付き合いください。
これさえ読んで、要点だけでも頭の片隅にでも置いといてもらえれば、AUDIディーラのセールスマンとの会話でも引けを取らないであろうこと請け合いです。
途中にちりばめっておいた、豆知識も駆使すれば、飲み屋でねーちゃん(失礼。クラブで、おねいさん、お嬢さん、レディ)にも自慢できるかもしれません
では、いってみましょう。
アウディの前身「ホルヒ」の名前は、耳にしたことがあると思います。
この会社、独国はKoln(=ケルン市)でベンツの工場長だった、鍛冶屋の息子さんの、August Hoch(=アウグスト・ホルヒ)氏が、1898年(1899年とも)に独立して興した自動車修理工場が始まりです。
(なんか、本田宗一郎氏みたいですね)
(豆知識)
ケルンは、英語名ではCologneで、コロンもしくはケラウンと発音します。あのオーデコロンのコロンです。だから、オーデコロン、実は、本来、ケルンの水という意味です。
因みに、小生が住んでいた伊国のTorino=トリーノ(日本ではトリノ)は、英語名はTurin=チューリン、もしくはチュリーンと発音。
オリエント急行に同乗していたポワロ氏、列車内密室殺人事件におけるトリックを、この伊国語と英語の違いから見破ってました。映画は字幕版で見るのがおススめ。
小生、住んでました故、英語でこの映画を見た時には、ポワロ氏がナゾ解きを披露する前に、トリックを見破ってしまってました。
閑話休題、
この会社、Horch & Cie. Motorwagen Werke(=ホルヒ&カンパニー自動車工業と名付けられてました。
(豆知識)
これまた余談の豆知識ですが、BMWは、Bayerische Motoren Werke、英訳すると、Bayern Motor Works、日本語ではバイエルン州 発動機製造 となり、カッコ良さなんてミジンも感じられない、ミもフタもない、なんともベッタベタな名前になります。
因みに、IBMは、International Business Machines = 国際事務機器です。(ま、クルマとは関係ないですが)
このホルヒ&カンパニー自動車工業、設立3年後の1901年には、プロトタイプ、2気筒2.5Lの「Type 4/5PS」を完成させています。
さらにその5年後、独国の一大レーストライアルに4気筒OHV 2.7Lの「Type 18/22PS」を持ち込み、堂々、見事優勝を果たします。
ただこの創業者のホルヒ氏、根っからの技術屋さんだったらしく、とにかく性能第一。
利益優先の経営陣(取締役会及び監査役会)からは、経営者失格の烙印を押され、衝突したのち、自分の会社から追放されて(自ら退社、ヤんなってほっぽり出てったのかも)しまいます。
追い出されたのだとすると、何とも悲しい、やるせない話ではないですか。
でも、このホルヒ氏、根性の人です。くじけてません。
だったらやったろやないか、ということで、またもや自分で自動車製造会社を作ってしまいます。
一矢報いるつもりか、何ともまぎらわしい、August Horch Automobilwerke GmbH Zwickau(=アウグスト・ホルヒ自動車製造有限会社ツヴィッカウ、Zwickauは独国はザクセン州の都市)と銘打った、会社を打ち立て、車名にも、イヤがらせのようの「ホルヒ」の名を用いて、敢然と立ち向かいます。
(自分の名前に因んでるもんなんで、紛らわしい、嫌がらせ、の部分は、小生の想像です。)

【August Horch Musium Zwickau】
しかし古巣の、旧ホルヒ社の経営陣からは、当然、「ホルヒ」の名前使用差し止めを求める裁判を起こされ、あえなく敗訴、撃沈する始末。
(こんなん、ちょっと考えればわかりそうなもんです。ホントに技術バカで、へソ曲がりのオッサンだったのかも)
一方の、創業者を失ったホルヒ社、ゼンゼン失速なんてしてません。超高級車メーカーへの道ををひた走り、高級プレステージカーを売りまくります。

(写真は、V型12気筒、Type670 1931年発表の超高級車)
ホルヒは、マイバッハ、メルセデス・ベンツと並び称される、独国高級車代表選手で、ナチスドイツの公用車としても使われたほど。
でもメルセデスには、ホンの少し下に見られてたようで、ヒトラー総統以下のナチス高官はグローサーメルセデスをパレードで愛用、

【ヒトラー総統のグローサーメルセデス】
大のメルセデス嫌いのゲーリング国家元帥だけが白いホルヒを使っていたそう。

【ホルヒのパレードカー、写真はミニチュア】
それでも、ホルヒさんの方、このヒト、さらにくじけません、泣きません(イヤ、人知れず悔しナミダを流したことはあったかもしれませんが)
ホルヒさん、ほんと懲りないヒトです。
根性のヒトの上をいく、ド根性の持ち主です。
そこまでやんねやったら、とことんヤッタロやないか、三タビ立ち上がります
今度は会社名を、「AUDI」と名付けます。
ここに至って、ようやく我らがAUDIの名の誕生です。
しかし、小生のハナシはここで終わりではありません。
ホルヒさん、我々の期待を裏切りません。
ここでもヤッパリ、ヤッチャてくれてます。
AUDIの名の中に、シッカリと意趣返しの意味をこめまくってます。
このAUDIという名称に、私はホルヒさんの並々ならぬ闘志を感じます。
Audiは、ラテン語の audire「聴く」から来ています。
audireを語源とする、馴染みのあるコトバは今もイッパイあります。
オーディオ(Audio)、オーディエンス(Audience=聴衆)、オーディット(Audit=監査、監査業務は「聴く」ことが基本です。因みに小生の職はAuditor=監査人です。だから、こんなこと知ってたんですが)
一方、ホルヒさんの名前の、horchは、独国語で、意味は同じく、「聴く」なのです。
あくまで、自分の会社に自分の名前を使うことに、こだわり続けます。
諦めません、勝つまでは、ってなキモチだったのかもしれませんネ。
"Horch!"は、「聞いて!」、ですし、"Doch horch!"は、「でも、聞いて!」です。
(小生、学生時代、第2外国語として独逸語をほんのちょっとかじりましたので、これくらいはわかります)
と、リベンジを心に誓い、真っ赤に燃える並々ならぬ闘志をたぎらせるオトコの姿が見えるようではありませぬか。