
【U.K.=英国は、赤ワクの四つの国から成り立っている】
以前から何度も触れていますが、小生は2度の欧州での居住経験があります。
また、西欧という域内(要はEU=ヨーロビアン・ユニオン)での、国を跨ぐ移動は何ら特別なことではありませんでした。
ヒト、モノ、カネの域内自由化が進められ、特に小生のようなビジネスパーソンは、域内をダイナミックに出張ベースで移動していました
U.K.を除くと、ほぼ全域がユーラシア大陸にあってボーダー(国境)を接しているので、移動、国境越えは飛行機はもとより、列車、クルマ、果てはチャリ、徒歩なんでもありで、
レジデント(居住者、EU加盟国のどこかで住民登録済み)には入国審査も形式的なものだけ、パスポートの表紙だけを審査官に見せて素通りなんてことが普通でした。
このEU、EEC(欧州経済共同体)、ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、EURATOM(欧州原子力共同体)が、一本化して、EC(欧州共同体)となり(この辺りの歴史は中学時代の社会で習っているハズ)、
1993年には、さらに発展して現在のEU(欧州連合)になったことは、知っての通りです。
(今まさにブレグジットで、英国/アイルランドがゴタゴタしてますが)
いつものように、ちょっと余談
今回は、余談が長いので、2回に分けます。
(書き始めてるウチに、伝えたいU.K.についての情報が次々に湧き上がります)
今日の一回目は余談のみ。the U.K.(連合王国、つまり英国)についての豆知識しか書いてません。
ただ、長いですが、最後のパラグラフだけは、TT乗り必見であること、最初に断っときます。
二回目(たぶん明日か明後日)で、本編「欧州でクルマを所有する」ことについての考察を述べます。
その英国ですが、普通、我々日本人はイギリスと一括りで言うことが多いですよね。
実はコレ、厳密に言うとまったく正しくありません。
イギリスと一絡げで片づけられるほど、そんな簡単なものじゃ、ぜんぜんありません。
実際に現地で暮らすと、カンタンにイギリスやイングリッシュのヒトコトで軽々に済ますことができない場面が多いことを、身をもって知ることになります。
小生が、英国を表現するのに、よく"U.K."を使うのには理由があります。
U.K.、これは、the United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandの略称です。
つまり、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国です。
グレートブリテン(略称、GB)とは、スグ思い描くあのイギリス型の島の名前、
北アイルランドは、グレートブリテン島の西に位置するアイルランド島にあって、アイルランド共和国とボーダーを接するアイルランド島北部地域を指します。
(もっかい、Top写真の地図で確認してみてください)
先に北アイルランドに触れておきます。
もともと、1801年に元のU.K.成立時は、はアイルランド全体が、U.K.(連合王国)の構成メンバの一員であり、
その後、1922年に、U.K.から離脱、独立したアイルランド自由国(実質は英連邦内の自治領で、その後、WWⅡ前後の完全独立運動を経て、共和国制に移行)が
できたものの、グレートブリテン島からの入植者の多かった北部の北アイルランドだけは、国土を分かち、連合王国の一員として留まることを選択し、現在に至ってます。
民主的手続きは取られたでしょうが、そこに暮らす、宗教的(GBからの多くの入植者はプロテスタント、元々のアイリッシュはカトリック)、政治的、経済的、心理的には本来GBサイド人たちの残留工作や、GB政府からの工作があり、
もう一方のアイリッシュとしてのアイデンティティ維持を目指す人たちとの対立の構図が、その時に生まれてます。
その歴史的背景から、かつては北アイルランドでは、連合王国から分離独立を目指す激烈な運動があり、当時のもっとも過激なテロ組織、IRAが活動してました。
今でこそIRAのテロは沈静化し、テロはイスラム軍団や半島国家の専売みたくなってますが、
小生が英国に暮らしていた当時は、まだヒースロー空港なんかでIRAが仕掛けたと見られる爆弾発見なんかで、しょっちゅう機能マヒしてました。
フレデリック・フォーサイスのスパイ小説/映画なんかを読んだ/見た人は知っての通りです。
さて、U.K.に話を戻すと、
グレートブリテンの中でも、人々の感覚や一部行政システム(各地域で大幅な自治権あり)、人種、コトバも、ゼンゼン一つじゃありません。
(わが日本とは全く異なることを、まず理解しといてください)
サッカーやラグビー好きなら知っているでしょう。 彼らが国の代表として出てくるのはイギリス代表チームではなく、イングランド代表、ウェールズ代表といった案配であることを。
でもオリンピックなんかの、主権国家レベルとしてのナショナル代表は、チームGB(グレートブリテン)として出てきます。
そーなんです。それぞれの独立した国(4つ)が、同一の君主(現君主はエリザベス・ザ・セカンド=エリザベス2世女王)を戴いて、連合して主権国家を形成している、立憲君主制の(この部分は日本と同じ)、国家(王国)連合なんです。
その4つとは
、
まずグレートブリテン島の3国
「イングランド(元王国)」
アングロサクソン人の国で、イングリッシュ(イギリスの語源です。もちろん英語を話します)です。
首都は、言わずと知れたロンドン。でも厳密には、「実質上の」首都と呼ぶべきものなのかも知れません。
他の3国にもそれぞれ、文字通りの意味で、"首都"があるからです。
イングランドは、言語としての英語に、余裕の絶対的自信を見せる国です。
この点、世界に覇を唱えた大英帝国です。
米人の話す英語とは異なりますし、ハラの中では、小生が思うにタブン米国英語を見下してます。
日本の有識者を名乗る輩が、英語はまずは会話だとかなんだとか、知ったような口きいてますが、
何と言おうが、小生体験から、戦後日本の文法英語教育は間違ってないと確信してますし、実際、英国では恐ろしく役立ちました。
(実際に住んで、地域社会で生活し、いちビジネスパースンとして、会社勤めしてた小生が言うのですから、まちがいありません)
それに、英国では、チョッとでもエスタブリシュメント側に足を踏み入れたら、如何に正確な文法や時制、冠詞を使っているかで人物判断します。
よく聞くでしょう。
クイーンズイングリッシュやキングスイングリッシュといったコトバ。
上流階級の人たち、エスタブリシュメントは本当にキレイな、ブリティシュイングリシュを話します。
アメリカンイングリシュなんてハナクソぐらいに思ってるかもしれません。(言い過ぎました。 ソコまでハラ黒くないでしょう)
だから、今までの日本の学校英語がすごーく大事です。
文法の基礎があれば、シャベリは、何とでもなります。
小生の英語の大先生(通訳資格を持つ会社の先輩)は言ってました。
「英語は根性だ!」と。
要は、学校英語である程度の基礎があるハズの日本人なのだから、
恥ずかしがらず、まず話しをする勇気を持つことだと。
シャイな日本人は、周りに他の日本人がいる(ココ、ポイントと小生はにらんでます)と、それが見知らぬ日本人であっても、どー思われるかの方が気になり、
黙っているほうがハジをかかないという選択をしがちです。
これじゃーいつまで経っても、話せるようにはなりません。
一方、会話だけ先に覚えてしまったヒトのしゃべりを、英語を話せる人間が近くで見てると、ひじょーにウスッペらい、カッスカスの英語を話しているように聞こえます。
やはり、学校で習う、暗記部分を多く含む学習は、持っておかなきゃいけないベース(=基礎)を作るものです。
こと英国においては、逆に発音なんかは、ジェントルマンの国、かつ各地に植民地を持った国です。
英語を外国語としている国の人の英語には、何とかコミュニケーションをとろうと、ゆっくり、かつ平易なコトバでしゃべったり、何とかこちらの言いたいことをわかろうと努めてくれます。
米人なんかは、英語しゃべって当たり前みたいに、ベッラベラとスラング、短縮まじりの早口英語を話すんで、英国人からすると、だらしなく下品と映るみたいです。
多くの英人知り合いから、直接に本音として聞きました。 一方の米人は英国人の英語をバカ丁寧でおかまみたいとやり返してましたが。
でも小生は実際この目で見、経験してきました。
口先だけでしゃべりは一見うまそうで、英人も合わせてるようには見えますが、中身・内容が薄ければ見透かされ、本人は満足げでも、実はうまくあしらわれ、テキトーに扱われてるだけかもしれません。
それよりも、たとえ魂の英語でもパッションが感じられる方には真剣に向き合います。
海外駐在者の要件として、英語はウォンツではあるがマストではない(望ましいが必須ではない)とよく言われます。小生の在籍してきた会社でも押しなべて、タマシイの英語をしゃべる人が選抜され、海外に出て行ってます。
想像出来るでしょ。
日本語も同じです。 内容ない話を日本語でべらべらしゃべる外国人より、拙くても一生懸命、何か伝えようとする外国人の方に真剣に向き合いますよね。
「スコットランド(元王国)」

【バグパイプはスコットランドの民族楽器】

【スコットランドのハイランド地方=北の端のほう】
人種的にはバイキングの末裔ケルト族のゲール人が北から下ってきて打建てた国で、スコティシュ(スコットランド人で、公用語のスコットランド・ゲール語や、スコットランド語を話す)です。
もちろん英語も話しますが、彼らの話す英語は、小生には大変聞き取りづらい。ノドの奥になんかつっかえたような話し方、発音をします。
首都はエディンバラ
(道府県庁所在地的な意味ではなく、文字通り首都です)
首相もいます。あの、最近よくTVで見かける、イングランド首相ボリス・ジョンソン氏と違う、別のスコットランド首相がいます。
法律、裁判、教育といった制度も、イングランドや他の2国と異なる独自のものです。
また、常識的に国の中央銀行にしか許されない、発券業務(日本の日本銀行券に相当)が、本家中央銀行であるイングランド銀行の他に、スコットランドにある銀行3行(私企業銀行)に認められています。
U.K.中で流通、通用するものの、我々が普通思い浮かべるポンド券面とデザインも異なり、イングランドでスコットランドポンドで支払おうとすると、イヤがられます。
逆も同じで、スコットランドで英国銀行のポンドを出すと露骨にイヤな顔をされることもしばしば。
王様もいます、エディンバラ公フィリップ王。エリザベスⅡ世女王のダンナ。
スコットランド人としてのプライドが高く、未だU.K.からの独立を目指す人たちも多い。
「ウェールズ」

【ウェールズのコンウォール岬、GB最南西端のLand's End(実は地理上最南西端ではない)】
グレートブリテン島の最後は、南西にある国、
祖先をブリトン人とする末裔で、後からやってきたアングロサクソン支配に頑強に抵抗してきた、ウェリッシュ人の国。
英語とは言語体系が全く異なる、ウェリッシュ=ウェールズ語、またはコンウォール語を話します。
ロンドンからウィンザーを越え、バースを越え、首都カーディフを越え、スウォンジーまで通じる、モーターウェイ(=高速)のM4を走っていると、
ウェールズに入った途端、案内標識も2ケ国語併記になる。それぐらい、文字も英語と全く違います。
一番南西端の岬は、イングランド人をして、Land's End=地の果て、と言わしめたという。
スコティッシュ同様、もちろん英語も話しますが、ウェリッシュの話す英語は、聞き取りづらいを通り越して、壊滅的にワカラン。
もはや聞き取り不能。
まさに英語界(そんな界があれば)の、ずーずー弁です。
首都はカーディフ。
首相も、同様に、もちろんいます。
王様は、プリンス・オブ・ウェールズ、つまり、エリザベスⅡ世女王の長男、チャールズ皇太子。
「ノーザン(北)アイルランド」
アイルランド島の北部地域です。
スコットランド同様、人種的にはバイキングの末裔ケルト族のゲール人、アイリッシュ人の国です。
同様に、スコットランド語系の、アイリッシュ(アイルランド語)を話します。
首都はベルファスト。
モチロン、首相、います。
ただここだけは、他の3国に比べ、ちょっと格下です。
4国全てが"Country"と呼ばれてはいますが、他の3国は"Country"の他に、"Region"、と呼ばれることがあるのに対し、
北アイルランドだけは"Proviince"が使われたりします。
以上、ことほど左様に、イギリスは奥が深い、
ということが判っていただけたのではないでしょうか。
最後に、TTファンへのとっても大事な情報です。
"TT"が、"Tuourist Trophy"の略であること、
その"Tuourist Trophy"は、20世紀初頭から英国のマン島で行われている"Tuourist Trophy Race"に出場し、1960年代にあまた栄冠を得たスポーツカー「TT」に由来することは、
オーナーなら、ほぼ100パー、知っているものと推察します。
(余談の余談になりますが、世界のホンダは、このマン島TTバイクレースへのチャレンジから始まったといって過言ではない)
ではマン島は何なのか、答えられる人はいますか?
答えは、(今回はえちごせいかは止めときます)
場所は、グレートブリテン島とアイルランド島の狭間に位置する島ですが、実は、英国であって英国でないという特殊な存在です。
この島、the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland、つまりU.K.の一部ではありません。
ましてや、オーストラリアのように、エリザベス2世女王をTopに戴く、Commonwealth of Nations(=英国連邦)加盟国の一員ですらありません。
実はこの島、ずーっと昔っから、自治権を有す、英国王室の属領(= Crown dependency)なのです。
(平たく言えば、王室のプライペートの持ち物だが、自治権も持つという)
従って、この島のTopがエリザベス2世女王陛下であることは、他と変わりはないですが、
この島での女王陛下の肩書は、"Load on Man(マン領主)"です。
その下に総督や副総督がいて、自治政府を運営してます。
外交、軍事等は、領主であるエリザベス2世陛下が、君主(すなわち立憲君主ですね)である、U.K.が肩代わりするという、当然と言えば当然の地位にいます。
人種的なルーツもケルト系で、言語もマン島語を持ってます。
どーです。
ちょっとした知識が増えたんではないでしょうか。