
【Mitsubishi Shogun 1994 model】
さて本題、本編の、「欧州でクルマを所有する」ことについての考察を述べます。
小生は、英国やイタリアに住んでいた時に、新車を(会社の金で)買って(もらって)、自家用車にしてました。
以前に紹介した、欧州FORDのMondeo Mk2や、Alfa Romeo147です。

【モンデオ】

【147】
今回、もっとも言っておきたいことを先に書いておきます。
それは、
良くも悪くも、
日本は、余程の生活困窮者でない限り、新車で自家用車を持つことができる、
世界からの視点で見れば、実は、かなり特異な国だということです。
若者であろう(たとえ学生でも)が、金持ちじゃなかろうが、平均年収レベルの所帯維持ができてる人なら、切り詰めたり、必死こいて働いたり(学生のアルバイト含む)すれば、ローンやリースも使って、新車を持ってしまえる、この日本の状況は、
海外に出ると判りますが、ゼンゼン当たり前なんかじゃありません。
良くも悪くも、の、
良い、の方は、誰もがフツーの努力をすれば、新車が持てる、超高額車でなければ外車ですら可能という、機会均等社会が実現してること、
悪い、の方は、交通社会に出してはいけない、不適格者まで、ピッカピカのクルマで湧き出してしまうことを許す、悪平等が同時に実現してしまってる、
と、小生は考えます。
小生の経験からの、欧州での状況を話したいと思います。
小生は、まず30歳台前半の頃、勤務先より、U.K.海外赴任を命ぜられ、英国で暮らしました。(出張や旅行ですら欧米に行ったこともない、英語もままならないところからの出発です)
次に、その10数年後には、転職した勤務先より、今度はイタリア海外赴任を命ぜられ、イタリアで暮らしてます。
最初の、U.K.では、勤務先のG.A. Dept.(=General Affairs Department、総務部)のマネージャに、予算上限値の提示を受け、自分でディーラへ足を運び、商談し、自分のクルマを決定してます。
まぁ、小生がしたのはココまでで、後の契約やなんかの必要な手続きは、会社に丸投げです。
これはイタリアでも、同じようなもんです。
(ただイタリアの場合はコトバの壁が厚すぎて、現地人スタッフに同行してもらってます)
因みに伊国人も、英語、そんなにしゃべれません。日本と同じくらいです。
英語が通じるのは、ビジネスで使うヒトや、外国からの訪問者相手の商売人、学生、見掛けではわからんが実は高学歴者といった人たちぐらい。
一方の小生は、お食事処での注文ができるくらいの伊語しかしゃべれないという。
これら買ったクルマ、実は小生の当時の財産ではありません。
代金は、勤務先の会社が支払い、真の所有権者は会社であって、小生ではありません。
ナゼ、会社のカネで、小生個人のクルマ(新車)を買った(買うことが許される/た)のか。
小生が、日本の本社からやって来た占領軍の一員だからなのか、
それとも、とんでもない功績を上げたのでご褒美として与えられたのか、
いずれも違います。
U.K.やイタリアを始めとする欧州(ドイツなんかも小生が知る限りはそーなんで、欧州で一般化できると思う)では、個人で"新車"を買う(買える)のは、一握りのスーパーリッチで、一般庶民はまず買うことなんてできません。
そんなこと、まず思いつきもしないでしょう。
あまりにクルマが高額だからか、社会の仕組みがそーだからなのか、いずれが先か、ニワトリが先かタマゴが先か論になるので、
どっちが先にありき、なのかは知りませんが、
まず、価格面から見てみます。
たぶん、このサイトは見てる輸入車オーナーはだいたい知ってると思いますが、車両本体価格は、欧州も日本もそれほど変わりません。
(ただ、Audiであれ、M・Bであれ、BMWであれ、本国では、日本で売らないウルトラ簡素仕様の超低価格設定車もラインナップにはあります)
では何が違うのか。
V.A.T(= Vale Added Tax、付加価値税、日本の消費税相当)が日本に比すと、恐ろしいぐらい高率なんです。
当然、今、日本でも目前の増税に併せて導入予定の軽減税率制はありますが、クルマに軽減税率が適用されるワケありません、当然です。
じゃ、V.A.Tの税率って、どんくらいなのということですが、
U.K. - 20%(小生が住んでた頃は、17.5%、2011年に現税率に増税)
イタリア - 22%
ちょっと、信じられますか、奥さんっ!
邦貨換算:500万円のクルマが、V.A.T込みになると、U.K.ではナント、600万円、イタリアに至っては驚愕の610万円です。
そりゃー、常にノブレス・オブリージュ(仏語:noblesse oblige から。高貴さ、つまり財産、権力、社会的地位を持つ者は社会奉仕/還元の義務を負ってる)を意識して行動してる、スーパーリッチやエスタブリシュメント(上流階級)は、いくら高くても喜んで納税して、自分のクルマを手に入れるでしょう。
でも、庶民は誰も買いませんし、買えません。 買おーなどと大それたこと思いつきもしません。
長くなってきたので、"社会の仕組み"に行く前に、ちょっと休憩、
そー、つまり余談です。
さて軽減税率が適用される対象は、欧州では何があるでしょうか。
U.K. - スーパー等で買う食材/食品、子供服、水道等インフラ系、書籍/新聞、等 = ゼロパーセント、つまり無税
イタリア - スーパーや店で買う野菜等の生鮮食材/食品、パスタ = 4%(パスタだけ、トクベツあつかいー、さすがちゅーかなんちゅーか、やってくれますイタリア)、
スーパーや店で買うハム等の加工食材/食品 - 10%(イタリアのプロシュート=生ハムはメッサ旨い)
と、こーいう按配になっており、該当しない商品、サービス、ぜーんぶ2割上乗せで、その2割は本来価値とはカンケーない税金です。
だから、庶民は気軽に外食なんてできるハズもありません。
マクドのセットで、1,000円前後。
もーね、なんだかね、アホらしやのカネが鳴る、ちゅーもんですよ。
(U.K.やドイツなんかは、マクドよりバーガーキングの方が多かったような印象、イタリアはドッチもあんま見かけず、のかわりにピザ屋/バールはいたるところに)
因みに、U.K.では赴任後、当初約3か月の、家族を呼び寄せるための生活基盤立ち上げ準備(バンクアカウント開設したり、家探ししたり、契約したり)期間としての単身期間があったんですが、
休みの日も、遊びも含めやること多すぎで、自炊なんてしようとはあんま思いませんでした。
そーなると、勢い外食になるんですが、近所(ロンドンではなく、西へクルマを2時間くらい走らせたサリー州の郊外が自宅)の中華屋(日本人からすれば、小奇麗ではあるがフツーの中華屋)なんかで、
金曜や土曜の夜に、Gパン+Tシャツなんかのラフなカッコでメシ食いに行くと、
ちゃんとしたイッチョウラでオシャレした家族客から、もんのすごーくイヤな顔、場違いだという無言の抗議を込めた冷熱視線を浴びせられたものです。
彼ら、彼女らにとっては、これぐらいの中華屋でも、その出費に一大決意を持って臨む家族イベントなんです。
まー、そんなことは知りながら、その後も気にせず普段着でいってましたが。
と、いうことで本題に戻ります。
社会の仕組みの面です。
こんなアホみたいに高いV.A.Tでも、街にはクルマが一杯です。
買えない(買わない)ハズなのに、どーして、と思います。
でも、街を走るクルマを少し注意深く見てみると、日本のように大体がどれもが磨き上げられたピッカピカのクルマばっかと違い、
キレイな高級車/新車(らしきクルマ)と、ポンコツまでいかないまでも、洗車なんかしとらんやろ、という二つにグルーピングできることに気づきます。
キレイな高級車/新車(らしきクルマ)はどうして購入され、登録されたものか。
まずスーパーリッチやエスタブリシュメントが買うことは、先に述べたとおりです。
でも、一握りの選ばれし方々だけのものなので、数はタカが知れてます。
それ以外のものは、実は、数多の会社が買って所有するカンパニーカーです。
このカンパニーカー、最初に述べたように占領軍に供出されるものでも、ご褒美でもらえるものでもありません。
フリンジベネフィットとして、従業員へ提供されます。 つまりは、給料以外に与えられる利益(=benefit)で付加給付です。
その他、フリンジベネフィットには、無償/低額の住宅提供、飛行機利用(出張)の際のビジネスクラス利用、プライベートの健康保険(欧州での個人医療診療費は恐ろしく高い)、ペトロカード(ペトロール=英国でのガソリンの呼び方、BP= British Petroleumのペトロで、ペトロステーション専用の会社名義クレジットカード)、ペンション(年金掛金負担)等、いろいろあります。
フリンジベネフィットは、提供を受ける側の従業員は経済的利益を受け、かつそれは課税所得に含まれない、
一方会社側でも損金算入(税控除)できる、というウルトラC(ウルトラCも若人には通じんか)で、
日本企業の現地会社駐在員の小生、上記のベネフィット、ペンション以外は全て享受してました。
カンパニーカーは、従業員へ提供されるbenefitなので所有権こそありませんが、自家用車として、与えられた個人が自由に私用にも使用できます。
U.K.在住当時、国全体の登録車の8割方がカンパニーカーだと聞いたことがあります。(確認してないので、真偽は知りませんが、まぁ、中らずと雖も遠からじでしょう)
ただフリンジベネフィットである以上、従業員全員がもらえるわけではナイです。
役職により、業績評価査定により、まずもらえれるかもらえないか、もらえるとして予算や車種/はグレードはどのようなものか、それぞれの会社規定により決定されます。
だいたいにおいて、少なくとも、Manager(= 課長職)や、General Manager(= 部長職、G.M.)以上のタイトル(= 肩書、役職者)しかもらえません。
小生勤務のU.K.の会社では、現地会社社長(但し小生の直属のボスではない。小生のレポートツーのボスは、在独国の欧州統括会社社長)は、当時の現地での高級車、ミツビシ ショーグン(パジェロ)に乗ってましたし、人事の女性G.M.は、真っ赤なグランチェロキー乗ってました。
一方、100名弱の所帯の会社のほとんどの、タイトルを持たいない平民従業員はカンパニーカーはもらえませんので、30歳代前半まででクルマを所有してる人は皆無です。
なので、若くしてクルマに乗ってる勤め人は、よほど優秀でタイトル(= 肩書)を持ってるんだな、とそれだけで判断できました。
平民従業員が仕事(出張や客先訪問)でクルマを使う場合は、共同利用のプールカーか、都度のレンタカーです。
イタリアでも似たようなもんです。
毎年、年度末には査定評価のパフォーマンスレビューを行うんですが、本年度、昨年度よりも良い評価をしてやってるのに、ガッカリしたり、猛然と自己の業績アッピールをしてくる、現地人の部下達がいました。(因みに総員10人以下のこじんまりした在トリノ支店で、日本人は支店長の小生のみ、アトは全員現地人で、普段の会話はすべて英語)
給与面では何の文句もないが、タイトル(= 肩書)を付けて欲しい。
なぜか。
いつでも好きに使えるカンパニーカーが欲しい、自分より上位職級者の顧客との同行出張では、自分も一緒のビジネスクラスで行きたい、からです。
彼らを遺恨なく納得させるのは、本当に骨の折れる仕事で、時には声を荒げることもあります。しかもプライバシー保護要の最たるものなので、密室で1対1で対峙し、完全合理性のある話で勝負しなきゃなりません。
普通に、街中でフェラーリが路上駐車(欧州はだいたい、パーキングメーター制の路上駐車が多く違反ではない)してる一方、大卒10年目くらいのまだまだペーペーにカンパニーカーのベネフィットは与えられません。
パフォーマンスレビューを行う季節はいつも胃が痛くなり、憂鬱になってました。
過去のことのグチを言ってても始まりませんので、続けます。
ポンコツまでいかないまでも、洗車なんかしとらんやろグループです。
先に、30歳代前半でクルマは持てない/持たないと書きましたが、このグループのクルマ、結構走ってます。
都市中心部以外は、トラム(路面電車)もなきゃ地下鉄も鉄道もなく、日本以上にクルマ社会です。
(郊外ではめったに歩行者も見かけません。 ホースバックライディング、馬に乗ったヒトはたまに見かけますが)
これらのクルマ、おそらくは、元カンパニーカーだった、Used Car(つまりは中古車)です。
カンパニーカーは、大体5~6年サイクルで、Used Car Marketに流れてきてた、と思います。
元の使用者が昇格でカンパニーカーもステップアップした、転職や転勤でいなくなった、(さすがに降格で資格がなくなった、という話は聞きませんでしたが、これもナイわけでもないでしょう)、等の理由で、そのクルマを引き継ぐ者がいない場合や、
プールカーとして維持しとく必要もない場合は、会社としては所有し続ける理由はありませんから、当然、処分します。
こういった中古車なら、依然タッカイV.A.Tを払ってでも、必要に駆られれば、手が届かないでもありません。
ただ、あくまでアシ(足)グルマ(車)です。
多少、ボロでもなーんも気にしません。
たとえ中古でもピッカピカに磨き上げ、大事に大事に乗ろうなんて気なんかさらさらありません。
U.K.に初めて到着した当初、家族を呼び寄せ準備期間の内、約1ヶ月は英語特訓のため自ら志願してホームステイをしましたが、ホストファミリーのオヤジさんの職業は士業で、
自身こそはジャギュア(ジャガー)でしたが、奥さんはボロッちい、スズキ サムライ(ジムニー)、子供たちはさらにポンコツ寸前の、Opel カデットとコルサ(実際は、英国車で、オペルのバッジエンジニアリングのVauxhall、この英国ブランド、U.K.でしか売ってない)でした。

【Suzuki Samurai 1994 model】
自動車専用高速道のモーターウェイを走ってても、故障で路肩に停まるクルマを目にするなんてコト、別に日常の光景でした。
そりゃー、そんなトコに、故障知らずの日本車が乗り込んでいったんです。当時はあっという間に受け入れられました。
ということで、
「欧州でクルマを所有するということ」は、日本に比べるとなかなかにハードルが高いこと、持ってても自分のものとして所有してるヒトは、実は案外多くはない、
というのが判明しましたので報告しときます。