ちょっと用事があって、3年ぶりくらいにマツダへお邪魔してきました。本命の用事はまた別ブログにて綴ろうと思いますが、ついでに噂のCX-60に試乗させてもらいました。
個人的な感想をまとめるなら、、、
『静的質感は紛れもなく高級車だが、動的質感は高級車として落第点』といったところですかね。
試乗車はディーゼルマイルドハイブリッドのタン内装だったので、最上位グレードと思われます。乗り込んでみて最初に驚かされたのは、やはり圧倒的な質感を誇るインテリアでした。現状のラインナップでは、まさにこのモデルこそフラッグシップと呼ぶに相応しい洗練された車内空間が構築されていました。未だにマツダ6がフラッグシップという位置付けなのかどうかは知りませんが、マツダ6とは比べるのが失礼なほどに段違いの高級感に溢れていて、前評判の高さは聞いていたものの、やはり実際に触れてみると驚くべき完成度の高さでした。マツダコネクトも昔は悪評ばかりが目立っていましたが、改良を重ねたお陰で今となっては立派なものに仕上がっていて、画面サイズだけは立派なトヨタのディスプレイオーディオとは雲泥の差です。
インテリアで気になったのは、独特な操作性を持ったシフトノブです。悪くはないけど、、、あえてこんなのを採用した理由がちょっとよく分からん、、、という感じでした。走りにこだわるマツダらしからぬ、何とも微妙なシフトです。他メーカーもオリジナリティを主張するためなのか、独特なシフトを採用する例は多いですが、マツダは一体何を狙ったのか…。こんな変な操作性なら、素直にストレート式でよかったと思います。
CX-60ほど評価の割れるモデルも珍しいですが、実際どうなのよ?というところは非常に気になっていました。特に直6ディーゼル、足回り、トランスミッションの完成度は関心が高いところでした。
まず、走り出してすぐ気になったのは低速でギクシャクする出来の悪いトランスミッションです。トルコンレス8ATという聞き慣れないものを新規開発したようで、それまで6ATを採用し続けてきたマツダがようやく多段化したATを積んできたというだけで大歓迎なムードがあったものの、その完成度の低さを体感すると、「これなら熟成した6ATの方がはるかにマシじゃない?」と思わせるものがありました。プラットフォームから全て新規開発したモデルなので、熟成不足があるのは仕方ない…と大らかな気持ちで許容できる人ならいいかも知れませんが、開発主査はこのレベルのものを市販化して恥ずかしくないのかな…と思うくらいお粗末な仕上がりでした。本当の高級車とは、動かし始めてすぐに分かる動的質感の高さを持っていると言われますが、CX-60はその逆で動かした瞬間にバレてしまう動的質感の低さを備えています。開発期間が十分に取れなかったのかもしれませんが、こんな低レベルなものを採用するくらいなら、内製にこだわらずに専門メーカーから調達した方がはるかに良質な車ができたはずです。「自分たちでトランスミッションまでこだわって作ってます」と変なアピールがしたいだけなのか分かりませんが、妥協するにも程があると言いたくなるくらい超絶致命的な部分でした。変速ショックも大きく、走らせていて頻繁に感じるギクシャク感は運転の楽しさを大きくスポイルさせるもので、非常に残念でした。こんなミッションならCVTの方がまだマシです。
直6ディーゼルの完成度ですが、こちらも期待値には遠く及ばないものに感じました。直6エンジンって完全バランスで振動も少なく上質なエンジンであることが魅力だと言われてますが、残念ながら直6のメリットは全くと言っていいほど実感できませんでした。ベタ踏みしたらいい音がして豊かなトルクを発揮してくれたのかもしれませんが、短い試乗で全開加速などできるはずもなく、直4ディーゼルと比べて明確な優位点を見つける前に試乗が終わってしまいました。マツダの開発陣の方は、一度Mercedesや BMWの直6エンジンを味わってみたらいいと思います。「価格帯が全然違うんだから比較する方がおかしい」という方もいるでしょうが、大風呂敷を広げた割に期待値に届かない完成度で登場させたのは今回が始めてではありません。SKYACTIV-Xでも同じ失敗をやらかしているので、マツダは何も反省していないということがよく分かります。あたかもとんでもない開発をする能力に長けた会社かのようにアピールしておいて、蓋を開けたら「えっ?あれだけ自慢しといて、この程度のことしかできないの?」というオチがつきものです。あと、マイルドハイブリッドを採用しておきながら、そのメリットが全くと言っていいほど不明です。エンジンの再始動や発進加速に良い影響をもたしている様子もなく、マイルドハイブリッドと呼ぶのが恥ずかしいレベルでした。
最後に…乗り心地ですが、試乗車は2000㌔ちょい走った個体で、慣らしが終わったのか微妙ではあったものの、世間で酷評されているような乗り心地の硬さは感じられませんでした。決して私が鈍いから気にならないわけではなく、むしろ乗り心地にはうるさい方だと自負しています。4000㌔くらい走ったら足回りが馴染んで乗り心地が良くなるとかっていう開発陣の話もありますが、個人的な予想では個体差が相当に大きいのではないかと思っています。1万㌔走ってもやっぱり硬いという話もあれば、新車時から硬くないという話も耳にしたことがあります。もちろん感じ方に個人差があると言えばそうですが、評論家の中でも意見がかなり割れているほどです。言われているような硬さを本来持っている車だとしたら、自分が不快に感じないはずがありません。
短時間の試乗で感じたことをつらつらと書いてみましたが、やっぱりマツダの初物は手を出すべきじゃないと強く思わされました。
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2023/01/04 20:57:54