慣れないブランデーで、ベロベロに酔った
ニャロさんをタクシーに乗せて、運転手に住所を教え見送り
店の裏の、パーキングで一服してると、
「お疲れ様でーす」
と、同じ店の涼子に声をかけられた
「何?車」
「はい、今日は特別なんで」
「ふーん、何処行くの?」
「まぁ、都内っていうか」
満月が、彼女を照らす
この涼子は、水っぽくないのがウリなんだが
豊子を連想させるとこがある
「涼子ちゃーん、彼氏?」
ワザと意地悪っぽく、言ってみると
「彼氏なんて、いないですって」
大袈裟に手をふり否定する
「車って、どれよ?」
可哀想なので、話を変えてみた
「あっ、コレです」
涼子が指差した瞬間
「マジかよ!」
私の好きな、パカパカライトのTOYOTAだった
彼女の、助手席にのり、浜川崎から首都高に乗る
「まさか、涼子ちゃんが首都高ランナーとはねー」
「まあ、お水も、このミスターの為に、やってるようなモンです」
スムーズにギヤを変えながら、涼子が言った
「豚美さんは、もうバイク乗ってないんですか?」
「なに、私の事、知ってるの?」
「だって、本名だし、豚美さんの青春時代を知らない子、店に居ませんよ」
「そうなのー!」
「あと、不良っぽいお客さんだと、必ず、さりげなく聞いてくるし」
「でも、アンタも本名でしょ」
「あっ、わかります?」
「なんとなくね」
芝浦の出口を過ぎたので、どっちを回るか、注意してると
涼子は渋谷方面、外回りに行った
(ほほーこっちか・・)
飛ばさず、流れに乗って綺麗に走る
「いつもは、もっと飛ばすの?」
「いや、私はそんな飛ばさないですよ」
首都高速環状線外回り
浜崎橋JCを左に渋谷方面に進むと
東京タワーが運転席に見えるコースだ
この外回りだと、江戸橋の殺人コーナーはない
「いつも、外回り?」
東京タワーのオレンジを見ながら、涼子に聞いた
「なんとなく、最初は外回りですね」
遅い車を、軽やかに丁寧にシフトチェンジしながら抜いて行く
ちょと、豊子に似てるな
私は、涼子の隣に乗って思った
なんというか、マシンに対して愛情があり
優しく接する感じ・・
ブォーン ♫
背中で、TOYOTAのDOHCが気持ち良く鳴る
三週目で箱崎で回り、外回りにチェンジした
悪くない、心地よい深夜のドライブだ
2号線の出口を過ぎ、大きく左に
下の合流地点の先が、三車線の汐留の電通コーナーだ
ここは、下って合流、の右だから
二週目からだと、根性がいるポイントだ
ブォーン♫
4つのタイヤを使い、綺麗に曲がっていく、MR2
ブオォーン!プッシュ〜
ターボのブローオフが鳴った、と思った瞬間
物凄い勢いで、丸目4灯が走り抜けた
「やっぱり出たっ!」
涼子が叫んだ瞬間
ブオォー!ブオォー!
ライムグリーンとFZ改
涼子がギヤを落とし、加速した瞬間に
赤いCBに抜かれた!
しかし、MR2も鬼発射
シューブオォー!
「あついらあー!」
私は心中で、絶叫
「追います!」
更に涼子はアクセルを踏む、外堀
江戸橋コーナーを、ありえない速度で突っ込むMR2
「おい、ブレーキ!ブレーキ踏めよおぉぉ」
ブン!ブン!
高速ヒール&トゥで、2段落とし
キキキーブオォー!
派手なスキール音で、殺人コーナーを抜ける
FZ改のテールが見える
かなりの速度だ
三宅坂JC・新宿入口のトンネルも全開
東京タワー左手に見て
浜崎橋も、突っ込む
緩い左を登ると下の合流
キキキー!ブオォー!
上手い、デブ巨摩に一気に追いつき、
ブォォオォー
下った勢いで、ドリフトしながら右の電通コーナーでブチ抜いた
(マジか!この子)
デブ巨摩も喰らい付いて、くる外堀
再び、登って、殺人江戸橋コーナー
(ひぃー!━(;´༎ຶД༎ຶ`)━
ブン!ブン!
高速ヒール&トゥで、ドリフトに
バイクの時とは全く違う視界のコーナリングに、私は思わず悲鳴
返しのハンドル捌きも上手い
ブオォーブオォーブオォー
アクセルコントロールしながら
おつりも出さずに、綺麗に立ち上がる
なるほど、コレを前でやられると、バイクは前に出れない
と、いうか相手の事を、よっぽど信頼してないと
スピンされると、巻き添え食わされるので、怖くて近づけない
しかも、首都高・・・
北の丸あたりで、FZ改が徐々に差を広げる
トンネルに入り
新宿方面、三宅坂も全開だったのだが
渋谷方面、谷町J Cを過ぎると
合流して来る車が多く
涼子がアクセルを緩めると
赤いCBに一瞬でブチ抜かれ
ブオォー!
デブ巨摩は、全開のまま合流車を交わし、加速した
やっぱり上手いもんだな
吸排気のみで、私のヨシムラ改に喰らいついて来るだけはある
中島とは、マシンの差か・・・
CBを900に載せ替えられたら、ヤバイな
助手席で、デブ巨摩の走りを見て思ってると
「ふぅーすいませんでした」
一つ、ため息をついて
普通の速度に戻りながら、涼子は私に謝った
「追わないんだ?」
「いや、あの4台は無理です」
東京タワーが左手に来たので
「ちょっと、一服しようか」
私は右に行けと、浜崎橋で指刺すと
涼子もウインカーを出し
車線変更して、横羽方面に進路を変えた
「芝浦で降りて」
「えっ?」
「コーヒーでも、飲みましょ」
「そうですね~」
芝浦埠頭の、いつもの場所にMR2を停め
「ブラックと微糖 どっち?」
「すいません、微糖で」
私は自販機のボタンを押し、涼子に渡す
「あの、先頭の車は何?」
「スカイラインの鉄仮面です」
「アイツ、速かったねー」
「満月の夜に出るんですよ、あの鉄仮面と、バイク三台」
(バイク3台は、今夜ぶっとばす!)
「どっちが速いの?」
いつも、鉄仮面ですね、たまにバイク三台が
前を走っていることがありますけど
そんな時は、流してる感じです」
「流す?」
まあ、スピードは尋常ないけど
無理な運転はしてないっていうか
空いたら飛ばすって感じで」
「あーなるほどね」
「いつも満月なの?」
「鉄仮面は必ず満月です、でも週末は出てないみたいです」
「ふーん」
私が汚い東京湾に、ポイ捨てすると
ブオォー
三馬鹿が降りてきた
「うそ!」
涼子が、驚いてる
「あの三馬鹿で、間違いないでしょ」
「なんで・・?」
呆気に取られる、涼子のMR2の後ろに三台は止まり
三馬鹿は、バイクを降り、ヘルメットを脱ぐと、私を見て
「じぇじぇじぇ!」
私は、三人に空き缶を投げつけ
「コラ!揃いも揃って、ようワテに黙っといてくれたやんけー!」
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スローなブギは、止めてくれ | 日記
Posted at
2023/09/17 17:34:57