2009年09月08日
ボケっと一人考えていると、後ろからエンがやってきた。
「ようっ。」 真っ白い歯を見せて、笑顔で新一の隣に座った。そして懐から、棒の付いた飴玉を二つ取りだし、片方を新一に差し出した。
「さっきはゴメンな。俺すぐカッときちゃうんだ。でもすぐに冷めちゃうけどな、ニヒヒ・・・。」
照れ臭そうに頭を掻きながら、そう笑った。頭の中が食べ物の事で一杯の彼が、自分の「大事な食料」を分け与えたという事は極めて珍しい事だ。それだけ反省して、新一を信用しているという事である。
「ううん、気にしてないよ。」
実際、エンに言われた事はもっともだった。中途半端な自分をストレートに指摘してくれた事は、逆に有り難い事だった。弱い自分を戒められた気がして、ショックどころか、立ち直るきっかけになったと言ってもいい。
「あのさ、さっきは俺あんな事言っちゃったけど、多分俺が新一の立場だったら・・・全部やるな。」
「・・・全部?」
「うん。全部。自分らしく生きて、んでもってムカつく奴はぶっ飛ばす。その方がいいじゃんか?悩むよりはさ。」
エンの単純明快な発言にあっけをとられてしまった新一は、口をポカンと開き、目を点にしていたが数秒後、大笑いした。
「ハハハ!」
「俺何かおかしな事言ったか?」
不思議そうに今度はエンの顔がポカンとなる。
「違うんだ。あまりに単純で、わかりやすくて。ハハハ。何てつまらない事を悩んでたんだ。自分の中で『どっちかにしなきゃ』って勝手に決め込んでた。でもそんな必要ないんだ。それに捕われている事自体が、既に自分らしくじゃないもんな。『自分らしく』って事に縛られ過ぎて、全然自分らしくなかったんだ。」
「それヤンがしょっちゅう言ってるよ。え~と、何だっけか…」
「・・・無一物?」
エンが両手をポンと叩いて、「それだ!」と思い出した。
「難しい事はよくわかんねぇけど、多分一緒だと思う。誰それの味方とか敵とかじゃない。俺は生まれて死ぬまで、俺だけの味方だかんな。」
力こぶを作って見せて、そう笑った。そして新一も釣られて笑った。
「あっ!」 突然エンが立ち上がって声を上げた。
ビックリした新一が問うと、エンは一目散に階段を下りだしていた。
「今日、街の肉屋のコロッケが半額なんだ~!忘れてた~!一杯買えたら持って帰ってやるからな~!」
そうエンが叫ぶと、あっという間に見えなくなっていた。
『一杯買えたら持って帰る』というのが、いかにもエンらしい。つまり一杯買えて食べ切れなかったら持って帰るという意味なのだから・・・。
それにしても、真が言っていた通り個性的なキャラばかりだ。温厚なお兄さんに、女好きのヤンキー、脳みそ胃袋の少年。彼等が何故一緒にいるのか、それが何となくわかるような気がする。
てんでばらばらの性格ばかりなのだが、逆にそれがお互いを魅力的に思えるからなのだろうか?
「よっぽど仲がいいんだろうな。」
そうポツリと言って正面の空を眺めた。
「ヤンって人はどんな人なんだろう?」
金髪に紫暗の瞳。額にはチャクラがあり、どことなく威圧感が漂う。でも決して嫌な感じでもなく、恐い感じでもない。ただ、何となくだが、絶対的な何かを感じる。だからなのか、他の3人とは少し違って近寄りがたい雰囲気はある。
その場から立ち上がりお尻の埃を払って、境内の方へ戻ると、廊下に腰掛けたヤンがぼんやりと空を見上げていた。
「厄介な事は御免だ。」
こちらに向けられた言葉だと理解した上、新一は作り笑いをした。
「きさまが来てから、この寺をうろつく野郎が増えた。」
「す、すみません・・・。」
「ただでさえ、俺達はお尋ね者扱いなんだ。それに拍車かけやがって・・・。」
申し訳なさそうに、新一はその場に立ち尽くし、顔を伏せた。
煙草を懐から取り出し、一息吸いフゥーっと白煙を吐いた。
「まぁ、そろそろここの生活にも飽きたトコだ。出ていく口実にはなるがな・・・。」
本気で嫌がられてない事を悟った新一は、少し距離を置いて廊下に並んで座った。そして少しの間、自分の足元を見つめて、口を開いた。
「僕の選んだ道は、間違ってなかったんですよね・・・。」
フゥーっと白煙を吐いて、空を見上げるヤン。雲の流れはとても穏やかで、口を開くのもかったるい位に、平和な時が流れる。かったるい理由にはもちろん、意味不明な質問の所為も含まれるが・・・。
「何の事だ?」
「僕がここに現れた事ですよ。」
「知るか…。」
足元に落とした煙草を面倒臭そうに消して、ただひたすら空を眺めるヤン。
パタパタと羽音を立てて無数の鳥たちが、北の方へと飛んでいく。
それをぼんやり眺めていた新一が、ポツリと呟いた。
「…鳥はイイですね。翼があって何処にでもいける・・・。自由ですよね・・・。」
「…フン。」
それを聞いたヤンが馬鹿にするかのように鼻で笑った。
「…よく考えてみろ。世間一般では鳥は大空を羽ばたけるから、自由だとか言っているみたいだが…、果たしてそうか?」
ジッと空を眺める新一は何も言えなかった。世間一般ではそうかもしれない…。しかし、今自分の置かれている状況と比較して考えてみたらどうだろう?
新井という鳥かごから羽ばたいた自分は、果たして本当の自由を手に入れたのだろうか?
「…たとえ、大空を自由に飛べたとて、羽を休める枝に辿り着けなければ、見つからなければ、羽を持った事を悔やむかもしれない。…本当の自由ってのは、還るべき所がある事…かもしれんな…。」
その通りだった。確かに新井からは逃げ出した。しかし、一体どうすればいいのか・・・逃げ出してきたものの、自分の人生を生きたいと言ったものの、本当は怖くて仕方ない。やがて来る「死」。その時は自分一人だけ。誰にも知られず、ただ地球上の生物が寿命を迎えて死ぬだけ。ただそれだけ。いくら抗っても、どうしようもない事実。果たしてこんなものが自由と呼べるのだろうか?
「貴様、いつまでそんなしけた面してんだ?一体、貴様はどうしたいんだ?」
愛煙のマルボロに火を付けて、フゥ~っと煙を吹かす。
「…。」
返す言葉が見つからない新一は黙り込んでしまった。
「…フンッ。『無一物』という言葉がある。禅道の教えのひとつだ。『仏に逢えば、仏を殺せ。祖に逢えば、祖を殺せ。何事にも縛られず、捕らわれず、あるがまま己を生きること。』先代の師匠が教えてくれたのはそれだけだ。」
灰をトントンと落として、もうひと吸いする。
「…自分なりに考えてみろ。貴様はもう甘えが許されないんだ。自分の道は自分で切り開くしかない。後は自分で考えろ。」
そう言うと、すたすたと行ってしまった。
彼の行動は冷たく、そして心は温かい。なぜ、皆がヤンを慕っているのか、少しわかった気がする。それは自分に対する絶対的な自信。揺らぐ事の無い信念を持って自信に満ち溢れている。一寸の狂いも無く、今を自信を持って生きている。言動からしてヤンを「太陽」と例えると少しおかしくなるかもしれないが、まさにその通りかもしれない。その輝きを求めて皆はヤンを慕うのだろう。そして、自分なりの「自信」を持つ者が集まったのだろう。すごく魅力的な人達だ。自分は彼らに勝てるほどの自信と輝きを持っているだろうか?・・・持っている。持っているに違いない。それを探すためにここに来たと言ってもいいくらい収穫があった。
自分なりに生きる。後悔しないために…。当初の信念がより固いものになって、大きくなった。自分に足りなかったもの…自分に対する自信。自分の中での絶対的な自信。自分を戒める絶対的な信念。自分への信頼。
しばらくその場にたたずんで、考えがまとまった新一は部屋に戻った。そして新一は、荷物をまとめ、置き書きをして人知れず寺を後にする事に決めた。本当はもっとここに居て、彼らと一緒にいたいが、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。昨日より確実に寺を囲む人間の数が増えている。自分のために彼らを巻き込むわけにはいかない。自分と関わってしまった以上、ただでは済まないかもしれないが一緒にいるよりは幾分マシだろう。
わかってはいたことだが、別れは非常に辛い。
わずかな時間しか過ごしていないのに、とても辛い。
でも行かなくては、逝けない。自分の決めた末路に逝けない。
Posted at 2009/09/08 19:04:40 | |
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2009年09月08日

コルトを会社の駐車場に置いてると、やたらガン見されます(爆)
確かに紅なので目立ちますが…
社長にも声をかけられる始末…(*´艸`)プッ
やっぱりコルトサイコーヽ(´▽`)/アハハハ~

Posted at 2009/09/08 15:02:03 | |
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2009年09月08日
夏場というのに、風通しが良いためとても快適だ。体温の調節レベルをさほど上げなくても済む。
ミンミンと蝉が鳴き、木陰の合間に光りがさす。とても落ち着ける環境だ。今までいた都会とは全く別の世界といった所か。穏やかに時間が過ぎていく感じで、とても心地良い。
そういえば、昔によく蝉採りをした覚えがある。暑い炎天下、一日中走り回って網を振り回していたっけ。喉が渇けば、公園の水道で喉を潤し、疲れれば神社に続く長い階段に、腰掛けて休憩した。網を薮から棒に振り回しては、枝によく引っ掛けて破いてしまったものだ。
日が暮れて、お腹を空かせて家に帰ると、母親がよく冷たいジュースを用意してくれていたものだ。一気に飲んだらお腹を壊すよと、よく叱られたものだ。
今となってはとても遠い過去のような感じがする。夢だったのではないかと、疑いたくなってしまうほど、現在自分に起こっている事が非現実的なのだ。全く…、どうしていいものやら。
自虐的になりながら、歩いていると、いつの間にか寺の入口である門まで来て
いた。そこにさっき立ち去ったケンが、煙草を吹かして立っていた。
「よう。ジキの小言は終わったか?」
どうして「小言」なのか新一にはわからなかった。
「まぁ、座れよ。一本いるか?あ、まだ高校生だっけか?でも俺なんか中坊の時から吸ってたしなぁ。いるか?」
門の敷居に腰掛けて、煙草を勧める。本来なら敷居は、またぐもので踏まないものなのに、いつの間にか腰掛けになってしまっている事に新一は少しおかしくなってしまい、煙草は丁重に断ったが隣に座ることはすんなり受け入れた。
「あいつの小言、長かったろ~。空き缶を灰皿にした日には永遠と小言だぜ?あいつは俺のかーちゃんかよ!」
いつの間にか、ケンの愚痴話になってしまっている。それが妙におかしくてたまらない新一は、思わず軽く吹いてしまった。
「おっ、やっと笑ったな。」
「す、すみません・・・。」
失礼だったかと、慌てて謝る新一。
「いいって事よ。いつまでも暗い顔してっと、女に嫌われちゃうぜ?」
どうしていつも、「女」に絡めてくるのだろう?不思議だが、それがケンの個性なのだろうと、一人納得した。
「なぁ、お前女口説く時、どんな手使うよ?最近、自分のやり方にマンネリ感じちまっててよぉ。何かいい手ない?」
煙草をくわえたまま、器用にしゃべり、腕を組んで真剣にケンが問う。
「さぁ・・・。僕はちょっとわからないですね・・・。そんな事考えた事もないですし。」
困ってしまい、苦笑いで返答する新一。実際、女性を口説いた事もないし、口説こうと思った事もないので、どうにも返答のしようがない。口説くも何も、わかりあえていた人がいたからそんな事する必要もない。今となっては、もう逢えないだろう、奈津・・・。
「もしかして、チェリーボーイちゃん?ヤンと一緒かよ。・・・って、今のは聞かなかった事にしてくれな。こんな事言ってるのバレたら、この上容赦なく残虐にぶっ殺されちまうからよ・・・。」
またしても軽く吹いてしまう新一。しかし、どうして「女性」をからめて話をするのだろう?女好きとは言え、いささか執着し過ぎているようにも思える。本当の女好きの遊び人でない気がするのは気の所為だろうか?そうでなければ、信仰もないくせに、男に囲まれて生活するわけがないはずだ。
容姿は抜群。背が高く、スラリと長い足で、いわゆるロン毛でいかにも女性にモテそうな感じである。モテない男がケンのようなセリフを吐いても、全然さまにならないが、ケンには説得力がある。おそらく「プレイボーイ」に違いないからだろう。
「どうして女の話ばっかするんだろう?って顔してるぜ?」
時間にしてそんなに経っていないはずだが、思ったより物思いにふけていたらしい。いつの間にかケンは、新しい煙草に火を付けてこちらの顔色を伺っている。
「そ、そうですか?」
ずばり図星の新一は少しバツが悪そうに、頭をかいた。
「おうよ。ポーカーフェイス身に付けとかねーと、イイ女は口説けないぜ?・・・って人の事言えねーけどな・・・。」
そう言ったケンの横顔は少し哀しげなものだった。ぼんやりとただ正面の空を、遠い目で眺めるように固まってしまった。
「俺よ、昔、かーちゃんに殺されそうになったんだわ。このホッペにある傷がそん時の。・・・それからだなー、真剣に女の人を好きになれなくなっちまったのは・・・。」
両足を投げ出すようにして、お尻の少し後ろに両手を出し傾いて座る。何気なく発した言葉ではあったが、高校生には少々ヘビーな内容を持ち出したかもしれない。だが、彼もまた「父親」と対峙してしまっている。境遇は違うにしても、状況は多少なりとも似ている。
俺ってお人好しだなと、自嘲気味ながら、新一に話し始めた。
あれは確か、中坊ん時だった。兄貴が街に買い物に出掛けている時だった。俺は、少しでも母親に気に入られようと公園に咲いてた赤い花を摘んで家に帰ったんだ・・・。
俺の本当の母親はどこにいったかは知らない。俺の親父はアヤカシで、継母もアヤカシ。でも俺の本当の母親は人間だった。正確には俺の母親は、親父の愛人だったけど。アヤカシと人間の交配はタブーとされていた。何が起こるかわからないから。だから、俺は「禁忌の子」として皆に白い目で見られてた。それが証拠に、真紅の髪と瞳なんだ。
親父は愛人作るくらいだから、浮気癖が悪くて、俺が物心ついた頃には、とっくにいなくなってた。歳は少し離れていたけど、純血のアヤカシの兄貴がいたんだ。兄貴は俺の事を本当に可愛がってくれた。でも、反比例するように母親の俺に対する虐待は日に日に増していった。どうやら、俺は俺の母親にそっくりだったらしい。俺の顔を見る度に、俺の母親を重ねて俺を虐待した。夫に裏切られた
事と、嫉妬深さがそうさせてたんだろう。
でも優しい兄貴の母親だから、本当は優しいはずだって思ってた。いや、そう思い込んでた。そう言い聞かせてた。だから、気に入られようと虐待にも必死に耐えた。どんなに罵られようと、殴られようと。
でも何も変わらなかった。そんなある日、花を摘んで帰って、それを差し出すと、狂ったかのように花を床に叩き捨てて、手元の果物ナイフで俺を切り付けてきた。それがこのホッペの傷。散々逃げ回ったんだけどよ、遂に追い込まれちまってな。母親が俺の首に両手をかけたんだ。泣きながら、ゆっくりと首を絞め始めた。俺はその時、これでいいと思った。俺が死んで、母親が苦しみや嫉みから解放されるならって。
もういいやって、目をつぶった瞬間だった。グシャって音がして、首の違和感がなくなったんだ。恐る恐る目を開けてみたら、目の前には血まみれになって倒れてる母親と、青龍刀を持って返り血を浴びた兄貴が泣きながら立ってた。実の親をあやめた事で泣いてたのか・・・、ホントは俺を殺したか何だったのかはわからないが、取りあえず俺はお陰で今を生きてる。
兄貴はそれ以来どっかに消えちまってな。散々探したんだが、結局見つからず仕舞いさ。そん時は兄貴に会って、謝りたかったんだ。俺の為に母親を殺したんだからな。謝りたかった。罪悪感みたいな感じかな?ただ、会った所でどうしたらいいかわからなかったな。だから、バカやって日々をテキトーに過ごしてた。博打が得意だったからよ、それで食いつないで、夜はテキトーに女口説いて転々としてた。まぁ、真面目にコツコツっていう性分でもないし、そうやって罪悪感みたいなもんから逃げてたんだな。
そんなある日、ジキを拾ったのさ。思えばそれが今の俺達の始まりだな。
「・・・って、昔の話すんのは歳老いた証拠だな。」
ぼんやりと雲を眺めて卑下するようにケンが笑った。
「いえ、続きが聞きたいです。」
「そっか。」
あれは土砂降りの雨の夜だった。俺はいつもと違って、賭博場から真っ直ぐ帰宅してたんだ。普通なら女の所なのにな。今思えば運命ってやつさ。林道を歩いてたら、奴が倒れてた。雨と血と泥にまみれて、俺の方を見上げてた。「もう殺してくれ」ってな顔でな。俺も貧乏性な性格でよ。落ちてるもんは拾いたくなっちまって、家までお持ち帰りよ。男なんか絶対自分のベットに寝かせない主義だったのによ。
奴はその時、大量虐殺の罪で追われてた。後で知ったんだけどな。でも何かワケアリってのは何となく感じてた。別にほっといて野垂れ死なしといてもよかったんだが、腹にひどい怪我負ってたし、何故かそうしたくなかったんだ。後味悪そうだし?本人にも聞かれたんだがな、「何で何も聞かないんですか?」って。特に理由もなかったし、「死にたそうな顔してる奴を簡単に死なせてやる程、優しくないから」って言った記憶あるなぁ。
そうしたら奴の方から話してきやがってよ。それで事情を知ったわけよ。まぁでも突き出してやろうとかは思わなかった。と言うか、思えなかった。何かすごく似てる気がしたからよ。罪悪感から逃れてる自分と勝手にシンクロさせちまってな。
そんなある日、ヤンとエンが俺の家に来た。ヤンはその当時最後の修業として、中国に来てたんだ。長安ってトコのデカイ寺にいたんだ。そこには仏教の最高位である「三仏神」ってのがいてな、そいつらが治安維持の実権を握ってたんだ。その三仏神の命でヤンはジキを捕らえに来たってわけよ。
家に来た時は「ヤベッ」って思ったなぁ。ヤンの野郎はそん時から、ただの坊主じゃないと感じてたなぁ。銃口向けて「ナオトを出せ」ってくわえ煙草だったからよ。あ~、ナオトってのは、ジキの前の名前ね。かくまったんだけど、バレちまってな。ジキを逃がしたんだ。
その時詳しくは俺も聞いてなかったんだが、ジキは復讐をやり残した相手がいたんだ。それを死ぬ覚悟でやり遂げるために、逃げた。その事をヤンとエンに話したらよ、いつの間にか一緒になって奴を追い掛けてた。まぁジキがヤンの短銃を持って逃げちまったから、ヤンは追わざるを得ない状況だったんだけどな。
「半ば独り言だな、こりゃ・・・。」
「いえ、その続きがすごく気になります。聞かせて下さい。」
奴の行き先は百眼魔王の城だった。奴のフィアンセを生贄として奪ったのは、百眼魔王の城だった。奴のフィアンセを生贄として奪ったのは、百眼魔王だったのさ。でもその城は既に無くなってたんだ。何せ傷の療養で、2週間近くも足止め食ってたからな。その間に何者かによって火が放たれたらしくてな。後を追って、追い付いた頃には、ジキは一気に気が抜けたみたいで、その場にペタンと座り込んでたよ。そしてフィアンセの復讐を果たせないまま、ヤンに連れて行かれたんだ。
んでもって、ヤンが三仏神に執り成して、「ナオト」は「ジキ」として生きる事を許されたってわけよ。名前が変わったとたんに、奴はイキイキとしだしてな。それまで罪悪感や嫌悪感や憎悪の塊みたいな奴がよ。その時、ヤンに言われたんだ。「ジキは消せない過去を背負ってこれから生きていく。だが、それに縛られず奴は己の生きる道を進むと誓った。貴様はいつまでそんなちっぽけな罪悪感に捕われているつもりだ?」ってな。ヤンの野郎は俺が「禁忌の子」って事をわかってたみたいでよ、ジキから色々聞いたらしくてな。ジキと比較しちゃ話になんねぇけど、急に自分が馬鹿らしくなってな。謝ろうと思ってたんだけども、やめたんだ。兄貴も謝ってもらうために俺を助けたんじゃないと思ってよ。だから、いつか会えたら「俺は生きてるぜ」って笑顔で言おうと思ってる。それでいいかなって思ってよ。
「無一物ってやつよ。」
「無一物?」
「あぁ、ヤンの決めセリフみたいなもんさ。後で聞いてみな。」
そう言うとお尻の挨を払い、立ち上がってスタスタと階段を降り始めた。
「どこに行くんです?」
「ちょっと小遣い稼ぎにな。最近はスロットにはまっててよ!何かうまい物でも買ってきてやるよ。じゃな。」
そう言ってケンは行ってしまった。
「ちっぽけな罪悪感…か。新一のケースは複雑だもんなぁ、一緒にされても困るってな。今更ながら、クサイ話したなぁ・・・。俺も歳取ったもんだ・・・やだやだ・・・。」
煙草に火を付けて、のんびりと階段を降りて行くケンであった。
「無一物か・・・。」
Posted at 2009/09/08 12:32:09 | |
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2009年09月08日

昨晩、ご飯を食べそびれたので、朝6時から大盛カレーを食べて出社!
イチローを見習って、仕事も……
腹一杯で動けナス…
さぁ今から昼ご飯!
Σ(゚ロ゚)エッ!?食べるの?!

Posted at 2009/09/08 12:04:40 | |
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