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真・土方歳三(零式)のブログ一覧

2009年08月31日 イイね!

モヤシ炒めだ(゚A゚)コノヤロー

モヤシ炒めだ(゚A゚)コノヤロー今日はモヤシ炒め!

モヤシを侮ることなかれ!

カロリー低いわりに、栄養価は高い!オマケに安い!

ごちそうさま~
Posted at 2009/08/31 20:08:14 | コメント(4) | トラックバック(0) | グルメ/料理
2009年08月31日 イイね!

連続みんカラ小説「TIGHTROPE(タイトロープ)」 第3章『困惑』5

「大丈夫か?」
真は今にも生き絶えそうだったが、声が聞こえたのでかろうじて意識を繋ぎ止めた。いや、正確に言うと繋ぎ止めざるを得なかった。これまで感じた事のない「気」が自分の側にいて、声をかけている。しかもその「気」は新井の発する嫌な感じの「気」ではなく、よくわからないがとても心地良いのだ。誰だろう?新一なのか?それにしてはさっきと随分違う気がする。重い瞼を必死にこじ開け、声の主の方へと目を向けた。そこには見たこともない者がいた。とてつもなく恐ろしく醜い外見をしているのに、真はなぜか逆に安心する事が出来た。

「新一・・・さん・・・?」
かすれた弱々しい声で真が問う。

「そうだ。俺だ。」
意識ある重傷人を無理にしゃべらせてはいけない。しゃべる事によって体力が奪われてしまうからだ。だから、新一は最小限の受け答えしかしなかった。この場合、間違っても質問などを問い掛けるような発言をしてはいけない。

「目覚めたんですね・・・、『修羅』が・・・。」

「しゃべるな。傷にさわる。」
新一はそう言って真を黙らせたものの、たとえ黙っていてもこのままでは確実に死ぬ。もし自分が彼のような深手の傷を負ったなら、まず切れた主要血管を閉鎖し大量失血を防ぎ、筋肉を網状に構成してこれ以上の肉体破壊を食い止める作業をしただろう。しかし、真はその方法を知らないのだろう、傷はそのままほったらかしだし、どうにかしなければという思考も働いていないらしい。

自己応急処置が出来ないとなると、自分がどうにかしてやるしかあるまい。取りあえず出血を止め、無残に露出している肉からの菌の侵入をを防がなければならない。といっても、出血はほとんど出尽くしてしまっているから、気休め程度にしかならないだろう。しかし、今ここには輸血用の血があるわけでもないし、消毒用のアルコールがあるわけでもない。どうしようかと一瞬迷ったが、患部を焼く事にした。焼けばそこが固まり、止血出来るし多少ウイルスの侵入も防げるだろう。少々強引な方法だが、今出来る処置としては最も適確で迅速な方法だろう。

新一は真の前にしゃがんで、両手の平に急速にブーストをかける。かなり熱を帯びてきたが、更に温度を上げる。チリチリと自分の手が焦げ始めたのを確認すると、その手を真の患部に当てた。鮮やかともいえる程の真紅色の患部が、次第に黒く焼かれて焦げていく。人肉の焼ける異臭が鼻をつく。もはや痛覚の遮断も、ろくに出来ない真にとっては焼かれるという事は地獄のような激痛に等しい。だが、逆にその痛みが、まだ自分は生きているという実感が現実と繋ぎ止めてくれる。

「・・・っ!」

「我慢しろ。片付いたらちゃんとエグれた部分繋げてやるからな。」
新井によって切り裂かれた真の左上半身は、ちょうどトラックのスタート地点に飛ばされてあった。時間は相当かかるかもしれないが、くっつけてしまえば何事もなかったかのように元通りになるだろう。後は早く事を終わらせて、真の手当てをしてやらねばならない。傷はどうにでも治るが、それ以前にまず今の状態では生死が危うい。死んでしまっては元通りになるうんぬんを言っても仕方ない。大量失血による体温低下に、意識レベルの低下。ダブルブリットだからここまでもっているようなものの、普通の人間ならばとっくに死んでいておかしくない。だが、ダブルブリットとは言え、あの傷では時間も限られるだろう。とにかく急がなければならない。新一は蹴り飛ばした新井の方へ目をやった。

「新一さん・・・。」
後方から弱々しい声が聞こえたので、思わず振り返りしゃがみ込む。

「しゃべるなと言っただろう!」
怒鳴ろうとも思ったが、怒鳴る事によって真に精神的ダメージを与えるわけにはいかない。別に小さな声になる必要もないのだが、声を押し殺して黙らせるよう言った。だが、真は口を休めなかった。

「お、お願い・・・です・・・、聞いて下さい・・・。」
新一はこの時、真が己の死を悟っている事がわかった。自分にまだ生きれるチャンスがあるなら無理をして声を発するような事などしないで、黙って終わるのを待っているだろう。終わってからでも間に合うのだから。だが、真はもうこの機を逃すと新一に伝えられないと悟ったのだ。つまり、自分がもう死ぬという事を。
最期の力を声帯に込め、真は口を開いた。

「た、戦いが終わったら青森県にある『光明寺』という所に行って下さい・・・。そして、そこに・・・いる4人組に会って下さい。そこに行けば、あっ・・・あなたもきっと考えを変えてくれるはず・・・。」

「・・・4人組?」

「えぇ・・・、彼らは少し個性的ですが、・・・とても誇り高い奴らです。クッ・・・彼らもあなたと同じように新井を憎んではいるものの、クロスブリードという枠組みを嫌っています。本当は僕が行きたかったんですけど・・・、どうやらそれは無理みたいですから・・・。」
しゃべるのもままならなくなってきた真の呼吸が荒々しくなっていく。必死に呼吸をしようとするのだが、左の肺がなくなっているので半分は素通しの状態だ。

「黙ってろ。すぐに手当てしてやるから。」

「新一さん・・・、ありがとうございます。でも自分の事くらい自分でわかってますよ。ぼ、僕はもう助からない・・・。」
声がかすれ小さくなっていく真に、どうしようもないやりきれない思いが、ただ新一を怒鳴らせた。

「黙れ!」

「せ、せめて・・・、もう・・・少しだけあなたと・・・話がしたかったです・・・よ・・・」
真はそう言うと、静かに瞳を閉じた。その瞳から涙が零れ落ちる。真は苦痛から解放されたように、穏やかな顔をしていた。顔の一部が無残な状態になっているものの、新一は初めて真の年相応の素顔を見た気がした。何の屈託もない、素直な少年の顔だった。
新一は、うつ伏せになっている真をゆっくりと抱き起こし、仰向けに寝かせてやった。腕や体に大量の生暖かい血が付着し、新一の憎悪を極限にまで増大させる。

真は一体何を考えながら死んでいったのだろう?もう少し、このダブルブリットと話がしたかった。自分に似ているような、似てないような境遇を持った彼と。会って間もない者が死んでしまうというのは、こんなに悲しいものなのか?いや、違う。仮に町角ですれ違った人がいきなり死んでも、哀れんだりしてもここまで悲しむ事はないだろう。自分の中にアヤカシの血が流れているから余計にそう思うのかもしれない。でも、その事を抜きにしても何故かそれ以上に悲しい気がする。まるで、自分が死んでしまったのを客観的に見て自分で悲しんでいるかのように。

「悲しいか?」
いつの間にか新井がすぐ側まで来ていた。警戒しなければならない相手なのに、今はそれどころではなかった。

「悲しいだろうなぁ、真はお前のDNAを受け継いだ、ある意味半ばお前の分身だったんだからなぁ。」
嘲笑いながら、新井が新一を見下す。しかし、依然として新一は無言だ。

「そんな事より、お前はやはり優秀なのだな。私の望んでい・・・」
新井が何かを言いかけた途中だった。彼の体が空中に舞い上がった。新一が何も言わずいきなり新井を殴り飛ばしたのだ。新井は真を上回る力を持っているのに、いとも簡単に懐から殴り飛ばされてしまった。新井自身警戒心を怠っていたわけではないのにだ。つまり、それだけ今の新一の能力が凄まじいという事だ。
宙に舞った新井が、重力に引っ張られて新一の側に叩き付けられた。

「立て。」
非情なまでの冷ややかさで、新一が新井に声を向ける。

「いいぞ、いいぞ。それでなくては面白味がない。鬼の力をとくと見せてもら・・・ガッ」
立ち上がった新井に、今度は思い切り脇腹に蹴りを入れる。肋骨が鈍い音を立てて、数本折れる。新井は膝をついて、脇腹を手で押さえつけるが、痛覚が存在しないかのように相変わらずにやけている。

「素晴らしい・・・。これが『修羅』の力か・・・。」
ダメージの事などそっちのけで、新一にのみ興味を示す。恐ろしいまでの執着心と言った所か?

「マリオネットなんか使わないで、さっさとお前自身が現れたらどうだ?」
新一の言うのはもっともだ。仮に目の前の「新井」を倒したとしても、本人でない限り意味がない。いくら人形を叩いてもきりがない。

「クックック、そう焦らすなよ?もうじき私にも鬼の力が手に入る。『阿修羅』の力がな。Ωサーキットの一部がもうすぐ遂行されるのだ。そうしたらお前がいくら嫌と拒んでも、現れて殺してやる。それまでの辛抱だ。」

「なら今から息の根を止めに行ってやる。」

「フフフ、流石のお前でもこれ以上事を厄介にはしたくないらしいな?自信がないのか?自分の力に。」
挑発に乗ってはいけない。確かにここで仮に「じゃあ待ってやる」などと虚勢を張っても、本当にこれ以上事が厄介になってしまっては何もかもが終わってしまう。

「そうだ。面倒な事はさっさと済ませておきたいからな。今のうちに摘める芽は摘んでおかねばならぬ。」

「ハッハッハッ、お前もまだそんな事を言っているのか?お前、鬼の力に目覚めたからと言って少し図に乗っているんじゃないのか?」

「どういう意味だ?」

「つまり、その力を持ってしても今の私にすら勝てないという事だ。」

「ほざけぇぇぇ!」
新一が瞬時に新井の元へと移動。そして思い切り新井の顔面を殴り飛ばした。殴り飛ばされた新井は、遥か後方の観客席まで吹っ飛んだ。座席が激しい音とほこりを立てて、粉々に壊れていく。
新一は吹っ飛ばした方を見たが、そこにはすでに新井の姿はなかった。

ゾクッと背中に悪感が走る。かなりの力で殴り付けたはずなのに、もうそこにいないのだ。普通なら気絶するなり、痛さのあまり動けない状態に陥るはずなのだが。警戒して周囲を見渡す。すると新一はある一点に視力を集中させた。そこはさっき自分が部隊を蹴散らした場所だった。木々が多く生い茂っている所で、それらが競技場をグルリと囲っている。そのメインゲート付近の上方で、何かが動いている。そしてそれがガサッと音を立てて飛び出してきた。

警戒を続ける新一の目の前に、新井が現れた。衣服がボロボロ破れ、体中あちこち出血している。顔面は新一に殴られた事によって、左側半分が凄まじく変形してしまっている。頬のあたりが陥没し、鼻頭もとんでもない方向を向いている。そして首がダランと傾いてしまっている。おそらく衝撃で骨が折れてしまったのだろう。それでも新井は何事もなかったかのように突っ立っている。ダメージがなさそうな事に驚いたが、それより何より、新一は新井が両手に絶命した部隊の男を1人ずつ掴んでいる事に驚かされた。軽装甲のダウンの襟を掴み、まるで小猫の首を摘まんでいるように持っている。

「・・・今のは、少し効いたぞ・・・。」
顔面が変形してしまっているので、言葉のイントネーションが少しおかしい。だがそれよりそんな状態で話せる自体相当おかしい。
新井はドサッと掴んでいた男達を地面に落とした。

「何のマネだ?」
地面に平伏している男2人を眺めて、新一が顔をしかめる。

「これからお前に本当の『恐怖』を教えてやろうと思ってな。」
そう言うと、真を切り裂いた時同様に左手を巨大化させた。

「フンッ、俺に一度見せたものは通用しないぞ?」

「フフフ・・・。」
新井が不気味に笑うと、その手で一方の男の頭を覆った。
するとどうだろう。新一は信じられない光景を目の当たりにした。新井の左手から無数の触手が生え出てきたのだ。腕と同様に肌色をした物だったが、先が尖っていた。そしてそれらが、一直線に男の顔に突き刺さった。死んでいる為かもしれないが、血が出ると言った事にはならなかった。そして何かを吸い取っているかのように触手が膨れたり縮んだり動き回る。みるみるうちにガタイの良い男の体は縮んでいき、遂には身に着用していたものだけがそこに残った。生えている触手はスゥッと左手に納まり、存在を消した。

「プハァァァァ」
満足げな息を吐く新井の顔が元通りになっていた。ボロボロになっていた右手も元通りになっている。あちこちにあった傷も塞がれていた。
そして新井はもう一方の男の頭に再び触手を生え伸ばし、突き刺した。先程同様すぐに着用していたものだけが残るといった現象が起こった。
そうすると、今度は新井の姿が痩せ細った女性の体から、ガッチリとした体格になった。

「喰った・・・のか・・・?」
新一は正直驚きを隠せなかった。
まず第一に人を吸い取ったという事実だ。いや、この場合新一が思わずもらした「喰った」という表現の方が正確だろう。SF映画や、それこそ漫画の世界でありそうなシチュエーションだ。今の自分の姿を棚に置いといて、どうにも納得がいかない。
第二に仮に納得したとしても、新井本人がした行為ならまだ認めてもいいだろう。しかし、操られているとは言え、生身の人間があんなふざけた事が出来るだろうか?もう新一の頭の中は無茶苦茶だ。

「待たせたな。」
筋肉質になった新井の声までもが太くなっていた。

「貴様、人を喰ったのか?」

「そうだ。味は最悪だが、回復のみを主眼に置くならごつい男がいいんだ。味なら断然生きた女の肉だろうがな。」
新一が目を見開いて新井の言った言葉に驚愕した。本当に人が喰われたのを見たのが初めてだったからだ。

「おいおい、そんなに驚くなよ?アヤカシの世界では日常的な事と教わったんだろう?まぁ生憎お前には、そういう生理現象は無いだろうな。何せお前はダブルブリットだからな。人を殺せても、喰う事は出来ん。所詮、お前は半端者だ。」

「真はダブルブリットもアヤカシ同様に性質を持っていると言っていた!」

「だからお前は何もわかっていないと言っているんだ。真は単に勘違いをしているに過ぎないのだよ。」

「どういう事だっ?」

「つまり、ダブルブリットは、お前と死んだ真しかいなかったという事だ。真の言っていた他のダブルブリットとは、正式に言うとシングルブリットの事だ。つまり、人間の雑種と純潔のアヤカシとの組み合わせなのだ。ハイブリットには違いないが、一種類のアヤカシのデータしか植え付けていない。それに対してダブルブリットは、人間の雑種とアヤカシの雑種を組み合わせた、『二重雑種』すなわちダブル・ハイブリットなのだ。ダブルブリットはアヤカシの部分が雑種の為に、あぁいった生理現象が起きにくいし、受け付けないんだよ。人間の血が濃いからな。」

「・・・。」

「だから、さっきは心の底から悲しかっただろう?この世で唯一の同種がいなくなったんだ。もう仲間はいないんだぞ?ダブルブリットはもうお前しかいない。お前は孤独で唯一の半端者なのだよ。」
そうか、だから無常に悲しかったのか。この世で唯一の同胞がいなくなってしまったという事に本能的に察していたのかもしれない。

「じゃあ、貴様は何なんだっ?人間をベースとして、そこにアヤカシの遺伝子を組み込んだならシングルブリットかダブルブリットにしかあたらないはずだろうっ?」

「・・・パーフェクトブリットだ。」

「パーフェクトブリットだと・・・?」
新一が顔を思い切りしかめた。

「そうだ。人間の新しい進化形態として、私がその第一歩を踏み出すのだ。人間をベースとしながら、アヤカシのメリットだけを組み込んで新しい人種・存在となるのだ。だがそれは私だけで充分だ。私だけが新しい存在となり、この世界を支配していく。何と素晴らしい事か。光栄に思えよ?お前は完璧になる前の私の最後の被害者になれるんだからな。」

「くっだらねぇ。」
新一が小指の爪で耳の穴をほじりながら、新井のうんちくを一言で全否定した。

「何だと?」

「くだらねぇってんだよ。本当にそんな思い通りになると思ってんのか?んなのならねぇよ。させねぇよ。目ぇ開けたまま寝言言ってんじゃねぇよ。」

「フッ、父は悲しいぞ?お前は利口だから少しは理解をしてくれると思ったのだがな。もう一度だけ聞いてやる、私の手足となってΩサーキットに参加せんか?お前がいれば鬼に金棒だ。」

「寝言は寝てから言えってんだよ!」
新一の拒否の応えを聞いて、新井は足元にある軽装甲のダウンに手を伸ばした。そしてそこに装備されているナイフを手にとり、その矛先を新一に向けた。ナイフの刃先が月の光を反射させる。

「これが何か知っているな?ミスティックメタルナイフだ。そろそろこれで、あの世に送ってやろう。真も待っているだろうからな。・・・新一、父は非情に残念だ。」
新井の今の力がどれ程のものなのか計り知れないが、肉弾戦ならまだどうにかなる。傷を負おうが、引き裂かれようが逃げれば後は何とでもなる。回復を待って再び戦いに挑めばいいが、ミスティックナイフで傷を負うとなるとかなり厄介だ。傷は治らないし、それ以前に逃げるという行為すら不可能にされかねない。仮に新井の手に持っているナイフを奪取出来たとしても、この競技場にはあの部隊の人数分のナイフが無数にある。となると、状況はかなり不利だ。今のうちに逃げてしまおうか?というより、今機を逃すと逃げ切れないだろう。逃げるのは非情に不本意でプライドに傷が付くが、死んでしまってはプライドもへったくれもない。

不本意ながら撤退を決めた新一は、足を踏み出そうとした時、競技場のメインゲートから新一にも新井にも見覚えのある人物が現れた。

「一体どうなっているんだ・・・?」
メインゲートをくぐった鈴木も目の前を待ち受けていた状況は、とても常人では理解できないような奇妙なものだった。
見た事もない鬼のような格好をしたやたら図体の大きい者が1人、明らかに服装と体系が一致していない者が1人。そして半身がえぐれて地面に倒れ伏せている真を確認する事が出来た。

新一は最悪なタイミングだと思った。鈴木には失礼だが、正直逃げるのには足手まといになるし、厄介な事になる事間違いない。嫌な予感がした。新井が何かを仕掛けて来る。

「鈴木さん!」
新一がそう叫ぶと、面識のない恐持てに声をかけられ、鈴木は驚きの顔を見せたが、声に聞き覚えがあるのですぐに気が付いた。

「新一・・・君・・・?」
新一は彼の名前を叫んだと同時に、彼に向かって足を踏み出していた。新井はそれらの一瞬の動作を見て、ニヤッと笑い鈴木に向かって持っていたミスティックメタルナイフを矢のように投げ付けた。新一がブレイクを発動させた。だがギリギリ鈴木に命中してしまうかもしれない本当に際どい距離だった。

新一は鈴木のすぐ側まで近付いた時、瞬間的に迷った。新井の投げ放ったミスティックメタルナイフは凄まじい勢いを保ったまま一直線に飛んでいる。鈴木の身と一緒にかわす余裕はない。いくら対アヤカシ用ナイフとはいえ、鋭利な金属が矢のように飛んで来るのだから、人間といえども突き刺さって死んでしまう。ならばかばうしかないと考えが及ぶが、どこでかばおうかという問題が生じる。あの速度で天敵であるあのナイフを腕でかばう事など不可能だろう。腕を差し出した所でスパッと切り裂いて、鈴木に命中してしまうであろう。
新一がそうこう考えているうちに、最悪な事態を招いてしまった。一瞬の躊躇。これが危機的
状況においてどれほど危険な行為か。彼は身をもって思い知らされる事になった。

グサッ!

新一にはそう聞こえた。しかし、実際には「グサッ」という重い音ではなく、」「スパッ」というあっさりとした軽い音だっただろう。
ナイフは新一の予想外の場所に突き刺さっていた。どこでかばおうか考えがまとまらぬまま、肝心のナイフへの集中を欠いてしまった為、鈴木の真正面に立つようにかばってしまったのだ。ナイフは心臓の辺りを突き刺して、刃が全部めり込んで新一への侵入をストップした。新一が膝をついて苦しそうに胸に手をやる。そこから大量の血が流れ出していた。
何が起こったかわからなかった鈴木は、屈み込んだ新一の正面に回り込んだ。

「だ、大丈夫かっ、新一君!」
鈴木の目に飛び込んで来た情報は最悪なものだった。絶対に大丈夫なわけがないのに、そうとしか言葉を発する事が出来なかった。
体のエンジンである心臓を最もダメージを受けたくない武器で受けてしまった新一は、かけられた声を無視して必死に打開策を考えていた。と言っても、成す術は皆無に等しい。いくら鬼の力を得たとは言え、運動機関の中枢である心臓をやられてしまっては、どうしようもない。屈み込んでいたが、上半身の体重にも耐え切れなくなり、仰向けになるように倒れた。

そうこうしているうちに、意識が段々と薄れて来た。心臓の機能が停止し、血液の循環を断たれた事により脳に酸素が供給されなくなってしまったのだ。鈴木が必死に何かを言ってくれているようだが、聴力も視力も働かない。全ての感覚が働かなくなってしまってきた。

死ぬんだろうな・・・。新一はそう思った。だが、前回死んだ時と違って不思議と走馬灯が駆け巡るといった事はなかった。ただただ静かに意識が遠退いていくだけだったが、微かに「トクン、トクン」という鼓動に似た音が体に伝わっているのが感じられた。が、新一は完全に意識を失い、人間としての生命活動を停止した。

「あっけない結末だったな。」
新井が鈴木にそう告げると、徐々にその距離の差を縮めて来た。
鈴木はどうしていいかわからなかった。と言うより、わけがわからなかった。自分がここに現れてしまった為に新一は死なせてしまった。しかも、それは自分を殺そうと放たれたナイフによってだ。自分を殺そうとしている者は、依然として目の前にいる。今からブーストを両足にかけて逃げるにしても、もう手後れだろう。一応自分も化学者の端くれ。近付いて来る者の能力が尋常ではない事くらい察する事は出来る。だが、それ以前に一体誰なのだろう?新一に真、そして得体の知れない自分を殺そうとしている者。新一と真の接点は言うまでもなくわかっているが、この目の前にいる者と彼らの接点と2人も死んでしまって、尚且つ自分も狙われているという実状の因果関係がさっぱりわからない。

「フフフ、混乱しているようだな?」
困惑している鈴木の顔を見て、新井が不気味に笑いかける。

「一体あなたはっ・・・?」
なおも近付いて来る新井を、後退りしながら鈴木は問い掛けた。

「おやおや、お前は上司の事も気付けない愚か者だったとはな。」

「新井っ・・・!」
鈴木は目を見開き、新井を睨み付けた。

「上司に向かって何て口の利き方だ?まぁいい、お前には研究所を裏切ったという重い責任を死でもって償ってもらうつもりだからな。もはや上司も部下も関係あるまい。」
目を細め、獲物を追い詰めるようにジリジリと鈴木に近付いていく。

「あなたは今晩、政府との会談で研究所にいるはずじゃあ?」

「あぁ、私本体は今も研究所にいるよ。皮肉なものだな?君の研究の成果で、今君を殺す事が出来るのだからだからな。」

「・・・遠隔操作型サイコキネシス(心身洗脳)!?」
まさに自分が研究し、最近モルモットを使った実験が終わったところの特殊能力だ。だが、まだ学会や研究所内での説明会で詳しい内容を発表していないのに、何故ノウハウが知れ渡っているのだろう?と言っても、自分も大きな事は言えない。自分自身も情報を漏洩していた身。どこかで漏れていたのだろうと、諦めは簡単に付くが今はそれどころではない。生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされているのだから。しかし、今となっては棺桶に足を突っ込んでいるようなものなので、今更慌てふためく事はない。

「君は優秀なのに、どうして融通が利かないんだろうねぇ。斎藤君みたいに能力がなくても、賢く生きていけばいいのにねぇ。そうでもしないと、この世の中生きていけないよ?」

「あなたはどうかしている。斎藤も。」

「お前がどう思おうと、私の考えに賛同出来ない者が何を言おうとも、力を持った者が世の中を支配していくんだよ。理想や夢を語って、そこで終わってしまうという事は、あくまでも弱者の戯言でしかないわ!力を持った者が理想を貫く事で、世界を動かす事の出来る権利を得るのだっ!」

「そんなのただの思い上がりというものですよ。私利欲のためだけに力をかざすなんて、醜態の極みですね。哀れですね、あなたは。」
毅然とした態度で、新井の考え方を真っ向から否定した。もはや、殺されるとかという恐怖はあまりない。死ぬのなら、新井のような肉食恐竜の頭脳ではなく、人間の賢者として頭脳を持って死にたいものだという信念が今の彼を動かしていた。
あくまでも己の信念を貫こうとする両者には、意見の一致などは望めるものではない。

新井が爪を尖らせ、指を揃えて一本の刃物のように高々と構えた。

「じゃあ、死ね!」
その一言に鈴木は目を瞑り、死の覚悟を決めた。
ドカッ!
何かに殴られたような音が聞こえたが、何秒経っても攻撃を受けた気配がない。気を失っているわけでもないし、痛いという感覚もない。
恐る恐る瞼を上げてみると、目の前には死んでしまったはずの新一が立っていた。正確には新一に姿をした別物だった。肝心の新井はというと、気を失って地面に倒れ伏せていた。
「新一君、君は死んだんじゃあ・・・?」
ニヤリ笑い、新一が長い犬歯をちらつかせた。

「せっかく俺様が見込んでやったと思ったら、こんな人間の為に心臓をやられちまいやがって・・・。」
そう言って新一は胸に突き刺さっているミスティックナイフを引っこ抜いた。不思議な事にそこから血が流れ出す事はなかった。鈴木は新一の発する言葉が理解出来なかった。

「君は一体・・・?」

「あんたも無責任な奴だな。俺様を勝手に呼び起こしといて、誰だかわからないなんて。」

「新一君じゃないのか?」

「あぁ、奴は今オネンネしてもらってるよ。馬鹿な人間ごときに醜態を晒して修羅の名に傷を付けたからな。」

「じゃあ、今は修羅の君しか意識を保っていないわけだな?でも、心臓が停止しているのに何故?」
その問いに対して、修羅は無言で左手の親指で負った傷のちょうど真反対の胸を指した。その行動に一瞬意味が読み取れない鈴木であったが、一つの仮説が浮かび上がった。

「核・・・?」

「そうだ。アヤカシ独特の内臓機関だ。あんたも生物化学者の端くれなら知っているだろう?」

「知っている。知らないわけがない!だがしかし、今まで何回も新一君の体の精密検査を行ったが、核の存在は確認されなかった!それが何故?」

「所詮、人間のやる事なんざ、たかが知れてるって事だ。まったく、人間ってのは、頭の悪い生き物だな。」
そう言うと、目の前に倒れている新井の腹を蹴り飛ばした。1メートル程吹っ飛んだが、新井はピクリとも反応を示さない。鈴木はその光景をただ黙って見ているしかなかった。

「いい加減猿芝居をやめたらどうなんだ?」
新一の皮をかぶった修羅がそう言うと、新井は何事もなかったかのようにムクッと起き上がった。

「バレていたか。」

「馬鹿にすんじゃねぇ。俺様を誰だと思っているんだ?」
鈴木は違和感を覚え始めていた。研究で修羅の事は、資料の限り全て調べたつもりだ。実際に修羅に会った事もないし、知っているわけでもないが、修羅はこんな性格ではなかったはずだ。修羅と羅刹は、元々天上界の住人。彼らはその昔、荒れ狂った地上界を治める為に天上界から送り込まれた、言わば「神の使い」なのだ。元々戦いを好まない性格とデータにあるのに、何故目の前にいる修羅は、こうも好戦的なのだろうか?確かに新一の中には無数のDNAが存在しているから、それらが関与して修羅の性格を変えてしまったのかもしれない。だが、よほどの事がない限り、有り得ない話だ。

「鈴木よ、データにはなかった出来事だな?」
新井が修羅への警戒を欠かさず、語りかけてきた。内心鈴木もそう思った。
修羅が戦闘態勢を崩し、高らかに笑い出した。

「ハッハッハッハ、人間というのはつくづく呆れさせてくれるな。歴代の修羅を知らないのか?」

「どういう事だっ?」
新井が噛み付くように口を開いた。彼も一応は化学者の1人。純粋にどうなっているかが知りたいようだ。

「俺様を誰だと思っているんだ?」

「修羅だろうっ?]
鈴木が間を置かずに声を上げた。彼もまた、焦らされている事に歯がゆくなってきているようだ。

「そうさ、修羅には違いない。まぁ焦るなよ。ここにいる気に食わねぇ奴を処分したら教えてやるよ。すぐに終わるからよ。」
修羅が新井を睨み付けた。と同時に、1メートルの距離を瞬時に縮め、新井の後方に回り込んだ。そして間髪入れずに右の手刀を腹部に突き刺した。手刀はいとも簡単に突き抜け、大量の出血を促す。修羅は手を緩めなかった。腹に突き刺さっている手刀を、そのまま右に思い切り振り切り、腹部を半分切り裂いた。内臓であろうホース状の物がダラリと垂れて、とても普通の人間が直視出来ないような状態になった。そして、その手刀で新井の首を斬り飛ばした。

ゴトッと音を立てて生首が地面に落ちた。まるでボーリング玉のように、重々しく跳ねずにゴロゴロと転がった。首から下の体は、脳という指令塔を失ってしまった為、バタッと倒れて動かなくなった。

「やるな・・・、だが、いい気になるなよ・・・。もうす・・・」
修羅が有無を言わせず足元の生首を踏み潰した。修羅の力によって拡大された足に踏まれた事により、脳みそや目玉が無残に飛び出して、新井からの交信は途絶えた。
鈴木はその残酷で惨たらしい光景を見て、生理的に受け付けず嘔吐してしまった。口元をハンカチで拭い、修羅の足元にある物体を見ないようにするため顔を上げて、彼に再度問い掛けた。

「君は一体・・・?」
「修羅の事は隅々まで調べたんだろう?」

修羅が面白くなさそうに足で人の残骸をいじくりまわす。グチャグチャと気味の悪い音を立てて、次第に原型を留めなくなっていた。塞ぎたくなるほどの気味の悪い音に鈴木は再び嘔吐感に見舞われる。

「修羅は何代続いたんだよ?」
不機嫌に修羅が吐き捨てる。

「12代だ。それがどうかしたのかっ?」
修羅は地上界で12代まで続いた。天上界では死は存在しないのだが、地上界では寿命が進行してしまう。いくら神の使いとは言えど、寿命には勝てない。そのため、修羅は子孫を残す事で役目を果たし続けていた。

「で、新一に植え付けたのは何代目だ?」

「12代目だっ。だが、12代目の修羅は君のような好戦的な性格でなかったとデータにあった。君は一体誰だ?修羅じゃないのか?」

「フッ、俺は列記とした修羅さ。ただ、あんたらが12代目の修羅を完全に新一に植え付けられたかどうかは定かではないんじゃねぇか?」

「そんなはずはない、理論は完璧だったはずだ・・・。」

「だから人間のする事なんざ、たかがしれてるってんだよ。化学で何でもかんでも片付けようとするからわからねぇんだよ。世の中には常識や定説、法則で片付けれねぇもんは腐るほどあんだよ!てめぇ、自分は神様だとか思ってんじゃねぇのか?俺はな、5代目の修羅だ。」
鈴木はしばらく黙り込んで、混乱している頭脳をフル回転させて一つの仮説に辿り着いた。

「・・・ハッ?まさか、・・・『隔世遺伝』?」

「そうさ。」
仮説を肯定された鈴木は、再び口を閉じ腕を組んで記憶を呼び起こす作業をし始めた。そして何かを思い出したかのようにポンと手を叩くと、思い出した事を後悔するかのように顔をしかめながら口を開いた。

「5代目と言うと、あの歴代最悪の修羅、『豪鬼』かっ?」
「歴代最悪」というレッテルを貼られた本人は、ガクッと肩を落とし、鈴木を睨み付けた。

「おいおい、『歴代最悪』ってのは人聞きの悪い。てめぇ、喰っちまうぞ?」
そう言えばと、鈴木は研究していた頃を思い出していた。修羅のDNAサンプルが手に入ったのは8代目以降のものだった。最終的に採用されたのは最も状態の良い最新の12代目のものだったが、修羅の歴史を知っておこうと勉強した時期があった。古い伝記やくだらない雑誌まで、修羅の事が書いてある全てのものには目を通した。信頼性に欠けるものばかりであったが、そこで一番印象的だったのが、目の前で自称している5代目の「豪鬼」だった。

豪鬼は歴代の修羅の正反対の性格で、凄まじく鬼畜で暴れん坊、ひどく好戦的という神の使いどころか、まさに怖れられていた鬼だったという。歴代の修羅は優しく温厚で、社交的な性格の持ち主だったという。強い事は強いのだが、表立って力を見せ付けるような事はしなかったという。
その不貞の輩である彼を現世に蘇らせてしまったという事は、下手をすれば新井よりも手が付けられない可能性があり、遥かにタチが悪い。

「さてと、心臓の修復も終わった事だし、甘ちゃんのご主人様でも起こしてやるかな?」
そう言った修羅の胸の傷はキレイになくなっていた。

「ま、まて・・・。君は一体どうしたいというんだい?そこまでして新一君を生かす理由は何なんだ?しかも、君ならその気になれば人格を乗っ取る事くらい簡単だろう?それなのに何故、裏方に回ろうとするんだ?」
鈴木の言っている事は一般的に正しいし、豪鬼の血の気の多い性格からしてそうしてもおかしくないと推測してしまう。それほどの力を持っていながら、裏方に甘んじる真相が鈴木にはわからなかった。

「政治と一緒さ。」

「・・・」

「裏方の方がやりやすいのさ。都合のいいように出来るからな。・・・まぁ、本音を言うと人格を乗っ取る事が出来ないんだがな・・・。」
修羅はバツが悪そうにそう言い、コホンと咳払いを一つしてさらに続けた。

「今の俺様は単独では存在出来ないのさ。何かに依存しなければ、俺という存在が表に出る事が出来ない。それに、何にでも依存出来るわけじゃないんだ。今回は偶然だったのさ。新一という存在があったから、俺様が表に出てこれたってわけだ。つまり、新一がいなければ俺様は存在が出来ないのさ。・・・それに、コイツの人格を乗っ取る事は出来ない。コイツには非常に強い自我が存在する。神の使いである俺様でさえ踏み込めない領域を形成してやがる。」
眉間にシワを寄せて不満そうに口を尖らせた。

「踏み込めない領域・・・。」

「所詮、『神』ってのは人間による創造物なのさ。だから不可侵ってわけよ。『神』が人間を創造したんじゃねぇ、人間が『神』を創造したのさ。どっちがどっちなんだろうな?神か人間か?ってこんな事言っても意味ないか。あっ、ち~とばかしご主人様には無理させちまったから、リバウンドがくると思うわ。ほんじゃあな~。」
無邪気に無責任に笑うと、手を振った。その瞬間、新一の体が膝を支点にガクッと前のめりに倒れ込んだ。体が元の新一の状態に戻っていない為、大きな体はそれに比例して大きな音を立てた。

「・・・ッテ!」
倒れた衝撃で、本来の人格である新一が意識を取り戻した。慌てて鈴木が歩み寄り新一を抱き起こした。

「だ、大丈夫かいっ?」

「い、一体何が・・・?俺は一体何を・・・。」
頭を抱えてしばらく黙り込んだ後、抱き起こしてくれていた鈴木から自らの力で起き上がり、辺りをキョロキョロと見渡した。

「新井はっ?」
鈴木は黙って、新井に操られていた女性のグチャグチャになった亡骸を目を背けて指差した。
指差された方を見た新一は絶句した。所々原型を留めているものの、見るに耐え難いおぞましい物体がそこにはあった。自分の体に付着している血の匂いと、目の前の物体の匂いが同じとわかった瞬間、新一は自分が意識を失っている間何があったか少し推測が出来た。

「俺がやった・・・んですか?」
その場にヘタリ込んで鈴木に顔を合わせず問いただした。鈴木もまた新一の方を見ようとはせず、俯いて問いに応えた。

「君は憶えていないかもしれないが・・・、いや、一時的に死んでいたのだから憶えているはずがないが・・・。」
鈴木は新一が死んでいる間に何があったかをゆっくりと話し始めた。

「実は・・・かくかくじかじかで・・・・。」

「ふむふむ、かくかくじかじかだったのか・・・。」
一連の話を聞いた新一はヘタリ込んだまま、地面についている両手を見つめた。自分のものとは思えない大きさの手。奇妙に変色した自分の手。家を出る前に切ってきたはずの爪が、鋭く長く伸びきっている。

覚悟は出来ていたはずなのに、現実にぶち当たり今頃になって恐怖や人を殺めた後悔、自己嫌悪が湧いて来る。自分は何なんだ?一体どうしたいんだ?今更何を戸惑っている?俺は・・・、俺は・・・。

「・・・君は決めたのだろう?」
鈴木が新一の心境を感じ取ったらしく、そっと肩に手をやった。その一言に、虚ろ状態だった新一の目に鋭さが甦った。
そうだ、俺は決めたんだ。
俺は生まれて死ぬまで俺だけの味方。俺は俺だけの為に生きて、俺だけの為に死ぬ。そう決めたんだ。

今更、人を残酷に殺そうが、現実に恐怖を感じようが関係ない。全ては自分の為。躊躇いなど無用のはず。
しかし、納得はいかない。それだけの覚悟を決めていただけに、体を弄ばれた事に対して憤りを感じる。生き延びれた事には感謝はする。しかし、それは『豪鬼』という修羅によって成された事。相手を責める前に、自分の無力さを反省すべきなのだが、どうにも納得出来ない。そこまでされる筋合いはない。「新一」という人格を侵されてまで生きたいとは思わない。だってそれは、決めた事だから・・・。

「ふざけるな!」そう新一が心の中で叫んだ時、新一の体が元に戻った。肉体と精神が完全に修羅の力から解放されたからだ。

その瞬間、新一の全身に激しい痛みが走った。修羅による力が解除された事によるリバウンドである。そして・・・

「新一君っ、そ、その髪っ!」
元の戻った新一を見た鈴木の瞳には、白髪頭になった彼がくっきりと映っていた。透き通るように真っ白で、月の光を反射する髪の毛。白髪と言うより、銀髪に近かった。幼い新一の顔に白髪頭は一見ミスマッチだったが、不思議と違和感は感じられなかった。慌てて鈴木が足元にあったミスティックメタルナイフを拾い、鏡変わりに新一に手渡した。

「・・・これもリバウンドですかねぇ・・・。」
全身の激痛に新一の声が歪む。ミスティックメタルナイフを投げ捨てて、ヨロヨロと立ち上がった。

「どうするんだい、そんな体で?相当なダメージを受けているみたいだけど?」

「ここにいたって、何もならないでしょう?それに、関係者の方々がそろそろ匂いを嗅ぎ付ける頃でしょう?これだけ大暴れしたんだから・・・。」
そう、闇の暗殺者達が集結していたこの地から連絡が途絶えたとなれば、上層部の連中が黙っているわけがないだろう。それに、親玉である新井がさっきまでこの場にいたとなればなおさらだ。事が大きくなる前に退散した方が面倒にならずに済む。もっとも、とうに面倒な事にはなっているのだが・・・。
新一が立ち上がり、真の元へと歩み寄った。

「彼もまた君と同じように、私達の所為でとんでもない苦悩をしょわせてしまった。」
後ろから近付いてきた鈴木が申し訳なさそう真に謝罪の言葉を漏らす。

「ほんとはどこかにちゃんと埋葬して、弔ってやりたいけど、そんな余裕ないし、また実験材料にされちゃコイツも報われない。」
そう言う新一の両手がチリチリと音を立てて焦げ始めた。

「君がどうしようと、私は何も咎めないよ。君のしようとしている事が彼も望んでいるだろうしね。」

「スミマセン・・・、どうしてもコイツは俺の手で荼毘に付したいんです・・・。」
新一の怒りと悲しみとやりきれない思いが込められた両手が真に触れた瞬間、彼の体は蒸発するように跡形もなく消えてなくなった。焦がす程度にしか熱を発生させる事が出来なかったブーストが数段レベルが上がり、新一が進化した事を証明した瞬間だった。

「これからどうしますか?」

「取りあえず、真の遺言通り『光明寺』って所に行ってみますよ・・・。どうせついでだし。」

「やはり君はあそこを目指してるんだね・・・。その傷じゃ、ろくに動けないでしょ?」
そう言うと、鈴木はポケットから小瓶を取り出し、新一の手に握らせた。

「気休め程度ですけど、自然治癒力を高める薬です。おそらく、持っている薬に副作用はないと思うけど・・・。」
新一はそれを受け取ると、飲まずに懐にしまい込んだ。

「これくらいで音を上げてたら、この先もたないですよ。」
それもそうだと、鈴木が頷いた。

「私もどこかに見を隠す事にしますよ。クロスブリードのお手伝いもしなくてはなりませんし。お互い、目的は同じ。また逢いましょう、生きていたら・・・。」

「えぇ、いずれまた・・・。」
そうお互い確認すると、2人は同時に両足にブーストをかけ、誇らしく光る月の下、闇夜にそれぞれ消えていった。
戦いの後の静寂が競技場を覆う。そこには大量の死骸と、虚しさが静かに残された。
そして、新一と鈴木はこれを最期に、二度と言葉を交わす事はなかった。












Posted at 2009/08/31 12:21:27 | コメント(0) | トラックバック(0) | ニュース
2009年08月31日 イイね!

政権交代よりも…(^^;)

金曜日に起きた会社でのミスの後始末の方がよっぽど深刻…(^^;)

やらかしてくれたなぁ…と当日と土曜日は、各方面の対応に追われておりました。

頼むから、決められた事はきちんと守って仕事してくれ…○○君…(^^;)ミスの後の誠意をみせてくれ…

愚痴でした。

まだ今週末まで後始末は続くんですけどね…
Posted at 2009/08/31 09:43:28 | コメント(2) | トラックバック(0) | ニュース
2009年08月31日 イイね!

万歳三唱は…(^^;)

ワテは万歳三唱ほど、恥晒しはないと思っております。

気分を害される方には先に謝っておきます。

すみません。

みなさんも感じてると思いますが、選挙に勝つ事が仕事ではないのです。

中には土下座までして「お願い」する方もいます。

政策の話を一つもせずに、選挙の度に電話で投票をお願いする「団体」もあります。


マチガッテナイ?


筋道通さなきゃ誰も納得しませんよ…。

必死に日本を良くしたい!という方も当然いるのはわかってます。

しかし、落選又は敗戦してすぐ自宅に帰るような人間には少なくともそれは感じられません。

チガウヤロ。

すねる前に、負けても「私は今後も頑張ります」と意志表示するのがないから、国民はナメてるんですよ、「先生」を。

「先生」は学校や医者にいうもんで、議員は先生じゃない。そう言われてチヤホヤされていた方が、今回は負けたんだと思います。


ホントに選ばれた方には頑張っていただきたいと思います。
Posted at 2009/08/31 00:26:19 | コメント(3) | トラックバック(0) | ニュース
2009年08月30日 イイね!

(*゚ロ゚)ォォオオ!!

野党圧勝!

でもホントに仕事してもらわなあかんのは、これからやで!

通ったら仕事終わりちゃうで!

Posted at 2009/08/30 20:46:20 | コメント(5) | トラックバック(0) | ニュース

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