2009年08月17日
4月、ボクは晴れて社会人となった。数社から内定をもらっていたが、最終的に「医療器具メーカー」に行くことにした。
聞こえは良いが、中身は最悪だった。
メーカーとは名ばかりで、中身は商社的な要素が強く、当初想像した会社とは違った。それはボクがちゃんと見抜けなかったのが悪いのだが、日に日に「騙された」という気持ちが募っていった。
毎日、帰宅は日付が変わってからが当たり前だった。オカンも段々と心配になってきていたらしい。ボクが帰るまで、必ず起きて待っていてくれていた。ボクは深夜に晩御飯を食べ、早朝はオカンの作ったおにぎりをかじりながら、電車に揺られる日々だった。入社3ヶ月のボクにはもう限界だった。
何故、こんな目にあっている?
何故、大学を3番で卒業したボクがこんな目に?
この時ボクは変なプライドに支配されていた。
こんなはずじゃない。
会社に騙された。
ボクはもっと出来るはずなんだ。
10月、ボクは転職した。外国での小学校時代の友達の父親がある会社の役員をやっていて、「うちならお前は間違いなく伸びる。うちにこい。」と誘ってくれた。
ボクはその話に乗っかった。「こんな会社で一生を終えたくない」と思っていたボクには願ってもない誘いだった。
オカンとオトンにその事を伝えると、オトンは「今より条件がよくなるなら、止めはせん。」オカンは「あんたが少しでも気が楽になるなら」と賛同してくれた。
この時オカンは「病気」を再発していた。多分、ボクを心配していたからだろう。ボクが毎日遅く帰って睡眠不足が重なってたからだろう。また、心労が蓄積されていった。
11月の入社だったボクは、翌年の新入社員と同じ扱いとなった。ある会社の子会社なため、新入社員研修が、親会社、子会社合同で4月から5月にかけてあり、ボクはその年の新入社員と混じり参加をした。
長野県の山奥で行われる研修は、今や生活必需品となかっている「携帯」も圏外となり、外界との連絡手段は公衆電話のみとなった。
オカンは毎日ボクの心配をしていたらしい。別に心配するような歳でもないのに。
たまたま電波の入る時はメールが入っていたりしたが、ボクは合宿が面白く、そっちのけで満喫していた。オカンが大変な事になっているとも知らずに。
合宿も残すところ後2日と迫った日、珍しくオトンの携帯から電話が入った。
「お母さんが大変や。」
ボクは、一気にお気楽気分から血の気が退いた。
事情を説明し、ボクは一目散に自宅を目指した。往路は遠足気分で、電車に揺られるのが楽しかったが、まさか復路はこんな思いで電車に乗るとは思わなかった。
帰宅すると家にはオカンがいた。家を出る時とまったく別人になってしまっている。
躁鬱の「躁状態」で、テンションが異常に高く、止めようがない。夜も眠ろうとはせず、ひたすら意味不明な言葉を言い続ける。仕舞い目には自分もおかしくなりそうになるくらいだ。
しばらくして、オカンは入院する事になった。もう家族だけでは手に負えず、苦渋の決断だった。
いわゆる「精神病院」だ。
よく、麻薬犯罪者が更正施設に入っている映像を目にするが、それと何ら変わりなく、ある種の不気味ささえ感じられる。ボクが1番情けなかったのは、自分のオカンが「そこにいる」という事だった。会いに行っても、気軽に「調子どう?」と聞けない重々しい病棟。鍵で締め切られた、隔離病棟。周りはオカンより酷い症状の言動を起こす人が処狭しと居る。何故自分がそこに居るのかさえ理解出来ていない人が…。耐え難い現実を突き付けられた。病院という名の、姥捨て山だった。正直、逃げ出したかった。
数週間すると、鍵の無い一般病棟に移ったのだが、状況は不思議な事に緩和されて落ち着きを取り戻していた。
「あんな気の狂った連中の中にいて、何故こうも落ち着けれるのか?」
不謹慎ながら疑問で仕方なかった。
それからもオカンは入退院を繰り返し、転院もした。
治っているのか、悪化しているのかわからないが、何とかやっている。
今気掛かりなのは、オトンが参ってしまわないかどうかだ。
気の強い人間だけに、その反動も大きいだろう。決してボクらに弱音を吐く事はしないが、きっと相当参っているに違いない。
この前、オトンの誕生日にビールを1ケース持っていった。
普段はあまりしゃべらないオトンが珍しくあれやこれやと話をしてきた。ボクは久しぶりにまともにオトンと話をして、少し安心した。いつも通り変わらないオトンだった。オトンが笑うとオカンも嬉しそうだった。やっぱり夫婦なんだなと思った。
きっと、オカンもオトンへの罪悪感もあるだろうし、申し訳なさがあるのだろう。オトンが笑う姿は安心するらしい。
今までは直接オカンをどうこうと考えていたが、どうやら周りからそうするのも有効な手段だと思い始めた。
ボクらも変わらなきゃならない。
世の中には、難病と闘いながら必死に生きている人がいる。治るか治らないかもわからない、出口の見えない迷路の中、行ったり着たりして、さまよう。本音を言うと、それを見ていると時々嫌になるし、逃げ出したくなる事もある。投げ出したくなる事もある。
それでも、誕生日に「おめでとう」と言ってくれるオカンがいてくれて、本当に嬉しいと思う。それを支えるオトンや弟、妹、周りの人たち。
これがきっかけと言っても過言ではない。
「ボクはボクの家族に生まれてきて良かった」
「ボクのオカンがオカンで良かった」
今となってはそう思える。
ある暑い日の電話の後の、短い人生の振り返り。
「おめでとう」と「ありがとう」
単純な言葉の中に隠された、不思議な力を持った言葉。
PS
オカンへ
「またいつの日か、誕生日会してね。今度は文句いう奴なんて来ないから。」
終わり

Posted at 2009/08/17 21:08:19 | |
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2009年08月17日

ナニ(゚゚;)(;゚゚)ナニ?
ドッカラ(゚Д゚≡゚Д゚)ドッカラ?

Posted at 2009/08/17 17:37:16 | |
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2009年08月17日

本日、連続みんカラ小説「オカン」最終回!
次回はSF小説か?!

Posted at 2009/08/17 12:57:06 | |
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2009年08月17日

今日はおにぎりと未確認飛行物体。
ストレート麺になってから初めて食べたんですが、CM通りストレートでした(^^;)
マヨがないのが残念でした(;A´ー`)アセアセ

Posted at 2009/08/17 12:26:11 | |
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2009年08月17日
さて、夏休みも終わり今年の後半戦がスタートしました。
相変わらず景気の方は良いのか悪いのか…。後半もあまり期待は出来ませんね…。
そんなこんなで休み明けの皆さん!張り切って頑張りませう…(ムリ
Posted at 2009/08/17 07:50:40 | |
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