
今までの試乗記を読んでいただいたらわかるように、自分は正真正銘の乗り心地フェチなんです(笑)。ハンドリングも動力性能も重要な評価ポイントでありますが、それ以上に自分が譲れないのは質感のある乗り心地なんですね。
前にも一度端折って書いたことがあるんですが乗り心地が良いとはどういう事なのかもう一度自分勝手に妄想してみます(笑)。なお高速走行に主眼を置いたスポーツカーなどではまた話が違ってくる場合がありますので、ここでの話はあくまでも
実用車限定とさせていただきます。
一言で乗り心地と言っても、乗り心地を構成する要素は大きく分けて4つあると思います。
1. 路面のシャープな凹凸に対するあたり、つまり凸凹を乗り越えた時の衝撃度ですね。
2. 次に路面の大きく緩やかな凹凸への反応、うねりに対するボディーの揺れ具合
3. 一見平坦な道を走ってる時のひょこひょこするピッチングの少なさ
(4. 路面の細かなざらつきをいかに感じさせないか)
まず1について
これは路面の凹凸をガツンではなくいかにうまく衝撃無くいなせるかということです。狭い意味での乗り心地はこの事を意味します。サス形式、ダンパー性能、バネ特性、ブッシュの硬さなどなどサス自体の出来だけではなく、ボディー剛性、タイヤ特性、さらに言えばタイヤ空気圧にも左右されます。
2について
これは当然サスによる制御も重要ですが、車の重心にも大きく左右されるように思います。いくら1の要素が優れているSUV車であっても左右の揺すられ感が絶対にセダン系より優れることは無く重心の高いSUV特有の動きを示す事が多いのです。
3について
これは一見平坦な道を走る時、どれだけベターと貼りつくように走ることが出来るか、すなわちいかに細かいピッチングが少ないかということです。これはホイールベースの長さや車体重量にももちろん影響されますが、ダンパーの性能、調整具合に左右される事が大きいように感じています。出来のイマイチな車は平坦な道を走っていても常に細かいピッチングが感じられます。現行インサイトの初期モデルはそういう意味では本当に醜いものでした。今は随分改善されていますが、先代フィットなど少し前のホンダのコンパクトカーは全般的にそういう傾向がありました。なおホイールベースや重さだけの問題では無いというのはスズキのスイフトがこの部分が非常に優れていることからも言えると思います。
そして2-3を合わせて走りの
フラット感という言葉で表現出来るかと思います。
最後に4について
これは付けた足し的な要素でもあるのですが、ボディーまでのサス、ブッシュ、ダンパー、緩衝材によっていかに振動を軽減させるかによるので振動対策、緩衝材に徹底的にお金をかけられる高級車、特にSクラスや7シリーズ、レクサスLSなどのエアサス仕様車には有利な要素です。したがって通常の乗り心地論議に入れるのは平等では無いかも知れませんので以下の話では省かせていただきます。
この1-3をバランスよく満たした車が本当の意味での乗り心地の良い車と言えるわけです。昔のクラウンのように単に凹凸に対する当りが柔らかいだけでフラット感に乏しい車は本当の意味での乗り心地の良い車と言えないのです。前にも書きましたように現在の1号車
Eクラスは1~3を見事に満たした理想的な乗り心地を持った車だと思います。
また自分が試乗した中でも節目節目に自分の予想、想定を超えるような乗り心地の車に出会ってきたわけですが、それが次の4台です。
先代Cクラスエレガンス
スズキスイフト
ゴルフ6
そして最近では
新型プリウス
これらもやっぱり1~3を満たした素晴らしい乗り心地の車です。
また乗り心地はそれ単独で追求すればいいものでも無く、ハンドリングとのバランス、高速安定性とのバランスなどある意味相反する要素との両立問題などもあり本当に奥深いものですね。自動車が登場して既に130年にもなるのにまだまだ進化し続けているのがそれを物語っています。
しかしメーカーの新車開発プロセスにおいて乗り心地の優先順位はハンドリング、操安性などに比べて明らかに低いようです。デビュー時には乗り心地の問題点を指摘されて、年次改あるいはマイナーチェンジで乗り心地が良くなる車がどれだけ多いことか。例外的にプリウスは乗り心地が先代時に散々批判された結果、乗り心地で絶対に文句を言わせないという開発陣の強い意志を持って開発した結果、素晴らしい乗り心地をデビュー時から実現することが出来ました。すなわち実用車の一番の基本である良い乗り心地の確保を最初から開発の優先項目にもって来れば実現可能なことであるのに、何故同じ事をどのメーカーもいつも繰り返しているのか不思議でなりません。
更に言えば、上の1~3を満たす乗り味の車を作れば結果的にハンドリングや操縦安定性も当然良くなるのではないでしょうか?いい車はほんの数m走り出せばすぐわかるとよく言われるのはそういう事なのです。せっかく本当に大事にすべきデビュー即買ってくれるようなユーザーをマイナーチェンジで悔しい思いをさせないような開発姿勢を是非望みたいものです。日々進歩は当然ですがあまりにも差があるのはやっぱりどうかと。
もう一度いいますが、マイナーチェンジで乗り心地が良くなったというような事が毎年どのメーカーの多くの車でも起こっていますが、少なくとも実用車ではプリウスのように乗り心地を開発の優先項目に持ってきて最初から乗り心地の良い車を作って欲しいものですね。
さて自分がこれからの車で一番乗り心地に期待しているのはやっぱり新型Eクラス、現状でも理想に近い乗り味を持った車が新型でどれだけの進化を見せるのか。特にマルチチャンバーのエアサスモデル、Sクラスや7シリーズにどれだけ迫れているのか今から楽しみでなりません。
乗り心地の良い車の代表格2台のそろい踏み
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Posted at
2016/02/15 23:40:27