
これは猛暑と日経暴落でイカれてしまった男のフィクションである。
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私の土曜日の日課といえばテニス。テニスをしている瞬間は全て忘れ、質の高いプレーをするために戦略を考える没入感が好きなのだ。
今週末も降り注ぐ太陽の光の元でいつもと変わらずプレーの事だけに集中するのであったが、暑さの為かメンバーひとりが体調不良を訴え少し消化不良気味に切り上げ解散となった。
時計を見ると16:00前。今から行けるのか。
私は1年前に交わした君との約束を守るため山形に行くことにした。
行き先は蔵王温泉。蔵王までは約330km。シャワーを浴び身支度を整えプジョーの鍵を持った。
ナビをセットすると到着予定時間は20:30と表示された。夕食の最終時間は19:00なので夕食を放棄することにした。
常磐道から磐越道にスムーズに流れ中間地点でナビの到着予想時間は20:00に変わる。いくらプジョーの猫足であっても60分の短縮は厳しいか。
そのタイミングでホテルから電話が入る。19:30までに到着出来たら夕食放棄しなくて良いと親切にも連絡が来たのだ。あと150kmで30分を短縮するのはどう考えても厳しい。ノンストップで走り切るのは勿論だが東北中央道の片側一車線区間もペースカーに阻まれず走りきらなければならない。
東北中央道もスムーズに進み蔵王温泉までのヒルクライムはプジョーのボンネットの下に収められているBMWエンジンを5000回転まできっちりと回しながら走ると運も味方し19:29に到着した私は夕食にありつける事となった。
これがこのドライブの奇跡の始まりだったのではないかと思うのである。
【蔵王アストリアホテル】
建物や施設の老朽化は否めないが蔵王温泉でもイチバンの高台に位置し蔵王の四季の眺望を楽しむことが出来る。食事は地産地消に拘り山形の郷土料理の芋煮はもちろんのこと山形牛を贅沢に使ったしゃぶしゃぶは絶品。
別棟にある温泉は24時間入浴可能で源泉掛け流しの強酸性の硫黄泉。美肌効果抜群。
翌日、目を覚ますと天気予報とは裏腹に雲ひとつ無い青空が広がっていた。しかしながら予報は下り坂。朝食も早目に切り上げ2日目のドライブをスタートさせた。
君が見たがっていた蔵王のお釜。今だったら見れるかもしれない。だが刈田岳に近付くにつれて青空は消え予報通りの天気となった。
どうせならエメラルドグリーンに輝くお釜を見せてあげたい。ポケットから熊ボッコを出して見せてあげると雲が割けるかのように青空が現れた。空には数多くのアキアカネが飛び交っているが突然一匹のアキアカネが私の足下に降り立つとその瞬間から天使の梯子がお釜に伸びて息を呑むような光景が現われたのである。
この一期一会の景観を目に焼き付け心の奥に仕舞うことにした。
ひとつ目のピースを埋め山形市内の「山田屋ふうき豆本舗」に向かう。甘さ控えめで豆の風味を感じるふうき豆は保存料が一切使われていないので賞味期限は3日しかないのである。現実的には店舗購入を強いられることになるが購入チャンスがある時は必ず買わせていただいている私のお気に入り和菓子である。
続いて天童方面に向かう。
恐らく駄菓子のどんどん焼きは誰しも1度は見たことあるだろう。だが、どんどん焼きとは何か?知っている人は意外と少ないのではないだろうか。
どんどん焼きとは山形の郷土料理と言うかB級グルメで見た目はお好み焼きをクレープのように丸めたモノだが食感はモチッとしていてお好み焼きとは別の食べ物である。
写真はマヨネーズのトッピングを30円で追加した330円のどんどん焼きである。
続いてスイッチバック遺構の残る板谷峠に向かう。1年半に山形旅行をした際に訪問予定にしていた峠駅だったが旅行当日に雪が降り車で板谷峠を越えられず新幹線に切り替えて移動したことがあった。その時、通過する峠駅を車窓より眺めながら峠駅への再訪を約束したのだった。
現在ではスイッチバックは廃止され作業用車両の引込線となっているが、スイッチバックの名残があり、線路だけが狭軌から標準軌に変えられているのが不思議に感じるスポットである。
【板谷駅】
板谷駅の横目で見ながら峠駅方面へアプローチする。ここから駅までは2メートル道路が約2km続く。途中待避所があるが運が悪いと狭い道を数百メートルバックで戻らないとならないことになる。案の定、今回は2度ほど待避所への後退を強いられる場面があったが無事に峠駅にたどり着いた。
峠駅は雪深い場所にあり雪から駅を守るためにスノーシェルターに囲まれている。シェルター内に駐車スペースがありプジョーを停める。周辺を散策しながら車に戻ると右ヘッドライトの位置にプジョーのアイコンである3本のカギ爪が重なっていた。光の悪戯とは言え今回のドライブのクライマックスに相応しい演出である。
新幹線と普通列車が線路を共有している不思議な光景を観ることが出来るスポットでもあり、走行中の新幹線に極めて接近出来る乗り物好きには堪らないスポットである。
今回のドライブのエンディングは岳温泉のカフェを予定しているが、折角なので飯坂フルーツラインから大好きな磐梯吾妻スカイラインを経由して向かうことにする。
先を急ぐ旅ではないのでフルーツラインの途中にある気になっていた「PEACHMAN CAFE」に寄り道をする。
ピーチマンスペシャルをオーダーし待つこと10分。ミルク氷の中にカットされた桃が入っていて、更に香りが際立つ桃ソースと相まって自然と笑顔になるかき氷だった。
フルーツラインを走り高湯ゲート方面にハンドルを切ると、見覚えのある自動販売機が目に入った。もしや、私の妄想が聖地にワープさせてしまったのか目を疑ったが、聖地400円に対して300円のプライスタグ。大きさによって2〜3個入っていた。
天気予報通り道中で何度か土砂降りに見舞われるが磐梯吾妻スカイラインを通過する頃は雲の切れ間が見えていた。
心の中でブラボーブラボーと呟きながらゆっくりと前に進む。
浄土平を過ぎると青空が広がり路面から立ち昇る蒸気が反射する太陽の光と共に天へ消えていった。
少し中途半端な時間だったので岳の湯に立ち寄った。相変わらず高温の硫黄泉は刺激が強く3分と入っていられなかったが身と心をリセットするのには最適な温泉である。
続いて岳温泉からほど近いBONANZAに立寄った。ここで今回の旅のエンディングを迎えることにした。
2年前と同じくアンチョビの香りがアクセントのトマトソースのパスタと水出しのアイスコーヒーをオーダーした。
ここでSpotifyを立ち上げスイートメモリーズを流した。
今日はタバスコを多めにかけて食べることにしよう。
〜完〜
最後まで妄想にお付き合いいただきありがとうございました🙇
↓ふうき豆↓