今回から始まった「観察録」シリーズ。
本格開始化の記念すべき(?)第1台目は…

TOYOTA GRMN Vitzです。
GRMN Vitzは、「『走りの』Vitzの頂点」に位置するモデルとして生まれました。
(「GRMN」=「GAZOO Racing Meister of Nürburgring」の略称。「GR」シリーズの最高峰ラインに与えられる名称です。今回のGRMN Vitzで7モデル目となります。)
主な(話題となった)特徴は、以下の通り。
・全国150台限定の抽選販売(※申込受付は既に終了しています)
・GR Garageのみの限定販売
・3ドアボディ
・車両価格400万円(税込)
今年の全日本ラリーでも、第3戦「NISSIN Rally丹後2018」からTOYOTA GAZOO RacingがJN5クラスにて参戦しております(ドライバーは眞貝知志選手、コ・ドライバーは安藤裕一選手です)。
発表時から1度は見てみたかったGRMN Vitz。今回、その機会に恵まれましたので、水戸にあります「GR Garage水戸けやき台」さんにお邪魔して、観察して参りました(スタッフさんの方、快く対応して頂きまして、誠に感謝致しますm(_ _)m)。
それでは、暫しお付き合いください。
【注意と感謝】
今回の「観察録」に登場するGRMN Vitzは、「GR Garage水戸けやき台」さんから「ナンバー出していいですよ」という許可を得ましたので、ナンバーを隠さずに掲載します。御協力誠に感謝致しますm(_ _)m

近くで見るGRMN Vitzの第一印象は、「あ、カッコいい…」。…と同時に、「GR Vitzと…ちょっと違う??」という印象も抱きました。
パッと見、GR Vitzとは見分けが付きづらいです。これは、(個人の見解ですが、)元々、GR Vitz自体、このクラスのコンパクトカーのスポーツグレードの中で最も「スポーツマン的な」印象があるからなのかな、と思います。

それに対して、GRMN Vitzは、3ドアである点とホイールの印象と相まって、GR Vitzと比べて「少し硬派な」印象を抱きました。…正直、「カッコいい」です。
【注意】
「スポーツマン的」は、「戦闘的」とは意味合いは全く異なります。あくまで「爽やか」な感じです。
また、ドアミラーは、

ピアノブラック調塗装でした。
また、

こんな所(※ヘッドライト~グリルの間のガーニッシュ部分)もカーボン調のシボになっていて、凝っているように感じました。恐らく、GRやGR SportグレードのVitzもGRMN Vitzと同じバンパー形状ですので、オーナーの皆様はチェックしてみては如何でしょうか?

ホイール部分のアップ。
ホイールはBBS製。デザインからして、「RE-L2」をベースにしていると思われます。カラーはGRMN Vitz専用のマットグレー塗装。このマットグレーが、「硬派な印象」を引き出す要因(の1つ)だと思います。
因みに、取付穴は4HでPCDは恐らく100だと思われます。
(※2013年に登場していたGRMN Vitz TurboはPCD100の5Hでした。噂によると「ラクティスのハブ」を使用しているとか…。)

装着タイヤは、BRIDGESTONE POTENZA RE050A。サイズは205/45R17。
このサイズ選択も絶妙です。というのも、アフター品を探してみると、
・BRIDGESTONE POTENZA RE-71R
・ADVAN NEOVA AD08R
・DUNLOP DIREZZA ZⅢ
・MICHELIN Pilot Sport 4
…といったハイグリップ系統も豊富にあるからです。また、コンフォート系もありますので、タイヤ選びに悩まないサイズであったりもします。

ブレーキキャリパーのアップ。GRMN VitzのキャリパーはADVICS製対抗式4ポットキャリパーで、キャリパーカラーは白。見た感じ、GRMN Vitz Turboのキャリパーと同じだと思われます(※Web上にアップされている「GRMN Vitz Turboのキャリパー」と今回の写真とを見比べました)。ブレーキローターはフロントだけスリットタイプでした。
リアは写真を確認してみる限り、GRMN Vitz Turboのキャリパーとは違うものが搭載されていると思われます(※Web上にアップされている「GRMN Vitz Turboのリアキャリパー」と今回の写真(※辛うじて、リアキャリパー上部だけが写っているもの(※タイヤ銘柄確認用の写真)がありました)とを見比べました)。因みに、メーカーは確認してませんでしたm(_ _)m。

内装のアップ。ダッシュボードは「普通のVitz」。GR Vitzに見られるカーボン調のパネルも無く、通常のVitzと同じくシンプルなもの。…言い換えれば、「内装質感は普通のVitz並」とも言えます。
しかし、「走りの車」であることを考慮すると、、こういったシンプルな感じは個人的に好きです。

ステアリングホイールは、他のGRシリーズ同様、「86 Kouki」ベースの小径ステアリングホイールです。
【追記@2018.06.25 21:10】
実は、書こうとしておりましたが、書き忘れてしまった所がありましたので、その点を追記致しますm(_ _)m。
GRMN Vitzは、通常のVitzと比べて違う箇所がたくさんあります。その中の1つが、「ステアリングコラム周りのレバー類の配置」。
通常の日本車は、「右側:ウィンカー・ライト等の灯火関連」で、「左側:ワイパー関連」になっています。
GRMN Vitzはどうなっているのかと言いますと…、

右側が、ワイパー関連のレバー。

左側が、灯火関連のレバー。
…と逆転しています(「輸入車と同じ配置」、とも言えます。)。これは、(後述しておりますが、)GRMN Vitzが元々フランス・バランシエンヌ工場にて生産されて、日本に輸出されている、といった背景が理由としてあると考えられます。
実はGRMN Vitz、トヨタのマークが付いておりますが、「帰国子女系クルマ」ではなくて、「れっきとした輸入車」であると言えるのです…。
【追記はこれにて終了しますm(_ _)m】

シートのアップ。シートは、GRMN専用のもの(恐らく、トヨタ紡織製)。表皮も東レ社の「ウルトラスエード」を使用しています。また、シルバーとレッドのステッチが施されていました。試しに座ってみましたが、腰回りが楽で、好印象でした。

後席のアップ。後席はファブリック(と思われます)で、シルバーのステッチが施されていました。因みに、前回のGRMN Vitz Turboと違い、6:4の分割可動式です(※GRMN Vitz Turboは、軽量化を目的として一体可動式になっていました。)。
GR Garageの方にお願いして、前席を後ろに下げて頂き、ドライビングポジションを取った時のことを想定した後席の居住性を確かめてみました。気になる後席の居住性は、足元の自由度は少ないものの、快適でした。実用的で「普通に使える」後席で、驚きました。
その後席の快適性には、理由があります。それは、「寸法」。実は、Vitz(Yaris)の3ドアと5ドアは、全長・全幅はおろか、ホイールベースまで同一なのです(※)。外観上の違いがあるとすれば、スタイリングとフロントドアの「長さ」位(細かい所を言えば、「ドア数分のボディ剛性」等…)。それ故、例え3ドアでも、5ドアのVitzに乗っている時と同じ位の快適性が担保されているのです。
※実はこの話、GR Garageの方から説明を受けて、初めて知りました。それ故、驚きました;^^)

ラゲッジルームのアップ(分かりづらくて申し訳ありませんm(_ _)m)。ラゲッジルーム自体、通常のVitzと変わりない模様です。

シフトノブのアップ(※シフトパターンが見辛くなっています。申し訳ありませんm(_ _)m)。シフトノブはGRMN専用かな、と。他のトヨタ車でこんな感じのシフトノブを見たことがありません(もしありましたら、情報を頂けますと、幸いですm(_ _)m)。シフトノブ自体は握りやすかったですし、握り方の癖もありませんでした。また、シフトノブ自体に重さは感じられませんでした。
シフトパターンは、リバースが左上にあるタイプでした(オーリスのRSも同様のタイプでした。もしかしたら、オーリスRSのミッションをベースに強化されたものが搭載されているのかもしれません…。)。
ストロークは短かったですが、適度な感じで、「作られた感」があるような感じがしませんでした。
(※過去にア○トワー○ス試乗した時、「作られたかのような」極端なシフトストロークの短さに違和感を感じて以来、ショートストロークシフトに警戒感を抱いています…。)
試しにポジションを合わせてみて、クラッチペダルを踏んでみます。気になるクラッチペダルの重さは…結構重かったです。個人的には「メガーヌRS」と似た感じを受けました。…GRMN Vitzを普段使いするには、ちょっと「慣れ(覚悟)」がいりそうです。
(果たして、「150台のオーナーさんの何人がGRMN Vitzを普段使いをするのか?」という疑問は置いておきまして…;^^))

メーター全景。個人的に、GRMN Vitzで一番好きなポイントです(理由は、
こちらのブログにて。)。実は、実際に見れて、一番嬉しかった部分だったりします。
理由は、他の車と違って、文字盤の字体に「レトロ感」を感じたから(※視認性の点に関しましては、別のお話、ということで…)。個人的には、「クラシカル(レトロ)な腕時計の文字盤」を連想しました。
その事を父に話してみたところ、父曰く「60-70年代の車のメーターの文字盤をイメージしたのではないか?」とのこと。また、「昔の車のメーターのデザインに戻ったように感じた」とも言っていました。
…その点から考えてみますと、トヨタが想定している「GRMN Vitzを購入するであろう世代」のイメージが浮かんできたような気がします(恐らく、「50代以上」の方が、「自分用」で購入するのでは?、というイメージ。)。
※GR Garageの方に訊いてみたところ、「GRMN Vitzは、『セカンドカーとして』購入する方がほとんど」とのことでした。それ故、「普段で見かけることは中々ないのではないのでしょう」と言っていました。
しかし、GRMN Vitzのメーター配置を冷静に観察してみますと、
・水温計が無い(ディーラーオプションの「TOYOTA GAZOO Racing Recorder付専用T-Connectナビ」を装着すると、水温の表示が可能になります)
・スピードメーターが(一番目につく)中央に配置されている
点が気になりました。というのも、「GRMN Vitzは、Vitzにおける「走り(戦闘)」の頂点に立つモデルである」というイメージがあったからです。
気になりまして、ベースとなったYaris GRMNのメーター周りを調べてみますと…、

(出典:
https://www.autocar.co.uk/car-review/toyota/yaris-grmn)
メーターの構造自体が全然違う!!
(スピードメーターとタコメーターが並列配置+インフォメーションディスプレー付+水温計付)
※詳細を見たい方は、「Yaris GRMN meter」にて検索してみてくださいm(_ _)m
更に、2013年に限定200台が販売されました、GRMN Vitz Turboのメーター周りを調べてみますと…、

(出典:
http://grmn.gazooracing.com/Vitz_Turbo/photo_gallery.asp)
タコメーターが中央に配置されていました。文字盤のデザインも、シンプルで好感が持てるものでした(個人的に、Skagenの腕時計の文字盤を連想しました)。
…しかし、(失礼ですが、)文字盤のデザインに「ワクワク感」を感じませんでした。
更に、GR Vitzのメーター周りを調べてみますと…、

(出典:
https://toyota.jp/vitz/grade/gr/)
こちらもタコメーターが中央に配置されていました。
(…GR Vitzのメーターの文字盤デザインは、GRMN Vitz Turboのものがベースにあると考えられます。)
こうして見てみますと、今回のGRMN Vitzのメーターの文字盤のデザインが一番ワクワクしましたし、個人的に好きでした。そのため、メーター配置や水温計が無いことに疑問を感じた、というわけです。
…(失礼ですが、)果たして、150人のGRMN Vitzのオーナーさんが、その点をどう思っているのか、気になります。
(恐らく、「慣れ」で解決できる箇所であると思いますし、要らぬ心配かもしれませんが…。)
閑話休題。

エンジンルーム全景。
(GR Garageさんのご厚意でエンジンルームも開けて頂きました。多謝!!)
エンジンは2ZR-FE+スーパーチャージャー。この組み合わせは、Lotus Elise Sと同じものです。
そこで、スペックを比べてみます。
Lotus Elise S
Power:220ps/6800rpm
Torque:25.4kgm/4600rpm
Rev Limit:7100rpm
Weight:950kg
Toyota GRMN Vitz
Power:212ps/6800rpm
Torque:25.5kgm/4800rpm
Rev Limit:6700rpm
Weight:1140kg
…スペック的には大差ないものの、GRMN Vitzはトルク寄りの特性であると言えます。これは主にセッティング(と取ることができるマフラーの長さ)が関係していると思います。
(※自分が説明できるのはここまで。これ以上の詳しい説明は、その分野に詳しい方に説明の方を宜しくお願い致しますm(_ _)m)
また、個人的に、

こういったプレートは、所有欲を盛り上げてくれそうで、ニヤニヤしそうです^^)

…と、GRMN Vitzを具に観察してみましたが、そこで感じたのが、「走りにコストがめちゃ掛かってそう…」という点。見た目自体は「3ドアのGR」的な趣で、控えめさを感じます。内装もシンプルです。恐らく、それらの「上辺」だけを見てみると、「400万円」の真意が伝わらないような気がします。
GR Garageの方から聞いたのですが、「前のGRMN Vitz Turboは、売る度に赤字だった」とのこと。考えてみますと、当時のGRMN Vitz Turboの車両価格は、税込み270万円。この価格、実は現在の「GR Vitz」の車両価格+約40万円。改造内容を考えると、その値段は驚異的であったと考えさせられます(過給機を組込んでセッティングすることを考えると、40万円ではできません。)。
先に、「今回のGRMN Vitzの400万円は、高いか?安いか?」、という点に関して、自分なりの結論を言いますと、正直答えづらいです。…しかし、作り込みやこれから書いていく「裏側」を考えていくと、「400万円でもギリギリもしくは赤字なのでは?」と思いました。それ程、GRMN Vitzは「お得」に感じられるかもしれません。
同じ価格で、似たような性格を有する車と言うと、真っ先にアバルト500を思い浮かべました。更に世界に目を向けてみますと、オペル・コルサOPC(ヴォクスホール・コルサVXR)やミニ・クーパーS、フォード・フィエスタST等が挙げられます。しかし、GRMN Vitzはその車達と比べてしまうと、内装演出やキャラクターなどの点においては不利な面は否めないと思います。あくまで、GRMN Vitzの本分は「走り」。そう考えると、GRMN Vitzは「体育会系」であると考えられます。
200psオーバーのFFで、刺激的なVitz。しかも、「トヨタクオリティ」で安心して乗ることができる。また、Vitzがベースであるだけあって、(クラッチペダルの重さを除けば)実用性も高い。あくまで「見ただけ」ですので、自分が言えるような立場ではありませんが、こういう刺激的な「体育会系キャラ」が好きになれば、GRMN Vitzは買いであると思いますし、150人のオーナーさんはそのキャラクターとトヨタの「本気度」に本当に惚れたのだと思います。
(400万円のハイパフォーマンスカーなんて、WRX STIやシビック・タイプR等、ごまんといますからね…。)
因みに、autocarさんのページ等を拝見してみますと、「Yaris GRMN」の価格は、邦貨換算で約400万円。GRMN Vitzとほぼ同じお値段です。
※因みに、Yaris GRMNを並行輸入すると、本体価格で約530万円(税込)とのことです(出典:
http://riesen.co.jp/5574)。
また、GRMN Vitzは、
1.フランス・バランシエンヌ工場で生産され、日本へ輸出。
2.その後、元町工場へ運ばれ、LFA工房の職人さんの手による最終仕上げを行う。
…といったステップを経てオーナーさんの手元に届けられます。
更に、各都道府県の陸運事務所に「予備検査」を行ってもらい、「各都道府県の陸運事務所の検査官による見識の違い」を無くすようにメーカー側が働きかけたそうです。それ故、GRMN Vitzはどの都道府県でも一発で車検が通るとのことです。(※この話は、GR Garageの方からお聞きしました。)
こうした作業工程や輸送費用、更にメーカー側の働きかけを考慮すると、ヨーロッパ仕様と同じ値段で販売される、という事実がいかに大変かが想像できますし、その労力が並大抵の事ではないことが想像されます。
(…と同時に、仮に「日本でGRMN Vitzを生産したら、いくらになるのだろうか?」と考えてしまった自分もいるわけですが…。)
車自体の作り込みの他に、こうした裏側を考えた末、「400万円でもギリギリもしくは赤字なのでは?」という自分なりの結論を出しました。
…また、そういった事情を知らなければ、「400万円のVitzの本当の価値」を判断できないのでは?と考えてしまった今回の観察でした。
…以上を持ちまして、GRMN Vitzの観察録を終了したいと思います。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございましたm(_ _)m
最後に、「GR Garage水戸けやき台」さん、貴重なGRMN Vitzの撮影と掲載許可の御協力、誠にありがとうございました。