今年のル・マン終了しました。
結果としては総合はトヨタ8号車の3連覇。ブエミと一貴は3連覇でハートレーはポルシェ919ハイブリッドでの勝利以来の2勝目。
ブエミとハートレーのレッドブル出身ドライバーに挟まれるカズキの構図。今回はそれほど苦労は無かったのかもしれない。(メガネ効果か(笑))
WECのシリーズとしてはもう1ラウンド、バーレーンがあるのですが、殆ど終わった雰囲気です。
タイトル画像は懐かしい2012年のトヨタのピットボックス。ウインドウズXPなのが・・・(笑)
今年のJスポの実況は長丁場の実況で真価を発揮する無尽蔵のネタを持つ由良さん=サッシャ=ツギオ組の勝利。本当に良いパートでした。
由良さんは空力をメインに解説されるので例のエイドリアン・ニューウェイ著の「HOW TO BUILD A CAR」を読むと風洞実験の実験と結果の反映ループが良くわかったような気になって面白いと思いますよ。
空力で得た結果をどのように反映させるのか?結果をフィードバックするのに必要な変更(ギヤボックス配置だったりバッテリーの格納場所だったり)を反映してまた実験する・・・今のF1がいかに風洞を回せるのかがポイントになっていることもわかります。
現在のLMP1Hはそこまでを要求されているのかはライバル不在なので不明ですが、空力を使ったドライバビリティ向上によってACOのEoT変更に対応しようというところがあったのかもしれません。
Jスポコメンタリーは今回も甲乙つけがたいラインアップで24時間の完全中継を行ってくれました。本当に大変だったと思います。(終盤はSBKとWRCとDTMとツールとかメチャクチャ状態)
その中でも印象に残ったのは高橋二朗さんが言及していたアポロ計画のアポロ13号のトラブルを引用していたこと。これはかなりピンときました。
私自身は13号の事故自体よりもアポロ計画そのものがトヨタのLMP1プロジェクトと重なって見えるところがありました。
マーキュリー→ジェミニ→アポロとステップを踏んでロケット・宇宙船開発していくのみならず、宇宙飛行士の訓練やプロジェクト開発チーム構築の手法など。CMMIのレベルがどうとかいうヤツですね。
もちろん現代のレース・モータースポーツも巨額の費用を投じるのでチーム構築があいまいで行き当たりばったりでは結果を残せません。(近年ではFFGT-R開発が典型的)
TS010→TS020→TS030から050の3ステップは継続性は無いのですがル・マンというターゲットに少しづつ近づいて攻略してきたわけです。
ちなみにアポロ計画の地上オペレーションの凄さは(NHKで見ただけですが)現在のホンダF1のさくらで行われているリモート支援と比較しても遜色ないレベルと思います。
脱線しますね。
マーガレット・ハミルトン(AGCのコードを書いた女性ソフトウェアエンジニア)が自分の子どもを連れてコードを書いていた時に子どもが今でいうランダムテストを結果的に行い、P01と入力するとコンピュータのプログラム・データ(宇宙船の位置情報など)を初期化するというモードがあることを発見します。マーガレットはP01コマンドを回避するコードを実装することを交渉しますが結果は「飛行士はそのようなミスはしない」と却下されますが、実際にアポロ8号でジム・ラヴェル(あの13号のキャプテン)がP01コマンドを入力してしまいます。
ラヴェルと地上クルーは共同でデータの読み合わせを行って地球への帰還可能な状態にまで復旧したのでした。
マーガレットはP01回避コードを却下された時に彼女ら自身がミス(簡単にいうとプログラムのバグを作りこむ)を冒すことは無いのか?ということで優先度の高いコマンドを優先実行するOSの概念に近いものを実装しておきますが、これが11号でのアラームを無視することが出来たことの伏線になります。
アポロ11号での”1201 alarm”、”1202 alarm”の原因は地上での実機シミュレーションで行っていた時に使っていた部品が異なっていた(実機ではセンサーからの不正信号入力によるアラート発生)ためですが、ここから得られる教訓は「テストで使っていないモノは使ってはいけない」です。
アポロ8号での”P01”(マーガレット・ハミルトンが戦った結果敗れて実装が残ったプログラム消去コマンド)の件は個人的にかなりの衝撃を受けるエピソードです。(レベル違いこそあれ、日々のお仕事での葛藤が思い起こされる・・・)
例のダクトハズレ、センサーの結線ミスも同様にフェイルケースを分析してトラブル発生を防止するマニュアルを作っていたんだと思います。(伝えられる情報が本当であれば)
今回の7号車のターボトラブル。今までに出たことのない故障モードなんでしょうね。一貴のインタビューが歯切れ悪すぎでした。
数年前にすべてのトラブルを想定した!って豪語していたので本当のことが社外に語られることは無いと思いますが。
こんな宇宙船プロジェクトと比較することも出来てしまうLMP1Hのプロジェクト、アウディでもポルシェでもトヨタでもプロジェクトを振り返った書籍を発行してほしいと思うのはマニアだけだと思いますが、私だったら買いますよ(笑)。
で、ハイパーカーとかLMDhの時代になっていくとのことですが、宇宙船レベルのプロジェクトから数段レベルを下げる(=コストを下げる)ことでシリーズの継続を図るということですね。DTMもそうか。(GT3ベースの改造車になるとか)
私は技術の革新がレース・モータースポーツから発展していくことに夢があると思ってしまうので、少し寂しいところもあるんですが24時間レースのドラマはそれだけではないので(GTEクラスの激戦を観ればわかる通り)これからも見続けたいです。
最後に私の大好きな919ハイブリッドの画像を。
これにはジャニさんとアンドレにサイン入れてもらえてないんだよな・・・。
参考文献
エイドリアン ・ ニューウェイ HOW TO BUILD A CAR - F1 デザイン
Porsche Werks /Team
的川奏亘 3つのアポロ
MOONSHOTS 宇宙探査50年をとらえた奇跡の記録写真
Apollo-11(AGCソースコード) https://github.com/chrislgarry/Apollo-11
他
カズキ、本当におめでとう。
Posted at 2020/09/21 14:45:38 | |
トラックバック(0) | 日記