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2023年10月09日 イイね!

2023年式プリウスG感想文

2023年式プリウスG感想文●ハイブリッド新気流。
1997年冬、初めての受験を控えた中3の冬だった。私は自宅からほど近い奈良トヨタの営業所へ自転車で向かった。平日夕方のディーラーは閑散としており、自分以外の来店者はいない。やる気の無い薄暗い店内の奥にカタログ棚があった。私は青紫のカタログと小冊子を手に取り、奥から営業マンが誰も出てこなかった販売店を後にした。



「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーで発売された世界初の市販ハイブリッド乗用車であるプリウスは世界に大きなインパクトを与えた。翌年、工業系の学校に進学した私は職員駐車場に複数のプリウスを目にした。そのうちの一台は電気工学科の教授が買ったらしい。当時の私は機械工学科を名乗りながらTHSが何故燃費が良いのかを理解せぬままバック走行はモーターだけなんだよ、とかインバータに貼られた「TOYOTA HYBRID SYSTEM」のステッカーを補給品で購入して大事に持っていたりとその歴史的重要性は理解しつつも、徐々に街で見返る頻度が増えていくハイブリッド車をボーッと眺めているだけだった。

あれから26年、クラウンやカローラどころか路線バスやレース車両までもが当たり前のようにハイブリッドになった2023年にプリウスは5世代目に進化した。まだ各社が様々なハイブリッド技術でしのぎを削る群雄割拠の時代だがTHSは未だに一線で活躍している。

あらゆる面で革新的だった初代(1997-2003)、高圧化により燃費追求マシン化した2代目(2003-2011)、世界的普及期を迎えた3代目(2009-2015)、TNGAを得ながらも迷いのなかで攻めすぎた4代目(2015-2023)という歴史を経た5世代目は見る人の予想をブッちぎった「スーパーカー」の様なエクステリアデザインとなった。




個人的には国内導入されなかったカローラリフトバック(スプリンターシエロ)似でなかなかのバックシャンだ。



THSと組み合わせられるE/Gは従来の1.8Lだけでなく2.0Lが加わった。システム出力196ps(2.0L_FF)という一昔前の2.5Lクラスのハイパワーで1400kgの車体を引っ張り、全開加速をさせれば、従来のプリウスのイメージを覆す俊足を披露し、更に歴代モデルが苦手としていたコーナリングの身のこなしも進化を見せた。THS故のフィーリングの悪さは消しきれず決して諸手を挙げて賞賛できないが、キャラクターの変化はオーナー以外でもすぐに気づけるレベルになった。今まで僕らの宇宙船地球号の限りある石油燃料を大切にしてきた公共性の高いプリウスは何故ここへ来てエゴイスティックな変貌を遂げたのだろうか。

BEVシフトが叫ばれて久しいが、充電インフラなど解決すべき課題が多いなかでは総合的にHEV車の存在意義は大きい。みんなの手が届くエコカーとしてプリウスを更に普及させるべきでは?と言う議論があったらしい。豊田章男社長(当時)は「タクシー専用車にしたらどうか」「OEM車として他メーカーにも販売して貰ったらどうか」という「真のコモディティ化」提案をしたという。

一方で開発陣はコモディティ化の真逆を行く「合理性よりもエモーショナルな体験で選んで貰える愛車」プリウスを作ることを決意、社長の提案に真っ向対決をしたという。



豊田章男氏は「われわれは次の100年も、クルマは楽しい、単なる移動手段やコモディティではない。ファン・トゥ・ドライブなんだとこの先100年後もやれるように戦っていく」、「クルマは“愛”がつく工業製品である」と熱く語っていた人物である。一般的に企業はトップの指針を理解した上層部によって上意下達されて生き物のように意志を持って企業活動を行っている。数年前からトップが何度も訴えかけていた言葉をプリウス開発陣(社内の模範的存在)が知らないわけはない。開発推進を許されるためのプレゼンを成功させるために「愛車論」を熱心に説いて企画を通したただけのことだと思う。かくしてタクシー専用車云々というトップの逆張り質問をものともせず、テック感あふれるエコカーはエモーショナルなスペシャルティカーになった。

新型プリウスのボディサイズは下記の通り。



ホイールベースが伸びてルーフの頂点を後方に移したのはパッケージング的にも前席優先だからだ。詳しいコメントはデザイン項で述べるが、風洞が形状を決めると言わんばかりのエコカー的プロポーションから脱却し、仰角20度を切るという高橋レーシングのスタント後のような寝そべったAピラーがスーパーカー顔負けのエクステリアを作った。そこには空力的なんとやらの理論よりも情緒的な魅力を優先した。



インテリアはbZ4Xとの関連も感じさせる小径ステアリングとステアリング上から視認する液晶メーターが特徴である。

走らせると、人間の感覚に合わないTHSの嫌らしいところは残るが、見た目を裏切らないように出来るだけのことをやったと言う感じがある。特にスポーツモードで走るワインディングの楽しさは歴代モデルにない特徴だ。新たに2LのTHSはかつての2.5Lクラスのハイパワー(196ps)を発揮し、シャシー性能も飛躍的に向上している。

見た目がかっこ良くなり、走りも進化したプリウスだが、内装の質感の低さや後席の冷遇、装備品の廃止や静粛性への配慮は更なる改善が欲しい。緩急つき過ぎているというか、空力についてアレコレとうんちくを語る割にはバックドアとルーフの隙間(一般的にチリが広いと風切り音に影響するだろう)が歴代プリウスのなかで最も広いなんてちょっと情けないなと思う。

新型プリウスは、近年のトヨタ車のなかでは久々に格好いいデザインを実現してくれた点が好ましい。その見た目から来る期待に応えようとした結果、プリウスという概念を塗り替えるほどの存在になった。ただ、これが本来のプリウスなのかと問われると疑問が湧くのは私だけではないだろう。

お得意の群戦略で「プリウス・セリカ」とでも名乗るなら私も快く受け入れたが、1997年の京都会議(温室効果ガス削減について話し合った)直前に発表した「社会派未来カーのプリウス」が、急に個人的都合を重視する姿勢を見せた事にどうも納得がいかない。

勿論、従来の流れの中にあっては競合に埋没し、売れず、収益にならないことは分かる。だからこそ真のエコカーとして最大公約数的に性能を確保して実用燃費30km/Lを目指すとか、人生の先輩達をミサイル搭乗員にしないために運転のわかりやすさと支援機能を充実させた「プリウス・ユニバーサル」とかタクシー専用「プリウス・キャブ」などプリウスブランドが取り組む意義が有る商品領域があったと思うのだ。それはつまらない車に見えるが、大きな意義がある。「自動車をみんなのものに」という創業以来のトヨタの理念にミートした商品になった事だろう。グローバルに使える国際派タクシー専用車にするとか、OEMで世界中にTHSをばら撒いてBEVシフトに抗い、デファクトスタンダードを狙う作戦こそが公器プリウスに相応しい役割だったのでは無いかと感じてしまう私は天邪鬼だろうか。

世界初のハイブリッド量産車プリウスは今更FCEVにもBEVにもなれない。この様な時代になるとプリウスの存在意義は消えつつあり、スペシャルティ化はその焦りの中で生まれたのだろう。ハイブリッド車の価値は何か?確かにBEVよりもスタイリッシュに仕上げやすい。そして航続距離が長いのでツーリングカーにも向いている。新型プリウスはそこをウリにしているのだが、プリウスが持っていた誰にでも優しい性格が無くなっている点が寂しさを感じる。

絶対評価なら3★だ。動力性能とシャシー性能の良さはデザインにマッチしていてスペシャルティカー的性質だけなら★4だ。しかし価格に見合わない内装質感やシフトレバー位置の酷さ、悪化した燃費、みんなへの優しさを失ったため1を減じて★3とした。
Posted at 2023/10/09 01:11:58 | コメント(4) | クルマレビュー
2023年09月22日 イイね!

2022年式フレアXS(ワゴンRカスタムZX)感想文

2022年式フレアXS(ワゴンRカスタムZX)感想文代車でフレアを借りた。フレアとはマツダ版のワゴンRである。意外と知られていないが、初代ワゴンRの時代からマツダでもAZワゴンとして販売され続けてきた伝統ある一台だ。

ワゴンR/フレアは90年代の軽自動車業界にワゴンのユーティリティを再提案したパイオニアである。勿論オリジナルはホンダ・ライフステップバンになるわけだが、セルボモードをベースに制約の多かったなかで見過ごされてきた縦方向に成長させることでクラスレスな乗用車としての可能性を広げた点が偉大だった。

私は昨年、みん友さんのご厚意で2004年式ワゴンRに試乗済であるが、19年後のワゴンRの実力を家族四人で体感することが出来たので記録に残したい。

試乗車はNAでは最上級となるXSである。スズキブランドのワゴンRではカスタムZと呼ばれるスタイルで二段ヘッドライトだったFZに代わり、一般受けしそうな顔つきにリファインされたグレードである。専用の内外装と上級装備が備わっており、見栄えや装備水準で言えばリッターカーに匹敵する。

個人的には標準車の初代をイメージした外観に好感を持った一方で、上級車は2段ヘッドライトが特徴だったものの、ボディサイドと合わせてヴェルファイア・コンプレックスが垣間見えて好みでは無かった。そこに追加されたカスタムZ系は良い意味で無難な比較的分かり易いエアログレードである。専用の涼しげなフロントマスクは初代スティングレーを思い起こさせる。



全体的なプロポーションは新P/Fを得たことでホイールベース拡大、キャビンを拡大して軽規格のなかで印象をワゴンRらしく見えるように変えた。

インテリアは初代から続くボリューム感のある意匠から脱却し。ホンダ風味だがインパネ面を大きく抉って開放感を出した。クルマの情報端末化の流れの中で7インチディスプレイオーディオの設定もあり、リビングのテレビ台にテレビがあるようなイメージだ。室内空間は余裕があるがポケッテリアは頭数はあるが、実際の使用シーンでは容量・配慮が不足気味。更にパッケージング的にはFrシート座面が長すぎて短足の私にはちょっときついのと、ステアリングが遠くてドラポジが決まらない点もマイナス。

走らせてみると、市街地では非力さを感じないばかりかE/Gが高回転で唸るようなことも無く意外と大人っぽい乗り味だ。乗り心地も柔らかく、送迎や買い物レベルなら何の不満も無く4人と荷物を載せてが移動できる。郊外の丘に出来た新興住宅地のアップダウンを走らせると非常に気持ちよく走ることが出来、アイドルストップ時の減速挙動や
復帰始動も他社では見られない洗練された印象だった。



高速道路も状況が良ければ普通車のような感覚で走れる点は感心したが、高速道路の合流時の加速性能やシャシー性能は余裕が無く結局走行車線を大人しく走る程度に合わせ込まれている。市街地での快適性を思えば上位にターボがあるとは言え少し勿体ない気がする。



フレア/ワゴンRが最も得意とするシーンはやはり市街地だった。市街地なら時折ゆとりすら感じられる。ちょっと惜しいのは、各種性能のまとまりはいいものの、登録車を喰ってやろうという意気込みが足りない(精神論!)事だ。初代が持っていたクラスレスであることを現行型は諦めており、歴代フレア/ワゴンRオーナーなら気づける進化はあるものの、これならもうフィットもパッソもマツダ2もいらないね、と言える程の気概は感じられない。しかし、スズキというブランドの使命を考えればこれも仕方ないかなと最後に考え直した。やろうと思えばやれるのだろうが、庶民のゲタを提供するとうポリシーのため敢えてやらないのだろう。

現状のスズキのラインナップ上、アルトは責任感を感じるほどの低価格へのこだわりを見せる一方でスペーシアは登録車と競合する価格帯でも売れるモデルも擁している。中途半端になりがちなワゴンRは昔と比べて立ち位置が難しくなっている。
消費者の目はスライドドアに目が行ってしまうが、アルトの上がいきなりスペーシアでは極端だ。近年の功労者であるワゴンRをドライに切り捨てることも出来ず、遂にスライド付き派生車を出すに至った。最大の競合車であるダイハツムーヴは次期モデルでスライドドアを採用するという。
ワゴンRはあくまでもスペーシアに近づきすぎること無く4人で買い出しに行ける道具の最小単位であって欲しい。



ホンダN_WGNと比べるとターボ無しと言うこともあり厳しい場面があるが、逆に市街地のマイルドな乗り味などでは逆にフレア/ワゴンRの方が快適な場面もあるところが選び甲斐があって面白い。

総評は軽自動車としては★3いわゆるハイトワゴンの基準車と言える。普通車含めた絶対評価だと山道と高速道路での動的性能が厳しいので★2。
Posted at 2023/09/22 23:50:06 | コメント(1) | クルマレビュー
2023年09月08日 イイね!

2009年式マークX ZiO エアリアル感想文

2009年式マークX ZiO エアリアル感想文








長所
1.比類無き2列目の快適性
2.3列目でも充分な静粛性
3.高速道路で快適なソフトな乗り心地
4.内装の高級感
5.従来のポストセダン群と一線を画す動的質感
6.排気量を考えると優れた高速燃費

短所
1.夜間の室内が少々暗い
2.酷暑日には冷房能力がギリギリ
3. 電スロ・CVTなど当時の味付け的な悪癖を全て持っている
4.右左折時の大きなAピラー死角
5.アイドル・ロックアップ起因のこもり音が酷い
6.腰が痛くなる運転席シート

●TOYOTAの最高級ダンゴムシ

戦後日本のベビーブーマーとして最大のボリュームゾーンに位置したのは団塊の世代(1947年から1950年生まれ)である。敗戦後、生命の安全がある程度保証され子供を設ける家庭が増えたことによるものだ。生まれながらに同級生が多いことから競争社会の荒波に揉まれてきた世代故に、大量消費の担い手として日本の発展に寄与してきた世代である。モノ作りの業界でも顧客が多いのだから乳母車、ランドセル、玩具やお菓子、レコード、洋服と年齢を重ねる毎にあらゆる商品を大量に消費してきたが、そんな彼等が成人した1967年~1970年頃は自動車業界もマイカー元年を迎えた後、大衆車のカローラやサニーにクーペが追加されたり、軽自動車にツインキャブのホットモデルが出始めた個性化・差別化のファッション路線に移ろうとしていた時代である。それらは団塊の世代が就職によって経済力を持ち、そして結婚して再び子供(団塊Jr.世代)をもうけて再び大量消費の担い手になる。

一億総中流意識という死語がある。我が国では豊富な労働人口=消費人口のボーナスを得て高度成長を成し遂げた団塊の世代が若い頃にモータリゼーションの薫陶を受けた後、所得が高くなる中年期に差し掛かった際にハイソカーブームが興った。若年層から本来の高級車ターゲット層までが高級車(或いは高級そうに見える車)を持てはやした時代である。例えば1988年デビューのGX81系マークIIはそんな彼等にとって手が届きやすい車種でターゲット層のど真ん中であった。クラウンもカローラのように売れ、マークIIもカローラのように売れた日本のセダンの黄金期の中心的な構成員は団塊の世代と言える。

-そんな団塊の世代が60歳となり定年退職を迎え始めた2007年ごろ。我が国では彼等の旺盛な消費意欲と右肩上がりの年功序列・終身雇用によって得られた潤沢な退職金を目当てにした「団塊マーケティング」が幅を利かせていた。

団塊の世代によって支えられた自動車業界もその一つである。例えば、若年期にモータリゼーションを迎え、ミニバン・SUVカルチャーの少し前を走っておりセダン支持者が多かった彼等のためにV36スカイラインや140系カローラを開発した。これらの特徴は目の肥えたターゲットに合わせて商品力強化をしつつ、車両価格がちょっと高めになっていた点である。例えばスカイラインはV35型後期の250GTが262.5万円~だったものがV36の250GTでは279.3万円~になっていたし、カローラも2000年発売の1.5Gが144.3万円だったが、2006年発売の1.5Gは160.6万円になっていた。自動車と共に時を過ごしたターゲットに振り向いてもらえるように商品力を上げ、それに伴い販売価格も値上げ傾向が大きかった。

前置きが長くなったが、今回取り上げるマークX ZiO(以下、ZiOと省略する)も団塊マーケティングの成果の一つとも言える一台だと私は考える。ライフステージが変わり、子供を中心とした自動車の利用シーンは大きく変化することになる。子供は独立し、例えば孫が誕生し3世代での移動がメインになる。退職によって自由な時間が確保されることから、夫婦、友人とともにアクティブな生活を楽しむためのレクリエーションツールとして自動車の役割が見直されることが予想された。



そんな彼等にとって今までのセダンから、ミニバンに移行するには「生活感」と言うハードルがあった。ミニバンの持つ生活のためのツールという感覚はセダンの持つ良い意味でのフォーマルさが足りず、上級ミニバンと言えども、走る曲がる止まるの基本性能はセダンを知る彼等には物足りなかった。

セダンライクなステーションワゴンは荷室容量は大きいのだが、居住空間はセダンと大差なく、荷室とキャビンが一体であるため、ゲストと荷物を一緒に運んでしまう「申し訳なさ」はミニバンと共通の課題であった。

ZiOは上級セダンユーザーが気兼ねなく移行できるクロスオーバーカーとなるべく「4+Free」というコンセプトで企画された。セダン・ワゴン・ミニバンの良さを兼ね備えた新ジャンルの商品とすることで「新しい物好き」の団塊の世代へのアピールを狙ったのである。



そもそもマークIIには初代からステーションワゴンが存在していた。ステーションワゴンは1989年発売のレガシィがブームの中心となり一気にワゴンが市民権を得たものの、マークIIは1984年から1997年まで同一モデルが継続販売されてきた。
あくまでもマークIIブランドの中心はセダン(H/T)という意識も働いたのか、マークIIワゴンに対する商品力強化に力を入れなかった。

1997年にはカムリグラシアベースで2.2L直4と2.5LV6/3.0LV6を積んだマークIIクオリスを発売。前後の意匠と内装のマテリアルを変えただけのワゴンだったが、グラシアのすっぴん美人っぷり(メイクで化ける)が功を奏してまずまずの成功作となったことで2002年にはマークIIブリットとして後輪駆動セダンベースのステーションワゴンとなった。専用のフロントマスクを持ち、スポーティなiR系(統合型リゾートではない)のみという若向きのキャラクターを与えられたが、当時はステーションワゴンブームが過ぎ去ろうとしておりステージアやアコードワゴン、アテンザワゴン同様にターゲット層がミニバンやSUVへ流出していた。

本流セダンのマークIIは2004年にマークXへと改名してV6エンジンを搭載したスポーティな性格とエグ身のある外観とタイトなキャビンに生まれ変わっていた。

こうした中でブリットをFMCするとなると、コンベンショナルなセダンベースのステーションワゴン市場は縮小傾向で限界がある。過去にはFFで成功したモデルもあるので駆動方式はこだわらなくて良い。セダンからの乗り換えを促進するためにマークXのエッセンスを盛り込む必要がある。そして何より、定年退職する団塊の世代は子供が独立して大柄なミニバンが不要になるのでポストミニバンとしての役割を担わせたい。ミニバン市場は1990年代から急拡大していたので、団塊世代以降のミドルエイジ層も継続的にミニバンを卒業する動きが出るはずである。乗り換えの障壁とならないように簡便な3列目シートを持たせながらあくまでも4人の快適な移動が実現出来るパッケージにしよう。つまり、ステーションワゴンボディだが、言い訳程度の3列シートを持ち、上級セダン並みのクオリティを持たせた車が2007年にデビューしたZiOなのである。



広告でも「ワゴンより贅沢に。ミニバンより優雅に。セダンより自由に」というコピーでワゴンでもミニバンでもセダンでもないことをアピールした。トヨタのオフィシャルサイトのラインナップ中でも「新ジャンル」と記載されていた。(最近もそういう表記の新型車があったような・・・)

●エクステリアデザイン

ZiOのエクステリアデザインにはお手本がある。それは2005年の東京モーターショーに出品されたFSCである。フューチャー・サルーン・コンセプトと言う意味のコンセプトカーは好評を博しており、生産型としてのZiOはフロントマスクを中心にショーカーのエッセンスを極力盛り込んでいる。



四角いグリルやエンジンフードのレリーフはショーモデルのエッセンスを色濃く反映しているし、サイドビューベルトラインしたの凹面やホイールアーチ部のうねり、リアビューのバックドア形状などもショーカー譲りだ。ところが、実際にZiOが世の中に出るとそのエクステリアデザインに対して肯定的では無い反応が見られた。それもそのはずで、作り手としては精一杯ショーモデルに寄せ、ディテールは維持したのだが、そのプロポーションはショーモデルを基準とすれば大きく後退した。



その理由は、設計的成立性を確保する為にオリジナルのスタイリングを変更しなければならない箇所が少なくなかったからだ。アイデアスケッチは絵に描いた餅そのものだが、意匠選択されてモックアップになるとそれは彫刻的(どこから見ても破綻が無い)ことが求められる。そこから幾多の調整を関係部署と行うことで量産車のデザインに生まれ変わっていく。工業デザインであるため、美しさだけでは実用品・量産品としての自動車のエクステリアデザインにはならないのだ。

本来のFSCの持っていた凝縮感は現実的な要件を取り込んだ結果、ダンゴムシのようなずんぐりとしたものになってしまった。例えばフロントマスクはオーバーハングが伸び、歩行者保護要件のためフードが分厚くなったことでプロポーションが悪化し、フードとフェンダーの見切りの面構成もチリの管理が出来るように単純化されることで彫りの深さが失われた。人間の顔も同じようにメイクしても骨格や肉付きで違った印象になってしまう事を経験的に私達は知っている。顔の何倍も面積のある自動車の表層はちょっとしたことで大きく変わるのである。

ショーモデルのままではヘッドランプのすぐ後に前輪があるためヘッドライト機構部が収まらない、ドアがカジって開かない、冷却系が配置できない、視界が悪い、ドアガラスが昇降しない、防錆性能が維持できない、衝突性能が出ない・・・などなど様々なネガを潰していくと彫刻が量産車に落ち着いていく。

セダン・ステーションワゴン・ミニバンの融合というテーマなので、スタイリッシュにしようとしても、ラゲージ面積を追って間延びするし、3列目の最低限の居住性を確保すると厚ぼったくなってしまうのである。目一杯の錯視効果を駆使したとしてもZiOに与えられた欲張りパッケージの難を乗り越えることが出来なかった。



2023年の今なら、こう言うコンセプトはSUVという見せ方があるが、車高の低いステーションワゴンでありながら凝縮感のあるワンモーションフォルムで包もうとすることは過度に挑戦的なアプローチに映る。

試乗車は2009年にテコ入れのために追加されたエアロ仕様「エアリアル」である。トヨペット店としてはカルディナで馴染みのある名称だが、ムーンルーフは装備されず、240Gをベースに幾つかの専用装備をオミットする代わりに不評だったフロントマスクを中心に専用のデザインが施されている。離れ目に見えるヘッドライトの間を埋めるようにワイドなメッキグリルを持ち、サイドマッドガードによって重心を低く見せている。これで今まで獲得できていなかった40代以下の比較的若年層にアピールしようと試みた。意外と大型Rrスポイラーは備わらずオリジナルのままなのは、売れなさすぎて投資して貰えなかった結果か。



2023年の目で見ると決してZiOは目を覆いたくなるほどかっこ悪いクルマでは無いのだが、人々の羨望を集める妖艶さを持つかと言われるとそうではない。私見だが、やはり欲張りすぎる企画とFSCのワンモーションフォルムの両立のハードルが高すぎたのでは無いかと感じる。

私がまず思い出したのはシトロエンDS5だ。同じくショーモデルをベースにステーションワゴンとグランツーリスモを融合させたクーペを思わせるデザイン・・・・とのこと。シトロエンが持つエキセントリックなキャラクターとのシナジー効果で独特の世界観を持って居たが冷静に考えればZiOと似たコンセプトを持っているではないか。

「DS5はこれまでのジャンルの概念を超えたまったく新しいスペシャリティ・セダン」

とプレスリリースにも記載されている。



ショーモデルだったCスポーツラウンジからの後退はZiO同様にあるのだが、その分装飾に力を入れてサーベルをモチーフにしたモールを設定するなどした結果、シトロエン的だと認められた(させた)節がある。3列シートの有無によってルーフラインの丸さは異なるが、こう言うクルマは世界中でみんなが思いついて挑戦するのだが金脈に辿り着いたモデルを私は知らない。DS5もヒットはしなかったので、贅沢なポストセダン枠はハリアーのような立ち位置のDS7クロスバックが引き継いだ。

デザインが販売に影響を及ぼしたという歴史的事実を考えれば★1つなのかもしれないが、2023年の今はエアリアルなら比較的冷静に見られるので★3つ。

●インテリアデザイン
ZiOのインテリアはマークXと設計的な関連性は無いが、イメージを継承しつつ同等の車格を感じさせる。曲面と曲線を使ったデザインで手で触れる部分にはソフトパッドが奢られている他、ドアトリムにマークXと同じ部品や曲線のテーマを使うなど「匂わせ」も行っている。



ソフトパッド以外の内装パネルはコンベンショナルな革シボだけでなく、ヘアライン加工をブラックマイカで塗装したものもアクセントに使用している。これが秀逸でつるつるのピアノブラックだと指紋で表面が汚れやすいのだが、ヘアライン模様のお陰で指紋が目立たない。実用性と意匠性を両立した点を評価したい。最上級グレードの350Gのみは木目調パネルが更に追加されて伝統的な高級感とモダンな印象が入り交じるいんしょうだが、エアリアルの状態でも十分に納得できる質感を確保している。イマドキの国産車の「最上級買わない奴には懲罰的質感でも食らえ」という行きすぎたグレードマネジメントも未実施のため、標準的なグレードでも充分満足できるが、本来はそれが顧客への礼儀だろう。

そしてブレイドと共通のステアリングの奥にはブルーの照明色が新鮮なクリスタルシャインオプティトロンメーターとマルチインフォメーションディスプレイが高級感と先進感を表現しているが、それと関連するZiO最大の特徴はオプティトロンメーターの技術を小型化してエアコンパネルに応用したオプティトロンヒーターコントロールスイッチである。



風量ダイヤルとエア吹出し口ダイヤルにはスピードメーターのように指針が着いており、E/G始動と同時にスピードメーターと一緒に0からMAXまで振り切れるスイープ制御が入っている。そして、例えば暑い日に始動後AUTOボタンを押すと吹出し口がフェイスになり、風量が0から10まで徐々に上がっていく。そして室内が冷えるに従い8→7→6と風量が下がると同時に指針も動き続ける。世界初の指針式のパネルなのだが、確かに新規性と高級感があるではないか。特に現代の目で見れば、全てTFT液晶のアニメ映像で済ませれば良いところを、数多くの構成部品が精度良く組立てられて動作するという多いメカメカしい仕組みが新鮮かつバブリーである。

スピードメーターと見た目が合わせてありちょっとしたときに触りたくなるギミックと言える。この機構を引き立たせるため、温度調整スイッチがダイヤルとダイヤルの間の密集したボタン群の中に窮屈そうに配置されているのはしわ寄せを感じる。思えば名車GX81もスライドアウト式スイッチを採用しており、空調スイッチにこだわることも意外なマークIIの伝統を意識したのだろうか。せっかくE/G始動時にコンビネーションメーターの中央に位置するマルチインフォメーションディスプレイにはMARK X ZiO!とオープニングアニメが流れるのに、私はそれをじっくり見たことが無い。ヒーコンダイヤルの指針に見とれているからである。

恐らく、しっかり原価をかけてドライバーだけで無くパッセンジャーにも驚きを与えうるこの機構だが残念なのは見ているときだけしかその凄みが分からない点である。オートエアコンが標準装備されているZiOの場合、だいたい25.0℃程度に設定されていれば基本的に空調パネルを触る機会が無く、その分運転に集中できる点がオートエアコンの魅力なのに、その表示板が見所と言われてしまっては一体何のためのオートエアコンなのだと言うことになってしまう点が惜しい。

2023年の今となってはそんな空前絶後のメカニズムはその存在だけで尊いと言えるだろう。あのドアハンドルだけで・・・とか、あのスペアタイヤだけで車種が分かってしまうような個性強めの自動車部品があるがZiOのオプティトロンヒーターコントロールスイッチはまさにこの類いの超個性的パーツである。

‭ZiOの内装の目玉はこれだけでは無く、上級仕様にはルーフライニングに大型照明が備わり、LEDの面発光と4つの読書灯が配置されるのだがエアリアルではなんとこの照明が省かれており、夜間の乗降時はちょっと暗いのが残念な部分だ。

内装は現代でも通用するレベルの独自性と質感を持っているので4★。

●走行性能
プッシュ式スタートスイッチを押してE/Gを起動した。搭載される2.4L4気筒NAの2AZ-FE(167ps/22.8kgm)はオイル消費の問題で保証機関が延長されるなどの曰く付き機種だが、この個体に不具合は無い。



E/G始動直後にアイドル振動の悪さに気づいた。Nレンジに入れていれば大丈夫だが、Dレンジ停止時はブルブルと大きめのバイブレーションが乗員を襲う。Dレンジの場合はA/Cを切ってもブルブルしていたので完全にボディがこの周波数領域で揺れやすい(=音響感度が悪い)のだろう。

走り始めは少し繊細だ。ラフにアクセルをぽんと踏むと、反応が遅れた後でドンとショックが出る。走り始めのアクセル操作は優しく行う事が必要だが、この現象はもしかすると点火プラグの交換によって改善する可能性がある。(自分たちが共同所有するプログレはプラグ交換によって解決した)

走り始めは市街地走行である。車幅が1785mmとワイドなので正直、取り回しは気を遣う。市街地走行では当時の燃費至上主義的なCVT制御が楽しめる。一にも二にも変速という感じだ。アクセル操作とE/G回転数の関係は無限のプーリー比の組み合わせの中から燃費最適の組み合わせを拾っていく感じなのだが、まずE/G回転数を上げてグワッと加速させた後は低回転に張り着くイメージで低速域の車速コントロールは難しい部類だった。不幸中の幸いなのは2.4Lの余裕のあるトルクのおかげで低回転に張り付いてもそれなりにトルクを返してくれる点だ。(これが小排気量だと悲惨なことになる)

前方の信号が赤なのでアクセルオフで減速していくが、燃料カットできるギリギリまで燃料カットできる限界のギア比でコースティングさせるセッティングなのでブレーキペダルに頼った減速になる点は、太古の4速ATでも同じような感覚だった。

減速時、40km/h以下になるとヒューンというCVT特有のベルトノイズが目立つ。これはベルトのコマとプーリーの接触によって生じる音とされているが、回転が高いと高周波過ぎて聞こえにくいが、速度が下がると目立つのであろう。このベルトノイズは、同時期のカローラだと全域で聞こえるレベルだったがZiOは40km/h以下の減速時というシーンに限られているのは高級車ゆえの高周波対策が功を奏したか。



ステアリングは軽くインフォメーションは希薄な性質で一瞬だけ往年のPPS(プログレッシブパワステ)を思い出す。交差点右左折では、Aピラーが視界を遮ってしまうのはワンモーションフォルムの欠点である。ピラーを細くできないのは衝突安全上、エネルギーをルーフに流さないといけないから。大昔のようにフレームやロッカーだけで頑張ると車体が重くなるので入力を分散させるマルチロードパスをやらないといけないという都合上、Aピラーに荷重が流れ、その荷重でAピラーが折れないように強固に作る必要があった。

この点で当時最も進んでいたのはオデッセイだ。衝突用R/Fを円管をハイドロフォーム成型し、片側溶接でボディと接合することでフランジが無い細くて強靭なAピラーを実現していた。対するZiOは恐らくコンベンショナルなアプローチで作られているため、右左折時は身体を動かして積極的に情報を取りに行かなくてはならないのはピラーが立っているカローラやRAV4、プログレでは必要のない動作である。



またCVT故に極低回転が使えてしまうことから上り坂や平坦路の50km/h定常走行ではロックアップ状態でE/Gのトルク変動がナックル経由でボディを共振させて発生するロックアップこもりが発生している。アイドル状態の印象と相まってZiOは周波数の小さいこもり音領域が苦手なミニバン/ステーションワゴンの弱点を受け継いでいるようだ。

少しネガティブな点に先に触れたがこれらの悪癖は当時の横並びで言えばありがちな印象である。コストがかけられない大衆車領域の車種と比べるとZiOはさすがにしっかり対策されており特に高周波の吸音・遮音は丁寧に実施されていると感じられる。例えばドアガラスが分厚い(測ると5.0mm程度)ため、ドアを閉めた際の隔壁感が高くマークX的な世界観は実現されている。1列目から3列目までエンジン音が目立たず、マフラーからの気流音も聞こえないレベルだった。ステーションワゴンやSUVだとRrのラゲージから聞こえてくる音が意外と馬鹿にならないのだが、ZiOは3列目までしっかり対策されていてセダン感覚だった。



高速道路を走らせた。CVT車でありがちなのが高速の方がギア比が固定されてしっくりくることなのだが、ZiOも例外では無い。アクセルを深く踏むと回転数が飛び上がるが、じわっと踏めばトルクで走らせようとする当りが2.4Lエンジンのメリットである。100km/h時の回転数はおよそ1800rpmと低い。新東名のように120km/h走行をすると2200rpm付近を指している。ロングホイールベースを活かしてハイペースながらゆったりとしたリズムでクルーズできる点は美点だ。後述するが、燃費も良好で高速道路のような発進停止を繰り返さない場面ならリッター15km以上は堅い。ミニバンにありがちな横風によるふらつきもなく、ソフトな乗り心地と両立しているのは機械式駐車場OKという車高要件の賜では無いか。ただ、当時の試乗記を読んでいると18インチタイヤ装着車の乗り心地を指摘する内容を目にしたが実際の私の感想としては充分ソフトに感じる。(その分、今の車の乗り心地は突き上げを許容している感がある)

意外と面白かったのはワインディングである。オーナーの趣味でコンチネンタルの新品が奢られていてこいつが非常にグリップ感が良い。いつものテストコースに持ち込んだが、姿勢を決めるために軽く制動して前輪を押しつけた後はオンザレール感覚でコーナーをクリアする。ホイールベースやトレッドが大きいので安定しつつもタイヤはしっかり車体を曲げていく。高周波の静粛性が高いので速度計を確認するとびっくりすることもある。ソフトな乗り心地のお陰で舗装悪路でも凹凸を綺麗に乗り越えてくれる点は良い。ただし、車幅の影響でライン取りはあまり自由度は無い。Aピラーの死角が深いコーナーではちょっと邪魔に映ってしまうのは玉に瑕。パワーも程々にあるので腕に覚えがあればハイスピードドライビングも楽しめるかも。



休日に家族を乗せて市街地を走らせたが、家族の評判もキャビンが広くて快適なので上々だった。ドアが大きいので乗降させやすく、センターアームレストフェチの息子も大満足だった。ドアが大きいことは気になる人がいるかもしれないが、子育て世代でも十分対応しうる後席の広さは素晴らしい。ただし令和の酷暑日ゆえに暑がりの我が家には少々空調性能が不足気味だったが、走らせている内に何とか効いてきた。350Gのみ初代イプサム式のRrクーラーが追加されるのは元々の空調性能不足にメーカー自ら気づいていたのかも。

ZiOの走りは狙い通りミニバン的と言うよりはセダン的なイメージだ。この手のMPVというか次世代サルーンにありがちなカツカツの性能ではなく余裕あるE/G排気量による豊かなトルクや大きな諸元値による穏やかな乗り心地は確かにセダン感覚だ。勿論本物のセダンと比べると視点の高さはミニバン的だが、セダン作りにノウハウを持っていた当時のトヨタらしい味付けだった。CVTの制御など当時のトヨタ全体の問題は持って居るが、それを差し引けば乗り心地や静粛性など美点は少なくない。そのサルーン感覚で言えば、パワーウィンドーを窓閉めると、閉じきり前に速度が遅くなる、この挙動もまるでレクサスのようで気分が上がる。

●ユーティリティ性能
運転席の着座姿勢はマークXよりも75mm高い着座位置がミニバン的だ。アップライトで健康的なパッケージはこの時代は特に珍しいわけではないが、中々快適な空間と言える。シートは長時間運転すると腰が痛くなる悪癖があるものの、サイズや形状は常識的なものだ。



運転席をドラポジを確保した状態で2列目に移った。シートはサイズもたっぷりしており肩のサポートが良いので状態が動かない。センターアームレストに腕を置いて脚が組める余裕がある。(拳3個分)ヘッドクリアランスも拳2個確保されているので充分だ。快適性に意外と貢献しているのがRrドアガラスに固定部が無いため、視界を遮るものが無く、2列目からの景色も良い。必要があればパワーウィンドゥは全部下がりきる点も、ベルトライン下が分厚いデザインであることを考えても優秀。



着座姿勢としてはフロアが前傾しており、階段状フロアの方が好みだがZiOの場合はヒップポイントがフロアより高めなのとシート座面のサイサポートが適切なので気にならない点は素晴らしい。マークXどころかマークIIやクラウンにも引けを取らない居住空間であると感じた。後席のゲストに満足して貰えるという意味ではかつてのセダンが目指したような室内空間である。レッグスペースもRr最後端位置で拳4個分が確保されていて脚も余裕で組めそうだ。また、Cピラーが後ろに引いてあり、角度が立っている(≒3列目乗降性で決まった?)のでベルトアンカーの配置が自然でどのスライド位置でも肩が浮かない点は現行型車でも実現できていない車種もあるので優秀な部分である。近年、後席を優先する人がセダンではなくアルファードのような高級ミニバンに流れるという傾向があるが、ZiOなら、くつろぎ感と優れた乗降性を享受できるので個人的には2列目はZiOの玉座であると結論付けた。2列目だけならZiOの気持ちよさは今でもミドルクラスのミニバントップレベルだ。(そもそもセダンライクなミニバンが絶滅しているが・・・)



そして皆が気になる3列目だが、基本的にはWISH式の畳んで使うジャンプシート的思想の3列目は普段はラゲージのデッキ面と面一の高さに隠れている。背もたれを起こし、座面を引き出すと2人分のスペースが出現する。2列目シートの背もたれを倒すとウォークイン機構によってスライドして乗降できる。自分を含めて乗り込む人たちは何故か嬉しそうに意気揚々と乗り込むのだが着座し2列目シートを元に戻した瞬間から、ここへ座ったことへの後悔が始まるだろう。

2列目の余裕とは対照的に、頭上も膝前も狭いので、まともに座ろうとすると頭が天井に当たるし、膝は2列目のシートバックにめり込む。フロアは本当にここに足を置くのか?と聞きたくなるほどの険しい斜面である。着座姿勢としては、尻を前にずらしてヘッドクリアランスを稼ぎ、体育座りのように膝を前に出すスタイルになる。クオーターガラスから見える外の景色は開口面積が狭く、まるで日本の城の、敵を攻撃するための狭間(さま)に似た感触で、開放感は一切感じられない空間であった。




そのまま、ドライブをしたがRrタイヤ直上に座るので上下動が直接的に乗員に伝わるので快適とは呼べないレベルであった。乗り心地は褒められたものではないし、クッションは最低限という悪条件ながら、以外と遮音吸音が良くて快適なのは2列目の快適性のための結果なのだろうが下手な軽自動車の運転席より静かなんじゃ無いかと思えるほど。アクセサリー的な3列目だとしても3列目両側のトリムにはソフトパッドが貼られているのはマークXであろうとするいじらしさを感じた。



ラゲージは3列目シートを使っていてもBセグエントリークラス並みの201Lを確保しているので、基本パターンとしての3列格納時は充分以上の容量がある。当時の新車情報サイトによれば、奥行き49cm×幅104cmというスペックだが、3列目を格納すれば401L、荷室寸法にして115cm×102cm(11730平方cm)という広大なスペースが出現する。(ちなみにカローラツーリングの後席荷室使用時の床面積は93cm×146cm=13578平方cmなのでワゴン並みのラゲージである)



4+Freeというコンセプトを実現するためにZiOは6kgという非常に質量をかけたデュアルトノホードという装備品が開発されている。

TONNEAU COVERとはフランス語と英語を組み合わせたもので直訳するとトノーは樽なのだそうだ。Wikipedia情報だが、「トノー(Tonneau:発音ta'-no)とは、初期の乗用車で後部座席コンポーネントを指す用語であり、これを装備した乗用車のボディスタイルを表した。フランス語で、酒類を入れる大樽、容器、カバーの意味で、初期のトノーの座席が半円形の樽状であったところに由来する。現代ではオープンカーのフロントシート後部エリアやピックアップトラックの荷台部分を指すのにも用いられている。」

ステーションワゴンの場合、荷物の目隠しのために巻き取り式のカバーをトノカバーと後席後端に取付けてバックドア開口部まで引っ張り、引っかけることで目隠しとしての機能を持たせる例は多い。積んでいるものが丸見えになるのは防犯上好ましくないという理由や、荷物とゲストを同居させるべきでは無いというセダン的価値観に基づく装備品なのだが、ZiOの場合はセダン・ワゴン・ミニバンを行き来するコンセプトを実現するため、トノボードの前後にロール巻き取り機構が着いており、従来のトノボードよりもセダン的な隔壁感を実現出来る点が新しい。ロール式のビニール膜なので本物のセダンと同等レベルで音響的に区切ってモードを合わせたり遮音する効果は期待できないが、ヘッドレスト後端が成型されて見栄えに配慮されている。無論、デッキ下に収納スペースがあり未使用時は格納することが出来る当りはトヨタ的気配りである。ローディングハイトは68cmなので、ビールケースを持ち上げるには高すぎるが一般的な使用で不満が出るレベルでは無い。



シビアに言えばミニバンとして見れば3列目の居住性は最悪レベル。ステーションワゴンとしてはRrオーバーハングが短いためデッキ面積は小さめである。ただし、2列目の居住性は3列全てを通してみても非常に良い。次世代型サルーンというコンセプトのなかで最もうまく行っているのはここだ。スポーティに振りすぎたマークXが失う後席の快適性はこちらでカバーしているとも言えそうだが、3列シート仕様ゆえ出来の悪いミニバンとして受け取られてしまった点は非常に残念である。

採点するなら1列目3★、2列目4.5★ 3列目2.5★ ラゲージ3★ トータル★3つ

●燃費

試乗時は590km走行して62L給油したので満タン法で9.5km/Lであった。

10・15モードのカタログ値は12.8km/Lなのでまずまずの結果だ。

燃費はCVTと電スロ、EPSという燃費のための三悪装備をフル活用。アクセルを小さく踏んで発進させると20km/h以上で完全にロックアップが作動し、E/G回転は1000rpmに張り付く。このままアクセルをふみ混むとCVTの変速のみで車速が上がり60km/hを超えるまでは1000rpmのまま車速が上がる妙な感覚を覚える。

普段から右足とタイヤの接続感を大切にしている私にとっては褒められたものではないが、それでも加速を続けて70km/hになると1200rpm付近になり、これ以降は車速とE/G回転数が比例して上昇するようになる。

アクセルをオフした場合は、同じ車速のまま1200rpmに回転が上がり、そのままフューエルカットを使って転がっていく。車速がどんどん下がってもタコメーターは1200rpmを指したままで極力CVTの力を使ってフューエルカット領域を維持しつつ回転抵抗の少ない低回転を保つロジックである。

CVTによって低燃費領域を使って走行するだけでなく、アクセルオフ時は極力長く燃料をカットして燃費を稼ぐ。まだTHSはプリウスやエスティマなど限られた車種のための技術であり、アイドルストップ装置が流行する前の思想である。

流れの良い一般道や高速道路をツーリングしたときの燃費は、燃費計読みでリッター17km/L以上を記録。ただし、発進停止が多い市街地では一気に10km/L以下に落ち込んでいくのは車体の大きさや排気量の大きさが如何に燃費に影響が大きいかが実感できる。



●価格

2009年時点のZiOエアリアルの当時の価格は286万円(税込)であった。

前輪駆動の他グレードは240:258万円、240F:273万円、240G:288万円、350G:335万円。

2400ccという排気量を考えれば240F当りが量販で+αでGどうですか?という価格設定だ。V6も比較的割安な価格設定なので悪くないが、240系が意外と割安な価格設定なのはFFベースである引け目か。当時はマークXも最廉価の250G_Fパッケージは247.8万円だったので丁度10万円高でワゴンが買えるという設定になっている。



個人的には240F当りで充分満足できると思うのだが、4+Freeのコンセプトに見せられてギラギラしたい場合はG系で決まりだろう。当時よりも今の方が価格は圧倒的に安い上に冷静に見られてエクステリアも気にならなくて良いかも知れない。

●まとめ

結論から先に言えば、トヨタがZiOで企てた団塊マーケティングは失敗に終わった。月間目標台数は4000台であったが、発売月の登録台数が5117台、翌月が4198台と目標を達成するも3ヶ月目には1649台と失速した。

離れ目おちょぼ口のフロントマスクが不評の原因としてエアリアルを追加し、マイナーチェンジでFrバンパーを新設して顔つきを修正したが、不振の流れを食い止めることは出来ず、最後は3列シートを配した2列シート仕様車を追加して9万円値下げするなど苦しみながら6年3ヶ月のモデルライフを経てモデル廃止されてしまった。モデルライフで52190台を販売したが、最初の3ヶ月分(10964台)を差し引けばモデルライフ6年の平均月販台数は41226台/72ヶ月=572台であった。

月販目標台数に75ヶ月をかけると30万台となる。つまり目論見の17.4%しか売れなかったことになる。流石にコレは大惨敗と言わざるを得ない結果である。金型代は回収できたかどうかも怪しいレベルではないか。



当時のユーザーの気持ちで考えれば、同じトヨペット店にはイプサム240が存在していた。ZiOはV6が選べ、内装クオリティも高かったが、3列目シートが余りにも狭かった。機械式駐車場対応の全高1550mmを実現したミニバンという見方をすればホンダオデッセイという強力なライバルが存在した。渾身の低重心構造によってセダン並みの走りと、先代並みの居住空間を持ち、セダンライクミニバンとして充分なユーティリティを持ちながらワルなキャラクターも持ち合わせていたオデッセイと比較検討されると分が悪い。単純なステーションワゴンとしてみても401Lという荷室容積はカローラフィールダー以下である。

窮屈な3列シートによってミニバンという色眼鏡で見られてしまいがちだが、本来はナディア(カムリ)、オーパ(コロナ)の延長線上にある「あの時代特有のトヨタ製ポストセダンのスタディ―」ZiO(マークX)であると考えた方が立ち位置がハッキリするのではないか。

結果的に台数を稼ぎたくてミニバンユーザー吸引を図るための「ちょっとしたスパイス的扱い」だった3列目シートの存在が仇となった様に感じる。あれもこれもと欲張った結果、設計的・意匠的な制約条件が多くなりすぎて掴みどころのない曖昧な存在になってしまった。後に廉価グレードに2列シート仕様を追加したが、一度ついたイメージは覆らなかったようだ。後期型ではSAMURAI Wagonなるコピーが添えらえた上で、トヨタWEBサイト上でもステーションワゴンと再定義されたが、さしたる販売成果を上げぬままモデルライフを終えた。

当時の営業マンの会話を記憶から呼び覚ました。セダン系のマークXという名前を守りたくて当時人気のあったミニバンからの吸引を企てたが、セダン層からは想定以上にZiOに流れたものの、保有母体が多かったミニバン層からの吸引に失敗した時点でZiOの目論見は水の泡となった。

実際のZiOは決して悪いクルマでは無いが、マークXのワゴンとしては・・・・とかオデッセイ対抗ミニバンとしては・・・・とかFSCの市販版としては・・・・そういう観点で見た場合に忌避感が出がちだったのが残念だ。



走らせてみると、当時のほかの車と共通の欠点を有してはいるものの、確かに高級セダンのようなクオリティとミニバンの(二列目の)様な快適なキャビンと、
程々のユーティリティが同時に味わえるのはZiOならではの魅力である。中古価格も手頃なので意外と今、多人数乗車を求めない後席重視の車としては狙い目にも感じるのだが。

ちなみに冒頭に述べた団塊マーケティングは自動車業界以外も期待して様々な商品を出したものの不発に終わっている。

ニッセイ基礎研究所の調査によると、団塊の世代が老後の生活で重視したいこととして興味を示したのは健康(83.8%)、家族との生活(55.2%)、食生活(54.8%)などが多数を占め、車・家電などの耐久消費財を重視するとした回答は全体の6.4%と限定的だった。

レポートでは団塊マーケティングが失敗した理由として「2007年にシニア・マーケットに注目が集まった際、多くの企業は、消費意欲が旺盛、フトコロ事情が良い、多くの時間を持つというマーケティング対象の好条件に注目しすぎてしまったのではないだろうか。つまり、特別な消費活動を行う、特別に高額な消費を行う、特別に多くの時間を費すような非日常的な消費活動を行うマーケットとして意識しすぎてしまい、彼らの本来のニーズを見落としてしまったのではないだろうか。」と指摘していた。

結果的に時代の波を読み違えたのはZiOだけではないのだが、私はZiOを見るたびに団塊マーケティングの失敗と、作り手目線でいいモノだとしても、必ずしも消費者から評価されてヒットに繋がるわけではないという厳しい現実を思い知らされる。しかし、マジョリティには支持されなくとも、試乗車のように初代オーナーから10年以上愛用された後も、次のオーナーからも溺愛されるなどZiOと相性の良いオーナーとはずっと良い関係を築き続けられ、引き継がれていくだけの実力はあると感じられた。



1週間に亘りZiOを貸して下さったオーナーに感謝。
2023年08月20日 イイね!

愛車と出会って7年!

愛車と出会って7年!8月19日で愛車と出会って7年になります!
この1年の愛車との思い出を振り返ります!

■この1年でこんなパーツを付けました!
何もつけてないですね、、、。私の中ではこのスタイルでほとんど完成してます。

■この1年でこんな整備をしました!
E/Gオイル交換 フィルタ交換
冬タイヤ 夏タイヤ入替
ワイパーブレード交換
外装モール締結クリップ交換


■愛車のイイね!数(2023年08月20日時点)
321イイね!

■これからいじりたいところは・・・
純正ショックでリフレッシュしたい。
タイヤ交換したいし、車体の塗り直しも行いたいですが、もう少し貯金したいですね。

■愛車に一言
毎日の通勤でお世話になっています。
特に悪天候時は敢えてハードなルート(個人の感想)を通りたくなる点が魅力的です。

見晴らしが良いので3ドアで乗り降りしにくくても、我が子らからの人気はナンバーワン。デザインが良いのと、実用性もあるので全く飽きて来ません。これからもよろしくお願いします。

>>愛車プロフィールはこちら
Posted at 2023/08/23 23:31:50 | コメント(1) | トラックバック(0) | RAV4
2023年07月30日 イイね!

1989年式スカイラインGTS-t感想文

1989年式スカイラインGTS-t感想文#先日のオフ会で乗せていただいたのですが、分量が増えたので別記事にしました。

言わずと知れた日本の名車R32型スカイラインに試乗する機会を得た。ほぼ解説の必要が無いくらい語り尽くされた感のあるモデルだが勿論自分の為にメモを残す。試乗車は主賓であるよっこい氏の家車であるが、1989年式GTS-tの商品化中古車である。

公式プロフィールによるとP'sスペシャルと言うらしい。元々長年のファミリーカーとしての活躍した事によるボディの腐食が問題になっていたが、よっこい氏が修復に動いた結果、非常に美しい状態にオールペンされて帰ってきた。

とぅるっとぅるでテロッテロに輝くボディを参加者全員が嘗め回すように鑑賞した。オールペン直後と言うことで内装トリムが外された貴重なスタイルのため、普段のイベントでは見られないような場所もじっくり観察した。

●スカイライン伝説~昭和の終わりまで

R32型は私が小学校1年生だった1989年にデビューしたが、今よりもスカイラインに対する期待が大きかった時代である。1963年のS54型でポルシェに(ちょっとだけ)勝った事でスカG伝説が始まり、C10型ではスカイラインGT-Rが日本グランプリで52勝をあげて自家用車が一気に普及したモータリゼーションの時代に高性能イメージをしっかりと定着させた。元々のスカイラインはトヨタのコロナや日産のブルーバードと競合するような1500ccクラスの小型車であった。プリンス自動車と日産自動車の合併によってブルーバードは4気筒中心のど真ん中の小型セダン、スカイラインはヤングアットハートな人が乗る小型セダンでその頂には6気筒エンジンが精神的支柱として君臨する、という構図が完成した。

1972年、オイルショックによる停滞期、モータースポーツ活動から一旦距離と置かざるを得ない間、高いブランドイメージを維持しながら若々しさと上質なドライビング体験を両立させたC110型となり、社会現象ともなる大ヒットを記録。同級生のお父さんが免許を取って初めて買った車が中古のケンメリだったり、車に興味の無い母でもケンとメリーのスカイラインを知っているなどとにかくスカイラインはコアなクルマ好き層も、そうで無い一般層からも一目置かれる希有なブランドとなったのである。高性能イメージを裏切らない技術的な裏付けがありながら、一般受けする商品性を両立させて上手に広告を打ったのが素晴らしかった。下記の写真は私の父が誰かのケンメリと撮った写真だ。(ナナハンに乗っていた父のマイカーではないはずだが・・・)



その後はターボE/Gの搭載や4気筒ながら1気筒当り4バルブエンジンの実現をするなど、若者が憧れたハードトップに、中年以上も納得して購入できるセダンの2本柱で日本国内のユーザーと強力な関係性を築き上げたのがスカイラインというブランドであった。1985年のR31型はハイソカーブームに対応して、ソフト化を推進して今までの枠組みを残しながら一気にソフトイメージにシフトした。「柔らかな高性能」「都市工学」という少し難しいキャッチコピーはバブル絶頂期に向かって醸成されつつあったふんわりしたファジーなニュアンスを感じさせたが、スカイラインはお洒落で高性能というイメージからは少し後退するような感覚を市場に与えたことは歴史が証明している。

スカイラインに勝ちたくて仕方が無かった競合車のマークIIは兄弟車と3本の矢で挑むしか無かった訳だが、1981年のGX61型で人気が出始め、1984年にデビューしたGX71型が大ヒット。この勢いに押されて王者スカイラインが彼等の引力の影響を受けたのも無理は無い事情があったが、結果的に王者スカイラインが相手の土俵で戦うと言う自動車業界ではやってはいけない戦い方をしてしまっていた。スカイラインそのものが悪い製品だったわけでは無く王者らしく、スポーティもラグジュアリーも両立させた解を持っていたのに、商品としての色調は明らかに競合に寄ってしまい、その色調を得意としていた競合との戦いを厳しい状況にしてしまったのである。

●高性能スポーツセダンへ急旋回

R32型スカイラインはこうした歴史を背景にして「運動性能」にこだわったクルマ作りをやり遂げた。スカイラインが持つハードなスポーティイメージを磨いた。ボディサイズを小型化するだけで無く立派さに寄与する角張ったオーバーハングを削り、動物の筋肉の様に彫り深く立体感のある彫刻感のあるスタイリングに生まれ変わった。



ノーマル車のフロントマスクはツルンとした薄いヘッドライトとグリルレススタイルでクールな鉄仮面の90年代版という趣であるのに対してP'sスペシャルはGT-Rのアルミフードと左右ヘッドランプ間も冷却のためのグリルが取付けられており、ノーマル車よりワイルドな雰囲気が出ている。平面視方向で見るとノーズはV字カットされてコーナーハングを削って軽快感を出しつつもRB型6気筒E/Gを納めるためのスペースも確保されている。

Frフェンダー後はフェンダー頂点から弦巻線のように後方へ向かってキャラクターラインが引かれ、サーフィンライン調のブリスター形状を形成しているのも面白い。その線より下は平面的だが、空力的にはタイヤからの流れ出るエアを整流しているのでは?と思われる意味ありげな平面がドアに繋がっている。(フェンダー後縁に気流を乱さぬよう大きめのRが取られている点も要注目)



R32型スカイラインは当時のトレンドと比べるとウエッジシェイプが強いがそのバランスを取るようにドア下にはサイドプロテクションモールのようなレリーフが入れてあるのが面白い。形状的には明らかにモールなのに一切サイドをプロテクションしないモール形状の板金部品なのである。2023年現在になると車幅1800mmでもコンパクトと主張する新車もサイドプロテクションモール無しなのだから小型車枠に入るR32型スカイラインで困ることは無いのだろうが。

ルーフはAピラー上端を頂点に緩やかに絞り込まれてここでも空力を意識した処理が施されている。サッシュレスドアのピラードハードトップなのでドアサッシがない分ルーフを薄く出来てスポーティさを強調している。そのままラゲージへ繋がっている。セダンは空力的にはハイデッキにすることが定石だ。現代の「はらぺこあ●むし」の様な自称セダン達もルーフから気流を剥がさないようにボディ後端まで流線を引くことで大きな渦の発生を抑えている。

R32型スカイラインも同じようにハイデッキなのだが不思議とそう見えない。これはRrエンドの肩を大きくそぎ落とす処理の効果で大きく見えないからだろう。
トランク容量とのせめぎ合いでここはどうしても大きくしないはずなのに、潔く切り捨てている。加えて、側面視で見るとRrガラスが大きく湾曲していてガラス面としては斜度をつけているのにクオーターピラー部分は乗降性に関わるRrドア部分で立たせてガラス側は寝かせることでエレガントさと空力を意識。またフェンダーとクオーターとフェンダーのつながりを遮断してラゲージの流れをベルトラインと繋げることで空力を意識したハイデッキスタイルで、Rrオーバーハングを70mm削って運動性能を追求しながらもセダンらしい佇まいを確保しているのだ。(この代償は281Lという現代のBセグ並みのトランク容量に現われている)



真後ろから見ると伝統の丸形テールがあるのでスカイラインとすぐに分かるが、
ケンメリ以降の丸テールを観察すると垂直平面で切り落としたようなテールエンドが続いていたのだがR32型では曲面的な面の中に小径同心円テールを当てはめている。それまでの豪華絢爛だったり従来のTIシリーズとの棲み分けも考えたデザインから解放されマッシブでスポーツ感覚あふれるエクステリアデザインとなった。実車を見ると自然に笑みがこぼれてくる。5ナンバー枠の中でここまで濃厚でエネルギッシュなデザインが実現出来るのだと再認識した。

フードを開けると、RB20DETが鎮座していた。税制上、一般人感覚でのフラッグシップエンジンである2リッター直列6気筒24バルブエンジンターボは過給圧を570mmHg→620mmHgに昇圧して215ps/6400rpm、27.0kgm/3200rpmというハイパワーを発揮。



摩擦低減のために玉軸受を採用したタービン(世界初)、エアクリからインテークポートの間で流速を高めて燃焼室へ慣性をつかって吸気を送り込むAD(エアロダイナミック)ポートなど当時の技術が惜しみなく投入されている。恐らく仮想敵としてGX81マークIIGTツインターボ(210ps)に打ち勝つための+5psであろう。

E/G放射音を吸音するフードインシュレーターにはSKYLINEロゴがエンボス加工されている。そういう洒落っ気だけでなく、部品端末が綺麗に処理されて内部の構造が見えなくなっている点は素晴らしい。見られる事を意識したE/Gルームだと考えて良い。



ただ、見た目だけに気をつけたE/Gルームでは無い。サスタワー後からスティフナプレートを追加してカウルと繋いでいる事に気づいた。一般的な車だとサスタワー後は例えば私のRAV4だと補機バッテリーをそこに置くなどしてスペースを有効活用しているのだが、R32型スカイラインは板を配置して走行中のサス入力でサスタワーが大きく前後に動く事を抑えようとしている。



驚いたのはそのスティフナプレートの溶接方法がプラグ溶接なのである。一瞬、事故車か?と思ってネット検索したところBNR32型スカイラインGT-Rの
レストアをされている方
の写真を拝見してプラグ溶接が正しいことを確認した。



プラグ溶接は予め片側に穴を開けた溶接側プレートを被溶接側プレートにセットした後、アーク溶接で溶けた鉄を流し込んで穴を塞ぐ(プラグ)ことで接合する手法である。



量産の世界ではアーク溶接は条件出しが難しく場合によっては人の手による工程になるケースもある。

スカイラインのように月産目標1.2万台クラスの量産車でプラグ溶接を使うと判断は非常に難しい事なのだが、それをやってのけているのは驚異的に感じる。スポット溶接は設備さえ入れば自動化に向いており、品質も安定するためスポット溶接を優先的に採用すること自体は悪では無い。

ついでに言えば端末部は曲げフランジが立ててある。スペース的に上下方向の余裕がないのでW軸中心の曲げに対してペラペラなため、フランジを立てて曲げ剛性を付与し、副次的に洗車拭き上げ時の切創など危害感に配慮されている。(もっともここに入る入力はL軸平行の力なので引張圧縮で使っているはずだ)

R32型スカイラインは恐らくこの狭いスペースにスティフナープレートを押し込むために無理矢理プラグ溶接でぶっ込んだという感じがある。レイアウト担当からするとデッドスペースを作りたくないし、ボディ設計も面倒な部品が増える。生産技術者は困難なプラグ溶接を量産で実施し品質を担保しなければならない。



「ホントにこんな板切れが必要なのか?」「プラグ溶接でちゃんと着くのか?」
「もっと効率が良い対策が有るんじゃ無いのか」「現場の苦労を考えろ」などなどきっと幾多の不平不満いちゃもんが寄せられたであろうが、操縦安定性担当者は鋼の意志でこのブレースを守ったのかなぁ、なんて勝手に想像してしまった。




ちなみに当日の参加車にC34ローレルが居たので同箇所を比較すると、サスタワーとの打点はスポット溶接に置き換わっており、生産性改善の為に改良が加えられてきた歴史も確認することが出来た。同じ性能を維持しながら生産性・品質確保をすることこそが改善である。些細なスティフナプレートだが、こんなところにも901活動の魂があるのかも。

溶接技術関連でもう一点、オールペン後のトリムレスでやって来たR32型のサイドドアオープニングフランジが非常に短い事に気づいた。写真を見て貰えば分かるが、およそ12mm程度しかフランジが無い。



写真から見たナゲット径は7~8mm程度なのでかなり溶接位置の精度が高くないとフランジからはみ出しかねない。それどころかガンがボディに干渉したり、それを嫌がってフランジ先端に外れればスパッタが飛んでナゲット形成が悪くなる。恐らく専用の細い溶接ガンで打点を打っているのか位置決め精度を高めているのだろう。



これによってスカイラインのドア開口が維持されて乗降性が確保されている。「ばらつくからフランジを大きくして」と言われるがまま数mm譲るだけで恐らくR32型スカイラインの乗降性は急速に悪化するだろう。それくらいギリギリの線でサイドドアオープニングフランジが決められている。(そもそもサイドドアオープニングフランジを決める事は設計の初歩の初歩の段階から綿密に調整されて完成する)部品配置、衝突性能、乗降性など多数の制約条件を守ったり攻めたりしながら作り上げている事が分かる。



当時の開発社がベストカーWebで語った記事によれば、この時代のFRセダンは群開発をしていたという。
“新感覚スタイリッシュ優先のA31型初代セフィーロには「クラス平均の室内&トランク空間と新しいクーペ型フルドア構造の4枚ドア」。
C33型ローレルには「ゆとりサイズの室内&トランク空間と流行りの完全サッシュレス4ドアハードトップ」。
そしてR32型スカイラインには「箱根まで若者4人が乗れるサニーサイズの室内空間とシルビアサイズのトランク」
という当時の6気筒エンジン搭載車クラスで最も狭い居室&トランクと、セドリック並みの大きくて力強いエンジンルームという組み合わせを採用したのです。”

私だったら、既存の顧客の反発が心配でセフィーロとスカイラインの性格を入れ替えてしまうところだが、それを頑なにやらずに押し切った頑固さが
純スポーツセダンとなったR32型スカイラインの「らしさ」なのである。


●耐えられなくなり試乗

もうどうにもこうにも乗りたくなってしまってオーナーの許可を得て運転席に乗り込んだ。



ドラポジを合わせてみるが、スカイラインという当時の車格を考えるとかなりタイトである。以前試乗した競合車のマークIIは広々していないが狭くもないというレベルだが、スカイライン場合、乗り手のプロポーションを選ぶレベルでタイトだ。例えばセリカとかカリーナEDの様なスペシャルティカーの乗車感覚に近い。あの凝縮感のある美しいエクステリアデザインはキャビンの方向性がスペシャルティ的にシフトしたことで実現されていたのである。



ペダル位置合わせでシートをスライドし、0点が水平の針メーターが見えるようステアリング位置を調整し、ステアリング操作に支障が無いレベルでシートバックを寝かせ気味にするとキャビンが身体にフィットする。全高は下げられているが、ヒップポイントも下げられて重心に近い位置で挙動が感じられるようになっており、過剰な広さを求めずに着る感じにしてある点は結果的にはこのクルマの欠点として挙げられることが多かった。



インパルと書かれたステアリングはノンオリジナルだがイメージリーダーのGTS-tタイプM用のステアリングも小径で真円形状となっている。小振りなステアリングを握り腋を締めると、運転姿勢が整った。狭いと評されるこのモデルだが、企画当時は大ヒットしたカリーナEDの快進撃も見ていただろうから理由さえあればキャビンがタイトなモデルでも市場は受け入れると賭けに出たのだろう。

センターコンソールのエアコンはフルオートエアコンでMOP品(電子制御アクティブフルオートエアコン)が装着されている。がこのスイッチが私の親が所有していたバネットセレナFGのオートエアコンと一緒だったのが懐かしい。

E/Gをかけて1速に入れてクラッチを繋いだ瞬間、私はこのクルマが好きになった。一般道に出て市街地走行を試したが、2000ccという事を考えると少し線が細めだがMT故に必要十分なトルクを出すようなシーンでもスムースで操作系にクセがなく運転操作が楽しいエクササイズのようにすら感じられる。



長い上り坂があったので踏み込んでみるとブースト計の針がグッと動きトルクがググッと立ち上がるこの一瞬のすっきり感は癖になりそうだ。近所に買い物に行くだけでも運転操作が楽しくなるのはR32型スカイラインの持つ魔力である。

気持ちよく駐車場に戻ったが、夕暮れ時にモデラーN氏同乗でR32をおかわりしてしまった。(様な気がする)

1速でレッドゾーン付近まで淀みなくタコメーターの針が駆け上がる。もちろんブースト計は700mmHgの少し下を指していた。シフトアップしても印象は同じで嫌な騒音や振動が小さいのにとにかくドラマチックにパワーが湧き出してきた。215psという今では特に珍しくもないスペックだが、アクセルペダル操作に呼応して気持ちいい音と同期して加速する行為は本当に楽しい。車重は1290kgと現代目線では軽いので必要十分な刺激をRB20DETから受け取ることが出来る。



コーナーに差し掛かると、更に面白い。結論を言えば操縦安定性がとんでもなく良い。じわりと切り始めて舵角を決めて維持して立ち上がりで加速、という動作の中で曲がりすぎて切り戻したり途中で切り足したりする必要が無くビシッとラインが決まる。私の粗末な技能なら尚更それがよく分かる。機敏で切ったらグイグイ曲がる味付けでも切れすぎると困るし、逆も安定感はあっても気持ちよくない。R32型スカイラインは最初の「じわり」もクルマがスッと反応してくれ、そこから切り込んでいくと適度な手応え感と共にコーナーを曲がってくれるが、意地悪的に舵を切り足してもまだまだ行けるという感じの横Gが出る。

実は試乗車のP'sスペシャルにはGT-R用のアルミ合金製ボンネットが装着されており質量は11kgも低減されているという。鉄製フードと比較したわけではないが、重心から離れた位置にある重い6気筒E/Gを積んでいる弱点の緩和に対して一定の効果を上げているだろう。



語り尽くされた感のある驚異のハンドリングを34年遅れで私も味わうことが出来た。この感覚、今まで乗ったことのあるたくさんの自動車の中でもトップクラスの味わいである。私は、すっかりR32型スカイラインの虜になったようである。日が沈み、そろそろ・・・・というタイミングで私は3度目のお代わりをしてしまう。(・・・様な気がする)

先程走ったコースを、もう少しペースを上げて走らせてみた。ブースト計が立ち上がって車速が上がりシフトアップ。あっという間に景色が流れ始める。コーナー手前でアクセルオフによって前輪に荷重を乗せてステアリングを切る。次のコーナーを見定めて滑らかにラインをトレースしていくが、車幅1.7m以下の小型車枠なので限られた車線内のライン取りが非常に簡単でキャッツアイがあっても神経質になる必要が無い。急コーナー直前で強い制動をかけてもリニアに減速Gが立ち上がって決して不安な気持ちにさせないのもスカイラインの高性能を物語っている。コーナリングで軽くブレーキを使ってしっかり前輪に荷重をかけステアリングを操作し、外側のタイヤにGを乗せながら旋回させる。姿勢は一切ブレないのでスキーのカービングターンのような気持ちよさがある。こんな風にスカイラインは加速-減速-旋回-加速とリズミカルに道路上を駆け抜ける。舵角が一発で決まって慌ただしくならないので私のような下手くそでも落ち着いて運転に専念できるから、必要なら一層レベルを上げて速く走らせる事が出来るはずだ。まるで新雪の山肌をにシュプールを描くように走らせる事ができる。当然タイヤが鳴くわけでもなくグリップ範囲内でスカイラインの手の内で遊ばれているだけである。もう少し、ブレーキの補足をすると、感動を与える制動力とまでは言わないが、私が運転した限り、自信のAE92カローラ(ノーマル状態)をはじめとする当時のダストを嫌った一般的なブレーキと比べれば遙かに効きが良い。特に、踏力でしっかり効きが調整できる点が評価できる。GTS-tタイプMやGTS-4にはアルミキャリパー対抗ディスクブレーキが備わるのが試乗車は標準仕様であること考えれば決して「さ、行ってこい」式では無い充分な効きを確保している言える。



実はR32型スカイラインの上級車種にはスーパーHICAS(ハイキャス)と言う機構が備わっている。これは後輪操舵の一種で最小回転半径を稼ぐ目的ではなく走行安定性確保に主眼を置いた機構となっている。コーナリング開始時に逆相で後輪を操舵することで旋回のきっかけとなるヨーを発生させ、そこから後輪を同相曲げることで安定感のある旋回を実現するが、ステアリングの舵角・操舵角速度・操舵角加速度と車速いう複数の要素によって同相や逆相を切り替えている。上述の動きは中速度の大きめの操舵時を記載している。低速時は一般的な2WS(前輪操舵)で違和感なく、高速時は後輪同相操舵で前輪だけに頼らないコーナリング・レーンチェンジを実現した。当時の最先端の4輪マルチリンクサス、スーパーHICASやビスカスLSDなど当時の日産が投資した操縦安定性に対する研究開発の果実が試乗しただけで味わうことが出来た。

人工的なデバイスが介在しているのにその走りはあくまでも人間の感性に寄り添っているのは正しい技術の使い方だ。技術がどんどん進歩しても、技術の使い方がセンスに依存することは変わらない。素晴らしいセンスを楽しませていただいた。



●R32以後のスカイライン

走らせるとピカイチのR32型だが「これぞスカイラインだ!」と市場で全面的に受け止められたかというと実は違うことを歴史が証明している。スカイラインはブランドとしての歴史が長く、保有母体が多い。だからこそスカイラインが持っているスポーティな側面だけにフォーカスしたR32型は走りを愛する人たちには必ずや満足感を与えたと思う。一方でセンスのある上級小型車としてスカイラインを乗り継いだ人たちにとっては、急にキャビンが狭くなってラゲージが小さくなった事で「これは“私”のスカイラインではない」と判断されてしまった。

ありがちな自動車評では「ハイソカーになったR31が失敗して、ピュアなR32で盛り返したが、バブルの遺産R33で中年太りした」という類のものがある。しかし、R33型がボディサイズを拡大してユーティリティ面を何とかしようとしたのは、R32型の商業的な不振を反省したものであると言えよう。沢山の人に乗ってもらうスカイラインにするためには、ユーティリティ面を割り切りすぎた。

以後、3ナンバーになったスカイラインはどこかGT-Rのベース車という扱いが続いたのだが、V35型でV6を積んだ革新を行い国際派セダンに返り咲いた。2023年現在もなんとか日産の国内市場唯一のセダンとしてラインナップされているが、これは意地で残しているに過ぎず、いつ廃止されてもおかしくない風前の灯火である。マークIIがあんなことになり、クラウンもああいうことになった。スカイライン廃止だとかスカイラインはBEVのSUVになる、などという報道も出てくる。フェアレディZは世界的なファンが居るがスカイラインは日本国内でのカリスマ性はあれど世界的にはインフィニティのセダンに過ぎず、優先度は低いだろう。

昭和のスカイラインはR34できっちりとユーザーにお別れを告げている。V35以降の国際派セダン路線はV37で終わってしまうのか。それならばもう一作だけ、空調の不具合が出ないV38、あるいはRV37(BEVとガソリン車の二本立て)を世に出して日産のど真ん中セダンの最後の輝きを見せてほしい。今のレクサスISは最後の力を振り絞っている感じが伝わってくる。スカイラインはセダンのど真ん中を狙わないと行けない。FF由来を誤魔化すように4WD化し、6ライトのトランクの存在感がないスタイルや、セダンでありながらSUVの良さを・・・と言う歪な方向には行かない方が良いことは、既に歴史が証明している。

●まとめ
R32型スカイラインが絶妙な部分は「十分以上に速い」のに「速過ぎない」点である。周囲環境が許せば瞬間的に床まで踏み切れるRB20DET型の動力性能に対して「もっと行けるかも?」と思えるハイレベルのコーナリング性能、安心して踏めるブレーキ性能バランス良く調整されているので、過不足がなく楽しさが安全に楽しめるのである。当時なら、「これ以上のスリルはアテーサE-TSを搭載したGT-Rでどうぞ」という明確なメッセージに説得力を感じるだろう。

「操縦安定性が高いクルマは安全だ」という主張を目にしたことがある。個人的には懐疑的に思っていたがR32型スカイラインを体験して妙に納得した。速度が出ていても運転操作の手数が少なく、余裕時間が生まれるのでスカイラインの性能を確かめることが決して度胸試しにならない。



直線で速いだけの車、コーナリングが速いけど神経質な車とは違ってR32型スカイラインは安定してねっとりと路面とコンタクトし続けるのだから、これは確かに安全である。

・・・というわけで思う存分堪能させていただいてR32型スカイラインが名車と呼ばれる理由を実感できた。プレスリリースの「スポーティなスタイルと高質な走りを追求した高性能スポーツセダン」というコピーに偽りのない狙い通りの車になっていた。この車のスポーティさは誰が乗っても分かるだろうし、例え、R32型スカイラインが肌に合わなくて嫌いな人でも、乗れば「運動性能に優れている」と認めざるを得ない(≠好かれる)出来栄えだろう。今回の試乗で多くの人がこの車を褒め称えている理由と、重大な欠点として指摘している点がよく分かった。

個人的には自分が所有するAE92カローラの官能的な高回転型エンジンとキビキビ曲がりたがる性格とカローラが持つ実用性に満足しているが、R32型スカイラインはそのすべてを凌駕する上位互換であると感じた。「こいつには敵わない」きっとこの車を所有すればもっと運転が上手くなりそうだ、という予感がする。居住性は特に広くないカローラを認めている以上、R32型スカイラインが認められないという事にはならない。十分耐えられる。あの走りの代償がコレなら許さざるを得ないのではないかとも思えてくる。



素晴らしい車を心行くまで運転させてもらい感謝。この日はよく眠れた。
Posted at 2023/07/30 23:45:18 | コメント(6) | トラックバック(0) | 感想文_日産 | クルマ

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