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2022年08月27日 イイね!

2022年式サクラ X ミニ感想文

2022年式サクラ X ミニ感想文●軽のゲームチェンジャー「サクラ」
2022年5月、日産は以前から存在を仄めかしてきたBEV軽自動車「サクラ」を発売した。補助金を最大限に活用すれば130万円台(自治体による)で購入できるEVとなり、ガソリンE/Gを積む軽自動車と競合しうる存在として大きな注目を受けた。発売からたった3週間でBEVとしては異例の11000台を超える受注があるヒット作となっており納期はどんどん延びているらしい。

傘下の三菱自動車との合弁企業NMKVで生産されており、三菱ブランドではekクロスEVとして販売されているが、今から13年以上前の2009年、三菱自動車はRrエンジンの革新的デザインのiをベースにi-MiEVを市販した経験がある。サクラ周辺のBEV車のスペックを比較すると下記の通り。



サクラとi-MiEVのバッテリー容量や航続距離に意外と差が無いのが面白い点である。ある意味でi-MiEVの市場実績を参考にサクラのバッテリー容量を決めた可能性もある。

(特定の人たちの利益のために)電動化が叫ばれる中、BEVはバッテリーの高性能化・大容量化を推し進めており、例えば日産リーフは2009年の初代は200kmから2022年最新型では450kmへ。アメリカのテスラモデル3は689kmというカタログスペックだけならガソリン車に引けを取らない性能を有するに至っている。一方で、電池の大型化はコスト増に直結するためにBEVはまだまだ高い。だからこそガソリン車並みの航続距離を持つBEVは富裕層向けの商品とする他に生きる道がない。

BEVに社運をかけている日産/三菱連合は軽自動車枠に収まるBEVを開発した。軽自動車は自身の通勤や家族の送迎、日々のお買い物など生活圏で機動力を発揮する為に長い航続距離が普通車ほどは求められないという特徴がある。航続距離がネックのBEVのネガが目立たないのがセカンドカー需要を満たす軽自動車というわけだ。20kWhのLiイオン電池を床下に吊り下げてリーフe-4WDのRrモーターをFrに積んで前輪を駆動する。

電池の搭載説明用の絵を見るとFrフロア下から後席座面下付近までみっちりバッテリーが搭載されていることが分かる。一方で幅方向は随分と余裕を残しているようにも見える。ここにバッテリーが置ければ航続距離をもっと稼げたのになとBEV素人の私は考えてしまった。しかし、バッテリーが大きいと言うことは満充電までの時間がかかり、車両自体も重くなり、コストが跳ね上がってしまうから過ぎたるは及ばざるがごとし、という感覚が必要らしい。

最近の日産らしく、欲しいと思わせる商品としてブラッシュアップにも余念が無い。三菱はekクロスEVとして、あくまでもekクロスの新バリエーションとしてBEVを追加したが、サクラはデイズをベースにしたと感じさせながらもオリジナリティーのある内外装を与えた。すなわち、アリアをはじめとする日産電動車ラインナップとの血縁を最大限感じさせている。

走らせると動力性能の突出した力強さを感じるものの操縦性や乗り心地の面で軽の範疇に留まっている点は物足りない。パッケージの稚拙さはベースの悪さを引き継いでしまったので単純にサクラの悪さではないが、パッと見た時の期待値からの落差は決して小さくない。

ただ、近距離BEVコミューターとして考えれば軽自動車と同等の使い勝手を持ちながら、例えばトヨタ車体のコムスやトヨタC_Pod+、少し旧いがスズキツイン、ダイハツミゼットIIのようなモデルと比較しても遙かに自動車らしい点はサクラの美点であると言えるだろう。

都市内コミュータだからと、大胆に機能を制限することで低価格化・小型化を図る事は好事家からの支持が高くても一般大衆から見ると不安要素にしかならないことが多々ある。

無理に専用設計部分を増やさずに既存の軽ハイトワゴンのコンポーネントを活用して短距離専門BEVを作る作戦は非常に有効で現実的だと私は思った。

ただし、サクラで初めてBEVに触れる人が多いと予想されるのに充電ケーブルが別売りなのはいかがなものか。しかもその価格が5.5万円なんて馬鹿げている。スマホを買った時に充電ケーブルが着いているのは当たり前だと思うが。BEV既納客にはレスオプションで還元すれば良いだけの事なのに非常に意地が悪い。

●まとめ
軽BEVであるサクラは補助金込みなら従来型軽自動車と競合できる価格帯になり、航続距離以外の面では従来型の軽自動車を凌駕する実力を持っている。商品としてのアピール力も高く、特にデザイン性はBEVの持つ先進感を際立たせている。

2010年に一般販売された初めての本格的軽BEVである三菱i-MiEVは398万円であったが、2022年のサクラXは239.9万円と158万円も安価な価格設定になった。しかも安全装備は充実させ、BEVらしい期待感のある内外装が与えられているのだから大いなる進化である。一方でモーターの出力や航続距離はi-MiEVと然程変わっていない点は面白い。

試乗時に航続距離は試乗時には100km弱を示していたが、A/CをガンガンにかけつつBEVの強烈な加速をアピールし続けている試乗車で有ることを差し引いても本当に心許ない航続距離であると感じてしまう。勿論、我が国の軽自動車が一日に走る距離を調査し尽くした結果である事は知っているがクルマで長距離運転を楽しみたい私には全く許容できない。しかし、私が試乗して感じたサクラの幾つかの不満点は航続距離を考えれば取るに足らないものばかりであり、サクラの場合、航続距離に目を瞑れる人ならネガがネガにならず、オーナーを満足させるだろう。

日産車らしく、数々の割高なセットオプションも用意されていて45万円弱のプロパイロットも健在だが、ユーザーはサクラとの付き合い方を心得ているようで販売の中心はXグレードにナビもETCもつけないのだそうだ。私もサクラを検討している友人がいればXグレードを推す。しかし、あくまでもセカンドカーとして使える場合のみである。

家族を乗せてサクラで県外の実家に帰りたい、せっかく買うならプロパイロットも欲しいなぁといって割高な上級グレードを買っても、例えば我が家だと確実に一回は急速充電機のお世話になるためにピットストップを余儀なくされる。もちろん急速充電の定額プランに加入すれば充電回数の制限はあるが、エネルギー補給の遅さは弱点なので、やはり習慣的な自宅充電(8Hr)で行ける範囲で使用してデメリットを最小化したいところだ。

日産はサクラにはセカンドカー需要でBEVを普及させ地盤をならす使命の他にも、ガソリンスタンドの廃業でガソリンが入手しづらくなった過疎地の足としての新しい顧客獲得の可能性がある。

まだ補助金頼みの現状はi-MiEVの頃から変わっていないし、欠点もハッキリしているがメリットもかなり分かり易くなってきた。日産にとっては重要なモデルだが、競合他社にとっても売れ行きに注目せざるを得ないだろう。
Posted at 2022/08/27 22:55:33 | コメント(3) | クルマレビュー
2022年08月18日 イイね!

2021年式 N-WGNカスタムLターボ感想文

2021年式 N-WGNカスタムLターボ感想文●還暦を迎えた父の新しいお供
父が昨年にDEデミオの代替で購入したN-WGNと1ヶ月生活を共にしたので記録の為感想文として残す。

父は中古のDEデミオに乗っていたが、ある年の正月に妹夫婦が当時所有していたN BOX+を運転した際に「軽のターボでも全然走る」と感銘を受けて節税の為に買い換えたのが今回取り上げるN-WGNである。

購入時は中古のN ONEや先代N-WGNの物件を探していたが、2019年にFMCされたN-WGNが良かったので私が新車を買う様に勧めた。父は還暦を迎え、まだまだ元気だし頭もしっかりしてるが、かつてより良い意味で運転も穏やかになってきた。

免許を返納するほど衰えていないが、万が一の時に加害者になって欲しくない、だからせめて父にサポカーを選んで欲しかった。2019年にデビューしたN-WGNは普通車と比較しても遜色の無い先進安全装備が全車標準装備である点が売りだ。

私が住む愛知や妹が住む千葉にもN-WGNで行くなど活用しているが、家を空ける仕事が増え、忙しくなって乗らない期間が増えるため、頼まれて預かることにした。

●ホンダの軽ハイトワゴンを振り返る
前回のスズキワゴンRの感想文で軽ハイトワゴンのパイオニアがライフステップバンであること、軽ハイトワゴンの市場を確立したのは1993年の初代ワゴンRであることに触れた。

ワゴンRから遅れること4年、1997年にライフが発売された。これはトゥデイのコンポーネントを使って背高スタイルを実現したもので、明らかにワゴンRの発売後から大慌てで開発した事が分かる。そこからわずか1年5ヶ月で新規格へ移行し、1998年に2代目ライフへ進化し、FMCを繰り返しながら、2014年まで生産された。

2011年に思い切ってタントが属するスーパーハイトに投入した新ブランドN BOXが爆発的ヒットを記録。NシリーズとしてN360をモチーフにしたファッショナブルなN ONE(2012年)のあと、ハイトワゴンの上級ダウンサイジング派に向けたN-WGN(2013年)がデビューした。

N BOXに対してヒンジドアを採用した分、他で贅沢をするようなN-WGNだったが個人的には外装デザインがいかにも大きく立派に見せようという意欲が強く、もっとシンプルで良いのになと常々感じていた。自らが発明したハイトワゴンで再びプレゼンスを拡大したいという想いとは裏腹に肩に力が入りすぎた印象もあった。

●ヘリテージで自信を取り戻した新型N-WGN
2019年にFMCを受けたN-WGNは、ホンダのお家芸とも言えるヘリテージ頼りのステップバン・ルックとなった。困ったときのヘリテージ頼みというのはお先真っ暗の自動車業界では今後益々増えていくと思われる。結局、N BOX以外は困ったときのN360、ビートであり、ライフステップバンなのである。



新型は“N for you”をテーマに生活のパートナー、New simpleという方向性で開発が進められたという。見た目はステップバン風だが、迫力を持たせる方向性から脱却し、優しいエクステリアデザインを
採用したことは個人的に歓迎だ。一足早くデビューしたN BOXのコンポーネントを流用し、先代で見られたナトリウム封入バルブのようなN-WGN独自のメカニズムは減ったものの、パッケージングに関わる部分はスライドドアを辞めた分だけ?充実しているのが特徴だ。

例えば、アクセル・ペダルをブレーキ両ペダルを幅方向に外出しして着座姿勢を整え、ステアリング調整機構にはテレスコが備わった。或いはブレーキペダルにリンク機構を追加して足の軌跡とペダルの操作方向のズレを減らすなど地味な部分にも手が入っている。

それどころかドアオープニングにシーム溶接(残念ながらコーナー部は未実施)、高級輸入車の様にルーフモールを廃してレーザー溶接でルーフとサイドストラクチャを接合するなどコスト最優先のメーカーでは考えにくいアイテムが採用されている。これらはホンダの軽がほんの少しだけプレミアムな立ち位置を維持できている秘訣なのだろう。



軽ハイトワゴンとしてのユーティリティも先代からの美点を引き着いでいる。後ずさり量が大きめのバックドアを開ければ驚くほどローディングハイトの低いラゲージが出現し、ショッピングカートの高さに合わせたデッキボードは積み下ろしをし易くするなどホンダらしいこだわりが見られる。

●まとめ
発売数ヶ月前からティーザーサイトでアピールを続けていた2019年、EPBの不具合に起因するトラブルに見舞われることとなる。そこで一旦は問題が解決したとしながらも、後にリコールを発表。出足をくじかれてしまった。

原価の縛りが厳しい軽自動車に先進安全装備を織り込むという難しい開発の背後で、信頼に足るサプライヤーなのか?ブラックボックス化された近年のコンポーネントに対する技術力が問われた様に思う。

下記は、軽ハイトワゴンの販売台数をまとめたものだ。参考扱いのN BOXと比べると、軽ハイトワゴンの凋落がショッキングだが、それでもクラス2位を争う程度には健闘している。



実車と生活を共にして感じたのは、N-WGNがA・Bセグの登録車と戦える実力を持っていると言うことだ。

パッケージング面では、すでに正しさが証明されている背高パッケージがもたらす居住性に加え、デッキボードやシートスライドの恩恵でラゲージの使い勝手が良い。内装の質感もBセグの中間的なグレードと戦うなら十分競争力がある。

走らせた感触はBセグの凡作は十分に食える。市街地メインのセカンドカーという立ち位置なら役割を果たせるし、高速道路の追い越し車線をリードすることさえ可能だ。既にターボエンジンの圧倒的なパワーとCVTのマッチングは良好で十分実用レベルだ。

先進安全装備は新車を検討するなら積極的に選びたい装備であり、あるか否かの差は大きい部分だ。だからこそ、N-WGNは選ばれる理由がある。一方で、その制御は洗練からはほど遠く、手を添えていても変なトルクをかけてくるし、線形に合わせて一度曲がり始めても、操舵しすぎて戻してを繰り返して収まらない事もあった。

N-WGNからは開発者のコダワリが伝わってきた。軽自動車が持つフットワークの軽さと、Bセグ並みには使える空間はまさにクラスレスだが、ここに先進安全装備と活発な走りが加わった。休日の遠出だった半径100km圏内なら十分にこなしてくれる。(私の父は500km以上走らせているが…)

一方で今までミドルクラスのセダンあたりに乗っていた方がN-WGNへダウンサイジングすると満足感は目減りするだろう。それは内装の質感や走りの面だけで無く、真夏のA/Cの効き具合、ちょっとした乗り心地の堅さなどまだまだ改善の余地が残るからだ。

先進安全装備が標準で備わる一方で、防眩ミラーやアジャスタブルシートベルトアンカーなど普通車の当たり前とも言える安全装備が未だに採用されていないのは「軽ですから(テヘペロ)」では済まない領域にN-WGN自体が片足を突っ込んでいることは自覚すべきだ。(普通車も装備を落とし始めているのが気になるが)

価格を考えればN-WGNはかつての小型車レベルの支払総額になる。「もはやハイテク装備満載ですから」といいつつ、普通車に及ばない部分は「軽ですから大目に見て欲しい」という矛盾を持っている。

庶民の足に徹して日常生活圏内の移動で十分な性能を与えつつ、安価に仕上げる軽自動車の方向性は必要だから維持して欲しい。だが、N-WGNの様に軽でちょっと贅沢したい車は、完全に登録車に負けない内容にして軽の可能性を広げて欲しいと思っている。

軽としてみれば星4つ。普通車という目線なら星3つ。



●おまけ
秋にはマイナーチェンジモデルが出る様だ。7月頃に社外テストの新型に遭遇。(写真は妻が撮影)



バッヂ類をカモフラージュしつつもホイールデザインの違いなどはすぐ分かる。運転していたのはモノトーンの服装でまとめたお洒落な若いお兄さんだった。恐らく高い評価スキルを持った専門職の方だったのだろう。

暑い中お疲れ様です。現行の良さを失わないマイナーチェンジにして下さい。
Posted at 2022/08/19 00:17:04 | コメント(0) | クルマレビュー
2022年08月01日 イイね!

2004年式ワゴンR FX感想文

2004年式ワゴンR FX感想文●軽ハイトワゴンのサラブレッド
過去の様々な感想文で書いてきたことだが、軽自動車は仁義なき戦いが繰り広げられているがゆえ、「何でもあり」の商品開発が繰り返されている。今回取り上げるワゴンRは2003年にFMCされた3代目モデルである。

ワゴンRは1994年に初代モデルが発売された軽ハイトワゴンの再発明車だ。当時のアルトやミラの様な2BOXタイプの「軽セダン」よりも背を高くし、乗員をアップライトに座らせることで限られたスペースを有効に活用し、軽の相場観よりも広々としたキャビンを実現した。

過激なターボモデルによるスポーティネス競争がひと段落し、バブル期の空気を色濃く感じさせる4気筒エンジン搭載が始まるなど、再び軽セダンの上級化が進み始めた中で今まで望めなかった広々とした室内空間やモダンなエクステリアデザインを持ったワゴンRは軽自動車業界に吹く新しい風となった。

それまでの主力車アルトを凌ぐ空前の大ヒットを記録して、後にムーヴやライフなどのフォロワーを多数生んで市場を活性化させた功績もあるが、もともと、FFベースの背高パッケージを提案したホンダライフステップバンを現代に乗用車として再提案した功績も大きい。

ステップバンはアップライトに人を座らせて荷室長を確保し、FFを活かして低く使いやすいローディングハイトを実現した。ステップバン商用車としての使い勝手を優先したモデルであったが、ワゴンRは最初から5ナンバーの乗用車として発売され、広々した空間を乗員のために割り付けた点が90年代的な部分だ。私の親は初代ワゴンRを見て「あんなのステップバンが先にやってた!」とおかんむりだった(笑)。親が話していたことを要約すると、ステップバンはお洒落な若者がカスタムを楽しんでいた、というイメージだったとのこと。親が免許を取った頃にちょうど終売したようなタイミングなので、恐らくステップバンが身近にあったのだろう。

商業的に失敗作だったステップバンだが、その進みすぎた思想の良き理解者は90年代の高塚駅の近くに居たらしい。

軽自動車のスペース効率を極限まで上げていくとフルキャブオーバー式の箱バンにたどり着くはずだが、その走りや乗降性を考えると万人が箱バンを受け入れるとは言えないのは現代の目線でも同じだろう。

ワゴンRは新時代の軽自動車として瞬く間にワイドバリエーション化を推し進めながらスズキの軽自動車のメインストリームとなり、順調にモデルチェンジを重ねていった。

前置きが長くなってしまったが、今回はワゴンRは2003年にフルモデルチェンジされた3代目ワゴンRのFXの貴重な5速MT仕様に6日間試乗出来る機会を得た。



オーナーのばりけろさんは、格安MT車を探した結果、秩父の山奥で老夫婦の足だったワゴンRを手に入れて通勤に使用して来たが、手放す日が近づいてきたため、「乗りませんか?」と声をかけて下さったのだ。

この車がデビューした2003年は私はまだ免許を取って数年の学生だった。

その頃、街ゆくワゴンRは生活の足になって白煙を吐いてたり、エアロ、クリアテール、ビレットグリルで着飾ったヤンキー仕様(この層は後にビクスクへ)の他、いち早くアルバイトでマイカーを手に入れた同級生が買っていた綺麗な2代目が沢山走っていた。ネットではワゴソ尺などと表記されていたのが懐かしい。

メッキパーツと丸目ヘッドライトのクラシック仕様で新境地を見いだした軽セダン系と比べれば比類無きユーティリティを誇るハイトワゴンは、当時広く普及したミニバンを感じさせる軽自動車として人気の中心にあった。ダイハツのムーヴは少しやんちゃなカスタム意匠で真っ向勝負を挑んできており、前年の2002年にはP/Fを一新した3代目がデビューして更に上級指向を明確にしていたが、スズキの答えはキープコンセプトであった。

「様々なユーザー、様々な使用シーンに対応した万能型ワゴン」を商品コンセプトとして全体的に先代からの信頼を失わない様に伝統の箱形スタイルを堅持し、居住性(特に後席の快適性)を演出し、機能性を高めている。



技術的にはP/Fを一新。スバルと共同開発したFrサス(L型ロアアーム)を採用してホイールベースは延長されたが、Rrサスは伝統のITL(アイソレーテッドトレーリングリンク)を継続使用するあたりにスズキの厳しい庶民感覚が窺える。

エンジンはNAとターボに大別されるが、従来から設定のある実用域のトルクと燃費のバランスを取ったMターボ、従来通りのPFI(ポート噴射)Sターボに加えてDI(筒内直噴)ターボが追加されて3種類のターボが設定されるという充実ぶりを見せる。

今回試乗したFXは自然吸気のMT車である。運転した感覚は現代の目では時として少々厳しい動力性能であるが、免許取り立ての頃、炎天下に窓を全開にして生ぬるい2Lペットボトルのミネラルウォーターを飲みながら同級生と走らせた軽自動車のようにエンジンの全域を余すところなく駆使して走らせる感覚は私にとってはノスタルジーに浸れた。

3代目ワゴンRからは商品に対するズスキの確固たる自信が伝わってくる様だった。普通車を食う存在としてのハイトワゴンの代名詞でありながら、軽自動車の庶民のゲタとしての本分を忘れていない。



家族4人をアップライトに座らせるから無理なく快適に座れて、シートスライドを活用すれば週末のまとめ買いも可能なほどラゲージも広い。軽トラに匹敵する小回り性を駆使して狭い路地でも臆せず突っ込め、すれ違いも余裕綽々。更にA/Cを使用していても市街地なら普通車と何ら変わりなく走れるのだから日常生活の相棒としての完成度は非常に高いレベルにある。

一方、背高パッケージに非力なNAエンジンを組み合わせているため、山坂道やハイウェイの安定感は余裕は明らかに苦手な事実は隠しきれず、その分だけ普通車の棲み分けは明確であった。

このように軽自動車としてのバランス感覚に秀でたワゴンRであるが、同年デビューしたダイハツタントは更に広々したキャビンにこだわる為にハイトワゴンの相場観を超える全高1700mm超とし、Aピラーの前にA'ピラーを設けることで更にルーフヘッダを乗員から遠ざけた「スーパーハイト」というジャンルを生み出した。

その後、2007年の東京モーターショーにてダイハツは左側にピラーレススライドドアを採用した2代目タントを、スズキは対抗車種として低床フロアに両側スライドドアのパレットを送り出して完全にユーティリティ重視の軽自動車の本流がスーパーハイトに移行した瞬間であった。スーパーハイトの流行後、ハイトワゴンの二大巨頭であるワゴンRもムーヴも少し元気が無い。

ワゴンRが新ジャンルを確立して、それまでのスタンダードを過去のものにした以上、いつかは更に新しいコンセプトに凌駕される日が来ることも仕方の無いことである。スーパーハイトワゴンこそが軽自動車のボリュームゾーンになって久しい2022年、その源流であるタントが世に出た同時期に当時の軽自動車界の覇者であった2003年デビューのワゴンRに試乗できたことは大変意義深い。



オーナーに(色々と)感謝申し上げたい。
Posted at 2022/08/02 00:39:51 | コメント(1) | クルマレビュー

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何シテル?   04/28 10:04
ノイマイヤーと申します。 車に乗せると機嫌が良いと言われる赤ちゃんでした。 親と買い物に行く度にゲーセンでSEGAのアウトランをやらせろと駄々をこねる幼...
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