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ノイマイヤーのブログ一覧

2026年10月02日 イイね!

2026年式CX-5 L感想文:萩原課長は22年ぶりにマツダを救うか?

2026年式CX-5 L感想文:萩原課長は22年ぶりにマツダを救うか?
2026年に登場したCX-5は単なる3代目ではない。
2021年に公表された商品計画を見る限り、
3代目CX-5は当初から存在は約束されていなかった。
しかしマツダはCX-5を全面改良させる決断を下した。
なぜなのか。
その答えを探すうちに、私は1994年の「萩原課長のカペラ」に行き着いた。


●新型CX-5は本来存在しなかったのか

2012年に登場した初代CX-5は魂動デザインとスカイアクティブ技術を全面採用した新世代車であり、マツダの最量販車種へ成長した。当時のマツダはやみくもに数を追うのではなく、全世界の2%の顧客(当時のマツダの欧州シェア)に振り向いてもらえる様なクルマ作りを行い、確実な固定客を獲得する戦略だった。2020年当時のマツダ副社長の藤原氏がベストカー誌のインタビューで「販売台数至上主義ではなく、世界シェア2%の支持を確実に得ることが重要」と語っている。

―そして2026年、いまのマツダを取り巻く状況は悪い。

2018年頃から唐突にプレミアムなブランドを打ち出すようになった。独創的な技術を熱っぽく語る理系的な方針を転換し、化粧品のようにイメージやデザインによって付加価値を与えるような戦略になった。当時のカタログを見ても、自動車好きが気になるような技術的解説がいつの間にかお洒落なイメージ写真に置き換わった。

2019年発売のマツダ3/CX-30はHCCIを実用化したマニアックなスカイアクティブXを投入したものの、価格差の大きさもあり期待ほど市場に浸透しなかった。

また2021年10月にマツダが公表したSUV商品計画では、次期CX-5の導入は示されておらず、CX-5について明記されていたのは現行型の継続的な商品改良だった。この時点ではCX-5の全面改良が対外的な中期計画に組み込まれていなかった可能性がある。

2023年、CX-5代替の受け皿として期待されるCX-60を発売した。直列6気筒E/Gを搭載したFR車であり、私を含めた好事家ウケしそうな要素を持っていたものの、自社開発のトルコンレスATのマナーと突き上げのきついサスセッティングで大きく評判を落としてしまった。せっかく新規で起こした「ラージ」後輪駆動P/Fに直列6気筒ディーゼルE/Gを積んだのに、CX-5への代替は思うように進まず、実用派に向けて「スモール」のCX-30も用意していたが、期待する結果にはならなかった。

さらに、3列SUVのCX-8も「ラージ」のCX-80に移行しようとしたが、いずれも販売が好調とは言えない状況が続いており、プレミアムの本丸だったラージSUV群はマツダの経営を揺るがし始めた。

CX-5/8の顧客が求めていたのはプレミアムそのものではなく、実用性と技術・デザインの両立だったのだろう。少なくとも2021年時点では次期CX-5は商品計画に明示されず、今回の全面改良は事業環境や市場の反応を踏まえた判断だったと私は見ている。

言わば2026年に発売された新型CX-5は「令和最新版の萩原課長」だ。萩原課長というのは、1994年にデビューしたカペラの広告キャラクターのことだ。バブル期の5チャンネル政策や税制改定によるミドルサイズセダン大型化に伴って生まれた「クロノス兄弟」の商業的失敗により、マツダが急造した5ナンバーサイズのセダンが「萩原課長のカペラ」だった。



萩原課長のカペラは5ナンバー枠に収めながらも、クロノス同等の余裕ある室内空間を確保していた。小型枠でも立派に見えるように「大きく見せる」デザイン手法は当時の私ですら非常に古臭く映った。わずか3年という短期間しか販売されず、後続の「ひも人間カペラ」に代を譲ったが、萩原課長のカペラは、あのカーグラフィック誌も「久々のめっけもん」と評するほど良い意味で力の抜けた佳作であり、1996年に初代デミオが爆発的ヒットをするまでの間、影で苦しい台所事情のマツダを支えたのである。

・・・新型CX-5に話を戻そう。新型CX-5は開発コンセプト「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート」のもと、顧客一人ひとりの「したい」を叶える5つ星という観点をセールスポイントにすべく開発された。



具体的には歴代の好評点「魂動デザイン」と「人馬一体の走り」をさらに磨き上げるとともに、ホイールベースを115mmも延長して後席・荷室スペースを拡大した。また、現代の車らしくコネクテッド機能はもちろんのことインフォテインメントも充実、最大15.6インチの大型センターディスプレイおよびマツダ初のGoogle搭載のディスプレイオーディオを装備。最新の先進安全技術(ADAS)やドライバー異常時対応システムを進化させた。

実際に乗ってみると、SUVらしい視界の良さと水平基調で広々感が感じられるだけでなく実際に広い。普段、狭苦しいデミオの後席でいがみ合う子供達も大喜びだった。

一方で、2.5LのMハイブリッド×6ATの走りの味・質感には疑問符がついた。マツダらしいハイテク感はスカイアクティブZ(フルハイブリッド)を待つほかないという感じだった。

さらに従来、センス良く高見えしていた内外装CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)は、新型では厳しい台所事情を想像させた。

しかしながら、車両本体価格は税込330万円からと良心的なので多少ガッカリしたとて、それが失望や怒りに繋がらない点は評価できる。こうした価格設定もマツダの「顧客を逃がしたくない」という焦りが伝わってくるようだ。

新型CX-5は5月21日の発売以降、1ヶ月で10000台を突破し、月販目標台数2000台の5倍となったことで販売店も一息つくことができたようだ。上位グレード「L」が65%を占め、新規顧客比率も47%に達している。マツダのシェア向上に寄与するという意味で好ましいが、マツダが新型CX-5で囲い込みたい既存ユーザー達はもしかするとスカイアクティブZ(フルHEV)待ちなのかも知れない。実は先代CX-5は発売1ヶ月で16639台の受注(月販目標の6.9倍)を得ており、勢いだけでは先代に負けている。これも私が、ファンはスカイZを待っているのでは無いかと考えた理由の一つだ。

マツダもディーゼルに対する期待は知っている。CX-5にディーゼルがどうしても欲しい顧客のために
新型発売後しばらく旧型の受注を受け付けるような配慮まで見せた。現状の好調はディーゼルまでは不要という人たちがCX-5に魅力を感じた結果だと考えられるが、長期的な成功を考えると二の矢(スカイZ)を成功させることが必要だと私は考える。



2026年夏に広島市へ遊びに行ったのだが、広島電鉄乗り場前にCX-5が展示されていたのを目撃した。「広島から走る歓びを世界へ」という言葉がCX-5の成功が広島圏の地域経済にとって重大な関心事であろうことを暗示している。

先代までのCX-5が好きだった人にも新型CX-5が刺さるかどうかはどちらとも言えない。これまでドライに燃費とリセールだけで車を選べないマイノリティ達がCX-5を支持してきた訳だが、新型では質感や独創性が薄れたことで「マツダらしさが足りない」と嘆く意見が出てもおかしくない。しかし、毎日一緒に暮らすからこそ「もうちょっと実用性が」という現実を知ったユーザーには、「そう、これこれ」と気づける愚直な改良もあり、本当にキモとなる部分は安易にコストダウンしていない点は高く評価されるべきだ。

総合評価としては現状★3。苦しい台所事情の中でもマツダらしい誠実さを感じるが、技術的なフックが欲しい。新型CX-5は初代のスカイアクティブDのように市場を驚かせる技術的飛躍もない。しかし、顧客が何を求めているのかを見つめ直したという意味では、むしろ近年のマツダで最も重要な一台かもしれない。令和版萩原課長の最終評価は2027年に登場するスカイアクティブZ搭載車が成功するかどうかによって決まるだろう。

Posted at 2026/10/02 12:39:59 | コメント(1) | クルマレビュー
2026年09月11日 イイね!

2025年式フェアレディZバージョンST感想文:日産の意地の結晶

2025年式フェアレディZバージョンST感想文:日産の意地の結晶RZ34は決して最新鋭のスポーツカーではない。 旧いP/Fゆえ、どこか時代を感じさせる装備や走り。一方で、歴代Zへのオマージュと豪快なFRスポーツという本質が見事に噛み合っている。予算不足の産物だったとしても、それをヘリテージという価値に昇華し、れっきとしたフェアレディZとして成立させてしまった。その姿はまるで、逆風の中でもZを絶やさなかった日産の意地そのものだった。

●プアマンズポルシェという歴史



北米日産社長だったミスターKこと片山豊氏はポルシェ911の性能を半額で提供できれば売れる、と考えた。1970年当時のポルシェ911は空冷水平対向6気筒2.2Lで125ps~180psを発揮、対して対米仕様のダットサン240Zは直列6気筒2.4Lで150psを発揮し、3速AT(ニッサンマチック)や扱いやすい実用型のE/G、豊富なアクセサリーによってたちまち消費者のハートを掴んだ。高性能で洗練されていても、どこか繊細で扱いが難しい欧州産本格スポーツカーの世界を安価かつイージーな世界観で再現して見せたダットサン240Zの作戦勝ちだった。

以後、フェアレディZは北米市場における圧倒的な支持を背景に世代を重ねてきた。日本でも最高速度180km/h規制の判断にフェアレディZがあった(諸説あり)だとか、国内280ps規制に初めて達した乗用車になるなど日本を代表するスポーツカーとしての役割も果たしてきた。

ポルシェ911は世界を代表するスポーツカーの代名詞となり、RRを堅持しながら現代まで切れ目無く続いているなかで、2000年、排ガス規制強化によりフェアレディZは生産を中止した経験がある。
バブル崩壊後の業績不振で日産自体が傾く中で次世代モデルの開発が難しかったことは想像に難くない。しかし2002年には楽器ケースの中の清掃員・・・いや、カルロス・ゴーン社長がVQ35DEを積んだZカーを僅か3万ドル以下という価格で復活させた。

2008年にはキープコンセプトでZ34型にフルモデルチェンジを行う。ホイールベースを縮めて運動性を改善した上でVQ37VHRを積み、世界初のシンクロレブコントロールが装備されたことも話題になった。しかし、世界同時不況というご時世だったのでマスコミによる「こんな不景気な時代にスポーツカー?」とお決まりのフレーズを目にしたことを今でも覚えている。当時の日産自動車はEVシフトを謳い、世界初の量産電気自動車リーフを発売するも、海外のBEVとの競争に敗れ、いつしか自動運転のリーディングカンパニーを目指す、としながらも圧倒的優位性も無い厳しい状況下にあった。

フェアレディZは社内の権力闘争などのゴタゴタの中で放置されたままだった。ところが2020年5月の日産自動車の2020-2023年度事業構造改革発表記者会見のエンディングに放映した動画の中に次期Zのシルエットが流され、次期の存在が明確に宣言された。同年9月にはプロトタイプが公開され、二度目の復活を遂げる新しいZに対してファン達の賛否両論が飛び交った。

●日産の意地が形になったRZ34型

若干の空白期間を経た2022年、ワールドプレミアになったのが現行型と言われるRZ34型である。Z35を名乗らないことでフルモデルチェンジではなく、マイナーチェンジであるとして認証にかかる経費の節約を行うという懐事情を多分に意識したモデルチェンジを行っている。

開発コンセプトは「Zファンのための歴代最高のZ 一目で心惹かれいつまでも愛し続けられる」という。日産が本当に守るべきファンの存在を大きく意識したコンセプトとなった。



先代までのモダンなデザインからヘリテージを意識したクラシカルなプロポーションに変革を遂げた。世界中の自動車メーカーで往年の名車を現代風にアレンジしたような「リクリエーションカー」が発売されてきた。フェアレディZがこの手の「リクリエーションカー」としてお色直しができるのは愛された歴史があるからこそである。経営状況が好ましくない中でもフェアレディZを新しくすることは対外的なアピールになる。内外装はZらしさを感じさせる要素が織り込まれフェアレディZを愛する人を喜ばせるアイテムばかりである。

P/FはZ33から変わっていないとは言えZ34でホイールベース短縮を行ったことでスポーティな諸元を得ている。RZ34ではオーバーハングを伸ばしてロングノーズでクラシカルなプロポーションとなった。オーナーハング縮小こそ運動性能を向上させるための正しい方向でありながら、リクリエーションカーとして求められるのはS30を感じられるような佇まいなのである。実際に並べてしまうとカウルが高いとか背が高いとか当時と全く同じではないが、「あのフェアレディZの現代版」という感じは実現出来たのではないか。

メカニズム的には先代のキャリーオーバーである事は事実だ。その中でも大きく変わったのはE/Gである。先代のV6 3.7L自然吸気から、V6 3Lターボに置き換わった。これは2016年に開発されたダウンサイジングE/Gであり、405psという高出力を誇る。



元ブランドアンバサダー田村氏は「GT-Rがモビルスーツなら、フェアレディZはダンスパートナー。操作を間違えるとそれを反応で返す。それこそが操る愉しさを残している。」と語っている。制御デバイスを切ってしまえば、簡単に後輪が滑ってスピンしてしまう。アクセル加減やステアリング操作も難しいが、それをダンスの難しさに例えている。

田村氏曰く、タイヤ一輪で受けられるトラクションは150ps相当だと表現している。GT-Rなら4WDなので600psまで受け止められるが、フェアレディZはFRなので本来は300psまでだ。そこに405psを与えることでドライバーに良い緊張感をもたらすという。本格スポーツカーが持つゾクゾクするような「ヤバさ」を大切にしている点がRZ34の特徴なのである。

フェアレディZは2022年1月、東京オートサロンに展示され、4月に価格公表され6月に発売予定だったのだが延期となる。8月1日に発売開始されるも、実は7月31日に受注停止となっており、発売した瞬間に発注できない車になった。これは予約が予想を超える5000~6000台分も受注した為とされる。それだけ日本国内でフェアレディZを心待ちにしていたファン層が居た証拠であり、BEVシフトが叫ばれる中で「最後の内燃機関スポーツカーになるかも」という危機感が購買行動に繋がった可能性もある。

この後、全グレードで受注が再開されて正常化したのは2025年6月。おかげで2026年の今、街でフェアレディZを見かけても4年前の車とは思えない新鮮さがある。(厭み)

それにしても日産という会社はヘリテージ商法をやらせたら日本国内指折りの上手さである。ブランド力をしっかりマネジメントする組織なり仕組みが備わっているのではないだろうか。今のところ、グローバルの販売も右肩上がりである。

フェアレディZは日産を取り巻く環境が厳しい中でよくぞ市販化できた!という意味では素晴らしい歴史に残る1台になった。しかし、出自からして北米を主眼に置いたクルマ作りであり、日本の道路では大きさと重さを感じる。本音ではGR86サイズのシルビア級のモデルが日本には必要だが今の日産にそれを望むのも酷な話だ。

蛇足だが、来年以降に発売されるスカイラインも、間違いなくヘリテージ商法で来るだろう。さらに北米でのJDMブームの波にうまく乗れば同クラスのレクサスISに対しても一矢報いるチャンスがあるかも知れない。フェアレディZに続いてファンを納得させる意志をスカイラインに繋げて欲しい。



一度ヘリテージデザインをやったRZ34の次はどういったフェアレディZを作るのか。恐らくRZ34も10年は売られる長寿モデルになるだろうから、そこはしっかり育てていただくとして、その次に私の世代が「これぞフェアレディZ」と受け入れられるようなスポーツカーを残してくれるのかということも興味深い。

総評は★4。ポルシェ911に劣る部分はあるが、911の1/3の価格で売られていることを考えればそれは許されて然るべきだろう。
Posted at 2026/09/12 00:06:36 | コメント(4) | クルマレビュー
2026年08月28日 イイね!

2018年式ポルシェ911カレラT ミニ感想文:結局は実用性

2018年式ポルシェ911カレラT ミニ感想文:結局は実用性●結局は実用性

元・出向先の同僚だった友人のカーガイが、ライフステージの変化に伴い広いマンションに引っ越すことになった。愛車であるV8ヴァンテージN430は機械式駐車場に収まらず、あえなく買換えの憂き目に遭ってしまった。機械式駐車場に収まるギリギリを狙って彼が手に入れたのが今回取上げる試乗車である。



多くの人が知っているようにポルシェはドイツが誇る世界的なスポーツカーブランドの一つだ。その中でも911はブランドの大黒柱である。過去にはライトなFR系の924、V8を積んだ928もあった。しかし1964年の911以後はいつの時代もポルシェと言えば911という絶対的な立ち位置を維持し続けた。

いまのポルシェのラインナップではSUV系がセールスの中で大きな割合を占めている。販売台数が圧倒的なマカンを筆頭にカイエンなど実用性のあるSUVで利益を出しながらも、定食メニューとして必ず911がその中心に位置し、安定したセールスを維持している。全世界で年間4.2万台規模(3500台/月)なので年間240日稼働、2直体制だとすると、直当たり875台もの911がラインを流れていることになる。1000万円以上する高級スポーツカーの生産台数としてみれば多いと言えるだろう。



そもそも911はフォルクスワーゲンのコンポーネントを使ったスポーツカー356の後継として生まれた。当然のように先代と同じRRを踏襲し、水平対向E/Gや4輪独立懸架という基本構成も丸ごと引き継いだ。356に対しては、空冷水平対向6気筒SOHCを搭載している点が大きく異なる。当時の定番レイアウトはFRだが、RRは大衆車で広く用いられる採用例の多いレイアウトだった。RRだからこそ後席を設けつつも、駆動輪にトラクションがかかり構造もシンプルだった。あの時代は実績のあるRRを採用することに違和感は無かったのである。



守り続けるものがありながら、それで大きな転機があるとすれば、トーションバーからコイル式サスペンションになった1989年や、空冷を捨てて水冷になった1997年、PDKが採用された2008年、などがあるが、一貫して変わらないものはRRの2+2レイアウトのスポーツモデルである点、さらにファストバックの外観、内装の5連メーターなどである。

パフォーマンスに関わるような部分は排気量アップやターボの採用など積極的に行ってきたし、リバースステアの原因たるRrグリップ喪失を防ぐためにグリップ力の高いワイドなタイヤを履かせる、後輪操舵などの採用により本来危険な高出力RRという基本構成のままで62年も継続して来られた。

このように伝統を大切にする姿勢はプレミアムブランドには重要である。いつの時代にポルシェ911を買ったとしても、あらゆる世代が911を知っており、きちんと「すごい車を買った」と周囲に分からせることも高額商品には必要な要素である。高級ブランドが長く続くためには何が必要なのか、それは「継続」であると私は思う。

例えば自動車評論家の福野礼一郎氏は911に関して好意的とは言えないコメントを残している。重量配分がRr寄りのために、初期アンダーで最後はオーバーステアに転じるリバースステア特性を招くRRという不利なレイアウトを使い続け、同じブランド内でミッドシップスポーツカーを持っていてもヒエラルキー上、決して逆転しないように調整している状態はピュアなスポーツカーとは言え無い、という趣旨だったように思う。

たしかに事実を積上げていけば911は、動力性能に全ての技術を捧げるようなピュアさは無いのかも知れない。しかしながら、911は長年に亘り継続して売れ行きを維持、もしくは増大させている。物理的特性の最適解が他にあるとしても、商品として正しいのが911である。

ここでいう商品としての正しさとは買った人を満足させることである。プレミアムカーであるポルシェ911は勿論高い。試乗車は2018年式のカレラTで新車価格は1432万円、そこに複数のオプションが搭載されている。しかし、それだけの対価を支払わせるだけの「満足」を実現しようとする努力は確かにある。一流のパフォーマンスに加えて実用性が両立していることが911らしい価値だ。

少し運転させてもらったが、スポーツカーらしい加速や気持ちよい旋回が可能だった。実際には911よりも動力性能や操縦性が高いスポーツカーは存在するのだが、911ほど実用性や価格に見合った質感表現とのバランスを上手く取ったクルマは多くない。



ところでカレラTのTとはツーリングのTであり、911の中では軽量化版ということになる。一番古いカレラTは1968年発売で、912に変わる廉価版扱いだったという。出力を落とすだけでなく、トリムレベルが下がっていたが、実はレース仕様への改造を想定した変更内容が多く含まれている。レースのために取り外してしまう部品の仕様を下げ、変更できないシリンダヘッドは高性能版911Sと同じ大径バルブ仕様のE/Gが奢られるなどプライベーター向けの粋な計らいと、廉価仕様を求めるニーズを上手くに結びつけた。

試乗車である2018年式カレラTは軽量化という要素を残しつつ、基本的に911カレラよりも上級グレード扱いとなっている。具体的には、後席を廃止し(但しOPT追加可能)、Rrウィンドゥをゲージダウン、遮音材削減によって20kgの軽量化を行った。走りのカレラTという大義名分と伝統をここでもしっかり守っている。

ポルシェ911カレラTには同乗したとしてもドライバーとしても快適なクーペであることは間違いなかった。つまり、0-100km/h加速が4.2秒、最高速度293km/hという高性能を誇るスポーツカーでありながら、踏切やスピードブレーカーの段差に怯えることなく乗れて、カップルの買い物の荷物程度は充分に載せられ、助手席のゲストから乗り心地が悪いだとか五月蝿いという苦情が来ることも無い。(オーナー曰くFrスパッツが車高センサーで検知されて、車検証上の寸法は満たしているのに実際には機械式駐車場に入れない事もあるらしいが・・・)

実際の911オーナーは三度の飯よりも走ることを愛するカーマニアだけではない。充分な収入があり、お洒落で威張りの効くパーソナルカーとして選ばれるケースも少なくないはずだ。どうして911が1963年以来、スポーツカーの一流ブランドとして第一線に立ち続けられたのかと言えば、伝統を守り、バランスのいい車だったからである。



出張先で輸入車が多い東京都23区内を歩いていても911を見かける機会は私の居住地域よりも多い。そしてステアリングを握る人はいかにも車好きのオジサンだけでなく、お洒落な女性がサラリと乗っているケースが多かった。この人達は必ずしも911の伝統にこだわっていないのかも知れないが、それでも伝統を守ることで、いつの時代にも一目置かれ、車好きからのリスペクトも集められる。

911は世界で年間4万台規模で安定して売れているが、スポーツカーなのだから、速ささえ追求しておけばいいという考え方では幅広く売れる定番になれず、伝統を大切に守らなければ幅広い層からのリスペクトは集まらない。お客さんが欲しがるものを提供(伝統+実用性)する事も商い(あきない)として何ら間違っていない。これまで乗せてもらったカーガイの愛車史上、最も快適で実用性がありながら、いいパフォーマンスを見せてくれた一台だった。確かにこれなら助手席に大切な人を乗せられる。

カーガイ曰く、(不満を強いて言うなら)未だにアストンマーティンが恋しい。また駐車場が広い家に引っ越せるなら・・・と語る彼はやっぱりトータルバランスに優れた車よりエッジの立った車に惹かれると言うことなのかも知れない。

何はともあれ彼のライフステージがさらに変わらない限り、当分911はカーガイの手元で活躍するだろう。



忙しい中、時間を作って出張先で待ち合わせしてくれたカーガイに感謝。
Posted at 2026/08/29 00:00:39 | コメント(0) | クルマレビュー
2026年08月19日 イイね!

愛車と出会って10年!

愛車と出会って10年!8月19日で愛車と出会って10年になります!
この1年の愛車との思い出を振り返ります!

■この1年でこんなパーツを付けました!
ワイパーブレードやストップランプ球も変えてますが、実はストックしていた外装パーツを取り付けたりもしました!


■この1年でこんな整備をしました!
昨年、密かにクリアが飛んだり、退色してきたフード、フェンダー以外の外板再塗装を実施。極力バラしてから持ち込んで塗ってもらいました。そのタイミングで様々な部品を取り換え、リフレッシュしました。また、車検やオイル漏れやベルト鳴き対応などの各種整備も行いました!ほとんど乗れてなかったのはリフレッシュのため。詳細は後日!


■愛車のイイね!数(2026年08月17日時点)
370イイね!

■これからいじりたいところは・・・
めっちゃ維持りたいですね。

エンブレム補修などノーマル派と言えどもやりたいメニューは尽きません。純正派らしくパリッとしたノーマル車を目指し続けます。


■愛車に一言
あっという間の10年ですが、あのタイミングでRAV4を手に入れていなければ一生RAV4には乗れなかったかも知れません。ちょうど最後のチャンスだったんじゃないかと勝手に確信しています。

RAV4はカローラやプログレにはないものを持っているので、10年乗っても調子は右肩上がりですし、まだまだ飽きません。これからも子供達を乗せてキビキビ走って欲しいです。車齢30年なのでイベント参加もできたらいいな。

>>愛車プロフィールはこちら
Posted at 2026/08/19 12:40:13 | コメント(0) | トラックバック(0) | RAV4
2026年07月09日 イイね!

2025年式RAV4 Adventure感想文(第二版)

2025年式RAV4 Adventure感想文(第二版)諸般の事情により画像の見直しを実施した改訂版の再発行となった

遠ざかったのはRAV4なのか?我々なのか?
新型RAV4はヒット作ゆえの“合理的すぎる正常進化”であり、革新より維持を選んだ。その結果、ユーザーとの距離が生まれつつあると感じた。

日本のライトクロカンの草分け的存在で世界的なコンパクト(?)SUVとなったRAV4が2025年12月に全面改良された。大ヒットした先代は従来までのシティ派SUVからアウトドアゴリゴリのオフローダー風のポジションへ。おりからのアウトドアブームに波に乗ることに成功し今の地位を築いた。

6代目となる新型は先代のキープコンセプトである。ハンマーヘッドなる共通化した顔つきと先代より長くなったルーフとワゴンライクに切り立ったバックドアによって新型だと分かる。

軸距は先代と同じでP/Fも先代の改良レベルゆえボディサイズも大きく変わらない。全長4600mm×全幅1860mm×全高1690mmという3サイズは国際的にはスモールSUVでも日本国内では大柄な国際サイズで狭隘な旧い住宅街では難儀する事だろう。室内空間も大きく変わらず、従ってステアリング位置が中央へずれているなど先代の欠点も引き継がれている。



E/Gは先代までの2LガソリンE/Gは輸出向けのみとなり、国内では2.5LのHEVとPHEVのみとなった。動力性能や燃費性能は既に高いレベルにあり、先代で大変気になった低レベルなNV性能(同クラスで最も賑やか)は6年分の進化だけはさせてあるが、誇れるレベルには達していない。グレード間格差もあり、ZとAdventureでは後者の方が騒がしく、恐らくタイヤの差だけではない仕様差もありそうだ。

一方でハイブリッドのパイオニアとしてのプライドが感じられる燃費性能は動力性能を上げているのに未だにクラストップレベルを維持しているのは偉大だ。また初代から守られてきた操縦性の良さもあってRAV4らしさも残っている。

残念なのは先代との比較で内装の質感はグレードダウンし、恐らくその余力は新OS「アリーン」に使われているのだろう。車が高度に情報化していく中で、各装備との連携や多くの情報を処理するためにOSの刷新が必要だったと思われるが、その頭出しをRAV4で行うというあたりがチャレンジングだ。

アリーンによって運転支援機能のレベルアップが図れ、今後のOTA(Over The Air)によるソフトウェアアップデートなどのメリットがあるが、コネクテッドカーのメリットはユーザーよりもビッグデータを得るメーカー側にメリットが多い。初期のコネクテッドカーの様に車とメールができるとか意味不明な機能ではなく運転支援というメリットがあるだけ多少はマシになっていると言える。

日本仕様のグレードラインナップは最上級のZとアドベンチャーの二種類でどちらも2.5THSのE-FOUR一本である。海外仕様にはあるガソリン車がカタログ落ちしたことで税込み開始価格が450万円とびっくりするレベルになった。

旧アドベンチャーTHS(433.2万円)から比べれば17万円アップだが、旧ガソリンFF車(323.7万円)からは約125万円もいままでRAV4を支えてきた一般的購買層には敷居が高くなっている。彼らに現金で買わせない、残クレで契約させるというつもりなら都合がいい設定だとは思う。

人気のあるRAV4を手堅くFMCさせたことでしばらくはこのクラスのベンチマークとして競合と有利な戦いを繰り広げるはずだ。今後はハリアーやレクサスNXのFMCが控えているのだろうがRAV4がこの価格帯だとハリアーは500万円台スタートになりクラウンSUV系の領域に踏み込んでしまう事も懸念される。そろそろSUVが増えすぎて市場が飽和してくるのではないか。

RAV4と競合する国産ブランドはRAV4を徹底的に調査したうえで対策を練るのだろう。NVに力を入れる日産、ガソリン車がある事で廉価で4WD性能が高いスバルなどは戦いやすいが、ホンダは既に4年前に発売されたCR-Vをタイからの輸入に頼りながら、割高な価格で闘わざるを得ず、厳しい。また昨今のラージ系SUVの商業的失敗によって自信を無くしたのか堅実なマイルドハイブリッドを積んでプライスリーダーとなったマツダは質感低下の指摘を受けないか懸念がある。さすが激戦区のセグメントゆえ、このクラスを検討するなら各社の個性が際立って選び甲斐がありそうだ。

RAV4は王者らしく、更新済の既存プラットフォームを上手に使い将来のSDV(Software Defined Vehicle)を意識した車内OSの一新などに投資を行いつつ、いわゆる自動車としての基本性能は据え置き、もしくは簡素化されている。それは致命的な欠点があって対策せざるを得ないとか、競合との戦い方を変えるためキャラ変に投資を行うといった必要が無いヒット作らしいフルモデルチェンジである。元よりトヨタが培ってきた信頼性とリセールバリュを維持し、出力を向上させつつも燃費は向上している。

「これで売れているんだから別に良いだろ!」という奢りを感じないわけではないが、非常に作り手にとって合理的なフルモデルチェンジとなった。致命的な欠点は無く、燃費もいいが総合的に内容を考えればお買い得とも言えない。もちろん、RAV4の楽しいキャラクターを元に足りないところをカスタムするなら良いのだが、それにしても価格の割高感は拭えず、もっと安く手に入れたい。

人に相談されたと仮定して新型RAV4のベストバイは一番安いAdventure。こだわり派には敢えてPHEVのZを薦める。しかし、クルマに求めるものが明確なら選択肢が豊富なこのクラスの競合車をしっかり確かめてから決めた方が良い。



次こそは大きな変革があるのでは無いかと大胆に予想したい。遠ざかったのはRAV4、我々のどちらなのか──その答えは、次の大変革(2030年代?)で明らかになると私は考える。
Posted at 2026/07/10 00:02:41 | コメント(1) | クルマレビュー

プロフィール

「トヨタ博物館で走行披露見てきました。初代カローラが走ってるのはほとんど見たことがありませんでしたのでめちゃくちゃ良かった。この後のトレノは気持ちよくなれるいい匂いしてました。」
何シテル?   10/03 16:16
ノイマイヤーと申します。 車に乗せると機嫌が良いと言われる赤ちゃんでした。 親と買い物に行く度にゲーセンでSEGAのアウトランをやらせろと駄々をこねる幼...
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