突然だがDS3スポーツシックの燃費は公称値で13.7km/L。
ガソリンタンクの公称値は65L。
掛け算すると890.5kmということになり、
比較的長い足を持つと言える。
自動車のガソリンタンクの容量はどのように決まるか。
あまり具体的な性能目標を与えられることは少ない。
少し有名な例だと、1970年発売の2代目カローラの燃料タンクは45L。
1969年に東名高速道路が全線開通し、
東京から西宮まで高速道路で一気に走れるようになった。
移動中の給油は煩わしいものだし、SAで給油すると燃料単価が高い。
そこでいっその事無給湯で走れる燃費性能を訴求しようとしたそうだ。
東京~西宮間は540km、
当時のカローラの燃費が13.5km/Lだったとの事で40Lの燃料が必要になる。
ガス欠になったら大変なので5L余裕を見て45Lタンクが与えられたという。
現代でも概ね500~600km程度は走れるようなタンク容量になっているはずだ。
(つまり燃費が悪い大型車の燃料タンクがでかいのは航続距離を稼ぐため)
事情が異なるのは低燃費モデルで、一般仕様と燃費仕様では
燃料タンクの容量が異なる場合がある。
タンク容量を削減し、軽量化を目的とする場合だ。
レギュラーガソリンの比重は
比重: (15℃の場合)
レギュラーガソリン = 0.715 → 714.3g/L
・・・との事で仮に10L容量を減らせば7.13kgも軽量化できるのだ。
最近の例ではモデルライフ途中で追加された
ノア/ヴォクシーのエアロHV仕様は
標準ボデーのHV仕様と比べて燃料タンク容量が減らされている。(55L→50L)
下記は車両重量をまとめたものだ。
ノアG(7人乗):1570kg
ノアSi(7人乗):1600kg(G比+30kg)
ノアHV_G:1620kg(コンベ比+50kg)
ノアHV_Si:1620kg(コンベ比+20kg)
コンベGに対して大径ホイールを履き、
エアロパーツをつけたSiは
公称値で30kg質量が重くなる事が分かる。
また、コンベ→HVで比較すると、
GとSiではHV化に伴う重量増が控え目になっている。
この理由は燃費測定の際に用いる等価慣性重量の
ランクというものがあり、このランク如何で
燃費測定の条件の厳しさが変わってしまうというルールが関係している。
試験車両重量は車重+110kgなので、下記の通りである。
ノアG(7人乗):1680kg
ノアSi(7人乗):1710kg
ノアHV_G:1730kg
ノアHV_Si:1730kg
試験車両重量(kg) / 等価慣性重量(kg)
1,651 ~ 1,760 / 1,810
1,761 ~ 1,870 / 1,930
つまりノアは全グレードで等価慣性重量1810kgランクに収まる。
この等価慣性重量が大きいほど燃費試験結果は悪い結果が出やすい。
デビュー直後のノアには待望のHVが追加されたものの、
エアロ仕様が選べない点は市場で不評を得た。
もし、素直にベース+50kgでHV仕様のエアロを開発したとしても
試験車両重量が1760kgと等価慣性重量ランクぎりぎりになってしまう。
しかも、OPでリアエアコンを選ぶと10kg増になりランクが上がってしまう。
回避する為にはリアエアコンが選べないように仕様制約をかけるのも手だが、
商品性の観点からHV_Xが選べてHV_Siが仕様で劣るような事はできない。
かといって23.8km/Lというライバルに対して圧倒的に有利な燃費性能を
スポイルすることも出来ないし、そのために適合(ECUのセッティングを追加)
する工数もバカにならないだろう。
それでもライバルと比べてフラッグシップエンジン(HV)に
販売増が見込めるエアログレードが選べない状況を変えるため、
きわめて稀なケースだが、HV_Siの為に50L燃料タンクを新設、
更に16インチながら鍛造ホイールという軽量化アイテムを用いることで
20kgの軽量化を実施、等価慣性重量1810kgランクに留めることができた。
いわゆるエンスー筋が見向きもしないであろうモデルではあるが、
ユーザーの声がメーカーを動かした一例である。
他にも旧モデルのアルト(30L)とアルト・エコ(20L)は燃料タンクの容量が異なる。
少しでも軽くしたいという涙ぐましい燃費競争のための軽量化と
給油頻度や航続距離という利便性とのせめぎ合いがある。
かつて私も28Lタンクのヴィヴィオを所有していたが、
当時は遠乗りすれば500km走破もできる。
満タンにしたときにも3000円以内で給油できてお財布に優しい。
と結構満足していた。
満タンにする際、満タン容量が大きいと心理的に痛税感(?)が出てしまう。
当時、SSでアルバイトしていたので満タンで100L近く給油できる
ヘビーデューティクロカンのレシートを見て「ひえぇ」と恐れおののいていた。
話題をシトロエンDS3に戻すと、DS3は大き目の燃料タンクを持っており、
ズボラかつ長距離主体の自分にはピッタリだ。
自分が向かう先は大抵奈良か埼玉だったので目的地で給油すれば、
航続距離の限界を迎えることは無く、長距離でも精神的安心感がある。
昨年、仙台に行ったときも、丸一日高速道路を走り続けても余裕があった。
そんな訳で夏休みの自由研究として我がDS3は
1000km走りきれるのかを確かめるべく旅に出ることにした。
昼前に愛知を出発。伊勢湾岸道-東海環状道-中央道へ。
美しい山々を見ながら走ることが出来る中央道は個人的に好きな道路だ。
ギアは6速に入れておけば十分で、
時々追い越しの際に5速に落とすくらいのズボラなシフトで十分に走る。
1600ccという排気量を考えると確実に1クラス上の動力性能を持っている。
新車の頃と比較すると、ターボラグを感じる様になってきた。
6万km付近でE/Gチェックランプ点灯が頻発し、
吸気ポート清掃という比較的大きな保証修理を行った直後、
高速道路の合流で驚くほどの差を感じることができた。
10万kmを超えて再びアイドリングが不安定になり、
少しだけアクセルを開けた時にE/Gが大きく揺れる挙動を見せて
違和感を感じ、ディーラーにて今度はケミカルにてクリーニングを行ったそうだが、
前回ほどの感動を感じることは無かった。
そんな状況なので、全開加速を試みても、かつてのような高揚感は
中々得られない状況になっているが、国産の1500cc,1600ccクラスの
ハッチバックよりは動力性能に余裕があると感じる。
コーナーが連続する中央道だが、道が荒れていても
角のあるショックが乗員に伝わる事は無い点が優れている。
サスは新車時と比べるとヘタりを感じるが、それでも堅めで
「フランス車=ネコ足」という幻想を軽く打ち破ってくれる。
MINIのゴーカートフィールには及ばないが、フランス車らしからぬ
堅めのサスセッティングである一方、シートのクッションが分厚く、
フロアの振動をお尻に伝えない点においてピカ一の乗り心地を誇る。
一方で、肩のサポートは不足気味でコーナリング時に上体が大きく
揺さぶられる点からもDS3スポーツシックは速さを競うガチスポーツではなく、
動力性能の優秀さを余裕に振り分けた大人っぽい性格であるように感じる、
そのまま長野道へ分岐し、
DS3購入直後にフラッとドライブに出かけた事のある新潟方面へ。
途中、土産を購入し妙高高原へ。
妙高SAは愛知に比べれば天国のように涼しい。
芝生の駐車場があり、もう少し涼しければ一日中
ここで過ごせそうな爽やかなSAであった。
前日に太平洋を見た私は、翌日に日本海を見る事になった。
北陸道では初めてふぬわ体験したロングストレートが懐かしい。
友人が当時所有していた初代アウディTTは比較的軽がると
異次元へと誘ってくれたが、DS3は150ps程度で高回転でトルクを絞る
チューニングになっていたために真の高速域では苦しい。
また、ホイールベースが短いこともあり手に汗握る高速体験だった。
今回はクルーズコントロールを使ってのんびりと大人のクルージングを楽しんだ。
フランス車はクルコンの設定が幅広く、私が所有するクルマでは
初めてのクルコンつきであったが、日本車では叶わない自由な速度設定も相まって
非常に活用する装備である。
日本車ではクルコンが100km/hピッタリまでしか使うことができず、
実世界の高速道路では使い難い装備になっているが、
もともと国からの指導でその様な設定になっていると解釈されてきた。
ところが、改めて確認すると、国は一転して
「その様な指導はしていない。」、、、と掌を返してきたのは、
高速道路の制限速度を段階的に
引き上げようという流れを意識したものだろうか。
今後のニューモデルのクルコンは要チェックだ。
夕方になりあたりが薄暗くなってきた。
帰路は東海北陸道を縦断することに決めた。
途中、夕食を採って温泉に入り、心身ともに癒した後、
54本のトンネルを抜けて愛知へ帰還した。
その間、前方も後方もクルマが居らず一人きりのような感覚で
ドライブを楽しんだ。冬になると一面の雪景色に変わる。
圧雪路となった冬の東海北陸道を買ったばかりのスタッドレスで
走破した事を思い出した。
EPSがついていると4WDほどではないにせよ白川郷でも走ることが出来る。
ただ、ブレーキが利かず止まろうとして止まりきれなかったこともあった。
岐阜市、一宮市を抜け東名高速道路に合流。
交通量の多さに改めて「東海道メガロポリス」とか
「太平洋ベルト」という小学生時代に習った言葉が口をついて出てきた。
ここでは90キロ近傍でクルコンをセットしておけば
トラックにくっついて快適なクルージングを楽しめた。
そして伊勢湾岸に分岐してかつての通勤路を走るが、
一般的に良く知っている道とそうでない道ではコーナーのきつさ、
坂のきつさなど勝手知ったる分だけ早くスムースに走ることが出来る。
DS3は両者とも余裕のある動的性能でクリアしてしまうので
急いでいるときには最強のツールであるとも言えるのではないか。
丸一日高速を走った。自宅で783kmを走破することができた。
写真にもあるとおり燃費も実に良好であるため、
翌日、改めて近所のバイパスを走らせて1000km走行を試みた。
ひた走り燃料計の目盛りを一つ残して1000kmを達成した。
購入後4年半以上経つが、1000km走破した経験はあんまり記憶に無い。
1000km走りきれる車なのだ、という頼もしさを感じた。
ここまで行けば、そのままどこまで走りきれるか気になってしまう。
こちらもバイパスをドキドキしながら走行し、1035kmまで走ることが出来た。
クルマを軽くしたいメーカー側は燃料タンクを小さくしたがるが、
たっぷりした燃料タンク容量を与えられたDS3は国産類似セグメントの
車種と比べると長距離を一気に走るような(自分?)には向いているのだと思う。