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2024年10月19日 イイね!

2011年式ムーヴコンテ カスタムRS感想文

2011年式ムーヴコンテ カスタムRS感想文●ハイト系×前席優先のパーソナルカー
スギレンさんが現代の軽自動車に慣れるための訓練として購入した個体を「やっぱり慣れない」と白旗を揚げてしまわれたので貸していただいて検証がてら共に暮らしてみた。

ムーヴコンテは2008年8月にデビューしたハイトワゴンである。

コンテとは画材では無く、1.Continuityの日本的略称で、台本、コンテの意味。自分らしい生活を描くクルマを表現。
2.Comfortable Interiorの略。乗る人の心地良さを追求したクルマの意味。
である

「居心地の良さ」を開発テーマとし、四角いボディスタイルとモダンインテリアが実用性やスペースに重きを置いたムーヴとの違いである。

既にタントが存在していた当時、ムーヴは車内空間の追求をやめてハイトクラスの中でスペースを追求し軽最大の室内長を確保、さらに低燃費な軽の本流」的な立ち位置に変わり、4人に平等に空間を割りふったワンモーションフォルムになった。

コンテは先代までのムーヴが持っていたスクエアなスタイルを継承し、さらに後席よりも前席を優先した点がムーヴからの差異である。特に前席は大型の「プレミアムソファシート」を採用しフランス人スタイリストの手によるクラスを超えた豊かな質感表現は2024年の今見ても新鮮である。さらにグレードによっては、パワースライドシートを採用しており乗降時の自動スライドが行える点もコンテの象徴的な装備となっている。メカニズム面はムーヴと共用し、新世代KF型E/GとCVTを搭載して「最近の軽は重たくて走らん」という声に技術で応えた。

試乗車は2011年式後期モデルのカスタムRSである。唯一ターボE/Gを搭載したフラッグシップだ。
エアロパーツを纏った少しワル目の外観と黒で引き締めたインテリアに加えてターボによる余裕ある動力性能とそれに見合ったシャシー性能が与えられる。

我が家でも同時代のタントを代車で借りていたり、妻がミラココアを所有していたこともあり、コンテカスタムRSの差別化はしっかりと伝わってきた。

つまり家族4人乗っても充分広々しており、前席シートの出来映えが良く、運転席からはボンネットがよく見えて安心感があり、走らせると動力性能に余裕があり、峠道もクリア出来る実力がある。



ただし、スギレンさん並の厳しい審美眼の前では現代の軽自動車らしいネガが馬脚を現す。「①電スロ②CVT③EPS」の現代車三悪の中でコンテは②③に該当している。

私がスギレンさんの気持ちになって指摘できたのは例えば、CVT起因と思われる加速時の応答遅れ、ドラビリの熟成不足による速度管理の難しさ、ブレーキの抜きの難しさだ。そして私が最も気になったのはEPSで直進付近の摩擦感が大きく、
田舎道を綺麗に走らせることが難しかったのと、ステアリングを戻す際に引っかかり感が出ていた事だ。

妻のデミオでも前所有車のココアでも現象が出ていた。コンテの場合発現する角度が大きいのが、せめてもの救いである。あんなにE/Gが壊れまくっていたシトロエンDS3は最後まで調子が良かったので各社のノウハウがありそうだ。

コンテはカクカクシカジカの印象的なTVCMで好評を博し、キャラクターはダイハツ全体のCMに登場するなど好感度向上にも貢献した。知名度は今でも高く、2024年現在でもダイハツ社員とWEB会議をすると背景画面に出てくるとか来ないとか。一方で、商品そのもののコンテは販売面でタントの次の柱になる、とかムーヴシリーズ内の構成比を逆転させるほどの大ヒットしていない。軽自動車でありながら、良い意味で前席優先のパーソナルカーとして用途を絞ったコンテは2010年には「ピクシススペース」としてトヨタ自動車にOEM供給されて、トヨタが扱う軽自動車初号機となった。これはコンテの大人しく、オトナなキャラクターが適していると考えられたのだろう。



コンテは確かに当時の軽上級価格帯(税込150万円クラス)のモデルとしての狙いは伝わってきたが、そもそも当時のダイハツが擁していたコンポーネントの素性の悪さに引きずられた感がある。これがコンセプトに共鳴しつつも、しっくり来ないと称したスギレンさんの気持ちにつながっているのではないか。

軽として割切ったミニマムトランスポーターとしてなら、乗り味の面ではある程度我慢を強いることは実際にあると思われるが、当時の技術的に採用せざるを得なかった4ATや油圧P/Sのフィーリングが自然すぎて慣れてしまうと、新しい技術の至らぬ点が致命的に感じてしまったのではないか。

私もスギレンさんのご厚意に甘えて共に暮らしてみると、毎日の通勤、送迎や週末の買い出しには
充分活躍できる。ただ、いわゆるNAで価格重視のモデルもでも同じ事ができる。その質は明らかにコンテカスタムRSの方が高いと言えるのだが・・・。

一方で週末に家族を乗せて行楽できるかと言えば、できるのだが動的質感という点で限界を感じるシーンもあった。出来の悪いリッターカーには充分肩を並べ、一部凌駕しているが、標準的リッターカーより少し落ちるレベルである。それこそがコンテの狙った位置なのだろう。

「そんなことではいけない!」と往年のOPTIなどの名称を使ってプレミアムカー的な性格を持った背の低いスペシャルティ軽(ケー)を作ればコンテを超えるようなフィーリングのモデルを作ることも出来るかも知れない。しかし、果たしてバブル期でもないのにそんな新製品の企画がパスし、充分なコストを掛けて開発し、それをそれなりに高い価格で発売したとき、これに共鳴する人が今の日本にどれだけいるだろうか。

相場無視の価格で販売される海外サイトで雑貨を買い、なんでもコスパ重視でものを選ぶ様になった私達がその車の価値を正しく理解できるだろうか。

実際の商売では、売り上げ金が開発に掛けたお金を超え、宣伝費もペイし、工場の稼働率が維持でき、部品を作る下請け先が廃業しなくて済むように台数が裁けなければそのモデルは失敗である。量産される自動車は工業製品であり、一品ものの芸術品ではないからだ。

ダイハツ工業創業120年記念車 限定660台、販売価格360万円の軽自動車

・・・の様に利益を目的としないモデルであれば実現は可能かも知れないが、今のダイハツにその力があっても自由に使えないだろう。

コンテには普通車を超える部分を持ちながら、軽規格に甘んじた部分も併存する。しかし、この現状が工業的に成立しうるバランス点なのかも知れない。結局世界的にもAセグとしてはこういうレベル感なのかも知れない。

総合評価としては★3。ちょっと贅沢な前席優先セカンドカーならアリだ。中古車のタマも豊富にある。

Posted at 2024/10/19 00:34:43 | コメント(1) | クルマレビュー

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