
シトロエンとかカローラの日記を書かずに今度はハチロク日記。
FT-86とか言ってた頃から何だか違うなって思って見ていた。
AE86のリバイバルなら水冷直列4気筒の1600ccエンジンを積むべきだし、
あくまでも5ナンバー枠を死守した車にならねばならん!という否定的な意見を持っていた。
旧車好きで自信もTE71を所有していたし、今もAE92を愛して止まない者としては
スバルで生産してるあのでっかいクーペがハチロクなんて信じられない気持ちなのだ。
とはいえ、出来上がった86という車を見て、カタログをもらってきてじっくり読み込んでみると
なるほど、こいつは86という名前だけどAE86のリバイバルではなく
トヨタのスポーティカーのリバイバルなのだと感じた。
ニコニコ動画風に言えば「忙しい人のためのトヨタスポーツ」なのである。
ヨタハチ以来の水平対抗FRスポーツでトヨタ2000GTをモチーフにしたデザイン、
そしてハチロクの様に長く愛されるスポーツカー文化を醸成したい、というのが公式ストーリーだ。
おまけにグレード構成はGT-Limited、GT、GとなにやらMR2のようで
ベースグレードのRCはセリカのラリーバージョンのグレード名だ。
トヨタが作ってきたスポーツカーのエッセンスを散りばめたという事か。
カタログを読んでいてやっぱり不満が残る。ここはこーすべきじゃないのか!
と説教垂れたくなる部分がいくつもある。
しかし、トヨタ的スポーツカー冬の時代へのカンフル剤のハチロクは
その存在こそ奇跡じゃないかとも思える。
マツダは苦しみながらロードスターとREスポーツを擁している。
日産も巧みにフェアレディZとスカイライン、そしてGT-Rを持っている。
Hondaはミニバンばっかり作りやがって!と陰口を叩かれながら独創的なCR-Zを送り出した。
その間トヨタはといえばスープラはとっくに消え、MRの火も消し、セリカもおしまいにした。
そこからは住宅レベルのLF-Aと豊田市周辺でしか見かけないIS-Fしかスポーティカーを出していない。
ヴィッツRSは単なるヴィッツの1500MT車でしかないし、カローラGTも微妙に外しているし、
オーリスRSもそろそろ命脈が尽きようとしている。
そう言えばマークIIのツアラーVはどこへいった?
アルテッツァの中古価格が下がらないのはなんでなんだ!
結局、トヨタは自信が言うようにスポーティな車を好むユーザーを切り捨ててきた。
会社トップがアッキーオ氏になったが、実際にアッキーオ氏をみた事がある人に話を伺うと、
車は好きみたいだけど、庶民感覚は無いらしいとのことだった。
車好きな人にも色々居るが、住宅レベルのスーパースポーツが好きな人らしいのだ。
更に自身でステアリングを握って耐久レースに出るほどのレース好きでもあるそうだ。
個人的な趣味とは大きく異なっているのでアッキーオ氏と酒を飲んで
車談義をしてもきっと平行線をたどってしまうだろう。
ヴィッツ・ユーロポーツ最高、カローラGT最高!という私と、
LFAのエンジンサウンドすげーだろ!いう二人は相容れない。
私などは、専用エンジンを持ち、程ほどの性能で、
控えめで渋いエクステリアこそがGTに必要だと思ってしまう。
最近のアッキーオ肝いりのG'sを見ていると、私の好みとは程遠い
派手なエクステリアは私の神経を逆なでするのだ。
見えるところじゃなくて見えないところが違うのがカッコいいんだよ・・・と私は言いたいのだ。
(G'sもボデー補強を入れたり地道な事はやっててすばらしい点もある)
・・・・否定的なコメントをしたが、意外とアッキーオ氏は嫌いではない。
金勘定ばっかりしてスポーツモデルやスポーツグレードを消していき、
規模拡大に夢中になって品質を蔑ろにした当時のトップよりも
車が好きなんですとウソでも言ってくれるだけありがたく思う。
そして庶民が頑張れば買えそうな価格で専用シャーシの
スポーティカーを出してくれるというのだからありがたい話じゃないかと思う。
開発者が語っているように、この車はマーケティングの車じゃないので
チューニングの余地を残して味付けされているそうだ。
タイヤもあえてのエコタイヤ。
ノーマル最高!と言って純正シフトノブの痛みに憂鬱になっている
私のようなものがターゲットなのではなく
気に入らなければ自分で部品を交換して自分だけの愛車を作るんだ!
という人の為の車なのだ。
そう考えれば、私の好みとずれていようがあまり気にならなくなった。
ある程度、車作りの事情にも詳しくなれば逆に現代の衝突安全性能をクリアするために
重く大きくならざるを得ないボデーに同情するし、
高級に見えない割に価格が高くなってしまう理由もわかる。
彼らは今の不利な状況の中でギリギリの答えを出したんだろうと思う。
私は86のこまごました点に文句をいう事よりも
それよりも、スポーティな車に乗ってみたいなと思う人が増えてくれる事が重要だと思うのだ。
仮に100%私好みの渋いスポーティカーが出たとしても私しか買わないだろう。
でも86にはそれよりは多少は数が出そうな予感はする。
若者の車離れとよく言われるが、86のカタログを周囲の20代前半の人に見せるとまず
「えええ、2ドアなの????」と仰天してしまう。
次に「低くて乗り降りしにくそう・・・・」ときて「250万もするの?高い」と言われて終了した。
モータースポーツ好きでラリーを観戦しに行くような会社の後輩も
「MTなんか乗れないから自分はFJクルーザー買います」と言ってのけてしまう現状だ・・・・。
若者向けハイブリッドとして敢えてプリウスを名乗らなかった出したアクアも
蓋を開けてみればユーザーの大半はおじさんだった・・・・。
若者の車離れ?は深刻なのだ。
そんなわけでこの車も途中からおじさんがターゲットに変更されたそうだ。
トヨタからすればトヨタのスポーツモデルや他車の2000cc級のクーペを
保有しているおじさんが一気に86に買い換えてくれればありがたいだろう。
まぁそれ自体は結構な事だ。(希少車が廃車になる危険性もあるが・・・)
そうやってたくさん新車が売れて中古車として手ごろな86が出回って初めて
86は若者の物になるのではないかと思う。
今時の若年層の給料では86すら買うのは難しい。
昔と違ってケータイやらPCやらお金の使い道は他にあるのだから。
そんなこんなで86はトヨタが抱える苦悩を打破したいという意気込みを感じる一台になった。
3ナンバーなのはけしからんとか名前がけしからんとか色々言われるだろうが突き進んで欲しい。
そしてきっちり、10年近くは生産して育てて欲しい。
今までのトヨタが良くないのはぶち上げてから簡単に見切りをつけて捨ててしまう点だ。
かつてのトヨタは5ドアリフトバックを育てようとコロナに5ドアを設定し続けたり、
ハイブリッドを育て続けてついに最大のハイブリッド車のメーカーになったではないか。
ここは辛抱強く86を育てて欲しい。
私は買わないけど、それでも草葉の陰から応援したい気持ちはある。
発売後、是非とも試乗してその可能性を感じてみたい。
なんだこの取り留めの無い文章は・・・・。