味わいがある旧い車を楽しんだ後は
やっぱり最新の車を勉強した方が良さそう、
と言うことで
第20回名古屋モータショーへ行って来ました。
平日に行ったこともあり、家族連れや学生服を着た若者を良く見かけました。
高校生以下無料というのは若者向けのプロモーションとして妥当と言えます。
他に目に付いたのは中年男性が車の下を覗き込んで
何やらメモを取っていました。
自動車メーカーの調査員かもしれません。
右肩上がりの時代、日本のメーカーの技術者は
世界各地のモーターショーへ行き、
下回りを覗き込んでせっせと仕事をする傍ら
会場の雰囲気を微妙なものにしていたそうです。
名古屋モーターショーは実は東京よりも出展メーカーが多く、
日本初披露になるモデルもあるそうで、
メーカー関係の人らしき人を見かけました。
さて、素人の私もせっかくなので
最新の車をじっくり見てきました。
EVシフトとか自動運転とか
壮大なテーマを論じる力は無いので、
非常に狭いレンジに絞って各車を見てきました。
気分を害される方が居られるかも知れませんが、
あくまでも個人の小さな感想ということで
お目こぼし戴けましたら幸いです。
車は基本的に新旧洋邦問わず大好きです。
1.コンセプトカー編
正直、いかにもな感じのハリボテは興味がないです。
(ホンダ不夜城を除く)
ですが、今後のデザインスタディや市販予定車を
モディファイしたものは興味ありです。
●ダイハツ・DNトレック
スズキのイグニスにぶつける感じだろうか。
飽和しそうなBセグSUVの小さ目を狙う戦略はアリ。
初代ティグアンのような端正な顔立ちと
ラウンドさせたお尻はキュートで、個人的に好みの意匠。
グリル奥の赤い挿し色はお洒落だなと思う。
市販車でも実現すると面白そうなアイデアだ。
2.国産市販車/市販予定車編
真っ先に新車が見られるのが魅力です。
2年前東京モーターショーに行
ったときにおじさんたちが
アルトワークスに乗り込むために列を作って順番待ちしていた
微笑ましい後継が思い出されます。
実際に市販されて街中でよく見かけるので
如何に潜在的な需要があったんだろうかと言うことですね。
●レクサスLS
11年ぶりのFMCを受けたLS。
端正な印象から急に「エモい」方向に行ってしまった。
本流のマジメな高級車というのはもう需要がないのだろうか。
みんながチャラくなる必要があるんだろうか、とも思ってしまう。
LS(セルシオ)というのはトヨタの実質的フラッグシップなのだから
持てる量産技術の粋を集めて作られているであろう事は想像に難くない。
車をパッと見て驚いた。
ドアサッシュとサイドガラスの
段差が皆無なのだ。
80/90カーのフラッシュサーフェスとは次元が違う、
超フラッシュサーフェスを実現している。
これは風切り音には大変有効なのではないだろうか。
https://response.jp/article/2017/10/20/301319.html
ここで詳細な記事があるが、ガラスランの構造が新しい。
ここで気になるのは
250km/hで走る可能性もあるLSでサイドガラスの
吸い出され性能はどうやって担保したのかと言うことだ。
そこはまだ謎のままだったが、少なくともサイドビューは
最新の車だなと分かる凄みを感じた。
ドアを開けるとリベットの跡がある。
という事はドアがアルミ製なのだろう。
お金があるから軽量化も高価な材料置換が可能になる。
ベルトラインモールにも注目したい。
SUSなのは当たり前だとしても端末にエンドキャップが無く、
ツルンとした一枚もので出来ている。
一般的には一定断面のモールを切断して
黒いエンドキャップをかぶせて終わりにすることが多いが、
LSはさすがともいえる
一体構造を採用していた。
しかも
端末位置がドアギリギリだ。
どうしても製造公差や製造ばらつきを見込んでしまうが、
ここまでつめることが出来るのは、モール、ドアの
製造公差が高いか、品質管理として選別を行っているか、
建付け工程でしっかり合わせ込んでいるかだ。
ちなみにディーラーで確認した結果ISは黒エンドキャップ、GSはメッキエンドキャップで
LSは一体構造という明確なヒエラルキーがあった。
輸入車は比較的Frドア後端とRrドア前端が近いが、
(ドア板金から飛び出しているものもアリ)
トヨタも
LSだから頑張れたところもあったのだろう。
一方でがっかりした部分もあった。
ドアインサイドハンドルの手触りだ。
パッと見は立派だが、手を掛けると
裏面側が
肉抜きされていることが手触りで分かる。
あたかも
安物のラジカセの取っ手の様だ。
以前も触れたが樹脂部品は意匠側に
ヒケを出さない為に板厚を極力薄く作りたい。
そのため、肉抜きされてスライド方向に
リブが立つのも理解できる。
しかし、
車に乗る人が必ず触れる場所が
このような安っぽさで本当に良いのだろうかと感じてしまった。
大衆車でそこまで要求する事は過剰かもしれないが、
これはレクサスであり、そのレクサスのフラッグシップなのだ。
台所事情と言うか作り手の言い訳が垣間見える時点で
フラッグシップとしては厳しい評価となる。
私は歩いてメルセデスのブースへ行き、Rrシートに座った。
そしてインサイドハンドルに手を掛けるとそこには
無粋な肉抜きの無いツルンとした手触りを提供してくれた。
これだ!と思った。
やっぱり手で触れるところの印象がいいというのは、
いいモノの条件ではないだろうか。
トヨタはLSの開発中、競合車をベンチマークしたはずなのだ。
あのトヨタがそこに気づかないはずは無いと思うのだが、
メルセデスのインサイドハンドルに気づいていながら
敢えて負けるような構造にしたのは何故なのだろうか。
コストで天秤に掛けるような安い車ではないはずなのだが。
TNGAという考え方は徹底したベンチマークにより
世界最高レベル高性能な部品を広く流用して
安く使う考え方だったと記憶しているが、
「安く」だけしか達成しないのなら、
トヨタ車の総合的な競争力は上がらないだろう。
●三菱エクリプスクロス
色々あって、
最後の純・三菱車になると噂されているが、
BセグSUVという試乗が真っ赤に染まったセグメントに
三菱も参入する事になった。
個人的にデザインは三菱らしいし適度にカッコいいと感じるし、
内装もどことなくNX風のタッチパッドを採用
(ただし、ブルッと振動はしない)するなど、
力が入っているなぁと感じる車だ。
細かいところに注目する趣旨から外れるので
これ以上の解説は控えて早速乗り込みたい。
ドアを開けると
ヘミング部のエッジシールがきちんとある。
以前取り上げたランサーセディアでは省かれていて
当時の厳しい台所事情を感じたものだ。
室内空間も車格を考えれば十分リーズナブル。
デザイン重視と言う割りには
ドアミラーも大きくて見やすい。
パドルシフトが着いていたが、
ちゃんと
金属特有の冷たい感触がある。
おぼろげな記憶ながら
初代アウトランダーからの流用かもしれない。
こういう部分に本物感があると嬉しくなった。
価格帯の違う
NXですら樹脂塗装品なのだから。
この車の見所はミニカスキッパー以来?の
エクストラウインドゥつきのリアビューだ。
小型クーペSUVという意味ではヴェゼルよりもスタイルよりだが、
C-HRよりも小型でちょっと保守的な価値観の人でも
何とか着いて来れそうなところがちょうど良い。
レクサスRXやヴェルファイアが採用している
上ピボットのワイパーをRrスポイラーで隠す処理も採用されて
気合が入っている。
ただ、ワイパーが雪を掻いたあと、
バックドアガラスとスポイラーの間に段差があり、
いかにも雪が溜まりそうで、
後方視界がさえぎられそうなのが気になった。
一般的なワイパーなら横に流れていくが、
下にどんどん掻いた雪が溜まるのではないか
また、ライセンスガーニッシュの塗装面が
ざらざらのブツだらけだったことも日本では受け入れがたい品質だ。

分からないところで見栄えを切り捨てるのは許容できるが、
このように洗車時に触ったり見たりする場所の品質が悪いと落胆してしまう。
日本発売する前には品質を確保していただきたい。
個人的に好感が持てるので是非とも品質を上げて
再び愚直な車作りを我々ファンに見せて欲しい。
●スズキクロスビー
ジムニー1000、ワゴンRワイドなど、
スズキは軽拡幅系普通車を数多くリリースしてきた。
クロスビーもその一つだろう。
遠巻きにはFIAT 500Xにも見える。
アルトと決別したスイフト、ワゴンRから決別したソリオなど、
軽の影が見えない小型車は良作揃いだが、
クロスビーからは今のところ、
ハスラーを引きずってしまっているようにしか見えない。。
ハスラーも並べられていたので比較すると、
バックドアの水抜き穴がクロスビーだけ埋められている。
これはNV対策でゴム栓を追加しているのだが、
リッターカークラスでも採用している事は驚いた。
また、FRドアを開けるとインパネ脇にシルバー塗装の
オーナメントが着いていた。
これと言った機能を果たす部品では無いが、
ドアを開けたときだけ楽しめる演出は面白い。
室内空間も5人乗りになってRrシートスライドする
違いはあれど、さほど荷室も広くないので若干
中途半端な立ち位置に感じた。
●マツダCX-5
知人が
「勿体無いFMC」と評したCX-5。
高級化が進んだが、デッキボードのストラップが
ステッチ入りの合皮になっていた。
個人的には切り欠きを入れて指を入れられるようにしたほうが
安くて合理的だが、小物が落ちてしまう懸念もある。
ストラップもナイロンのような材料ではなく
手触りの良い合皮を選ぶ当たりがうまいなと感じた。
ただ、十分な強度が与えられていないと破れ/ちぎれが発生するだろう。
●ホンダCR-V
北米ではいち早くFMCされたCR-V。
目玉はダウンサイジングターボとスポーツハイブリッドなのだが、
ホンダブースの目立つ位置のターンテーブルで展示されていた。
北米では台風の目玉のような売れ筋で
言わば現代のアコードなのだ。
スラリと身長の高い外国人モデルが傍らに立ち、
ポーズをとっていたが現車を見て驚いた。
ドアフレームが凹んでいるではないか。
体重をかけるような場所では無いはずだが、
ちょっと弱々しく見えてしまったのは残念だ。
●ホンダクラリティPHV
FCVだけだと思っていたクラリティにはPHVがあった。
現代イオニックのように3種類のパワーソースから
選べる戦略をとるのだろうか?
愛知県では比較的良く見かけるミライは見慣れてしまい、
プロポーションが野暮ったく見えるが
こちらはデビュー後、あまり見かけることがない車種なだけに、
2年前から変わらない見た目の割りに鮮度があった。
気になったのは
Rrサスに取り付けられた謎の部品だ。
Rrサスメンもアームもアルミ合金製で軽量化に腐心しているが、
このプレス部品をアーク溶接で組み立てた黒カチ塗装品は
何についているのか用途が思いつかなかった。
空力カバーなら下面の大きな長孔が不要だし、
船舶固縛フックとしてはLWRアームなんかで車重を支えたくないだろう。
マスダンパーにしては軽そうだし、わざわざバネ下重量が
重くなるような場所につけるかも疑わしい。
もしかするとアームのプロテクターなのかも知れないと予想した。
スカスカに感じるが悪路の岩石や
氷のヒットには耐えうるかもしれないが)
それも何だか違うような気がしてきてしまい
素人の私には皆目見当がつかなかった。
(ご存知の方、教えてください。もちろん秘密にしますので―笑)
3.輸入市販車/市販予定車編
輸入車は日本市場でも好調にセールスを伸ばしているのですが、
隣の国の市場が大きすぎてスルーされている感があります。
そういう意味では定番のブランドはVW以外は出展してくれていて
じっくり見ることが出来ました。
ラテン車から降りたものの、じっくり見てしまうのはラテン系なのです。
●ルノートゥインゴGT
待ってた。待ちわびた1台。
現代の日野ルノー4CV。
妻(MT免許取得済)のミラココア代替にこれはどうだ!と思っていた。
見た目が可愛く、軽から乗り換えても
ボディサイズが小さくて違和感が少ないだろうと思った。
UP!も好きな車でGTIが出ると言う噂もあるが、
きっとVW価格で手が出せないだろう。
実はディーラーで標準車を試乗済で、ギリギリ
チャイルドシートとベビーカーが搭載できる。
ただ、やっぱりペタンと座って足を投げ出すパッケージングと
クラッチペダルがねぇ・・・・。
タコメーターも欲しかった。
極小RHDのマイクロカーはどうしてもここが泣き所。
スバル360は許せても2017年の乗用車だと気になってしまう。
それでも展示車を外から見ていると顔がにやけてしまう。
●DS DS7クロスバック
いつか出ると思ったDSのSUV。
どことなく
、「きれいなハリアー」感がある。
ほうれい線、フィンアルミ、DLOなど類似した要素があっても
遥かにハイセンスで
美しくなってしまうのはシトロエンのなせる技だ。
スタイリングに文句なし。内装のエロさに文句なし。
そして灯火類も息を呑む美しさだ。
FrもRrも美しいが、Rrコンビランプはワイドな意匠で、
その全てがバックドア側に着いている。
一般的なRrコンビランプはボディ側とバックドア側に分かれて
分割線が入るのが一般的だ。
そうしなくては荷室の使用性が悪化してしまう。
DS7クロスバックはアウディQシリーズのアイデアを拝借して
バックドア側にRrコンビランプ全てを取り付け、
バックアップランプとウィンカーを
バンパーに別で取り付ける方式を採った
バックドアを開けると、Rrコンビランプを受ける広い面が見えるが、
アウディと較べるとクオーターパネルとランプハウジングパネルの
合わせ面が雑であることが気になってしまった。
下部のバンパーとの合わせは縮みフランジの線長対策で
切り欠きが入っているので
穴が開いている。
ネタもとのAUDIを確認すると、
きちんとエッジシール処理がされていた。
こういうところはマジメだなぁと感心した。
AUDIはスポットの打痕も無いが、
シーラー線の下にはレーザー溶接があるのかも知れない。
DS7クロスバックの場合、せめて
シーラーを打って
ヘラや筆で綺麗に仕上げれば良いと思うのだろうが、
変なところでコストを削るなあと感じてしまう。
他に個人的に感心したのは
デッキボードだ。
デッキサイドトリムにバネ支持の突起があり、
デッキボードを操作する際にこの突起を乗り越えれば、
空いた状態を保持してくれる。
大変便利そうだが部品点数と仕入先でのASSY工数が
増えることを嫌うので恐らく真似するメーカーは無いだろう。
●ジャガーEペース
ついにジャガーもスモールSUVに参入。
伸びやかだったFペースと較べると実車を見ても
ずんぐりむっくりちんちくりんな感じは否めずで残念。
ベルトラインを低く出来なかったのが敗因か。
サッコプレートを使うなどしてドアの厚みを緩和する
方策も合ったと思うのだが。
やっぱり
このクラスはマカンの圧勝だなぁと
買えもしないのに思った次第。
●まとめ
今年は東京へはいけなかったが、終日楽しむことが出来た。
東京と較べると家族連れが多く、アットホームな雰囲気は好感が持て、
二年後はわが子と来れたら楽しいだろうなと思う。