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2024年06月30日 イイね!

2006年式タントVS感想文

2006年式タントVS感想文 ●今の軽自動車市場を作った立役車
いま日本で最も売れている車種は軽自動車、それも全高1700mmを超える様なスーパーハイトワゴンと呼ばれるボディタイプだ。

今の売り上げトップはN-BOX(ホンダ)、他にもスペーシア(スズキ)、ルークス(日産)、ekスペース(三菱)などがあるが、その源流は2003年にダイハツが発売したタントである。

初代タントは大きな車と小さな軽、2台を所有しなくても、一家に一台のメインカーとして家族のあらゆる生活シーンで活躍できる新しいジャンルの軽を提案した。



タント発売から遡ること10年前の1993年、スズキは人をアップライトに座らせて背高パッケージで包んだワゴンRで軽自動車に革命を起こした。その2年後、ダイハツはムーヴを発売。ミラをベースに類似した意匠であからさまなパクリと言われて批判を受けたが、実はダイハツもムーヴをワゴンRとほぼ同時期に発売できるように準備していたものの、開発が遅れたためにハイトワゴンのパイオニアの座をスズキに譲らざるを得なかったのである。

しかも、スズキはフロアも新設して着座姿勢も整えたが、ダイハツはミラのコンポーネントを流用したかったのか全高の高さの割に着座姿勢に大きく手を加えなかったことも批判的な意見があった。

新規格となった2代目ムーヴでは初代のネガを解消したが、ダイハツは初代ムーヴの過剰な頭上空間について何かを掴んでいたのかも知れない。タントの諸元を下記に示すが、当時のハイトワゴン「ムーヴ」の1630mmを大きく超える1725mmの超トールボディを持ち、ヘッドクリアランスは座高が高い人でも使い切れないほど(私が座って握りこぶし4つも入る)。



これら諸元を比較して分かるのはタントの室内スペースがキャブオーバー1BOX並みであることが分かる。それでいてキャブオーバー型1BOXとは比較にならないほど足元が広く、低床ゆえに乗降性も優れており、子育て世代の日常生活のお供としての全く新しい価値を見いだすことができた。

デビュー当時、私はこういう車に対して否定的な立場をとり、広さが欲しいならステップWGNなどのミニバン御三家を買えば良いし、「過ぎたるは及ばざるが如し」だと固く信じていた。確かに当時、ムーヴもミラアヴィも完成度が高く普通車を喰うほどの内容に近づいていた。その方向性から外れて座って乗車するには明らかに無駄な頭上スペースに活路を見いだしたタントはナンセンスに思えた。

それなのに、世の中の子育てファミリーを中心にタントはヒット。当時スズキを追いかけていた軽No.1争いに勝利する立役者の1つとなった。ホイールベースも長く、室内も広い。頭上の過剰なスペースを得たときに軽自動車のキャビンの自由度が大きく拡がることを世の中に知らしめたのである。



ところでイタリア語でたくさんを意味するタントだが、関西地方でも同じ意味で「タント」を使うことがある。

「たこ焼きぎょうさん買うてきたから、たんと食べや!」(たこ焼きをたくさん買ってきたから、たくさん食べなさい)

という感じになるはずである。

そして同じ在阪企業であるナショナル(当時)も冷蔵庫にタントという名前をつけていた。私なんかは冷蔵庫の名前の方が先に馴染みがあったので「なんや、車にもタントて名前つけるんかいな」と関西地方の方言を話していた当時の私は思ったものである。



初代タントと生活を共にして軽ハイトワゴンがこれほどまでに受け入れられたポテンシャルを感じることが出来た。

例えば、3歳児が一人で乗り込めるフロア。小学2年生が室内で立てる室内高、週末の買い出しで1週間分の食料と日用品が乗せられる荷室など、どれもが実用的でありながら、市街地だけなら走行性能や静粛性もガマンできるレベルであり、更にA/Cもよく効いた。

子供達はすっかりタントが好きになり娘は街を走る初代タントを見つける度に「たんと!」と言うし、息子も「あのタントは何代目?」と訊いてくるようになるほど我が家の子供達にも刺さったようだ。



彼らを虜にしたタントが持つ軽キャブワゴンの室内空間と軽セダンに近い乗降性が両立した使い勝手は確かに新しい。子供だけでなく、大人4人が乗っても満足できるフル4シーターパッケージと荷室の使い勝手は、誰にでも優しいユニバーサルデザインだ。

例えば忙しい朝の時間帯、親である私がタントのドアを開けてあげれば子供達は自分で乗り込んでくれる。そして回転機構の着いていない簡素なCRSでも子供を抱きかかえてCRSに乗せてセットしやすい。



更に保育園に到着後、ドアを開けてCRSから子供をフロアに立たせておけば水筒やショルダーバッグをかけて身支度を済ませてから降車できるのは、雨の日にはありがたい。晴れていたとしても、CRSから降りた子供を車の後や脇に立たせて
身支度をさせるのはあまりスマートではないが、デミオやプログレでは普通にそれをやっていたので新鮮だった。

ただ、自動車である以上避けては通れない動的性能に関してはお世辞にも良いとは言えず不足気味。カップホルダーに置いたコーヒーがこぼれるほどの突き上げのひどさ、登坂車線の常連になれる駆動力など動的性能が明らかに割切られており、不満があるならターボモデルを買うしか無いが、乗り心地の悪さについては恐らく打つ手がないだろう。



この広さを知ってしまうと、家族を乗せて帰省できちゃうな!とか東京ディズニーリゾートへ行けちゃうな!と夢が膨らむのだが、走りの質感から来る長距離ツーリングでの疲労感が大きく、期待に応えてくれそうにない。あくまでも「近所の用事を済ます」「行っても隣町」レベルなら普通車に負けない使い勝手を享受できるだろう。

初代タントは「走らせてナンボ」の自動車としての実力で評価するならバランスの取れた軽セダンよりも2段は落ちる。しかし初代タントがヒット作となり、今の軽スーパーハイトワゴン市場の礎を築いた歴史的事実を振り返れば自動車らしさよりも、使い勝手を求めるユーザーの方が多かったという(≒Rが廃止された)事実を直視しなければならない。

総評としては初代タントは先例のないダイハツオリジナルの企画なので作りたい商品が作れた自由な風を感じた。BMCに拠って重箱の隅をつつくレッドオーシャンではなく、ブルーオーシャンに活路を見いだすクリエイティブな戦略が光る。競合より先にハイトワゴンを世に出せなかった悔しさをバネにして大きな市場を創出した功績は大きい。

この企画の良さで4★を進呈したかったが、一般ドライバーにはあまりにも過酷な動的性能が看過できず1減じて3★とする。
気兼ねなく思い切り試乗させてくれたオーナーに感謝。

Posted at 2024/07/01 00:27:03 | コメント(4) | クルマレビュー
2024年06月11日 イイね!

2024年式WR-V Z+感想文

2024年式WR-V Z+感想文●現代に蘇ったロゴ?いいえJムーバーです

私が近年、しつこく言い続けているのがN-BOX一本足打法の国内販売問題である。N-BOXが日本人の生活にぴったり寄り添った軽スーパーハイトワゴンの決定版である事は同意するが、それ以外のホンダ製登録車は、割高であと一歩の惜しい面があっても商品力強化のやる気すら見せないモデルが多く、私だけかも知れないが勝手に危機感を持っていた。



そもそも日本市場は北米や中国市場と較べて市場が小さく特異なため、ホンダ以外の自動車メーカーも日本を無視したクルマ作りを続けている。経営規模が大きいトヨタは何とか小型車枠の商品を残しているが、ルーミーもライズも小型車を知り尽くしたダイハツのOEMである。

そんな中でホンダは他国で生産する向けモデルを日本市場向けに同時開発し、輸入するという手慣れた手段をとった。

元々ホンダはアコードの逆輸入を・・・なんて昔話をしなくても、つい4年前まで小型セダンのグレイスをタイから日本に輸入し、最近だとオデッセイを中国から輸入している。

今回は新興国向けP/Fを使って作る都市型SUVをインド市場に向けて作り、インドで生産した。その仕様設定を日本市場向けにアレンジした日本仕様車を仕立てて2024年3月から日本で販売している。



現地名エレベイト、日本名WR-Vは先代ヴェゼルのガソリン車の市場を受け継ぐ廉価なSUVスタイルのエントリーモデルである。個人的にはフィットが市場で理解されないのが残念だな、と言う思いがありつつも、なるほどWR-Vは商品として分かり易い。

軽からステップアップするときに、頼もしく見えるエクステリア。硬質プラスチックを多用しながら細かく高触感素材を使ったアクセントでみすぼらしくもない。ドラポジはSUVらしい視界の良さが楽しめて家族を乗せても快適な室内と軽ハイトワゴンでは望めない荷室と居住性の高バランス。走らせて直ぐ分かる1.5リッターE/Gの力強さがもたらす動的質感。高速道路での挙動の落ち着きの無さは玉に瑕だが、それをも納得させられる特徴が残価設定型クレジットを組まなくても現金やローンで買える身近な価格帯(税抜価格190.8万円)。ホンダの中でフィット以外で軽からステップアップできる貴重な一台になった。



一方、見る人が見れば明らかに(技術的・市場的に)時代遅れな諸元が並んでいるのも特徴だ。

・ハイブリッドがない?3気筒E/Gじゃないの?
・PKBが未だにレバー式?
・全車速追従ACCついてないの?
・ブラインドスポットフィンフォメーションないの?
・全面液晶メーターじゃないの?
・スライドドアじゃないの?
・この見た目で4WDないの?
・アルミホイールが17インチなの?


などなど、模範的自動車販売業の人たちからすると2024年の当たり前が備わっていないので否定的な見方をされかねない。この手の「当たり前」は自動車メーカー自身によって醸成されていく空気であり、それがないと困るという実態は案外無かったりするもので、無いと困るような人命に関わる安全装備などはWR-Vにも着いている。

だから実際WR-Vに乗ってみても感動がない代わりに扱いに困ることはないし、至らぬ点を目くじら立てて叩く気にもならなかった。そもそも2040年までにE/Gを辞めると言っているホンダの新型車がガソリン車オンリーという点も叩きたい人は叩きたいだろう。

でも、国内市場で背に腹は代えられないホンダはSUVブームという販価が取れる流行をうまく使いながらも、原価に直結するところでは流行に乗らずに節約をすることでN-BOXからの代替に誘導できそうなエントリーSUVを持つことが出来た。

これで不満が残るならヴェゼルやフィット、フリードを買えば良いし、盤石な支持を集めるN-BOXもある。

WR-Vの大胆な割り切りは恐らく、ホンダ自身の事情によるものが大きかったと思うが怪我の功名的な結果オーライに結びついているのは面白い。

かつてクリエイティブ・ムーバーと称して独自のRV車を世に出してヒットを連発した当時のホンダ車もスライドドアなし・ステッキ式PKB・ディーゼルなし・簡易的4WDのみ、という大胆な割り切りがありながら市場の支持を受けていた。

WR-Vの割り切りもまた、売る側の論理ではなく買う側が納得できそうなものに留め、浮かせた分を便利な道具を安く売ることに繋げている。安っぽさよりも楽しげに見えるところは、かつてのシンプルすぎて埋没したロゴをベースにしたJムーバー(コンパクトで楽しさのある楽しさ創造車)の発展系的なコンセプトとも言えそうだ。



この車は私達、普通の日本国民が今までの様な気持ちで買える貴重な新型車だと思う。勿論、安いなりの作りの甘さや性能面の不満はある。しかし「小型キャブワゴンは総額450万円」とか「軽ハイトワゴンは総額300万円」というメーカー都合による残価スキームの中で現状は現金で買えるマイカーが手が届かない遠いところに行って行きつつあった。でも、WR-Vなら総額250万円以内で軽自動車以外の車が買える。この現実感のあるリアルなワクワク感は私達にとって大切な感覚だと考えている。

買えない車を論じるより、買える価格でありながらエアコンもよく効いて室内も広くてみすぼらしくないSUVルックは花より団子だ。今度のJムーバーは平成のそれらより市場の支持が得られるのではないかと思う。



WR-Vは発売後1ヶ月で1.3万台の受注があったという。月間3000台の目標の中で4倍以上の実績は
試乗車などの予約分もあったとは思うがホンダにしては良いスタートダッシュだった。インドからの輸入車なので、輸送タイムラグなど需要に急に対応するのは難しいところだが。トヨタのヤリスクロスは発売後1ヶ月で4万台の注文があったようで数字ではボロ負けだが、ホンダにとっては重要な車種になると思われる。

イマドキ求められているコスパ(好条件での下取り、保険・税制の優遇)の良さで軽スーパーハイトワゴンに勝てる見込みはない。実質賃金が下がり続けている中でWR-V(普通車)の余裕・快適性に対してお金を払って貰えるような状況でもないので、20年前の状況より寧ろ難しい戦況ではある。だが、ここで安易に売れ行きに陰りが見え始めたN-BOXに頼るのではなく、W-RV、フィットやヴェゼルを育てることも忘れないで欲しい。

総評は3★。取り立てて悪くないがぶっちぎりの部分もない。新しくもないけどその分安心感もある。ホンダのモデルミックス的に必要だったモデルだが、WR-Vそのものの評価は3だ。
Posted at 2024/06/11 09:26:39 | コメント(4) | クルマレビュー

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「田町某社のカフェに置いてありました。」
何シテル?   06/13 18:13
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