大晦日に『N H K紅白歌合戦』を観る習慣が、随分前から消えていた。
それが2020年末の当日は、ボクシングの『世界王者同士の対決』井岡一翔vs.田中恒成戦の8ラウンド TKO決着を見届けたところで、躊躇なくch1に切り替えた。
理由は二つあった。一つは白組の氷川きよしが前日に生放送されたT B S の《レコード大賞》に出演し、23日に彼岸の人となったばかりのなかにし礼さんへの想いを、素顔に近い純な表情と声で語っているのを、偶然に観てしまった。
「母」 歌手:氷川きよし 作詞:なかにし礼 作曲:杉本眞人
♬離れていても そばにいてくれる 淋しくなると つい呼んでしまう
その人の名は・・・母 ぼくの母さん
・・・・・・・
希望の星を 追いかけろ あきらめなければ 負けないと
励ましつづけてくれた人ああ 母ありてこそ 母ありてこそ
だから母さん 生きていてください 永遠(とこしえ)に–−–。
デビューして20年、ここまで育ててくれた母への想いと、それが最後の作詞となったなかにし礼さんへの感謝。それだけの想いが重なった歌を、ひょっとしたら紅白の舞台でも彼は謳い上げてくれるのだろうか。失礼ながら、礼さんの作詞にしては心に刺さるものに欠ける。それをいまの氷川きよしがどこまで自分の歌にできるのだろうか、興味があった。
二つ目の理由は、紅組のオオトリを務めるミーシャである。2019年、年末恒例のガンさん邸忘年餅つき会からの帰り道、ベスモ同窓会の下邑真樹君のテスラモデル3に同乗し、最先端を走るE V車を味見した時に聴いてから、すっかり馴染みを重ねたミーシャの「アイノカタチ 」を、改めて紅白の晴れ舞台で、ぜひ聴いてみたかったのだ。
そういえば、その時のことをFace Bookのわたしのページに『手放しの歌』と題して、記憶を残しておくための小文を載せていた。
手放しの歌
東名高速・御殿場ICから東上。いよいよ鮎沢SAでテスラモデル3のステアリングを預かる。真っ先に試したのがこれ。オートパイロットと先ほどRJCカーオブザイヤーのテクノロジー賞を獲得したスカイライン「プロパイロット2.0」との比較。目の前にあるでっかいモニターとのコラボでテスラの方が思い切って「自動運転」に踏み切ることができた。
そのまま東名・都夫良野トンネルに突入。と、助手席の下邑君が何やら大ぶりなモニターをいじっていた。と、いきなりミュージック!
♬あのね いつの間にか 気づいたんだ 愛に もし カタチがあって それがすでに わたしの胸に はまったなら
これがいい!男心をグイと手掴みする歌声。ポルトガルのファドに近い情感。
「これ、誰?」「ミーシャ」「これいい! タイトルは?」「アイノカタチ」
ありがとう。老年の心に染み込む素敵な時間、もう一度、ありがとう。
それ以来、テスラ=MISIAの図式がわたしの中で出来上がったのだ。
そして最近、このミーシャの「アイノカタチ 」を聴くことが増えた。綾瀬はるかが主演したTBS火曜ドラマ「義母と娘のブルース」の総集編が放映され、その主題歌として流れていたし、2020〜2021日本カーオブザイヤーのグランプリカーに選ばれたSUBARUの新型レヴォーグが「アイノカタチ 」をCMの主題歌に採用して、ふんだんに放映しているじゃないか。
午後9時半。紅白歌合戦は後半の部に入っていた。前もって出場歌手の順番も曲名を確認したわけではないが、例の下村くんからはミーシャがトリで選ばれたことを知らされていた。氷川きよしも白組の終わりから3人目だという。間に合った。しかし残念ながら彼が披露してくれたのは『限界突破×サバイバー』。
結局、紅白という舞台はド派手なエンターテインメントを彼に選ばせたのだろうか。
ミーシャの自分の全てを叩きつけるような熱唱が祈りとなって光り輝き、紅白のフィナーレは観るもの、聴くものを陶然とさせた。
「大晦日の紅白はミーシャのためにあった。圧倒的な歌唱力。ターバン。歌ってこんなに凄いパワーで人の心を鷲掴みするものなのか。アッと思った。この無国籍であることの魅力。テニスの大坂なおみがそこにいる、と!」
これもわたしがFace bookに記しておいた一文である。そして正月休みの間中、You Tubeをサーフィンしながら「ミーシャ」の世界を渉猟しまくった。
そのお陰でミーシャという名の歌姫の築き上げたソウルと祈りの世界と、彼女はすでに日本という枠を乗り越え、インターナショナルな評価とファンを持つ存在であることを知った。わたしが大坂なおみを連想したのも当然だった。それに、プロアマを問わず、ミーシャの歌に挑戦する歌い手の、なんと多いことか。そして「ミーシャの世界」を、それなりに手を入れて、例えば結婚式のお祝いで熱唱し、花嫁が感激のあまり泣き出すシーンも。
いまわたしは「アイノカタチ 」より「逢いたくていま」にとり憑かれてしまった。そう、かつて大ヒットしたT B S系日曜劇場『仁-JIN-』の主題歌だが、その当時のわたしはドラマの方に気を取られていてミーシャは素通りしてしまっていた。それが今になってなぜ? 何かの拍子に、ひょいと「逢いたくていま」の歌い出しを、ハミングしてしまう。そのうちぜひ、恥ずかしながら、カラオケに挑戦したい、と夢見ているようだ。
ともかく一度、この歌を聴いてやって欲しい。聴くたびに家人に見られないよう、こっそり滲む涙を拭いてしまう。ともかく、ミーシャが凄い。主題曲のテーマに取り組むため、ミーシャは鹿児島・知覧という特攻機の飛び立った古い基地の町を訪れ、死と向き合った飛行士たちの遺書や手紙に逢いにいったという。
その辺からのことは次回更新に譲るが、ともかく‥‥‥この機会に、下段にYouTubを用意してあるので、ぜひ聴いていただきたい。
「逢いたくていま」
こちらはT B S系日曜劇場『JIN-仁-』の主題歌である。
♬ 初めて 出逢った日のこと 覚えていますか
過ぎ行く日の思い出を 忘れずにいて
あなたを見つめた全てを 感じていたくて
空を見上げた今はそこで わたしを見守っているの? 教えて
VIDEO