俺のラジカセウォーズ　ラジカセ少年と超常現象との戦い6

「あっ!! これ!!」
と、またもや大声をだして驚いてしまった。


「だから!!　静かにしろよ、オメーは!! ラジオを出しただけだろ!!」
とAにたしなめられるが、俺はそれどこじゃなかった。

　Iは、俺が驚いているのを見て得意そうだ。
　そして、少しニヤケながら言った。

「これで万事解決だよな?」

「なに?　ラジオじゃねえの?」


　Iがラジオと言っていたのは嘘ではなかった。
　しかし半分しか本当のことを言ってなかった。

　奴が持ってきたのは
サンヨーの野心的マシン、ラシーバであった。



「これは、サンヨーの新型ラジオトランシーバーでラシーバって言うんだ。本体と子機に分離してトランシーバーになるんだけれど、送信距離が半端じゃねーんだわ」

「この中、全部届くくらいか?」

「そんな学研のオモチャみたいなもんじゃねえよ。条件さえ出ていれば50km届くらしい」

「ホントに?! そんなスゲエの?!」

「そんなスゲエの。だから買ったさ」

　
　これには、全員が驚いた。
　そして、勿論、俺も喜んだが「やられた」という感じもあった。
　こんなものをわざわざ隠し持っていたとは。

　俺は、修学旅行を終わった後のことも当然考えてアクタス560にしたのだが、こいつは修学旅行で自分がどう使うかしか考えてなかったんだろう。
　そして、今回、今の様な状況になっていなかったとしても、Iは、今晩自分から「探検しないか?」と言い出したはずだ。
　そういう覚悟でラシーバを買ったということか。
　スゲエよ、I君。
　やられたよ。



「じゃあ、本格的な捜索方法を相談するべ」

「捜索隊は二人。ラシーバの子機とパディスコのワイヤレスで。階段のとこにワイヤレスの中継に二人。一人は捜索隊の電波受け専用。もう一人はマックのワイヤレスで発信専用な」

「あと、捜索隊は玄関までは行くな。明かり点いてたから」

「幽霊見つけたら、場所確認していったん戻れ。誘導どうするかみんなで考えてから、やるべ」

「おい、木刀を一カ所にまとめて
取りやすい様にしとけや」


　長距離無線が可能になったので、作戦がサクサク決まっていく。

「じゃあ、まずは全館探検で。従業員専用とかには入るな。それ、泥棒と一緒にされるからよ」

　探検隊の二人は、MとOに決まった。
　中継はHとKだ。

　廊下で先生の巡回監視をBが双眼鏡で行う。

　俺は中継との送信。
　Iは、探検隊との送受信。
　
　Cのビクターラジカセは、Nのスカイセンサー5800と接続コードでつなげて、なるだけスカイセンサーの電池を減らさないように音を増幅させるアンプの役目にさせた。
　
　Aは・・・総指揮


　体制は、整った!

さあ!　やるか!!




その瞬間





　天井が
　
　ドンドンドン

　と三回鳴った







「なんだ?」




　ドンドンドン




「三階の奴がイタズラしてんじゃね?」
といってBが窓を開けて上をみた。



　そして、慌てて叫んだ。


「このホテル! 二階までしかない!!」



　
　なんだって!?



　と、思うが早いがAは木刀を構え、天井をにらみつけ
「てめえ!!　出てこいっ!!」
と叫ぶ!!




　既に我々の動きは、ここの何者かに全て読まれていて先手を打たれてしまったのだ!!





　全員が凍り付いた。。。






つづく







　解説・・・・・・・

　Ｉがもってきたサンヨーラシーバ、ブルーインパルス７７００は、どっちかってーとトンデモアイテムの部類かもしれない。
　本体は３バンドラジオに基本的な装備。
　マイクミキシングボリュームが別に備わる。
　そこに、トランシーバー機能だけの子機が合体する仕組みだ。

　この合体・分離機能はなかなかに優秀で、子機を本体から分離させただけでは本体トークボタンを押しても送受信はされない。
　実は、本体裏面に扇に移動する切り替えレバーがあり、これをトランシーバーモードにすると、アンテナカバーがせり出してアンテナ基部がトランシーバー状態になるのだ。
　子機のアンテナも、このサイズからはなかなか想像できないくらいに伸びる。
　本格的なトランシーバーほどではないが、性能的にはワイヤレスマイクの様なオマケ機能とは比較にならない長距離通話を可能としていたのだ。
　で、もしかして、今、この機能って電波法的に使っちゃマズいんだっけ？(；´∀｀)

　この、子機と親機のセット状態って現在ではなかなか入手しずらい。
　やっと入手したよ。