エンジンオイルの評価値に塩基価という数値があります。
エンジンオイルのアルカリ性の度合いを示すものです。
塩基価が高い≒清浄性も高いので、良いオイルの判断基準のひとつになります。
いつも通り長文です。
私自身の教育資料なのでご了承を。
書くことで覚えるw
エンジンオイルが劣化して酸化してくると塩基価が下がってきます。
Caなどの清浄剤を添加して塩基価を上げるのですが、灰分も増えるのでDPFやGPF搭載車両だと塩基価が高すぎるオイルも使えません。
SP品だとLSPIとの兼ね合いもあります。(CaでLSPI増える)
API品に比べてACEA品は塩基価が高いです。エンジン保護性能重視。
ACEA品がAPI品に比べて塩基価が高めなのはACEAで規定されているからです。
ACEA A3/B4 10 mgKOH/g以上
ACEA C3/C5 6.0 mgKOH/g以上
ACEA A3/B4規格品は12.5くらいあるものがあります。
規制が緩いのでCaたっぷりって感じですね。
Mobil1 0W-40 (12.5)
Valvoline Synpower 0W-40 (12.4)
SK ZIC TOP 0W-40 (12.3)
Low SAPS(硫酸灰分0.6%mass以下)のDL-1規格品だと塩基価は概ね5未満になります。
4を切ってるものもチラホラ。
幻のMobil1 ESP Formula(DL-1適合品)は6.6あったようですが、詳細資料見つからず…
ESP Formula が直ぐ廃盤になったのは塩基価低すぎてボツにしたのかも?
DL-1優先にしたせいで他の規格の清浄性が犠牲になった。
なのでマイチェン版のESPはDL-1非対応になった。
中身が全然違うとすると納得出来ます。
キューミック DL-1 5W-30 (3.9)
ワコーズ マルチロードDL-1 (4.2)
トヨタキヤッスル ディーゼルオイル DL-1 0W-30 (5.4) ←廃番
Mobil1 ESP Formula 5W-30(6.6?)←廃番
各社DPF保護のために清浄性能を削っています。
DL-1規格はホントに良いところ無いですね。
Noack≦15%wt、硫酸灰分≦0.6%mass
Noackも5W-30なら15%も出ません。硫酸灰分だけ規制が厳しい。
だからベースオイルは鉱物油でOK。
塩基価の下限値もありませんので清浄性は各社の良心に委ねられます。
DL-1規格はエンジン保護性能に関する規格が無いに等しい。
純正DL-1はまだしも社外DL-1オイル入れられたら最悪壊れる。
国産最新ディーゼル車がACEAに移行した理由は至極当然。
DH-2も調べましたが長くなったので別で書きます。
ACEA C2/C3品も全体的に塩基価高めですが、10は超えないように配慮されてる模様。
塩基価が上がるとSAPSも上がるのでMid SAPS(0.8%mass以下)のオイルはそこの兼ね合いが必要みたいですね。
塩基価が各社結構バラバラ
Mobil1 5W-30 SP/C2 (9.2)
Mobil1 ESP 5W-30 SN/C3 (8.4)
Mobil Super3000 XE 5W-30 SN/C3 (8.0)
Mobil Super2000 5W-30 SP (7.5)これは非ACEA品
ユニルオパール OPALJET LONGLIFE 3 5W30(7.2)
レプソル LEADER C3 5W-40 (7.2)
MOTUL SPECIFIC 504 00 507 00 5W-30(6.8)
シェル Helix Ultra ECT C2/C3 0W-30(9.0)※実測値
SP品も載せます。
TEITO ULTIMATE 0W-20 SP (6.5)
出光 アポロステーション 0W-20 SP (7.4)
中国興産 SEAHORSE 0W-20 SP (7.5)
POLO EXTREME ULTRA 0W-20 SP (7.7)
ワコーズ プロステージS 0W-20 SP (9.85)
トヨタ モーターオイル 0W-20 SP (9.97)※実測値
【ここから感想文】
もしかしてベースオイルの灰分の影響で塩基価を上げられないってことあるのでしょうか?
塩基価は高い程良いけど、C2/C3は灰分が0.8%mass以下の制限があるのでベースオイルで灰分が占められていると清浄材を増やせない?
DL-1とC2/C3の硫酸灰分の差は0.2%massですが、この0.2%の差で塩基価が3程度下がっています。
仮にベースオイルに灰分を0.1%程度取られていたら添加剤を増やす余地が減りますよね。
Gr.II以上の鉱物油は硫黄分0.03%以下となっていますが、GTLなど合成油はここがほぼゼロです。
この0.03%が灰分になると何%になるのか計算出来ないのではっきり言えないのですが、GTLをベースオイルに使っているオイルは塩基価が全般高いです。
ベースオイルの灰分の影響が小さいから塩基価が上げられる?
Sって手の数何本でしたっけ?硫酸イオンで6本?
ってことは硫黄分子の3倍に増えるから0.03%の硫黄分も0.09%の硫酸灰分に増える?
(鉱油に含まれる硫黄は分子とは限らないから都合の良い解釈w)
無灰型(こはく酸イミドなど)の清浄材もあるのでGTLを使ってるオイルが単に良い添加剤を使ってるだけって可能性もありそうですが…
どなたか詳しい計算方法教えてください。。
ディーゼルに関しては自信ないので言及しませんが、(たぶん同じだけど)
API SPやACEAC2/C3規格品をガソリン車で使用するなら塩基価は高い方が良いでしょう。
松 9以上
竹 8以上
梅 7以上
不買 7以下
って感じ?
塩基価が全てではありませんが、基準を作るならこんな感じ。
灰分と塩基価がベースオイルに依存するとなると益々GTL信仰が強くなります。
ここではVHVIとVHVI+の差も出そうですけどね。
ACEA C2/C3品で鉱物油ベースで塩基価9を超えるようなオイルがあれば上の仮説は崩壊しますが、VHVIでも粘度指数が140を超えるようなオイルならありえるかもしれません。
VHVIとVHVI+の差が塩基価で見えるならVHVI+を選ぶ判断材料にもなりそう。
そう考えるとC2/C3でも塩基価は極力高い方が良いと言えるかも?
感想文なので私の勝手な想像ですけど。
余談ですが、
AMSOILのシグネチャーシリーズはSN Plus品ですが、塩基価が12.5もあります。
これは
La Taberna del Motor と言うYoutubeチャンネルから引用しています。
塩基価(TBN)がカタログ値からだいぶ剥離(12.5→9.4)していますが、これは評価法の違いですね。
カタログ値が過塩素酸法(ASTM D2896)でこの動画は塩酸法(ASTM D4379)らしい。
塩酸法の方が塩基価が低く出るようです。
とは言え中身は凄い配合です。
Ca 1276ppm はLSPI対応のオイルとしては普通ですが、Mgが1015ppmも入っています。(普通400ppm位)
あとはMoとBの添加ですね。
Caを抑えてMoとBを添加するのはトヨタのフォーミュレーションだと思いますが、AMSOILはそこにMgを更に2.5倍添加。
Caの代わりにMgで補うのは理屈では合ってますがコストはどこいった?
添加剤「全マシ」状態w
ちょっとスペック坊っぽい感じもしますがそういうオイルがあってもいいでしょう。
見えないところでケチるメーカーより余程いい。
日本の代理店も決まりましたしAMSOILも試してみたいです。
Signatureシリーズメチャクチャ高いので5qt買うと2万ですが。
20qt輸入するかな…
今回塩基価を調べているうちにZnDTPやMoDTCに遭遇する機会がありましたが、あらためて見てもどちらも別に良い添加剤では無いですね。
ZnDTPもスラッジの元だしMoDTCも同様。
「何か凄そう」とか騙されませんよう。