前編に引き続き、A君のオーリスをカイゼンすると共に
A君への啓蒙活動を継続します。
前編はこちら
<残る課題はタイヤだ>
オーリスのタイヤですが、150X Sパッケージという事で
205/55R16という立派なサイズのタイヤを履いています。
A君のオーリスは調べたところ、
新車装着タイヤがそのままついていました。
溝はギリギリあるものの、
トレッド面、サイドウォールに至るまでヒビだらけ・・・・。
このタイヤで雨の日の高速道路を走る勇気が私にはありません。
君のオーリスのタイヤ、終わってるよ、と伝えると、
「え、今まで走れてるし・・・・本当にそんなにダメなの?」
とA君は懐疑的でした。
一週間でいいからよその車のタイヤを見てごらん、
と彼に宿題を与えたところ、
「ノイマイヤーさん、僕のタイヤは確かにヤバイっすわ」
と理解してくれました。
A君自身は、スピードを出す人間でもないし、
帰省以外は高速を使わない人なので
このタイヤでも問題を出さずに走って来れたものと思います。
日を改めて、A君と再度待ち合わせ、カー用品店へ向かいました。
もちろんタイヤを交換するためです。
<オレンジの店にて>
最初に向かったのはオレンジの店。
タイヤコーナーに行き、タイヤのサイズの読み方を教えました。
店内は軽自動車・コンパクトカー・ミニバン
という3ジャンルにタイヤが分けられていて、
逆にミドルサイズハッチバックの
オーリスのタイヤが置いてありませんでした。
サイズ自体が無くて、あったとしてもトーヨーのトランパスだったりするわけです。
昔はスポーツカー用のタイヤとかもあったのに、この店のタイヤの並べ方は
昨今の売れ筋の自動車が何なのかを知らしめてくれます。
この店でA君はタイヤの相場と言うものを学んだようです。
つまり、タイヤはサイズが大きいと高いという事。
同じサイズでもブランドによって高くなるという事。
4本単品価格に工賃と廃タイヤ処分代とバルブ交換とバランス取りが必要な事。
「ノイマイヤーさん、タイヤって思ったより高いですね」
とA君は言いました。
<地元のカー用品にて>
次に地元のカー用品店に行きました。
見せの綺麗さは一段落ちますが、
タイヤの品揃えが少しだけ良い感じ。
ここでは中国タイヤとBSのレグノを見比べながら、
値段の話しになりました。
A君は日本製の産業機械を新興国に売る仕事をしています。
やっぱり日本国内の高コスト体質と新興国の製品の価格の安さは
仕事を通じて会得しているようでした。
最近は日本のメーカーも韓国製タイヤをOEで選ぶ時代だし悪くも無いよ、
と説明しましたが、彼は「せっかくだから日本製が欲しい」と言いました。
中国製のタイヤならかなり安い(全部込みで3万円など)ものもありますが、
確かに日本製のタイヤにはそれなりのノウハウもあるし、
彼自身、そこまで経済的に追い詰められているわけでもないので
探し方としては「日本製のタイヤを探す」という方向性にしました。
この店では特売品で
グッドイヤー(米ブランドだけど日本製)のLS2000という
型遅れのモデルが全部込みで5万円ポッキリだと提示して来ました。
「エコタイヤじゃないですがチラシの特売品で安くできます」
とのこと。
エコタイヤとエコじゃないタイヤの燃費の差は3%とのこと。
3%違うだけだと、あんまり距離が伸びないA君の場合、
価格差を回収できるわけもなく問題になりません。
ちょっと考えさせてください、と言い残し、次のお店へ向かいました。
<黄色い店にて>
このままさっきの店で5万円ポッキリで交換するのも調査不足の感があり、
もう少し頑張って黄色いお店も見に行きました。
ここでは韓国タイヤが3.7万円、
ピレリP7(中国製)が4.8万円、
ミシュランのパイロット3が6.3万円でした。
ピレリは幾らくらいまで安くできるか聞いたところ、
4.6万円ならいけるとの事。
ちょっと考えさせてください、と言い残し店を後にしました。
<再び地元のカー用品店>
やくざな話ですが、ピレリの値段にグッドイヤーを近づければ
さっき対応してくれた店員さんと再度商談スタート。
「他のお店でピレリP7を見て来ました。4.8万円でした。」
「今日買うなら4.6万円に負けてくれるそうです」
と伝えると、店員さんは奥へ引っ込んでいきました。
「お客さん、あれは中国のタイヤなんですよ。だから安いんです」
「グッドイヤーは日本製。5万円でもかなり安いんですよ」
製造業で働いているので中国製が恐ろしく安いのは百も承知です。
品質も性能も結構違うのも実は知っています。
なので少しでも近づいたら買っても良いなと思っていました。
例えば4.9万円なら「まー1000円値切ったし買うかー」と踏ん切りがつくと。
「グッドイヤーの物は気に入ったけど、ピレリの値段を見ちゃったし、
その値段に近づけてくれたら、今すぐ買います」
と駄目押しで交渉してみました。
店員さんが再度引っ込んで・・・・
「分かりました。全部込みで4.6万円でどうでしょう?」
との回答が。
「端数カットで4.5万円!!!」
とはA君。さすが営業職・・・・。
その要望も通り、4.5万円でグッドイヤーのタイヤをお買い上げ。
<タイヤは走りを変える>
交換前後で運転させてもらいましたが、
さすがに新品のそこそこのグレードのタイヤはすごいです。
ロードノイズもバタつきも感じられたオーリスは急に
静かになり、路面のうねりを大人っぽくいなしました。
コーナリングも本当に気持ちよくなり、
前編からのカイゼン作業で本当のポテンシャルを回復するに至りました。
やっぱりタイヤはすごいなーと思います。
以前、両親のステップWGNを黄色いお店のPB品に交換したところ、
ウエットグリップが悪くて、安かろう悪かろうだと思いましたが、
やっぱりそれなりのタイヤにすればそれなりの走りを演じてくれるものですね。
<彼らは知らないのだ>
みんカラをやっているような方々は、車に興味があり
自分でメンテナンスをするか、
メンテナンスの必要性を理解して
お店に依頼されている方がほとんどだと思います。
そういう方が今回のA君の話をお読みになると
「車に乗りっぱなし、とはけしからん!」
「そんなヤツは車に乗る資格が無い!」と思うかも知れませんが、
実際のところ私の周囲の車に興味が無い友人も大体似たようなものです。
車に興味が無い人は、
メンテナンスの必要性があることを知らないのです。
実家に車が無いA君は中古車屋で産まれて初めて車を買って以来、
ガソリンだけは入れてきましたが、12ヶ月点検はもとより、
車検制度も知らず、オイル交換の必要性も知らず、
ワイパーやウィンドウォッシャーの使い方も知りませんでした。
更にタイヤに寿命が来ていることも知らなかったのです。
別にわざわざ車の状態を悪くして
車を壊したいわけでも
事故りたい訳でもないのです。
ただ知らないだけ。
無知は罪とも言いますし、
凶器にもなりうる車を保有している事に対し
無責任さが無いとは言いませんけど、
昔と違って車が壊れにくくなった分、
車が生活に入り込んだ分だけ、メンテナンスしようという意識が
遠のいてしまったのだと推測されます。
30年前のカー雑誌では
「タイヤ交換ができない女の子」や
「FF車の後輪にチェーンを巻いた女の子」がバカにされていました。
あの頃に車に乗るという事は、
それなりに自覚が必要だったということなのでしょうね。
イマドキそんな笑い話を聞くでしょうか?
(ハイブリッドに充電は必要ですか?という新種のジョークは聞きますが)
今や女の子でなくても、
高速道路でタイヤを盛大にバーストさせて
走行車線にはみ出して
タイヤ交換ができずに立ち往生する人、
雪が降っているのに
夏タイヤでスキー場へ行って立ち往生する人がたくさん居ます。
燃費が良くなったのにガス欠にする人も居ますね。
少しでも車に興味がある人なら
「恥ずかしい」と思ってしまうことでも、
「知らない」彼らは平気でそれをやります。
「だって知らないんだもん」
A君もまさしく「知らない」まま車を転がしてきたわけですが、
今回のメンテナンス大会でオイル交換をしてタイヤも交換したところ、
A君自身にも「違い」が分かったそうです。
「全然違う車みたい」とのこと。
洗車をしてキレイなって愛着が湧いたと言ってくれました。
そんだけ前が酷かったという事なのですが、少なくともA君はこれからは
タイヤの状態に気を配り、オイルも交換し、視界が悪いときはキチンと
ワイパーを作動させて、車検もきっちり受けてくれるでしょう。
<是非おせっかいを>
A君には、他にも同じような
乗りっぱなしの人が居たら
おせっかいでも良いからアドバイスしてあげて欲しいと思います。
そしてこの日記を読んで頂いた方は、
車に一切興味が無いけど、仕方なく車に乗っているような
ご両親の車、親戚の車、友達の車をチェックしてあげてください。
お願いします。
私たち車好きは、自分達だけが車を楽しむのではなくて、
たまにそういう啓蒙活動をしたって良いと思うんですよ。
せっかく車に詳しいわけですから。
私たち車好きのちょっとした活動によって
トラブル・事故を減らす事ができれば素晴らしい事ですよね。
それでは皆様、よい連休をお過ごし下さい。