
※2012/12/23 20:00重要な論点がイマイチ曖昧だったようなので、若干追記しました

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別にボクはアンチFFではありませんので念のため(^_^;)。
以前「
FF専業メーカーが超えなければならない壁」というブログを書いたところ、ボクのブログでは珍しく60を超えるイイねを頂きました。まぁ賛同頂けた方が比較的多かったワケですが、要旨は次の通り。
・Cセグメント以下ではもはやFFが主流
・CDセグメント、プレミアムC、Dセグメント辺りはFF、FRが混在
・Dセグメント以上はFRが主流となり、FFは完全に少数派
・以上からCD~Dセグメント付近にFF車にとっての
壁があるらしい
・FF専業メーカーがこの壁を超えるためにはAWD化が有効
まぁ、こんなところなのですが、その「壁」とはそもそも何なのでしょうか?という話。
先ず最初に言っておきたいことですが、Cセグメント以下はもとより、現行アコードや新型アテンザなどのCD/Dセグメントの
最新のFF車は本当に良く出来ています。ボクはずっとホンダを乗り継いで来ましたので、現行から2代前までのアコードは良く知っていますが、ユーロRなどは本当に良いクルマで、オーナーの不満を聞いたり読んだりした記憶がほとんどありません。
また、ボクは昨年まで
FFのインテグラTYPE Rに乗っていましたが、これも本当に素晴らしいクルマでしたし、同クラスおよびひとつ上のクラスの後輪駆動(FR、MR)で、これに勝るクルマは存在しませんでした。これも「FFじゃダメ」という意見を覆すものです。
自動車評論家や一部のクルマ好は二言目には「後輪駆動が・・・」と言いますが、ボク自身は後輪駆動でありさえすれば偉いとは、全く考えていません。
※
そして、このセグメントのクルマは基本的に実用車であって趣味性は低い。大半のユーザーはクルマに興味の薄い人たちです。駆動方式に頓着するのは少数派でしょう。
にも関わらず、CD/Dセグメントより上のクラスになるとFF車は旗色が悪くなる。
以前のブログでは「プレミアムカーの壁」と表現しましたが、今日はこれについて、ボクの仮説を述べようと思います。あくまでボク個人が考える仮説なので、当っているとは限りませんが、説得力があると思ったら、イイね♪をよろしくお願いします(笑)。
結論から言いますと、FF車の壁となって立ちはだかっているモノは「
前後重量バランス」だと考えています。
FR車はBMWの50:50の完全イーブンバランスを筆頭に、もっともバランスの悪いクルマでも前輪荷重が55%前後でしょうか。一方FF車は60%以上の前輪荷重が一般的です。仮に車両の乾燥重量1500kgとすると、50%なら750kgですが、FF車は900kgと実に150kg以上も前が重く、後ろが軽いという重量配分となります。
イーブンバランス 対 アンバランス
1.5tを超える自動車の巨体がときに100km/hという速度で移動するとなると、バランスが良いものと悪いもの、どちらが良いかと比較すれば、多くの人がバランスが良い方を選ぶのは当然だと思います。こういったときの人間の感性というのは意外に侮れない。
しかし、これだけでは説明としては不十分。なぜかと言えば「じゃぁCセグメントではなんでFF車が主流になれたのか?」を説明出来ない。
この答えは「同クラス(セグメント)にFR車が存在すること」が原因だと考えています。国産車ではトヨタのマークX(古くはマークⅡですが)、日産はスカイライン(ローレルなどもありました)などです。これらの車種は当然、歴史も古く家のクルマがこれらで免許を取得して乗った若い方が多い時代もあるでしょう。つまり「イーブンバランスのクルマを経験している/乗っていた」という人口が結構多いクラスと言えます。一方、Cセグメントというか1.5~2Lクラスのハッチバックやセダンという車種郡は随分前からFFが主流となり、FR車はほとんど存在しません。存在しなければ比較のしようもない。みんなフロントヘビーでそれが当たり前、なワケですから誰も問題にしようがありません。
つまりこの壁は、もはや性能の問題ではなく、物理法則と人間の感性、そして比較対象が存在するところから来るものではないか?と思うわけです。
別に専門家が「ステアリングフィールが自然」とか、マニアが「アクセル操作で姿勢制御が出来る」などと主張していることが原因ではない。※
それに拘るユーザーは少数派で、大半は悪く言えば車音痴です(苦笑)。
BMWの3シリーズがベンチマークと言われて久しいですし、それ以前はメルセデスの190Eが優秀と言われていました。ベンチマークと言われるのは本質的にはそれが優れているからですが、現実的には多くの顧客に支持される(平たく言えば人気がある)ことで、別に専門家が良いと言おうが言うまいが、少数派のマニアが何を言おうが関係ない。市場で人気があり、競合他社が自社製品と比較したとき優位性を認めざるを得ない。だから各社がベンチマークとして自社製品に磨きを掛けるのです。
※
そして支持している顧客の大多数は所謂マニアではないのです。
BMWが拘る前後イーブンのバランス、それを土台として磨き上げた性能が多くの顧客に支持されている事実。それとフロントヘビーなアンバランスのFF車を比較されたら分が悪い。単純に根っこはここにあるのではないか?
では、「この壁をAWDなら超えられる」という主張はどうでしょうか?AWDの大きなメリットはその安定性です。イーブンバランスに対してアンバランスの何が悪いか?と言えば「不安定を感じさせる」でしょうから、アンバランスを飛び越えて高い安定性を提供出来れば、「別にこっちでも問題ない」「或いはこっちの方が良い」となる。どうやら矛盾はなさそうです。
一方、付け加えておかなければならない点があります。
ボクは「最近のFF車は本当に良く出来ている」を上記で主張しました。新型アテンザもそうでしょうし、最近数代のアテンザやアコードのオーナーの満足度は高い。彼らはFF車のアンバランスをどう考えているのでしょうか?という話。バランスに対して鈍感なのか?クルマを見る目がないとか?
忘れてはならない人間の優れた特性。順応性です。つまり"慣れ"。メーカーの主張を代弁するまでもなく、最近のFF車の性能は実用上はほとんど問題ありません。またホンダは元から、マツダも近年はFF専業メーカーです。例えばアコードやアテンザを買うオーナーはシビックやアクセラからステップアップする方も多いのでは無いでしょうか?ずっとフロントヘビーのFF車を乗り継いで来た方なら、そもそもそのバランスに慣れていて、それが実用上、ほとんど問題にならないことも知っています。そして、イーブンバランスのFR車と比較するといったことをそもそもせずに選べる。知らなければ問題も不満も無いのは道理です。
もしこの仮説が正しいとすると、FF専業メーカーがこのクラスに於いて一生懸命にFR車を凌駕しようとするのは"虚しい努力"ということになります。なにしろ敵は物理法則であり、ドライバーの感性なワケですから。
しかし、もし本当にそうだとすれば、逆に突破口も見い出せます。
CD/Dセグメントのクルマが大体、1500kg前後からそれ以上の車重ですから前輪荷重が900kg前後からそれ以上となります。もしクルマの大きさをそのままに1300kgくらいで作れたらどうでしょう?前輪荷重が60%としても800kgを下回ります。当然、現在FF車が主流となるCセグメントの多くのクルマと同じ程度の前輪荷重であり、バランスとなります。車体が軽くなれば当然、大出力のエンジンを積む必要も無くなり、トラクション性能に不利なFF車にとってはメリットもあります。FR車との比較においてはフロントヘビーは変りませんが、1500kgで前後750kgの荷重配分のFR車との比較なら、前がたった50kg重たいだけとなります。こんなクルマが登場したとしたら、それでも多くの人が「やっぱFRが良い」と言うのでしょうか?或いは「このFFは悪くない」と思うのでしょうか?
ボクはこの点には非常に興味があります。つまり、最近のダウンサイジングの潮流は今、CD/Dセグメント付近に存在していると思われる壁を、もしかしたらEセグメント辺りに押し上げる効果があるのではないか?と考えています。
新型のアテンザの2Lモデルがボクの事前予想の通りに1300kg台前半で出てくれたら、ちょっと面白いことになるかな?なんて思っていたので、旧モデル比で軽くならなかったのは個人的には非常に残念だったのですが、それでもメルセデスのEやBMWの5よりは圧倒的に軽量でした。
また、歴史的にはFF車の発展にタイヤ性能の向上が大きく寄与した点も忘れてはならない。これも壁を突破する重要な要素となるでしょう。