1月4日(火) 8日目
雨がボンネットを叩く音で目が覚めました。(5時)
だいぶん小降りになったみたいなので、そのうち止むでしょう。

エンジンをかけてライトをつけると、思いっきり水たまりのど真ん中で寝ていたことがわかりました。

水溜まりから車を少し移動させて、お世話になった宿(レストコーナー)を記念撮影。
こんな感じで北側が斜面に覆われたレストコーナーで、安心して眠ることが出来ました。
さて、早速カラハリTFPに向かうとしますか!

昨日の夕日に引き続き、本日も幻想的な日の出になりました。今日から南アフリカ本番と言えるイベントが待っているので棘がないことを祈ります。
ちょうど写真にキートマンスフープ入り口の検問のライトが写っているのですが、黒人警察官のおじさんが道路脇の椅子から少し立ち上がっただけで「行っていいよ」のハンドジェスチャーで通過させてくれます。

マリエンタールから230km走ってすでにひと目盛りぐらいガソリンが減っていたので、街中のエンゲンに立ち寄り給油することにします。
写真のとおり、綺麗で立派なガソリンスタンドだったのですが、驚いたことに南米系の顔立ちをしたおじさんやおばさんがたくさんスタンド内に座ってました。
ナミビアドルはすでにマリエンタールで綺麗に使い切っていたので、黒人の若い従業員さんに
「おつりは南アフリカランドでもらえますか?」
と、尋ねてみると、大丈夫だとのことだったので、満タン給油をお願いします。今までの感覚から、満タンにして100ドルを少し切るぐらいだと思っていたので、もしお釣りがナミビアドルでもジュースでも買えば使い切れると思ったわけです。
座っている方々から熱い視線を感じ、嫌な予感がしたのですぐに窓を閉めたのですが、案の定座っていた南米系の方々がこちらに歩いてきて、窓をノックします。
たぶん、ヒッチハイクのお願いだと思うのですが、何かトラブルが起こると嫌だったので、窓を閉めたまま、お断りのジェスチャーをします。
それでも、次々に違う人がノックしてきます。
しばらくすると、黒人のスタッフさんがレシートを持ってきたので料金を確認すると、なんと103ドル。
嫌な予感がしつつ財布の中を確認すると、今手元にあるのが南アフリカの100ランド紙幣とコインは2ランドちょい。
満タンでと言ってしまったことと、貝殻みたいに窓を閉め切って給油メーターを目視で確認して「ストップ!」と言わなかったことを軽く後悔しつつ、200ランドを手渡します。
キオスクのレジに持っていったスタッフさんを目で追いかけると、レジに立っていた黒人おばさんと何やら話している様子。二人の表情からして嫌な予感満点だったのですが、若い黒人スタッフさんが持ってきたお釣りを見てびっくり仰天、硬貨まできっちりナミビアドル!
(内心ナミビア紙幣を
おっさん紙幣と呼んでましたが、このときは本当に「なんでおっさん勢ぞろいなんだ!」と心の中で叫びました。ちなみに、この叔父様は
ヘンデリック・ウィトブーイさんでナミビア独立の父だそうです)
たった1ランド足りなかったばかりに、一昨日の夕方ぐらいからナミビアドルを減らそうと努力してきたのがすべてパーです。
「お釣りは南アフリカランドでってお願いしましたよね?」
と、つい大人げなく確認してしまったのですが、返答に困っているスタッフさんを見て、この程度のことで非を責めるようなことをしてしまったことを反省し、
「どこか、両替できるところってありませんか?」
と、尋ねてみると
「カラスバーグなら・・・」
とのこと。
どこだっけ? それ? と、思いながらチャイパッドを外して確認してみます。
う~む、南に200kmほど行った街かぁ。両替のためだけにそこまで遠回りは出来ないなぁ。。。
気がつくと南米系の方々もドヤドヤと集まってきて、あれこれ地名を教えてくれるのですが、聞き慣れない名前ばかりでさっぱりわかりません。
チャイパッドを南米系のおじさんに見せ、
「ここ(Klein Menasse)の国境を越えたいのですが、手前のアノーブの街で両替は出来ますか?」
と、尋ねてみると、発音が悪く通じなかったのとチャイパッドに表示されている文字が小さすぎて見づらそうだったので、そのままおじさんに本体ごと手渡し確認してもらいます。(なんか親切そうな人たちで、とても物を盗むような感じには見えなかったので)
「あ~、アノーブなら両替できるよ」
との、返事。
従業員さんに(南アフリカランドで)チップを払い、ナミビア97ドルを財布に突っ込んでキートマンスフープを出発です。(6時)

キートマンスフープからはC16号線を東へ向かいます。
地平線へと続くダートロードを走っていたら、自分があまりに小さいことに拘っていたことがバカみたいに思えてきました。
ナミビアのお金はそのまま残しておいて、次に来た時に使えば良いだけですもんね。(どうも、途中からナミビアドルをゼロにするということが自分の中で目的化してしまっていたようです)

お、小さなレイヨウだ!
(写真左、柵のところ。個人的には手前の廃タイヤも気になってしまうのですが)
リフタスフェルトに近いエリアまで戻って来たからか、アロエの木もちらほら出現します。

昨日のスコールで車もすっかり綺麗になりました。
ところで、今日は一日中曇りなのですかね?
だとしたら、南(写真奥)の方は晴れてるように見えますし、予定を入れ替えて、先にここより南にあるオーグラビズフォールズという滝を見に行った方が良いんじゃないかと少し悩みます。
しばらく考えてから、「まぁ、雨期に旅しているわりには雨や曇天を食らってない方だし、たまにはこんな天気もあるでしょう!」と思い直し、結局予定は変えず直進することにしました。

道路の状態は大変すばらしく、ここまで遠回りしたかいがあったというものです。

道路脇には山羊がたまに登場し、草を食べています。

お、正面方向も晴れているような気がします。

キートマンスフープから南アフリカとの国境まで200km、まだまだ先は長いです。

う~む、この辺は昨晩スコールが通過したのでしょうか?
ちょっと道の状態が悪くなってきました。
せっかく車が綺麗になったのに、これじゃぁ台無しです。

久しぶりに車線変更以外でハンドルを切りました。
すでに午前8時を回りましたが、気温は未だ22度。曇っているからですかね?

道の状態がどんどん悪くなってきます。
特に川を渡るところが厳しいです。
ぬかるみや深い轍を越えるたびに車から降りて、フロントリップラバーが外れていないか確認します。

しまいには、かなりの深さの水たまりを渡らされます。
なかなかスムーズには行かせてもらえないみたいです。

かなり大きなオサムシの仲間です。
写真を撮ってから車に戻ろうと振り返ると、フロントリップラバーの片方が完全に外れて、地面に垂れ下がっているのが見えました。
今までは真ん中が外れただけだったので、簡単に再取り付けができたのですが、ついに片方のねじ止めをしている箇所がねじ穴のところでちぎれてしまったようです。
ぶら下げたまま走るわけにもいかず、一度ネジを緩めてちゃんと取り付け直すか、いっそのこと反対側も外してパーツをトランクに放り込むなりしなければならないのですが、バンパーの下に手を突っ込んで確認してみると、ボルトとナットで止まっていたらしく、どう考えても車載工具だけでは手も足も出ません。
幸いアノーブの街の手前まで来ていたので、フロントリップラバーのちぎれた方をフロントグリルに突っ込み、そのまま走っていきます。

アノーブの街にもちゃんとガソリンスタンドがあったので、早速立ち寄ります。(8時15分)
黒人の若い従業員さんに事情を話して再取り付けの手伝いをお願いすると、快く引き受けてくれました。
別の黒人のおじさん従業員さんがフロントバンパーの下に段ボールを敷き、そこに仰向けに寝ころんで車の下に潜り込みます。さすがにジャッキアップする装置は無かったようです。
もう一人の若い従業員さんが四つんばいになって下を覗き込みながら、ネジの場所をあれこれ伝えているのですが、私の見間違いでなければ、ペンチ1本で作業をしている気がします。
慌ててトランクを開けて車載工具を漁ると、小さなレンチが一本だけ出てきました。(あとはドライバー1本)
このレンチが使えることを祈りつつ、若い従業員さんに渡すと、ちょうどボルト&ナットと同じ径のレンチだったようで一安心。
二人が車の下に潜り込んでいて、私が加わる隙間が無かったので、申し訳ないと思いつつ、作業の様子を見守ります。
気がつくとガソリンスタンドに20人ほどの人が集まってきていて(当然、全員黒人の方で子どもからおじいちゃんまで)、皆さんもの珍しげに見物しています。
皆さんと一緒に作業を見守ること15分、きっちりと取り付けできました。(もちろん、ボルト穴のところが引きちぎれてしまっていたので、ボルトとナットの挟む力だけで固定されていることになります)
従業員さんにお礼を言いつつ、「いくら払ったら良いですか?」と修理代を尋ねてみると、
「いらないよ」
と、笑顔の返事。
「ありがとうございます!」
と、答えつつ、
「じゃぁ、ガソリンを97ドル分、じゃなくて、90ドル分入れてもらえますか?」
と、チップで7ドル渡すことを思いつきつつお願いすると、
「え? 90ドル分だけでいいの?」
と、確認されたので、キートマンスフープで入れたばかりなので、90ドル分入るかどうかも怪しいことを伝えます。

ガソリンを入れてもらっている間、見物に来ていたおじさんに、
「水溜りで外れたんですよ。この後も道の状態悪いんですかね?」
と、尋ねてみると
「悪いよ~」
とのこと。
さらに
「国境越えて南アフリカに行っても道の状態は悪いんですかね?」
と、尋ねてみると
「悪いよ~」
と、まったく同じ調子で返事を返され、がっくり肩を落とします。

(ガソリン単価が高かったからか)きっちり90ドル分入り、何度もお礼を言ってから、ガソリンスタンドを出発しました。
黄色いシャツの方は見物の人で、車の後部に少し写っている白い帽子に赤いシャツの方が車の下に潜り込んでくれた若い従業員の方です。

さて、街中を抜けて国境に向かうわけですが、なぜか国境に向かう道が見あたりません。(8時45分)
Uターンして戻ると、なんとお世話になったガソリンスタンドのところが交差点になっていて、そこを曲がらなければならなかったのでした。
せっかく皆さんにお礼を言いながら手を振って出発したのに、再びガソリンスタンドの前を通過するのはちょっと恥ずかしかったです。
(きっと、彼らは出発直後に「間違った方向に行っちゃったよ」と思っていたのでしょうが)

さきほどおじさんに聞いたとおり、川通過注意の看板が早速登場します。
一カ所、どうにもならないぐらい泥沼の川跨ぎがあり、そこでフロントリップラバーが例によって外れたのですが、幸い先ほどネジ止めした場所は外れなかったので、胸をなで下ろしつつ取り付けなおします。

レイヨウが居たのかと思ったら、ロバの牧場なんですね。

先ほどの酷い川跨ぎを越えてから国境に近づくにつれ道の状態も次第に良くなり、南アフリカ側も同じ状態だといいなぁと期待します。
あ!
しまった!
ガソリンスタンドのお世話になった二人にチップ渡すの忘れた!!
引き返すかどうか悩んだのですが、先ほどの川跨ぎ箇所もありますし(そこで、ネジ止め箇所が外れたら、なんの意味もないですし)、ちょっと思うところもあり、そのまま先に進みます。

キートマンスフープから3時間ちょい、ナミビアの国境(Klein Menasse)に到着しました。(9時20分)
事務所の中に入ると、黒人の若いスタッフが対応に当たってくれます。その方がオバマ大統領を若くした感じで、いかにも清廉潔白そうな人だったので、先ほど考えた作戦を実行に移します。
「あなたは、このオフィスに住んでるんですか?」
「はい、そうですけど?」
「アノーブの街に行くことはありますか?」
「えぇ、もちろんありますよ」
「実は、かくかくしかじかでして、大変お世話になったスタッフの方にチップを渡したいのですが、お願いできませんでしょうか?」
「いいですよ。赤い制服を着たスタッフが居るガソリンスタンドですよね?」
「そうです! 日本人で青い小さな車に乗ってたと言えばわかるはずです。じゃぁ、これ、お願いします」
と、残っていた7ドルを手渡したのでした。
これで、ナミビアドルは綺麗さっぱり無くなりました。
ヤングオバマさん、頼みましたよ!
出国審査で手荷物検査は無いと思っていたのですが、車のところに立っていた警察官にトランクを開けるように命じられます。
「ファイアーアーム(武器)は持ってる?」
と、突然聞かれて面食らったのですが、
「いえ、持ってませんよ」
と、答えると、
「では、行って良し」
と、トランクは開けさせられたものの、特に中を調べるでもなく検査は終了しました。

続いて南アフリカの国境事務所です。
なんか、道路が舗装されているように見えて嬉しくなってきました。(スタンドに立ってたおじさん、南アフリカの道路状況についてテキトーに答えていたみたいですが、考えてみたら当たり前ですよね)
事務所で入国手続きを終えて、車に戻ると、若い黒人女性警官が「How are you?」と声をかけてきたので、フロントリップラバーの件と舗装道路を見たうれしさから、つい「いやぁ、大変な道でした!」と正直に答えてしまい、「あら~大変だったわね~」と、婦警さんにねぎらわれてしまいました。
ついでに南アフリカ側の今日の天気を尋ねてみると、今日は晴れるんじゃないかと嬉しい返事。
そして、パスポートと運転免許証を提出し、指示されたとおりトランクを開けます。
別の男性警官がトランクの中を覗きこみながら、
「キラーウェポンは持ってる?」
と、真顔で質問してきたのが妙におかしくて、笑っちゃいけないとこらえつつ、「持ってません」と答えます。
南アフリカサイドの持ち物検査は入念で、助手席のドアも開けさせられます。
そして、そこに転がっていたのが三脚ケースに入った超望遠レンズ。俄然興味を示した女性警官が「これは何?」と尋ねてきたので、「天体望遠鏡です」と答えると、ケースから中身を出すように指示されます。
中からレンズを取りだし、デジイチに取り付けつつ、これでカラハリTFPで動物をアップで撮りまくるんだと熱弁したところ、男性警察官がファインダーを覗いて「こりゃすごい!」と喜んでました。
さらに、ボンネットも開けろと指示が出ます。
ハンドルの下あたりにレバーでもあるだろうと探し始めたのですが、全然見つかりません。
男性警察官に探すのをバトンタッチして、グローブボックスから取説を取り出して、該当ページを探します。
結局男性警察官がレバーを発見して(2人で5分近く探していた気がします)逆に場所を教えてくれました。
エンジンルームを3人で眺めて検査終了。
ようやく入国許可が下りたので、車に乗ってエンジンをかけたら、女性警察官が慌てて走ってきます。
「これ、返すの忘れてました!」
と、いいながらパスポートと運転免許証を渡されました。
いやぁ、もらい忘れてたら、次にどこで気がついたのでしょう・・・。考えただけでもぞっとしますが、このときは笑いながら受け取りました。
気がつくと、ナミビアの7ドル託したヤングオバマさんが南アフリカ国境に遊びに来ていて、こちらの警察官と談笑しているのが見えました。

なんともまぁ、のんびりした雰囲気で南アフリカ入りです。(9時45分)

看板の「Kgalagadi」で「カラハリ」と読みます。
さて、これからカラハリTFPのトゥイーリフィエーレン(Twee Rivieren)のゲートに向かうわけですが、さっそくチャイパッド(Google Map)に掲載されていない道に乗ってしまいました。
しかし、これがちゃんと舗装されているし、方角的にはあってるので、そのまま進んでいくことにします。

山羊が交通整理を行う小さな街を通過。

街外れではいつもの通りヒッチハイク待ちの方がいます。

制限速度120km、ってことは、かなりしっかりした道がこの先も続いているのでしょう。
さすが南アフリカ! ほとんどダートロードだったナミビアとは違います。

赤い地層、見えますでしょうか?
カラハリ砂漠の核心部に近づいてきた実感が沸いてきます。

地図上では湖の上を走ることになっていて、乾燥地帯では涸れて水が無いのが普通なのですが、ここは本当に水が満たされていました。

湖というよりも、スコールで出来た超巨大な水たまりといった感じでしょうか。

たま~に柵の内側に居るんですよね~、山羊が。
こちらは時速120kmで走っているので、ヒヤヒヤもんです。

お~、ロバの馬車。
手を振って挨拶したら、手を振り返してくれました。

昨日、ウイントフックの街で買ったホットドックを食べようと紙袋を開けたら、なぜか中からチョコレートパイが出てきました。
なぜかも何も、注文を間違えたようです。

相変わらずGoogleMapには登録されていない道を走ってますが、あの湖(水たまり)を越えたところで、トゥイーリフィエーレンに向かう道に合流できそうです。

お~、ちゃんと合流しました。
舗装路をまっすぐここまで走ってきたので、えらいショートカットした気分です。
交差点の脇に子どもが寝そべってるように見えますが、まぁ、ここは南アフリカですしね。(理由はわからないのでアフリカならではってことにしました)

トゥイーリフィエーレンに向かう道は、カーブで60km、直線で80km制限でした。
これまで120kmペースで走ってきたので、えらい遅く感じます。

シャカイハタオリの巨大な巣が至る所にありました。(木の枝にくっついてます)

あ! 道路脇にブッシュマン!
が、住んでるわけがないので、減速せずにスルーします。
(他にも一カ所こんな場所がありました。お土産売りだそうです)

遠くから見えていましたが、本当に真っ赤っかです。

道路上にたくさん居た手のひらサイズのオオヤスデ(
Archispirostreptus sp.)をなんとか手に乗せようと頑張っているところなのですが、危険を感じると背中から油分を出すらしく、手が滑ってつまみ上げられません。
しかも、その油分が黄色く臭うので、手が臭くなってしまいました。(写真でもすでに黄色くなってます)
あとで、パークガイドの方に教えてもらったところ、背中からつままずに、普通に手に載せればよかったのでした。(もしかしたら噛まれるかもと背中に拘りすぎてしまいました)
まぁ、オオヤスデくんにとっては良い迷惑だったでしょうが。

キートマンスフープから5時間、ようやくカラハリTFPのゲートに到着しました。(11時15分)

ここ(緑色の場所)は野生動物に出会えるいわゆる動物保護区なのですが、南アフリカならクルーガー国立公園が有名ですし、ナミビアにもエトシャ国立公園というところがあって、例えばビックファイブに効率よく会いたいのならそちらのほうが断然有利だと思います。
(※ビックファイブとは、その昔ヨーロッパから来た人間様が動物狩りをするときに、銃を恐れず立ち向かってくる危険な動物5種類のことで、ライオン、豹、バッファロー、象、サイです。仕留め損ねるとハンター自身が命の危険に晒されるので、これを仕留めたのが勲章だったのだと思います。それが今ではナショナルパークで出会いたい動物5選に変化しており、
南アフリカ紙幣はこの
ビックファイブのデザインになってます。ゆえにナミビアのおっさん紙幣じゃなくてウィトブーイさん紙幣と容易に見分けがつくわけです)
私も旅の計画を立て始めた当時は上記どちらかの国立公園か、ボツワナまで足を伸ばしてオカバンゴデルタなんかに行ってみようかと思っていたのですが、とある写真家の手記を発見し俄然ここに興味を持ったという次第です。
一番魅力に感じたのは、「日本人にあまり知られていないということ」と、ビックファイブは無理(そもそもサイや象、たぶんバッファローも居ません)ですが、こだわりは無いので(私の場合植物や昆虫ですら興味の対象範囲なので)、マイナーで空いているであろうカラハリTFPがすごく魅力的に感じたのでした。
ところが、マイナーだと思っていたのはとんだ勘違いで、現地の人たちにとってはクルーガー国立公園に勝るとも劣らぬ魅力がある場所に位置づけられており、ホリデーシーズンにはキャンプ場の予約を取るのも困難だということに気がついたのは出発の2週間ぐらい前でした。慌てて予約を入れたところ、公園内にいくつかあるキャンプ場はほぼすべて予約で埋まっており、唯一空いてたのがゲート入ってすぐのところにあるトゥイーリフィエーレンだったわけです。(本当は公園内をキャンプしながら渡り歩きたかったんですけどね~)
ここに来るきっかけになった写真家が「
カラハリ-アフリカ最後の野生に暮らす」という今は絶版になった本をお勧めと紹介していたのでAmazonから古本を入手。かつて(1970年代)、現地の人ですら誰も住んでいなかった未開のカラハリ砂漠のど真ん中(ボツワナ側)にアメリカ人の若い夫婦が7年間住み込んで、人間を見たことがない動物達に囲まれて主に肉食動物の生態調査を行った手記なのですが、これが死ぬほど面白くて、電車の中にザックを置き忘れるは、飛行機の中で涙を流して泣くはの大盛り上がりを見せていたわけです。なので、(カラハリと言っても彼らが調査していた場所とは全然離れた場所ですが)カラハリTFPに来るのが楽しみで仕方がなかったわけです。それは彼らが調査した対象の肉食動物(セグロジャッカル、ブラウンハイエナ、カラハリライオン)に会ってみたいというだけでなく、彼らが体感したカラハリ砂漠の雰囲気を少しでも味わってみたいという気持ちでした。(まぁ、そうは言っても国立公園内の動物はそれなりに人間のことを知ってしまっているのでしょうが)。そして本のサブタイトルが示すとおり、手つかずと言える状態で残っていたのはアフリカと言えどもボツワナ中央部のカラハリ砂漠ぐらいしか当時ですら残っていなかったわけです。
いずれにしろ、動物好きな人には強くお勧めできる1冊です。安い中古本が出回ってるみたいですので、ぜひ読んでみてください。(まぁ、普通の人は泣かないと思いますから、そういう期待はしないでください(笑))
まずは受付に行き、入園手続きを行います。キャンプ場の予約を取るときにすでにキャンプ場利用料金はオンラインで支払っていたのですが、入園料は払っていなかったので、ここで徴収されます。
2泊申し込んでいたので、1日120ランド、3日分で360ランド(4500円)でした。あまりの料金の高さに、つい、
「3日目は朝一でここを出発するのですが。。。」
と、口走ってしまったのですが、それで割り引かれるわけないですよね。
カラハリTFPをネットで予約するときに、つい勢いで別のナショナルパークのキャンプサイトを明後日の日付で予約してお金を払ってしまっていたのですが、後からよくよく調べてみたらここからけっこうな距離があることが判明し、明後日は朝一にカラハリTFPを出発して夕方に次のキャンプ場に到着というスケジュールになってしまったのです。これは今考えてももったいないことをしました。(「3日目の入園料が」という意味じゃないですよ、2日じゃとても回りきれないという意味です)
受付を済ませて公園内規則やキャンプ場の案内を間単にしてもらい、さっそくゲートを通過して公園内に入ります。

入ってすぐの場所がトゥイーリフィエーレンなので、ひとまずキャンプ場の様子だけ確認してから先に進むことにします。

入ってすぐのところに大きな水たまりがあり、トンボが集まっていました。
受付で、2本あるメインの道路のうち1本は水が溢れてしまって通行止めになったと言われたので、ここ最近スコールが来たのでしょうね。
川越えで外れたフロントリップラバーの件もあるので、深い水溜まりが道路を塞いでいないことを祈ります。

(公営・私営含めて)動物保護区には大きく2つのパターンがあって、一つはガイドの乗ったサファリ(こちらではかつてのハンティングの名残からかゲームドライブと呼んでます)専用カーに乗って動物観察をするタイプ。
もう一つは自分の車で自由に敷地内を走り回ってかまわないけど、指定された場所以外で車から絶対に降りては駄目なタイプ。
カラハリTFPは後者のパターンですので、自分のペースで走り回れるのは嬉しいのですが、動物は自力で見つけなければなりませんし、私の車の場合、万が一フロントリップラバーが外れた時に困ったことになりそうです。
さらに、カラハリTFPでは夜7時までに必ずキャンプサイトに戻らなければならないというルールもあり、公園内にもゲートがあります。
公園内ゲートを通過するときに、やっぱりテントぐらいは張っておいた方が良いかと思い直し、一度Uターンしてトゥイーリフィエーレンに戻ります。

キャンプ場に行く前に売店に顔を出してみると、なんとミートパイがあるではないですか!
早速水と一緒に購入です。
キャンプ場には受付が見あたらなかったので、売店レジのお姉さんに場所を教えてもい、そこに向かいます。建物のドアを開けると中は暗くなっており、スライドを使った説明会の真っ最中で、視聴者が一斉にこちらを振り向きました。
私に気がついた白人のスタッフのお姉さんが走り寄ってきて、小声で「どうしました?」と声をかけてくれたので、「テントを張りたいんですけど」と答えると、建物の外に出てきて「予約してるんだったらどこに張っても大丈夫ですよ」と教えてくれます。

右が売店、左の大きな建物がレセプションでスライド上映会をやっていた建物です。(後から撮影した写真です)
ちょうど目の前にカラハリTFPの大きな地図看板があったので、
「どこかお勧めのスポットはありますか?」
と、スタッフのお姉さんに質問してみると、
「昨日はここでライオンが見られたみたいですよ」
と、地図の一カ所を指さします。
「実はカラハリの本を読んだのですが、どうしてもブラウンハイエナに会いたいんですけど、どこかに居ますかね?」
と、質問してみると、
「まぁ、なんてすばらしい! でも、ブラウンハイエナは夜じゃないと活動しないし、臆病だからなかなか会えないと思いますよ」
とのこと。(もちろん、それは私もわかってます)
「曇りの日なんかは、早朝に見かけたりすることはあるんだけど」
「なるほど。ここってナイトゲームドライブってあるんですか?」
「ありますよ。あそこの受付で申し込めますよ」
とのことだったので、お姉さんにお礼を言い、早速メインゲートの受付に戻って明日のナイトゲームドライブの予約をします。料金は明日払ってねとのことだったので、集合時間と場所だけ確認してキャンプサイトに移動します。
まだ、空いてる場所がたくさんあったので、テントの出入り口がキャンプ場の外を向くように設置します。
設置したテントを見ると何か違和感が。。。
あ! ポールが折れてる!!
たぶん、ポールのジョイント部分の組み付けが甘く、テントのテンションをかけたときに、そこに力がかかって折れてしまったのだと思います。
一応予備ポールは持ってきていたので、その場で交換しましたが、強風で折れたのならともかく、自分のミスで折ってしまったのがなんとも情けない気分です。

盗難にあう可能性もあったので、テントの中身は空にしたまま、ペグでしっかりと固定してから出発です。

出発してすぐに、シャカイハタオリの巣の上にも居たコシジロウオオワシが出迎えてくれました。

国境のお姉さんも言ってましたが、今日は本当に良い天気になりました。

とは言っても、日差しがかなり強いので、動物たちが木陰に隠れて活動しない可能性が高いんですよね。(贅沢な悩み)
気温は31度ですが、日差しは刺すように強烈です。

お、ダチョウの雌ですね。
ダチョウは今までもさんざん見てきたので、ここはスルー。

えーっと、あのレイヨウは・・・・(日本から持っていった図鑑をめくり)、オリックス(
Oryx gazella gazella)です。
こちらではゲムズボックと呼んでいて、カラハリTFPのマスコット動物だそうです。

超望遠使ってこのサイズですから、けっこう距離が離れています。

野生動物に出会えると嬉しくなりますね~。

雌はいないのかと思ったら、雌雄ともに角が長いのだとか。

いや、本当に長いです。レンズの焦点距離が長すぎて、納めるのにえらい苦労しました。
(写真でも足がまるまんま写ってませんが)
丘と丘の間にある細長い窪地に下りて来ました。
すると、窪地に生えている木の下に草食動物が数頭居ました。
早速車を停めて観察してることにします。

オグロヌー(
Connochaetes taurinus)とスプリングボック(
Antidorcas marsupialis)です。
(左上にオグロヌーの子どもが写っていたのは帰国後に写真を見て気が付きました)

こんな感じの場所に居て、最初、木陰に数頭居るなぁと思って見ていたのですが、実はたくさん周囲にスプリングボックが居ることに超望遠で覗いてから気がつき驚きました。
スプリングボックはカラハリの土の色に見事に同化した配色なんですね。
遠くに居るスプリングボックを発見するときは、たいてい「違和感」のようなものがきっかけになります。視界の片隅で景色が少し動き、なんだろうと思って車を停めて観察すると、スプリングボックを1匹発見します。1匹発見すると続いて周囲のスプリングボックが急に見えるようになってきて、実は数十匹の群れだったという感じです。
ダイビングで
ホウセキキントキの群れなんかを発見するときがまさにそんな感じです。

ちょっと距離が離れているので双眼鏡で観察してみますが、双眼鏡、やはり便利ですね~、よく見えます。

誰にせかされるわけでもないので、思う存分観察します。(レイヨウを熱心に観察していたのは私ぐらいなもんでしたが)

こちらはオグロヌーの群れです。

クロオウチュウ (
Dicrurus adsimilis)
英名はフォークテイル、尻尾がフォークのような形になってます。

お~、排泄中(失礼)のセグロジャッカル。

さすがカラハリTFPに住んでる個体だけあって、人間に餌をねだる仕草なんかまったくみせずに、たぶん彼の巡回ルートであろうコースを立ち止まることなくスタスタと歩いて行きました。

あ!
そっか!
ここは細長い窪地じゃなくて、川底に沿ってコースが造られてるんだ!!
車の中で一人で大喜びです。
というのも、「カラハリ-アフリカ最後の野生に暮らす」の著者である二人の若い研究者が7年間暮らした場所はまさにカラハリ砂漠の涸れた川底で、川底が砂漠に住む動植物の生態系にどれだけ重要な役割を果たしているかが、きっちりと説明されていたからです。

なるほどなぁ、どおりで道路脇にレイヨウ達が集まってきていて、簡単に出会えるわけです。
レイヨウが集まれば、当然朝晩は肉食動物による狩りが行われるわけで、運が良ければそんなシーンに出会えるという寸法ですね。

受付で渡された地図を改めて確認してみると、メインの道はアウオブとノソブの2本の川に沿って作られていることがわかります。
で、私が泊まっているキャンプがある場所が一番下のトゥイーリフィエーレンですが、調べてみたところ、この地名はアフリカーンス(オランダ)語のようで、英語表記で横にTwoRiversと書いてありましたので、2本の川の合流地点という意味になります。(キャンプ場自体はノソブ川にあるらしいです。ですからマタマタに向かうために、一度土手を上がってからアウオブ川に入ったみたいです)

ちなみに、写真に写っている看板は川向かいの土手にある展望台のサインで、展望台はありますが、そこで車から降りることは出来ない場所です。
念のため川を渡って展望台に上がって確認してみましたが、とくに何の動物も見当たらないので戻ってきました。

川を渡っているところです。(ちゃんと渡る為の道があります)

地図に記載されている各ポイントは風車で地下水をくみ上げる装置の付いた水場になっていて、乾季(冬)には動物達が水を求めて集まってくるようにデザインされているみたいです。
写真の場所はアウオブ川に2箇所あるパーキングで、車から降りることが許されているトイレと休憩所付きのレストコーナーがあります。
写真にはちょうど土手を下ってきた四駆が写ってます。

ちょっと車から降りてみたくなり、レストコーナーに立ち寄りました。
写真に写っているとおり、ベンチとトイレ、あとはパネル展示の簡単な資料館があるだけなので、車から降りられること以外に特に良いことは無いです。
これが乾季だったら足元の水場に動物達が集まって来ているんでしょうが。

というわけで、再出発しつつクーラーの効いた車内でミートパイを頂きます。
う、、、、、美味い!!

え~っと、ノソブ川に移動するのに35km。
マタマタまで80km。
明日ノソブ川方面に行くことにして、本日は直進してマタマタ方面に向かうことにします。

ちなみに公園内の道路は50km制限で、「レーダーで監視してますよ」と看板が出ていますが、動物を探しながら走ると、時速30kmがせいぜいです。
私も20kmぐらいでノロノロ走っている時間が長かったと思います。
くわえて、アウオブ川の2つのパーキングに挟まれた区間は洗濯板状態なので、なおさらペースが落ちます。

なので、今までみたいにアベレージ100km! みたいな感覚で計画していると、全然予定が狂ってしまいます。
(この時はまだ動物達を探すことに夢中でそのことを強く意識していませんでしたが)

スプリングボックの群れがのんびりと道路を渡るのを待つのも楽しいものです。

空を舞う猛禽類。
ふと、ここで残りの距離と必要な時間を計算して、実はマタマタまで時速50kmで走って、帰りも時速50kmで走り続けなければゲートが閉じる時間に間に合わないことに気が付きました。(15時15分)

別にマタマタにたどり着くことが今日の目的では無いので、そろそろ引き返すことにします。

お、ヘビクイワシですね! (
Sagittarius serpentarius)
ナビブ砂漠でも見ましたが、身長1m以上はある大型の猛禽類です。

これは別の場所で発見したヘビクイワシのつがい。

コブラ狩りでも見せてくれないかなぁと思っていたのですが、どうやら夫婦のお目当ては水溜まりの水だったようです。
邪魔しちゃ悪いと思って、しばらく待っていたのですが、私もそろそろUターンして戻りたい時間になってきたので、そろりそろりと前進します。

さすがに逃げていきましたが、1匹はそれでも水溜まり付近に残り、水を飲み続けていました。
その後、ちょうどノソブ川へと続く枝道があったので、そこでUターンします。

再び水溜まりにさしかかったところで、オグロヌーが歩いてきました。

一応こちらを意識しているみたいですが、そのまま水溜まりに向かって歩いて行きました。

こちらも大型の鳥で、アフリカオオノガン (
Ardeotis kori)です。

堂々とした振る舞いが印象的でした。
(歩き方はヘビクイワシに似てましたが、こちらはツルの遠い親戚です)

道端に居たケープアラゲジリス。(
Xerus inauris)

尻尾を立てて日避け代わりにしてます。
外気温を確認すると、すでに38度まで上昇していました。

こちらは木陰でくつろいでいるところ。
まぁ、なんというか、仕草が「おじさんっぽくて」、見ていて大変和む動物でした。
(左奥で別の個体が巣穴を一生懸命掘ってます)

あちらこちらで見かけるスプリングボックの群れですが、「カラハリ-アフリカ最後の野生に暮らす」の本に書かれていたとおり、こちらが車の中に居る分には、こちらの存在をほとんど意識していないみたいです。
(もちろん車の外に降りたらどうなるか試したわけではないですが)

道路脇に居る場合は、そのまま群れの真ん中に車を停めると、間近に行動を観察することが出来ます。

最初、河床を舐めているのかと思っていたのですが、実は生えたての草をむしるように食べていて、エンジンを止めると草を食いちぎる音が「ボリボリ、ボリボリ、、」っと、聞こえてきます。

草だけでなく、木の葉っぱなども含めて、常に忙しなく何かを食べながらゆっくりと移動していきます。
群れは広い面積に散らばってしまっているので、どのぐらいの頭数なのか把握が難しかったのですが、だいたい目算で数えて100頭前後です。
そして、繁殖期を除くと群れはすべて雌と幼獣で構成されているのだとか。
真っ昼間は木陰で休んだりしている個体が多かったのですが、16時を回るころになると、ゆっくりとは言え、進行方向が決まっているみたいで、ある程度固まって動いているように見えます。
群れのしんがりには見張りの個体が居て、草を食べる時間よりも周囲に目を光らせる時間の方が長く、常に「ブ!、ブ!」と短い声で鳴きながら、群れに状況を知らせているようでした。
こちらが車のエンジンをかけたりカメラを構えたりすると、見張り役の個体だけはちゃんとこちらを見つめて、状況確認をしようとしているみたいでした。
カメラを抱えて真剣にスプリングボックの群れを眺めていたら、後ろから走ってきた質実剛健な四駆の助手席に乗っていた若い白人女性に「何か居るの?」と、尋ねられてしまいました。
「スプリングボックだけですよ」
と答えると、笑顔で手を上げ走り去っていきました。

カラハリ砂漠の土は赤と言うよりも、綺麗なオレンジ色ですね~。

ピンボケですが、空を舞っていた猛禽類、その2。
出発前のトンビでの練習はここではまったく活かされませんでした。

木陰に何か居るなぁと思ったら、普通のカラスでした。
こんなところにも住んでるんですね。

スプリングボックの群れがさらに固まって動くようになってきました。
肉食動物が狩りを始めたのでしょう。

お! 車がたくさん停まってます。きっと肉食獣か何かが居るんだと思います。

なんと、チーターがハンティングを終えて、獲物にかじりついているところでした。(
Acinonyx jubatus)
(以下、残酷なシーンがアップで登場しますので苦手な方は読むのをお控えください)

道路からそれほど離れていない場所で、数台の車が目の前に停まってますが、そんなことはお構いなしにかぶりついています。
内臓の残り具合から考えて、つい先ほどハンティングを終えたばかりのようです。

食べながらも周囲に対して常に警戒しているみたいで、たまに顔を上げて見渡していますが、別に我々が気になっているということでは無いみたいです。

肉を切り裂く音だけが響いてきます。

カラハリ砂漠における獲物横取りの序列は(「カラハリ-アフリカ最後の野生に暮らす」によると)、ライオン、ブチハイエナ、ブラウンハイエナ、豹、チーター、ジャッカルというような順序だったと思いますので、実は内心ブラウンハイエナが奪いに来ないか期待していたりします。

持ってきて良かった超望遠レンズと双眼鏡。

あ! 何か来た!
と、思ったら、チーターがもう一匹。

後からやって来たチーターに獲物を譲り、見張りをするようです。
親子なのでしょうか?
それとも兄弟でしょうか?

仲良く食べているなぁと思っていたら獲物の奪い合いが始まりました。
ここで、はじめて獲物の頭部が見えて、スプリングボックだったということがはっきりとわかりました。

動物園では見られないシーン、そして表情です。

いつまでも観察していたかったのですが、残念ながらタイムアップです。
他の方々は1台を除いて全てすでに走り去っており、私もここから時速50kmペースで走らないと19時半にキャンプ場手前のゲートに戻れない計算です。

ちなみに最後まで残っていた1台は、先ほど声をかけてきた質実剛健な四駆のカップルで、フロントウインドウを倒して業務用のビデオカメラとウン十万、下手したら百万以上はしそうなレンズをつけたデジイチをチーターに向けていました。
私が袖を引かれる思いで出発するときも、焦ることなく撮影に集中していたので、プロのカメラマンか何かで特別な許可をもらっていたんじゃないかと思います。

いつの間にやら空に雲が広がり、雨もぱらついて来ました。
風も強くなっていて、テントが飛ばされていないか心配になってきました。
気がつくと気温も下がっており、すでに26度になってました。

本日最初に出会ったスプリングボックとヌーの群れですが、ちょうどヌーの群れが川床を引き上げ去っていくところでした。

ヌーの子どもです。

後は脇目もふらずにぴったし時速50kmで走り続けます。
道路の先に落ちてる黒い長い物体はアフリかオオヤスデです。
ちゃんと踏まないように避けて走っております。

19時22分にゲートを通過。

気になっていたテントですが、ちゃんと固定されていました。
昼には空きが目立ったテントサイトはすでに満杯になっており、皆さんバーベキュー(こちらではブラーイと呼んでるみたいです)を始めてくつろいでいます。
どこのテントサイトでもそうなのですが、コンパクトカーで旅しているのは私ぐらいなもので、皆さん四駆の横に巨大なテントとタープにダイニング、発電機にクーラーは標準装備の様子。
快適バーベキューもちょっと羨ましかったですが、ゲートが閉まるギリギリまで河床で粘ればチーターの補食シーンに出会えたりするのにもったいない話だなぁとも思ってました。
そう言えばと思い出し、施設内のガソリンスタンドに行ったのですが、すでに閉まってました。。。
さらに明日の朝飯でも調達しようと売店に顔を出したら、こちらもすでに閉まってます。
ぎりぎりまで粘ったら粘ったなりに困ったこともあるわけです。。。
朝食の代わりになる食料は日本から持ってきているので大丈夫なのですが、問題はガソリンです。
カラハリTFP内のガソリンスタンドはここ(トゥイーリフィエーレン)とマタマタ、あとノソブ(川の名前ではなくて、中間地点ぐらいにあるキャンプ場)の3カ所にあるのですが、残量から考えると明日は近い距離にあるマタマタへ最初に向かわなければならないようです。
(早朝・夕方が肉食動物のハンティングタイムなので、ガソリンスタンドが開いてガソリンを入れてから出発という選択肢はそもそも考えていませんでした)
まぁ、本日と同じコースになってしまいますが、同じ動物が同じように居るわけじゃないでしょうし、これは仕方がないところです。

各サイトには電灯、テーブルと椅子、そしてバーベキュー用の台があります。
(電源装備のサイトもあります)

今回はきちっと風除けをしつつお湯を沸かし、インスタントラーメンと魚の缶詰、いつもの錠剤プロテインドリンクセットを準備します。
アルコールストーブの取り扱いにもだんだん慣れてきました。
そして、暗くなるにつれて虫が大量に集まってきました。特に電灯の方はすごいことになってます。
キャンプ場ではよくある話ですが、今回の旅では初めての現象です。
虫たちにラーメンや缶詰にダイブされたらたまったもんじゃないので、早めに腹に放り込みます。(味わうような食べ物でもありませんし)
シャワーを浴びたのですが、まだ気温が下がりきっておらずけっこう暑かったので、テーブルのところで風を受けながらガイドブックや今日もらった地図でも眺めようかと思っていたのですが、どんどん虫が集まってきて、終いには服の中まで入ってくるぐらい大人気状態だったので、ファンを邪険にあしらう人気アイドルのようにテントの中に退散しました。
しかし、髪の毛や体にまとわりついていた虫の払い落としが甘く、けっこうな数の虫をテントの中に招き入れることに・・・・
テント内で明日以降の調べ物をしつつ、虫を発見しては指でつまんで外に退出いただいておりました。
メールと天気予報でも確認してみようかと、ナミビアでは使えなかった香港ハチソン3のプリペイドSIM入りWifiルーターを取り出し電源を入れてみます。
さすが観光地、アンテナ3本立ちます。
早速PCで接続してみると、南アフリカに入国して6日目にしてようやくインターネットに接続できました。
南アフリカ国内企業のプリペイドSIMカードは入手が面倒という情報があったので、香港の通信会社のプリペイドSIMとSIMフリーのWifiルーターを事前購入して持ち込んだわけですが、当然南アフリカでは国際ローミングになるのでパケット代はDocomoやソフトバンクと一緒でバカ髙です。
プリペイドにしたことで高額請求を防ぐという意味合いぐらいしかなく(一昨年、オーストラリアで天気予報をちょっと確認しただけで3万円ほどの請求を食らったので)、メール確認を優先し、天気予報は画像データの表示をオフにしてパケットを節約するように設定して、プリペイド分を使い切ったら終わりという使い方にしたわけです。
まずはメールを確認し、緊急のメールが入っていなかったことに安心しつつ、実家に生存報告メールを書きます。(親宛なので電報並の短文ですが)
メール送信ボタンを押しますが、なぜか送信されません。
なんでだろうと思いつつ、ブラウザーで確認してみると、パケット通信がすでに切れてしまっています。
Wifiルーターのアンテナはあいかわらず3本立ってますし、Wifi接続も問題ないみたいです。
プリペイド分(4000円分ぐらい)使い切ると言っても、まだメールの件名と内容を少し読んだぐらいで、キロバイトレベルの通信をしたに過ぎません。
嫌な予感がしてウイルス対策ソフトを確認します。
あ~! しまった、自動更新を切るのを忘れてた!!
というわけで、PCをネットにつないだ瞬間にウイルス対策ソフトのアップデートが裏で自動で行われ、自宅に電報メールを書いているうちにあっという間にプリペイド分を使い切り、送信ボタンを押す前に息絶えてしまっていたのでした・・・・
ネットに接続できなければ、SIMカードに追加でチャージすることも出来ません。
「無事に生きてるからね~」と心の中で念じつつノートPCを閉じます。
PCの電源を入れたことで、テント内に入り込んだ虫たちが画面に集まってくれたので、効率よく追い出すことが出来たのは良かったです。
いや~、しっかし、静かなテントサイトですね~。
夕方までは大量の小鳥が飛んでいましたし、先ほどまでは周囲の話し声が聞こえてましたが、今は本当に静かです。皆さんも寝てしまったんでしょうね。
では、私も寝るとしますか!
お休みなさい。
12時頃、一度目が覚めたので、外に出てみました。
満天の星空です。(電灯を消し忘れているサイトがあったりして、パーフェクトに見えているわけではないですが、それでも天の川ぐらいは余裕で見えています)
こんな時間ではありますが、なぜか大きい方をもよおしたのでLEDライト片手にトイレに向かいます。
トイレとシャワーを兼ねた建物に入ると、さすがにこんな時間ですから、すべての扉が開いていて選びたい放題です。
なんとなく心引かれた一番奥のトイレに入ると、ドアの鍵が壊れていて鍵をかけることが出来ません。
しかも便座が奥の方にあって、座ってしまうとドアに手を伸ばすことも出来ないので、万が一の時にドアを他人に開けられてしまうことを手で防ぐことも出来ない広さです。
とは言え、こんな時間に他の人が来るわけじゃあるまいし、ドアを閉めっぱなし状態にすることは出来るみたいなので、そのままドアを閉めてズボンとパンツを脱いで便座に腰を下ろし、自然の成り行きに身を任せます。
ちなみに国立公園内のトイレは南アフリカ、ナミビアどちらも清潔で、日本人の感覚でも問題なく使用できるレベルです。(トイレットペーパーが切れて無かったことすらありませんでした)
しばらくすると、ドアの向こうに足音が聞こえます。
私が入っている場所以外はすべてドアが開け放たれているので、大丈夫だろうと思っていたのですが、足音がまっすぐこちらに向かってきます。
まさかね~と、思っていたのですが、よくあるトイレの怪談のテンポを遙かに上回るペースで足音のボリュームが大きくなり、ドアがガチャっと音を立てて開き始めたところで、
「入ってます!!!」
と、カラハリTFPの便所で深夜に叫んだのでした。
つづく