皆さん、こんにちは!自動車ライターの伊藤梓です。
いつもはレース関連のコラムをお届けしていますが、今回は筑波サーキットへ行き、
特別なプログラムを取材してきました。
その名も
MAZDA SPIRIT RACINGが運営するチャレンジプログラム
「バーチャルからリアルへの道」。
内容としては、名前の通り、これまでグランツーリスモなどの
バーチャルで経験を積んできた人たちに、リアルでもスポーツ走行やレースを楽しんでもらおうというプログラムです。
そして、適性があると判断された人たちは、
マツダのチームからレースなどに出場して、
さらなるステップアップができるチャンスがあります。
マツダは、昨年からこの活動を続けていて、今回のプログラムを含めると
計46名がこのプログラムを修了しているそうです。
その中から、マツダ車であれば誰でも参加することのできる耐久レース
「マツダファンエンデュランス(マツ耐)」や、ロードスターのワンメイクレースである
「パーティレース」に出場したり、さらにプロドライバーも多数参加している国内では最高峰の耐久レースである
「スーパー耐久」に出場する機会を提供しています。
自分のクルマを持っていない人でも、子どもの頃から
「グランツーリスモをやっていました!」という人はきっと多いはず。バーチャルでモータースポーツを楽しんできた人たちがリアルでもモータースポーツを楽しめるようになったら、日本のモータースポーツ文化もさらに発展していく予感がします。
このプログラムを企画して運営している、ブランド体験推進本部の油目雅史さんに改めてこのプログラムについてお話を伺ってみました。
前列左がマツダのブランド体験推進本部の油目雅史さん
油目雅史さん:今年はこれが3回目のプログラムになりますが、グランツーリスモからサーキットデビューした人たちに『夢が叶いました!』と言ってもらえるのは、やっぱり嬉しいですね。
昨年このプログラムをスタートさせたのですが、昨年は『リアルで本当に自分が乗れるのだろうか』と不安に思っていた人もいたと思います。
しかし、今年参加してくれている人たちの中には、昨年の参加者が楽しく活動していたり、リアルのモータースポーツでも活躍している姿を見て、『自分でもできるかもしれない』『自分も目指したい』と興味を持ってくれた人もいるようです。
こうやって参加者がさらに新しい人たちにモータースポーツを広げるきっかけを使ってくれているのは、私たちも本当に良いことだなと感じています。
バーチャルで活躍している人たちも
「自分がリアルで通用すると思っていなかった」という人も多いそう。油目さんは、これからもっとその輪が広がっていくことを期待しているそうです。
油目雅史さん:バーチャルで走れる人には、自分がリアルでも走れると気づいてもらいたいんですよね。
私たちが行っているプログラムをきっかけにしてもらうのはもちろん嬉しいですし、このプログラムでなくても、自分のクルマでサーキットを走ってもらうだけでも『自分はこんなに走れるんだ』と気づけると思うんです。
モータースポーツをするということは、何もプロのレーシングドライバーを目指すというだけではないですよね。グラスルーツのカテゴリで人生とともにモータースポーツを楽しむ、という人もたくさんいますから。
サーキットに行くのはハードルが高いと思われがちですが、たとえばこのプログラムに参加した人たちが、『道具はこれを揃えて、こういう手続きを踏めば、誰でもサーキットで走れるよ』ということを友人や仲間に伝えてくれて、少しでもそのハードルが下がってくれたら嬉しいですね。
そして、マツダのモータースポーツは、ナンバー付きのクルマで出られるレースばかりですので、ぜひそちらにも参加してもらえたらと思います。
今回のプログラムは、1日目は筑波サーキットの「TC1000」でクルマの感覚を掴み、2日目は「TC2000」でさらに走り込むという内容で、私は1日目のプログラムを見学してきました。
走る度に、レーシングドライバーでロードスターを操るスペシャリストでもある加藤彰彬さんがアドバイスしてくれるので、参加者もあっという間に上達していました。
レーシングドライバーの加藤彰彬さん
TC1000は
「iRacing」というレーシングシミュレーターにもコースとして登録されており、そこを走り込んで予習してきたという人も。
私は、グランツーリスモや他のレーシングシミュレーターをしている人たちの強みは、
「リアルよりもコースをたくさん走れる、だからリアルでもすぐ慣れる」ということだと思っていましたが、加藤さんいわく、少しそれは違うそうです。
加藤彰彬さん:ハイレベルなバーチャルのドライバーたちは、自分でクルマをセッティングして、コースコンディションやタイヤの摩耗でクルマがどう変化するか、そしてそれによってどうドライビングすれば速いかを、バーチャルでも常に追求しています。
ただ単にシミュレーターでコースを反復練習している訳ではないんですね。なので、リアルのサーキットでも適応能力がとても高いんです。もちろん個人差はありますが、『こうしたらこうなるよ』と教えれば理解も早いですし、すぐ修正できるスキルも高いです。
時間を追うごとに参加者はどんどんタイムアップしていき、初めてリアルで筑波1000を走行したとは思えない驚きのラップタイムを叩き出している人もいました。
しかし、ただ速いだけでは、マツダのプログラムでステップアップできる訳ではないそうです。
モータースポーツは、大きな競技になるほどチームメンバーやサポートしてくれる人たちが増えて、より団体の中でのコミュニケーションが大切になります。そういったところできちんと
コミュニケーションが取れる人かどうかは、判断基準としてとても大きいそうです。
参加者も最初は緊張していたようですが、実際に走ってみたり、仲間と話すことで、今回のプログラムをとても楽しんでいるように見えました。
今回、4輪でサーキット走行をするのが初めてだという川崎俊裕さんにお話を伺ってみました。
左端に座るのが川崎俊裕さん
川崎俊裕さん:グランツーリスモは小学4年生の頃から始めました。父親のお下がりで初代のグランツーリスモで遊んでいましたね。その時は『ゲームが楽しい』という感覚しかなかったのですが、高校1年生の時にグランツーリスモSPORTが発売されて、そこからしっかりやり込んで、国体の予選にも出場しました。
今日は初めてロードスターでサーキットを走ったのですが、想像していたよりもグランツーリスモやシミュレーターの挙動に近いんだなということを感じました。
川崎俊裕さん:ただ、シミュレーターでは、ハンドルからしかクルマのインフォメーションが伝わって来ないので、実車ではハンドルだけではなく、クルマ全体でその挙動を感じるものなのだと実感しました。
グランツーリスモをプレイしている人は、リアルに憧れてゲームをプレイしている人がほとんどだと思います。なので、自分もマツダのプログラムでレースができたらいいなと思いますし、もしそれが叶わなくても、これからは自分のクルマで『マツ耐』などにも出てみたいですね。
油目雅史さん(左)と川崎俊裕さん(右)
グランツーリスモなら、家にプレイステーションとゲームソフトさえあればプレイできますし、川崎さんのように子供の頃から経験を積むことができます。
そして、さらにそれがリアルまでつながっていけば、より日本のモータースポーツもきっと成長していくだろうな、と大いに期待が膨らんだ一日でした!
写真提供:マツダ
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伊藤梓(いとう・あずさ)
クルマ好きが高じて、グラフィックデザイナーからカーグラフィックの編集者へと転身。より幅広くクルマの魅力を伝えるため、2018年に独立してフリーランスに。
現在は、自動車ライターのほか、イラストレーターとしても活動中。ラジオパーソナリティを務めた経験を活かし、自動車関連の動画などにも出演している。
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Posted at 2024/04/09 09:01:02 | |
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