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2008年03月30日 イイね!

初心者にMT車の運転を教える その8

坂道発進の話です。
苦手な人が多いようですが、状況依存が少ないので、コツをつかめば簡単です。

坂道で止まっているときには、車は重力で後ろ向きの力が加わります。これがあるので、ブレーキを離すとバックしてしまいます。
MT車では、停止時にはクラッチを切るかギアをニュートラルにしてエンジンが自由にアイドリングできるようにしておかないとエンストするので、停止時にはタイヤにはエンジンの力を伝えることができません。
ですから、坂道で止まったままで、右足をアクセルに移すために、サイドブレーキを引いてタイヤの回転を止めておく必要があります。

ATはトルコンの油を介して停止時でもタイヤに力が伝わっています。

クラッチは、摩擦によって力を伝える仕組みです。
タイヤを止める力=サイドブレーキの摩擦の大きさと、クラッチの摩擦と
エンジンの出力と坂道の重力とのバランスをうまくコントロールすることが坂道発進のコツです。

サイドブレーキがしっかり引かれていて、クラッチの摩擦が大きいとき(クラッチが繋がっているとき)、エンジンの力にクラッチとサイドブレーキが勝つので、エンストします。重力に勝つのはサイドブレーキの力です。

サイドブレーキが強くて、クラッチの摩擦が小さいとき(クラッチがあまり繋がっていないとき)には、エンジンの力が小さくてもクラッチが負けるのでエンジンは回転を続けられるのでエンストしません。

このときサイドブレーキを弱くすると、重力がサイドブレーキに勝つようになります。こんどは、重力とクラッチの力比べで、クラッチが勝つと前に進み、クラッチが負けると後ろに下がります。さっきまでサイドブレーキで止まっていたので、エンジンはクラッチに勝っていますからエンストはしません。

つまり、坂道での発進は、
1.サイドブレーキで止まっている状態で、クラッチがエンジンにぎりぎりで負ける状態を作っておく(半クラとエンジンの回転数です)。つまり、クラッチをエンジンの力で滑らせる状態までクラッチを繋いでおく。
2.この状態でサイドブレーキをリリースして、重力とクラッチの戦いに持ち込む。つまり、半クラが伝えるエンジン出力が重力とバランスして止まっている状態にする。
3.エンジン出力を上げて(アクセルを踏んで)、クラッチ+エンジン出力が重力に勝つようにする。
4.走り出してしまえば慣性が味方になる(慣性でタイヤの回転がエンジンを回し続ける)ので、もう大丈夫。

という流れになります。
ポイントは、1.ができるかということになりますが、平地でのアイドリング発進ができれば1.の状態を音やお尻の感覚で知ることができます。タコメータを見ていれば、クラッチが繋がり始めたときに回転数が落ちるのがわかります。
なんとなく回転数を上げてゆっくりクラッチを繋ぎながらサイドをリリースすると、1.の状態から3.に飛ぼうとしているわけで、うまくいってもそれは偶然です。2.を意識した1.の状態が作れさえすれば坂道発進はできるようになります。

初心者の恐怖は、エンストと急発進になってしまうことの両方があると思いますが、1の状態でのクラッチが勝つ状態、急発進は、3.のときにクラッチ+エンジンが重力に勝ちすぎている場合で、エンストを恐れすぎての回転の上げすぎが原因です。実際にはコペンで2000回転も回しておけばエンストせずに発進できます。2000回転で発進できない坂は、たぶんタイヤの摩擦が坂に負けてサイドブレーキでも止まれません。

坂道発進の練習は、坂でサイドブレーキを引かずに重力とクラッチでバランスさせて停止してみるのが一番です。
できないときには、段差や小石を乗り越えるときに、手前で一旦停止して、タイヤが半分乗り越えたあたりでクラッチとアクセルをコントロールして車を止めたり、越えかけてやめて戻ったりをするとよいと思います。

繰り返しですが、坂道発進で車を止めるのは、クラッチとエンジンの出力です。クラッチの摩擦が重力とバランスしている状態であれば、車は止まっています。ここからエンジン出力を増す(アクセルを踏む)ことで動き出します。
サイドブレーキで止まっているときは発進ではなくて停車です。

とにかく坂道発進のコツは、半クラで坂道とバランスして止まることを意識することです。











2008年03月29日 イイね!

初心者にMT車の運転を教える その7

初心者にMT車の運転を教える その7春ですねぇ。
コペンで屋根をしまって桜並木の下をドライブすると気持ちいいです。
オープンカー買ってよかった。

というわけで、初心者にシフトダウンを教えます。

教習所では、まともなシフトダウンは教わっていませんから、初心者はシフトダウンをすること自体が難しいと思っているかもしれません。
実際には、シフトダウンでエンストすることはまずありません。オーバーレブは可能性がありますが、一般道を初心者が走る速度であれば、1段づつ落としていくのであればオーバーレブはありえません。

恐怖の原因は、シフトダウン時のクラッチ操作かもしれません。回転を合わせずに繋ぐとショックがあって急にエンジンブレーキがかかるので、びっくりしてしまうのかもしてません。
しかし、シフトダウンではクラッチミートのショックがあってもエンストはしませんし、車が壊れることもありません。ですから、このショックに慣れる必要があります。
この恐怖を克服するだけで、簡単にシフトダウンという操作はできるようになります。

シフトダウンの難しさは、運転の流れの中で、どういうタイミングでシフトを落とすべきかを身につけることです。
MT車を運転する際には、常に適切なギアが選択されていなければいけません。高すぎるギアでクラッチ滑らせて無理やり低速で走らせたり、ノックセンサーが働くほどの低回転から加速しようとしたりすると車を傷めます。

教習所では、シフトダウンのことを「減速チェンジ」と呼んでいます。
これは誤解を招く呼び方だと思います。
シフトダウンは、加速のために行うのが本質です。車はある程度の速度があれば慣性でかなりの距離転がりますから、クラッチを切ってブレーキを踏めば十分減速できます。減速後の加速は、エンジンが速度に対して適当な回転数でなければならないので、シフトダウンしておかないと不可能となります。
シフトダウンは、減速後の加速のために行うのです。あと、ゆっくり走るために行うシフトダウンもありますが、惰性は加速度がマイナスですから、ゆっくり等速で走るのも減速後の加速度0の加速と考えてしまいましょう

運転中にシフトダウンが必要となる状況の例として以下が考えられます。
1.信号、一時停止、交差点の手前
2.カーブの手前
3.上り坂
4.下り坂

このとき、余裕を持ってシフトレバーに左手が置いてある状況になっていれば、あせらずにシフトダウンができます。
実は、シフトダウンで最も難しいのは、この余裕を持って左手がシフトレバーにあるために、先の状況を予測することです。
経験を積めば身につくことですが、知識として知っていると身につくのが早いかもしれません。

1.の場合には、停止するかそうでなくても微速になります。確実に停止することがわかっている場合には、止まってからローにいれるような運転をしても大丈夫ですが、信号は止まろうとしたら青になったりするので、そういう状況に対処できるよう、ほとんどの場合2速まで落とすことになります。たとえば、4速50Kmで走っていて前方に赤信号が見えたとき、通常の減速感覚にあわせて3速でのエンジンブレーキを使用して減速します。次に、停止線あたりで2速に落とすつもりでシフトレバーに手を伸ばしておいて、そのままシフトダウンせずに止まるか、信号が変わったら2速にして曲がるかは状況次第となります。
信号の手前に車が居る場合は、前方の車の動きを参考にして状況判断をします。

教習所では、半クラが基本らしいので、右足がブレーキにあるときのシフトチェンジは教えていないかもしれないので、やってはいけないと思い込んでいるかもしれません。もちろん、ギアの選択は速度によって決まるので、右足がブレーキでもシフトダウンはしてもよいですし、エンストはしません。

2.のカーブの手前でも同様です。カーブをどういう速度で曲がるかに応じてギアを選ぶことになるので、カーブの手前の減速段階でシフトレバーに手を置いて、車の速度にあわせてシフトダウンを行います。
峠を攻めるとか、サーキットとかでのシフト操作は初心者には教えてあげません。

3.の坂道は重要です。高速道路の渋滞原因の相当な部分を坂道での減速が占めているらしいくらいですから、平地から坂道に変わったところで速度を保つという運転はほとんどの人にはできないようです。
エンジンの回転数は速度とギアから決められてしまいます。エンジンの出力はアクセル開度で決まります。坂道に差し掛かると、速度を保つのにより多くの出力が必要とされますから、アクセルを開ける必要があります。平地では慣性もあるので高いギアで低い回転数でアクセルも開けずに走っていられたのが、上り坂だと坂を登る力が必要になり、エンジンの回転数が低すぎるとどんなに燃料を入れても十分な出力が得られない場合があります。
坂道に差し掛かったら、スピードメーターを見て、速度が落ちるようだったらアクセルを踏んで、それでも速度が足りなければシフトダウンして加速するようにしないといけません。そのためにはエンジンの様子が音からわかるようにならないといけません。

4.の下り坂はエンジンブレーキのためだけなので簡単です。坂にあわせてエンジンブレーキで減速しない最も低いギアを選べばよいです。このときギアが高いままだと坂によって加速してブレーキで減速することになり、ブレーキの負担が増えます。ギアが低すぎると後ろの人がつっかえて渋滞の原因になります。

これらのことを、実際の道路で同乗してシフトチェンジのタイミングを指示しながら練習させることで身につけていきます。

次は坂道発進

コメントなどぜひお願いします。
2008年03月28日 イイね!

初心者にMT車の運転を教える その6

前回予告ではシフトダウンのはずでしたが、半クラとシフトアップの話です。

MT車で発進して微速で動けるようになるのは難しくありません。
半クラの感覚さえつかめばいいだけですし、半クラ自体はクラッチをゆっくり繋いでいけばすぐにわかりますし、このときのお尻の感覚やエンジン音の変化やタコメーターの動きなどで半クラを知ることも比較的容易です。

ただし、このときの左足の使い方に無理があると、クラッチをゆっくり戻すという行為自体が難しいものになってしまいます。
AT車では、足はアクセルとブレーキだけなので深く踏み込む必要がありませんから、シートを遠めにしておいても運転できますし、そもそも足とペダルとの関係はあまりシビアではありません。

MTでは、クラッチ操作のためにシートの位置が極めて重要になります。
ひざの曲げ伸ばしと足首の曲げ伸ばしだけで、腰を動かさずにクラッチの操作ができる距離に座っていないと、クラッチの微妙な操作はできません。またクラッチペダルを左足のどこで踏むかも重要です。
基本は、土踏まずのちょっとつま先よりくらいです。足の指を反らすことで足首を曲げてクラッチを繋いでいくので、指でペダルを踏んではいけません。クラッチを踏む位置がつま先過ぎると、クラッチ操作中に貧乏ゆすり状態になってしまったりします。
クラッチがちゃんと踏める位置にシートをセットすると、AT慣れしている人にはすごく近く感じるはずです。
また、シートには思いっきり深く座って、お尻から背中にかけて完全にシートに密着するようにします。肩もシートに押し付けたままで、両腕を交差してハンドルの上端を持てるくらいの距離になるようリクライニングを調整します。

正しいポジションで、半クラで発進ができるようになったら、加速ができるようにならないと公道は走れません。

加速のポイントは、セカンドで踏み込むということです。ローで引っ張ってもギア比が低すぎで加速しないので、ある程度トルクが得られる回転数であればセカンドで踏んだほうが楽です。しかしそれも一瞬のことで、すぐ3速にしないといけません。そのためには、ローで発進した後、3速に入るまで左手はシフトレバーの上にないと間に合いません。

教習所では、ハンドルを両手で持つことを強く教えますが、マニュアル車ではハンドルを両手で持ったらギアチェンジができませんし、常に速度に見合ったギアを選択しておかないとエンストしますから、ギアチェンジはマニュアル車を運転する上で、危険回避の次に重要な操作です。
したがって、発進時や減速時は右手での片手運転が基本となりますし、速度の変化を予測して左手をシフトレバーに添えるように慣れる必要があります。

初心者は、発進での半クラの難しさから、加速時のシフトアップに際しても半クラにしないとエンストすると思い込んでいるかもしれません。
実際には、シフトアップ時に発生するエンストは、ギアに対して速度が遅すぎることが原因だし、そう思ってしまう原因は教習所でのあまりに遅い速度での練習にあるのかもしれません。
公道の普通に走っている車並みのしっかりした加速を行い、速度に対して適切なギアへのシフトアップであればエンストはありません。このとき、速度が出ていればクラッチをドンと繋いでも全く問題ありません。
初心者へは、シフトアップのタイミングを指示して、このときドンつなぎを体験させるなどしておそれをなくすようにしました。
また、交差点で曲がろうとして信号待ちで停まっていて、そこから発進したときに、停止線から交差点までの距離でセカンドにシフトアップする練習も行います。発進直後は車が遅いので、短い距離でもシフトアップできるということを理解させます。

次回こそシフトダウンです。
Posted at 2008/03/28 00:15:25 | コメント(0) | トラックバック(0) | 初心者にMTの運転を教える | クルマ
2008年03月25日 イイね!

初心者にMT車の運転を教える その5

この記事、4年ほど前に書いたけど、いまだに読まれている。(2012年8月)

というわけで、初心者にMTの運転を教える話の5回目です。
前提として、一人でオートマ車の運転はできるようになっているところから話は始まります。道路で車の運転ができるようになるのには、AT車のほうが明らかに手っ取り早いんで、その辺の話は第3話あたりに書きました。

さて、MTといえば半クラですが、半クラ自体はそれほど難しいことではありません。教習所でみっちりやっています。
問題は、適切な回転数でクラッチを繋いでいくということです。教習所の車は、クラッチを消耗品として扱っているらしく、3000回転までぶん回して繋ぐことでエンストを回避し、低速では常に半クラ状態に保つことでエンストを防止しています。これは路上教習でも同じみたいです。

そこで、まず、1速アイドリングでの発進の練習を行います。車は4気筒660ccターボのコペンなので、低速トルクは相当低めです。でもできます。事前に私は2速アイドリングでの発進を試みましたが、何の問題も無くできました。ローなら余裕でしょう。
この練習では、アクセルを全く踏み込まずに発進して、クラッチを完全に繋いでもエンストしないということを理解させます。したがって、速度はローのアイドリング速度なので、早足で歩くくらいです。
このときに、クラッチがつながって車が動き出そうとする瞬間の感覚が理解できるまで練習します。練習ですから、たくさんエンストすると思いますが、めげずに繋ぎ感と滑らせ感を知るようにしてください。
それができたら、セカンド発進の練習をします。セカンドでアクセルを踏まずに発進して、クラッチを完全に繋ぎます。そのときの速度が、ローからセカンドにシフトアップできる最低速度であり、またローにシフトダウンしないとエンストしてしまう限界の速度になるので、この速度を意識にとどめるようにします。セカンド発進は、ローのときよりも長くクラッチを滑らせないとできません。どれくらい滑らせれば完全に繋げるのか、いろいろ経験してください。これは難しいですよ。

これができたら、加速の練習が必要になります。実は、ここが難しいのです。
教習所では、3000回転から繋いでいくので、ローで発進してクラッチを全部繋いだらそのままセカンドにシフトアップしてもエンストしませんし、クラッチを繋ぐ=加速という感覚が身についています。
しかし、空ぶかしをせずにクラッチを繋いでも、出る速度は歩くくらいなので、適切なタイミングでアクセルで加速しないといけません。
また、ATで加速をする練習を行ったおかげで、公道での発進加速の程度は身についていますから、MTでもそういう加速をしようとしてしまいます。
この、クラッチを繋ぐと加速する感覚と、公道での発進加速感が合わさると、車が動く前にクラッチを繋ぐという行動とATでの発進加速時のラフなアクセルワークが重なってひどいことになります。

AT車は発進時や加速時にどんなに急にアクセルを踏み込んでも、トルコンの働きすなわちスリップによって無駄なエンジン出力が逃がされるので、エンジンに負担をかけることなくスムーズな加速ができます。
MTは、このトルコンスリップが無いので、アクセルワークに直結した加速が得られますが、逆に車の加速にあわせたアクセルワークが必要になります。

MTでの発進加速は、通常の運転では走り始めの初期の加速はATよりも緩やかになります。具体的にはギアがローにある間の加速は、ギア比が低すぎるのでよっぽどすばやくシフトアップするか、よっぽど高回転まで回さない限りATに負けます。
初心者は、ATでの発進のようにアクセルを踏み込んで、ATのように加速することを期待しますが、実際には思ったように加速しないのでクラッチを急に繋いでエンストしたりします。

発進時には、最初はゆっくり、すぐにセカンド、即座にクラッチを繋いで、そこから加速という流れを身につける必要があります。このときには、時速30km/hにはなりますので、それなりに練習しやすい場所を見つける必要があります。

初心者は、ハンドルは両手で持つと刷り込まれているので、セカンドになるまではシフトレバーから手を離さなことにもなれないといけません。
また、ローでの加速が十分でないときにセカンドにシフトアップすると、そのときにアクセルを戻してクラッチを切っている時間が長いと、速度が落ちすぎてエンストします。そのためにも、加速を怖がらないようにあらかじめなっておかいといけません。

こうやって、MTの加速感覚、つまり立ち上がりが遅くて後で盛り上がる感じを身につけることで、ローでアクセルを踏みすぎることなく、普通に加速する運転ができるようになりました。

しかし、これではまだ普通に運転することはできません。
シフトダウンを身につける必要があります。

追記です。アイドリングでの発進は、クラッチミートの感覚を養うためです。3000回転でクラッチを繋いでいると、ラフなクラッチ操作でも車は動いてしまいますから練習になりません。実用的には、回転数上げすぎの発進は楽なのですがうるさいしクラッチは減るしガソリンも無駄なので、運転する人の能力に応じて若干エンジンを回し気味にして、運転手は楽をしてよいと思います。慣れると、クラッチを繋ぐ前の空ぶかし時間が減って、繋ぐ一瞬前だけちょっとだけ回転を上げてクラッチも楽という運転ができるようになると思います。





2008年03月24日 イイね!

初心者にMT車の運転を教える その4

初心者がマニュアル車を運転する前に、ぜひ理解しておいていただきたい車のメカニズムについて書きます。一気に全部書くのでとても長いです。しかも難しいはなしです。

これは、なんで「半クラ」が必要かとか、なんでギアチェンジは必要であるかとか、何でエンストするのか、その理由そのものです。

通常のAT車は、クラッチペダルが無くギアチェンジを自動でやってくれる車だと言うこと以外に、もっと重要な特徴があります。
それは、動力の伝達に「トルクコンバーター」を使用しているということです。
普通でないAT車である、アルファロメオ 156のセレスピードにはクラッチペダルは無くギアチェンジは自動でやってくれますが、トルクコンバーターはありません。機械式クラッチを油圧でコンピュータが制御しています。なので、セミオートマチックなどと呼ばれたりもします。

トルクコンバーターは、簡単に書くと、向かい合わせの扇風機みたいなもので、片方のプロペラが回されて、その回転力がオイルを介して反対側のプロペラに伝わることで動力伝達ができる仕組みです。
ですから、エンジンとタイヤは固定してつながっているわけではありません。
私が昔乗っていたシティRのホンダマチックは、中央道下りの談合坂に差し掛かると、アクセルを踏んでエンジンの回転数が増えていくのに、スピードは低下するということが実際におこりました。

一方のMT車の機械式クラッチは、2枚の板をバネで押し付けて動力を伝達したり伝達を切ったりします。クラッチがつながっているときには、エンジンの力はギアボックスを介してそのままタイヤまで伝わります。

つまり、MTとATの本質的な違いは動力の伝達系にあり、ATは油でつながっていていつでもすべることができる一方、MTは板でつながっているので動力伝達にすべりは無いということです。
このことがエンジンの回転数に対して重要な違いをもたらします。

そもそも、エンジンの回転数はどうやって決まるのでしょう?
「ある速度で走るのに必要な力を出す回転数」であると考えたらMTの場合は間違いです。ATであれば、トルクコンバーターと自動変速の働きにより、エンジンの回転数と速度が比例しないので正しいかもしれません。

MTの場合は、「速度とギアが決まればエンジンの回転数はギア比により決まる」のが答えです。このときエンジンの出力がどうであるかは関係ありません。これがとっても重要な考え方になります。
もし速度が0(つまり停止状態)であったらエンジンの回転数はいくつになるか、考えるまでも無く答えは0回転です。停止状態ではエンジンは回ることができません。そこでクラッチの登場です。MT車は、クラッチを切ってタイヤの静止と関係なくエンジンの回転を上げることができるようになっています。ATは油つながりなのでクリープ現象があります。

車が停止状態でクラッチを繋ぐと、タイヤが回転していなのに動力が伝達されて、タイヤの摩擦でエンジンの回転が停められてしまいます。これが発進時のエンストの原因です。

また、エンジンは1気筒あたり2回転に1回しか爆発しませんし、爆発の前には圧縮をしないといけないので、ある一定回転数以下では回転を維持できなくなるという性質があります。この回転数は、だいたいアイドリングの回転数と思ってよいです。エンジンの回転数がこの回転数を下回ると、エンジンは止まります。

1速から2速に加速チェンジ(教習所用語ですね。シフトアップです。)をしたときにエンストするのは、このときの速度が1速だとエンジンが回るのに十分な回転数だったのが、2速に変わってギア比が変わって、その速度では2速だと十分な回転数が得られないからです。こういうときは、車自体は動いていて、タイヤの回転力がエンジンに伝えられて、エンジンは止まろうとしてガクガクした動きになります。
その際には、クラッチを切ってタイヤとエンジンを切り離せば、エンジンは無負荷状態でアイドリングまで回転数を上げることができるようになるので、エンストは回避できます。

次に、アクセルの踏み込み量とエンジンの回転数の関係を考えて見ます。
エンジンの回転数は、速度がきまれば必然である回転数になってしまうので、アクセルの踏み込み量とエンジンの回転数は無関係ということになります。
アクセルを踏むということは、エンジンに多くの燃料が供給されるということで、燃料が多ければ爆発力がましてピストンを押し下げる力が増えます。
走っている車には、摩擦や空気抵抗や道路の傾斜といった抵抗がありますから、一定速度を維持するには、これらの抵抗で失われる力を補う必要があり、それだけで足ります。
アクセルを踏み込んで、ピストンを押し下げる力が増えると、車を走らせる抵抗に打ち勝って加速することができます。ニュートンの運動方程式によると、力(F) = 質量(M) × 加速度(a)で、車の質量は一定ですから、力は加速度に比例することは明らかです。
アクセルを踏むという行為は、速度を増すのではなく、加速度を増す働きがあって、速度を増すには加速度に時間を掛ける必要があるということです。エンジンの回転数は、そのときの速度に対して結果的に決まるので、アクセルを踏んでも回転数は時間をかけて増えていくことになります。
このことから、車の速度は、各種抵抗に打ち勝つエンジンの力 + 加速するのに必要なエンジンの力によって決められるということになります。
ギアが低い場合には、小さな力でタイヤを回すことができますから、加速するのに必要なエンジンの力は小さくてよいということになる一方で、同じ速度のときのエンジンの回転数は高いギアに比べて高くなってしまいます。
適切なギアを選ぶというのは、求めたい車の挙動(加速や減速、速度維持)に対して、エンジンの負荷と回転数が適切となるようにするということです。

これでやっと、半クラッチの意味について考える準備ができたと思います。
速度0のときに発進加速をしようとしても、エンジンの回転数をアイドリング以下にはできないとすると(ほんとはちょっとくらいは大丈夫)、エンジンの回転数と速度の関係を壊して、「エンジンの回転数よりも遅くタイヤを回す」ということを行う必要があります。
そのために、タイヤの回転数とエンジンの回転数の差をクラッチを滑らせることで吸収するということをしないといけません。これが半クラの本質です。クラッチがちょっとだけ接触することでエンジンの回転力をタイヤに伝達しながら、すべることで回転数と速度の差を保つようにします。
ですから、半クラというのは、パワー伝達率0パーセントから100パーセントまでをコントロールするテクニックであって、簡単に「半クラでちょっと待つ」なんてのも変な話です。10%しかパワーが伝達されない半クラ状態で維持しても無駄にクラッチが減るだけですし、いきなり50%のパワーを伝達したらエンスト必至でしょう。
半クラは、エンジンの回転数と速度の不整合を吸収するためにあるので、発進時には、エンジンの様子と加速の様子にあわせて徐々に繋いでいく必要がありますし、その際にエンジン出力もクラッチの伝達状態と加速の様子に合わせる必要があるということです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
異論など、コメントお待ちします。

次回からやっと実践練習編に入ります。
Posted at 2008/03/24 19:47:32 | コメント(0) | トラックバック(0) | 初心者にMTの運転を教える | クルマ

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