2021年9月「AA63に丸二日乗ってみた。」から改題し、再構成、写真追加。
先日、知人が愛車を二日間貸してくれるというので乗り回して参りました。この前はST162系カリーナEDを貸してもらい、通勤に使ってみたり東京まで足を伸ばしてみたり悪の限りを尽くしたわけですが、今回は
AA63系カリーナセダンを借りました。
外から見るといかにも
古めかしいパキパキ直線の車ですが、当時、既に熟成の域に達していたFR方式のセダン。FFの台頭で乗用車の主流が一気にFFに傾く時代とあってカリーナはかなり
スポーティな魅力を訴求するスタイリングです。ロングノーズショートデッキでエッジの効いた意匠、まさしく今では少数派となった
オトコくさいスポーツセダンなのです。
朝、あいにくの空模様でしたがE/Gをかけて市街地を走ります。何回か運転させてもらった事のある車ですが、単独運転は初めてに近いです。乗り出してすぐに感じるのはとても
視界が開けていて開放感があるという事です。それのそのはずでピラーが細く、ベルトラインが低いので外から見る小さなキャビンからは想像もつかない程ルーミー。そしてフード先端が見えるので運転しやすさも現代の代表的な乗用車よりもグッと優位です。
歩行者保護やAピラー前出しのために捨てられたものがカリーナにはありました。
あまりにも有名すぎるAE86と同じ心臓(レーザー4A-α)を積んだ
GT-Rは見た目もスパルタンですが、乗り味もスパルタンです。大径のステアリングをぐるぐる回し、重いシフトレバーを操作して走らせるわけですが、(経時劣化もあるのでしょうが)
2000rpm以下が全く使えません。いや、トルクは出ているのですがE/Gのバイブレーションが抑えきれず、
とんでもないレベルのこもり音とも振動とも取れる揺れがキャビンを襲います。従って自然にドライバーは2000rpm以上回して走る事になります。この状態が既に現代の1000rpm付近で走るCVT車との決定的な違いですね。従って
住宅地から幹線道路へと繋がる市街地走行だけではカリーナの魅力が伝わりません。
高速道路へ連れ出してやりました。
3000rpmを超えると一気にやる気になるのが4A-GE。自分のカローラよりも世代が旧い4A-GEですから低回転域から高回転域へ移るスムースさには欠けますが、むしろそれが
ドラマチックな加速を演出するのです。現代の流れに乗ろうとするとすぐにキンコンがなってしまう。仕方なく走行車線に戻ってのんびり走るわけですが、
100km/h時の回転数は3100pm付近。現代の
CVT車が泡を吹いて倒れそうな回転数ですが、いくら高回転であろうと
綺麗にE/Gが回っていればドライバーはさほど気にならないことを再認識させてくれます。上り坂に差し掛かると気持ちよく坂道を登ります。CVTはこういう部分に弱点があり、極端な低回転から上り坂で失速し、変速してエンジンを引張るものだからノイジーでマナーに欠ける走りをしがち。その点、MTのカリーナはアクセルを踏み足すだけでE/Gがトルクを出してグイグイ登っていきます。走行車線の流れに乗っている限りは決して不安を覚えるような挙動は見せず、
横風の強い橋脚の追い越し車線を走る際は現代の乗用車よりは修正量が多い程度でした。
田舎の山道でカリーナに乗ってみました。こういうドライバーズカーの本領はこのような場所で発揮されます。
山道をビュンビュン走らせるとカリーナは水を得た魚の様に走り回ります。実際には決して速くは無いのだけれど、回転合わせしてシフトダウンし、素早すぎる操作をするとワンテンポ遅れるステアリングを回し、俊敏な反応のスロットルをグッとあけてやる動作。この一つ一つが汗臭く、
体育会系のスポーツに勤しんでいるような気になるのです。そう、この車のサイドプロテクションモールは
格闘技の黒帯なんですね。
昔のヒョーロンカのおっさんたちの常套句
「ニホンのスポーツモデルって速いんだけど欧州の素晴らしいスポーツモデルみたいに繊細な動作を受け付けないんだよね、日本のスポーツモデルのスポーツ感は一辺倒で品がないね」というのも、今の私は少し理解できたような気がします。カリーナは車と対話しながら走らせる事もできなくもないのですが、私はエイヤと
豪快に走らせた方がこの車の魅力が引き立つように感じます。そして、それはこの車のキャラクターと合っているし何が悪いんだ!と言ってやりたくなりました。
もちろん、私はカリーナのやり方ではないスポーツモデルも大好きですが、カリーナみたいな豪快なスポーティさも何だか清清しいのです。
「声出して行くゾーーーーー!!!!」とか言われながらランニングしても良いじゃありませんか(意味不明)。
現代の洗練された車と比較してカリーナには分かりやすい広さも、静粛性も、快適性もそんなにありませんが、
こいつにはがむしゃらでやんちゃなハートがありました。
少しフェミニンな方向にシフトした自動車も世の中に絶対に必要ですが、いかにも男らしいカリーナのような車があっても良いような気がしますよね。FRクーペとして86が復活したんだからその
4ドアバージョンを開発して是非63と名づけて欲しいです。未だに中古価格が下がらないアルテッツァのよき代替車になりうる可能性を秘めています。
丸二日間、850km程度運転しました。
燃費は13km/L弱ということでまぁこんなものかと思います。レギュラーでOKというところも非常に経済的ですね。
また機会があれば面白い車を貸してもらう予定です。オーナーさんありがとうございました。感想文終わり。
3代目カリーナのブログ
1982年式1800ST-EFI
1984年式1800SG豪華マイロード
5代目カリーナのブログ
1991年式サーフSXリミテッド
2021年9月追記
この車で高速道路や山道を力一杯に走らせたときの胸の高鳴りは今でも簡単に思い出せます。たった5年後に生産された私のカローラが持つ俊敏さ、軽快さとは違う荒々しくて豪快なスポーツ性能は、後年試乗した同年代のスカイラインRSにも通じる魅力でした。そして車から降りれば見入ってしまうエクステリアデザイン。私の好みにドンピシャなので未だにこれを超えるデザインには出会えず仕舞いです。この個体は錆が酷かったボデーを、カーマニアの板金屋さんが当時のパネル分割線を活かしながら補強を加えており、オーナーのコダワリが良く反映されていました。
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感想文_トヨタ・レクサス | 日記
Posted at
2012/04/07 00:23:32