●お子様だった当時の僕にはわからなかった。
カペラから発展したアテンザがマツダのフラッグシップになって11年が経つ。2003年まではミレーニアがフラッグシップであったが、2000年まではセンティアがフラッグシップだった。センティアはルーチェの後継モデルとして1991年に発売された。
個人的な話になるが、広島出身の伯父がかつてRE搭載のルーチェに乗っていた。子供の頃何回か乗せてもらったが、いつも乗せてもらうときは大人しい伯母の運転だったので、REの実力を味わうのは
大虎さんのFCを運転するまではお預けとなっている。この親戚は一家揃って香港へ転勤し、帰ってきたのが2000年ごろ。
当時、伯父は中古車で2代目センティアを買った。4WSでシャンパンゴールドだったことは覚えているが、実はあまり記憶に残っていない・・・。当時の自分はラージカーに興味を示さず、スポーティなセダンや欧風ハッチバックに興味を示していたからだ。とにかく中が広いことだけは覚えている。
そして2014年も半分が過ぎた頃、初代センティアをドライブする機会を得た。ところでセンティアという車名を調べると車名のセンティアは、
>フランス語で「感じる」を意味するsentirと
>ラテン語で「場所」を意味するiaとを組み合わせできた造語で、
>「感動を呼ぶ洗練された空間」の意味合いが込められている。
とのこと。センサーとかセンスとかと同じ語源を持つ様だ。「感じる場所」って思春期の少年が聞いたらそれだけで妄想が膨らむような名前だと思う。(あらやだ)
話題を車に戻す。外からセンティアを眺めると、とんでもなく大きく感じる。しかし、それは見るものを萎縮させるような威圧感ではなく、手で触れてみたいと思わせるような優しく柔らかい曲面の融合体である。この時期のマツダデザインは自動車の本場たる欧州でも評価されたという。
ボディサイズは全長4,925mm 、全幅1,795mm、全高1,380mmという堂々たるサイズ。当時のクラウン(140系前期)と比較すると全長で125mm長く、全幅で45mm広く、全高は60mmも低い。
だから日本的な高級車とは佇まいが違う。ボディカラーも深みのある赤ワインのような色で、とんでもなく艶めかしいオーラが漂っている。低く長いノーズ、ヘッドランプもグリルも薄く、日本の高級車が持っている威圧感が全く無い。グリル、ヘッドライトなどパーツで主張することなく、量感のバランスで勝負しているデザインなのではないかと考える。
乗り込んで見ると、外装のイメージそのままの内装が迎えてくれる。包まれ感が強い曲面デザインだ。現代採用例が増えているセンターコンソールのステッチや白の内装色も進んでいるといえよう。また、助手席側の空調レジスターも省略されるなどデザイン性をとても大事にしているが、狭苦しくなったりしないのはこの車がフラッグシップたるボディサイズを持っているから。
自動車は人間が運転するものである以上、ある程度以上の室内空間が必要だ。低く長く優雅なプロポーションを得るためにはそれなりのボディサイズが必要。居住性とスタイリングを両立させるのは高級車ということになりやすい。センティアも豊かなボディサイズをスタイリングにたっぷりと使用している。
エンジンを始動した。V62.5Lエンジンは何の振動も感じさせず軽快なアイドリング音を奏でている。エンジン回転を示すメーターもありがちな計器類スペースの中にあるというよりは、インパネ面をくりぬいてメーターが存在するイメージ。何とも従来の高級感とは違うところを目指してることがよく分かる。
駐車場から出る際、車体の大きさが気になった。試乗当日は昭和スーパーめぐりを実施しており、1988年竣工のスーパーから国道へ出たが屋上駐車場からの道路が狭く、非常に神経を使うスタートになった。センティアが出た1991年の感覚だととてつもなく大きいクルマの一つに挙げられよう。
大通りに出ればボディサイズの大きさを気にする必要は無い。昨今、再び見直されているオルガン式アクセルペダルを踏み込むとセンティアは軽快に発進する。FRらしい加速感覚、ステアリング振動の遮断は素晴らしい。予断だが、オルガン式アクセルペダルとFrホイールの位置関係は近年のスカイアクティブ車と類似しているように感じた。
変速機は電子制御の4AT。当時既に5速ATも存在していたが、4ATで十分に時代の流れには乗っていた。比較的引張り気味のセッティングなのが独特だが、大柄なボディの割りにスポーティさを感じる乗り味だ。
一方、センティアのシャシーを語る上で無視できないのは4WSだろう。カペラで実用化した4WSはセンティアにも採用されているが、一般走行時にその恩恵にあずかる事も違和感に苛まれる事も無かった。ちょっとペースが速いときの身のこなしは軽快。アップダウンとカーブが多い中央道や東名の大井松田~御殿場の山岳区間をセンティアで走ると本領を発揮するはずだ。短時間の試乗であったために山道や高速道路を試していないが、一度だけ片側二車線の道路をUターンする機会に恵まれた。
全長5m近い巨体のUターンなので切り返しが必要かと思いきや、なんと一発でUターンを終えてしまった。お見事!!運転しているほうが「小回りきくなー」と感心したが、実は外でその一部始終を見ていた関係者たちからは歓声が上がったようだ。
少し乗っただけでもセンティアが従来型の高級車と一線を画する存在だったことが理解できた。いわゆる分厚い高級感はなく、繊細で柔らかい高級感がセンティアの持ち味だ。
この時代は他にもレパードJフェリーのように従来とは違う高級感を狙った新商品が世に問われたことがあったが、十分な成功を収めることができなかった。これが海外ブランドのクルマであったなら「やっぱり日本車には無い魅力がある」と理解されただろうが、当時の国産高級車市場のメインはクラウンやセド/グロである。あの手の本流を正とする市場に対して「外し」の選択をする人はまだまだ少なかった。
輸入車を好む層は富裕層で車の魅力よりもブランドで車種を選択し、マツダの「外し」を理解する人がさほど多く無かったことから、2代目では分厚い方向にシフトしたとも考えられる。今なってはその国産本流ブランドすら敷居を下げてきた輸入車に市場を奪われているのは残念だ。
実は私は今回改めてセンティアを見るまでセンティアの魅力を理解してこなかった。若かりし頃の自分のセンティア評は「まるっこくてダラーっとした意匠で目を引く部分が無い」「ひたすら大きくてかっこいいスポーツカーの様でもRVの様でもない」という青臭いものであった。
センティアはパーツパーツの造形よりも美しい量感バランスの美を訴えかける車であるが当時の私はそういう訓練が十分でなかったのである。しかしある程度大人になった私にはセンティアの魅力がよく伝わった。
オーナーに感謝。
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感想文_マツダ | クルマ
Posted at
2014/08/09 10:53:27